- April 1999 -


Rides Reef

Rides リーフ特集があった今月のクラブKで、DJ梯さんはイベント終了後にこんなことをおっしゃっていた。「でかい音で聴かないと良さがわかんないバンドなんで・・・・」。・・・まさに言い得て妙である。いや、はっきり言えばどのロックバンドだってでかい音で聴かなきゃその良さがわかんないとは思うのだが、リーフの場合、彼らの長所と短所がより明確になるというか、そんな感じがするのである。

クラブKででかい音で彼らの音に触れてみると、ヴォーカル、ギター、ベース、そしてドラムの音がそれぞれ妙にくっきり聞こえ出す。するとまずやっぱり素晴らしいなあと思わせるのはギターなんだな。シュアーでファンキーなカッティングはこのバンドの命と言ってもいいであろう。ドラムはなんか凝ったことをやっている感じはないけど、やっぱバシバシ来るなあ、といった感じ。次はやっぱりボーカルかな。でっかい口開けて歌ってるんだろうなあ、って感じが伝わってきて非常に良い。

そんでやっぱり弱点かなあ、と思わせるのはまずボーカル、というか決め手となるコーラスがないところかな。 特にファーストの曲なんかは、キャッチーなコーラスが入っていないのでちょっと一本調子な印象を受けてしまう。 あとはやっぱり最大の弱点はベースでしょう。 音数の少ないプレイは難しいとは言うけれども、やっぱりそれにしても音数が少ない感じがするし、レッチリのフリーとまでは言わないまでも、そもそもギターがシュアーなギターカッティング&リフを主体としているんだから、ベースラインにももうちょい工夫があってもいいんじゃないかなあ、とも思ったりする。

そしてこの彼らにとってのサードアルバムとなる「Rides」を聴いてみる。もちろん自分の注目点は、コーラスとベースラインだ。 しかしその懸念は1曲目の「New Bird」でどこかに吹っ飛んでしまう。 ミッシェルガンエレファントの「ギア・ブルーズ」の1曲目、「ウェスト・キャバレー・ドライヴ」を思わせる、ぶっとく歪みまくったベースラインで幕を開けるこの曲には、「I want a new bird !!」というキャッチーでなコーラスラインと、ミドルの部分では卓越したベースソロを聴くことができる。 なんか思わず笑ってしまった。まるで自分の不満の声をメンバーが聞いていたかのように思えたから。 でもベースラインに関しては1曲目を除くと結構以前と変わってないような感じはするんだけどね(笑)。


白人が中心となっているバンドの場合、基本的に自分は、イギリスっぽいアメリカのバンドと、アメリカっぽいイギリスのバンドが好きだ。 そしてそこに黒っぽいフィーリング、例えばヒップホップとかファンクとかブルースとかのエッセンスがあれば言うことなし、といった感じである。イギリスっぽいアメリカのバンドっていうのは、『アメリカ』ということに自意識過剰にならず、またこだわりも見せずに、ツェッペリンとかビートルズ、フーなんかに影響を受けているバンドで、なおかつ黒っぽいエッセンスをふんだんに取り入れているアーティスト、例えばエアロスミス、レイジ・アゲンスト・ザ・マシーン、ダンディー・ウォーホルズ、ベック、ジョン・スペンサー・ブルーズ・エクスプロージョンなんかがそうだ。 アメリカっぽいイギリスのバンドというのは、変に英国流美意識に過剰にならず、十分にエンターテインさせてくれて、なおかつ瞬発力と柔軟性とメタリックな質感のあるグループ、例えばストーンズとかマンサンとか、ステレオフォニックス、クーラ・シェイカーなんかがそうである。 つまりより大陸的というか、お茶じゃなくてもコーラとコーヒーでやっていけそうなバンドというか、「ベター」を「ベラー」と発音しそうなグループというか、つまりそんなイギリス出身のバンドが好きなわけだが、そのひとつにこのリーフも入っているわけである。 ブラック・クロウズあたりとよく比較され、ROによると本人達はベックを目指しているとのことだけれども、自分にしてみれば両方ともイギリスっぽいアメリカのアーティストであるわけで、リーフを語るときに彼らの名前が挙がるのもなんとなく分からんでもない。

ファーストアルバムを発表したころからまあそうだったと言えばそうだったんだが、リーフはいよいよ無国籍っぷりが深まってきた気がする。下手すりゃ今のそこいらのアメリカンバンドなんかよりもよっぽど大陸的な広がりを持ったバンドかもしれない。ギターソロのひとつもぶちかましたいところだけど、そんなこともせずもくもくとカッティングして、本当なら「南部への愛着」なんて言葉の元にホンキートンキーなピアノと、カントリーっぽいスライドなんか入れちゃったりしたくなるものだが、そうすると大陸的じゃなくて逆になんか土着的になってしまうから止めたほうがいい。 でかい音、というものに自覚的であればこそのリーフ流のホンキートンクブルース。 でもやっぱりもうちょっとベースが頑張れば、超スーパーファンキーなホンキートンクブルースを奏でられるような気がするのは自分だけか?


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Last updated: 4/24/99