++ June 1998 ++


BBC Sessions Jimi Hendrix Experience
Live At Winterland '68 Janis Joplin

ジミ・ヘンドリックスとジャニス・ジョップリンはともに1970年に亡くなっている。それもともに薬物の過剰摂取が主な死因とされている。おまけにそれは両者とも27歳の時だったというのだから、なんか恐ろしくなってきてしまう。ただ両者の共通点はそれだけではない。ジミは故郷シアトルを離れイギリスへ、ジャニスはテキサスを離れてサンフランシスコへ渡ってから、それぞれ大成功をおさめているのだ。ここで紹介する彼らの2枚のライヴアルバムは、その大成功をおさめた新天地で収録された貴重な歴史的名盤なのである。

BBC Sessions まずジミ・ヘンドリックスのイギリスのラジオ番組向けのスタジオライヴをおさめたBBC Sessionsだ。このBBCシリーズはビートルズ、レッド・ツェッペリン、イエスなどでもうお馴染みであろう。リマスターされたその音質の良さはすでに実証済みであるが、正直なところこのジミヘンの一枚は他の彼のライヴアルバムと比べて、音質的にはそんなに違いはない。ただしもうここで言うまでもなく、彼のギター、そしてバンドの叩き出すエネルギーはお話にならないぐらいすごい。これ以上の形容はなにも意味をなさない。文字ではとても表せない。もう聴くしかない。

で、個人的に何が印象的かというと、まずはボブ・ディランのカバーはディランに、マディー・ウォーターズのカバーはマディーに、それぞれなってしまうジミの声もさることながら、とにもかくにもビートルズのカバー「デイ・トリッパー」のジミのパフォーマンスである。何を隠そうBBCのこの曲、ブートレグではお馴染みの定番の一曲で、数年前初めてこのヴァージョンを友人から聴かされたときには、その友人とともにまるで狂ったかのようにこの曲を大音量でプレーしてしまったのだ。それほどすさまじい説得力を持つこの曲は、もうオリジナルのビートルズなどとても聴く気になれなくなるほどの圧倒的でとてつもない、アホのような、核実験などまったくもって子供のお遊びぐらいに思えるような、そんな感じで迫り来るショッカーだ。とても文字ではこのすごさを表せない。やっぱり聴くしかない。

Live at Winterland '68 そして我らがジャニス・ジョップリンである。彼女のバンド(というよりも彼女が加入したバンド)、ビッグ・ブラザー・アンド・ザ・ホールディングスとで残した貴重な音源である。しかし余りにも長いバンド名なのでもう書きたくはないし、はっきりいってそれはこの際どうでもいい。とにかくジャニスだ。ここで聴けるジャニスの姿は解放感に溢れ、とにかく本当に楽しそうだ。このジャニスの声を聴いて、退屈する人、あくびをする人、プレーヤーのストップボタンを押す人、聴きながら眠れる人、そんな人はとても信じられない。

彼女の出身地であるテキサス州ポートアーサーという街には一度だけ行ったことがあるのだけれど、とにかくな〜んも魅力のない街であったことだけは確かだ。一応街としての機能はすべて整っている感じなのだけれど、だからこその安心感というか、停滞感が漂っているのかもしれない。なにせ私が行った日はとてつもなく風が強い日で、寂れた船着き場のようなところでぶるぶる震えていたのを思い出す。泊まったモーテルはこれまで何十カ所か泊まったモーテルの中でも最低で、テレビがつかないだけでなく、トイレまで壊れた(自分でなおした)。フロントの対応も最低。逆に言えばこんなモーテルが生き残っているあたり、この街には競争原理というものが働いていないのであろう。そんなところでジャニス・ジョップリンは生きていけるはずがない。

最初に書きたくはないと言ったが、ビッグ・ブラザー・アンド・ザ・ホールディングス、彼らもテキサス出身のバンドである。テキサス出身のミュージシャンが作り上げたアルバム、その中でもこれは群を抜いて最高の一枚であるのは間違いない。でも私はテキサスのラジオ番組で、ジャニスの曲がかかったのはほとんど耳にしたことがない。つまりこれはどういったことを意味するのだろうか?

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Last updated: 6/17/98