AC/DC 煎じて飲ませる爪の垢も出し尽くし

横浜アリーナ - 2/19/01


ズボンズのディスクレビューであれほどまでにこのバンド名を連呼したのに、ここでまた書かせるかホンキー・トンク・ウィメン。フロアの席に赤いTシャツ姿のポール・ギルバート(元みすたー・びっぐ)は、満面のスマイルでもって多くの人と握手&サインに応じながらギミー・シェルター。19年という月日はまさに無常の世界だねミッドナイト・ランブラー。間もなく開演というアナウンス直後には大合唱になってしまったブラウン・シュガー。ここで始まれば最高だったのに、バラードでじらすよワイルド・ホーセズ。しかし度重なるアンガスコールと共にその時はやってきましたタイム・イズ・オン・マイ・サイド!!  ステージ中央にはいつの間にかそのアンガス・ヤング! 1曲目からいきなり「You Shook Me All Night Long」!

半ズボンの学生服姿でSGギターを高い位置に持つアンガス・ヤングはいきなりアンガス流ダックウォークを連発。ギターアンプ前から動かない兄貴のロンゲ+ブラックジーンズ姿とはくっきりと対照を成しているけれども、ギターの音量は2人できっちり分け合うというところは意外に面白いところだ。

ステージ右側に寄ってきて、「ヨコハマ! はうゆーどぅいん?! ニューアルバムからやっていいかい? Stiff Upper Lipって曲だぜ〜。」と独特のガラガラ声で叫ぶブライアン・ジョンソン。しかしそのニューアルバムから演奏されたのはこの曲1つのみ。なんとも潔いというか、客のニーズにそのまま応えているというか・・・。

そしてその2曲目ではステージ後方のスクリーンが真ん中から2つに割れ、銀色に光る巨大なアンガス人形が前方にせせり出てきた! 口からは煙を吐いてるよ! たまに回転するよ! バカ過ぎ! しかしその2つに割れたスクリーンにもしっかりと別々の映像が映っているぞ! なんかすごいテクノロジーだなあ。このスクリーン効果はブランキー・ジェット・シティーの横アリラストライヴをちょっと思い出させるなぁ。

後はもうAC/DCクラシックのオンパレード。「Shot Down In Flames」「Hell Ain't A Bad To Place To Be」「Rock And Roll Ain't Noise Pollution」などなど。センター席前方にはステージ中央から伸びる花道が用意されていて時々アンガスかブライアンかのどっちかが客を煽りにやって来る。 また来たよ〜、と思ったらいきなり天井からAC/DC鐘が降りてきて、それにぶら下がって空中を飛ぶブライアン。まるで黒いピーターパン。チラッと光るピアノ線。きっと同じ感じで無人の会場でリハーサルをやったんだろうな。TOKIOみたいだな。そして曲はもちろん「Hells Bells」へ。

いわゆる男性のナニを意味する「The Jack」では客に向かってコーラス部分を歌わせ、終いにはアンガスがスポットライトを浴びる中で客を煽って煽って煽り倒して、まず上半身裸になり、そして下半身も・・・・と思ったらまたまた客を煽って煽って走って走って煽って煽ってドラムセットに上がって降りて上がって降りて走って走って煽って煽って、ケツを出すふりしてまた煽って走って煽って、パンツを脱いだと思ったらその中にはAC/DC柄のパンツをさらに履いていて、その時後ろにはなぜか日の丸の国旗が掲揚された。

そしてその後はもうこれでもか!ってぐらいのAC/DCクラシックの連続攻撃。「Dirty Needs Done Dirt Cheap」に、スクリーンに「Back In Black」の黒ジャケットが大写しにされた同名タイトル曲に、待ってました「Highway To Hell」に、次のセッションの課題曲にしようと思った「Whole Lotta Rosie」。薄くなった頭髪から汗を飛び散らしまくるアンガス・ヤングが、ステージ上を駆け巡り、転がりまくり、チョーキングしながら顔を歪ませまくり、高所恐怖症なら確実に足がすくむ高所にてギターソロを弾きまくる。 おっさんもここまで頑張ってるぜー−!といったモード全開で、いやあ、こんな激しいステージを2時間以上にも渡って、ほぼ毎日、半年〜1年というスパンでやってるんだからすごすぎる。

本編ラストの「Let There Be Rock」で、フロアに伸びた花道からせリ上がった 丸い台でギターを演奏するアンガス。この後の大砲16連発と並ぶこのショーのハイライトとなったこのシーン。もちろん観客の目は、フロアのほぼ中央でスポットライトを浴びるアンガスにあったわけだが、自分はこの時、フレッド・ダーストがフロア後方に仁王立ちして歌っていたリンプ・ビズキットのステージを思い出していた。リンプの場合、この時、ステージに残された他のメンバーが、フレッドが横で歌っている時とは全く正反対の、まるでやる気なさげに演奏していたのが大変印象的だったのだが、このAC/DCの場合、客の視線が注がれていないのは明らかな暗がりの中にいるメンバーが、しっかりと髪を揺らし、指を鳴らし、両足でリズムを取りながら演奏していて、アンガスが傍で演奏している時の彼らと何も変わらなかった。 ああ、これこそプロの本物のエンターテイメントショーなんだなあ、とつくづく感動し、逆にリンプのステージにはさらなるもの足りなさを実感するに至っている。やっぱりガンダムなしってのは大した理由じゃなかったんだ。

それからお客さん。すばらしかった。最近、スタンディングのライヴなんかに行くと、開演直前にも関わらず、会場の混み具合も考えずフロアのど真ん中にべたーーっと座っている若い方々の姿に、いつも辟易させられている。しかし今日のライヴの開演前ときたら、アンガスコールは何度も何度も起きるし、アンガスコスプレ部隊は自ら客を煽って盛り上げようとするし、スタンド席に何度も何度もウェーブを起こそうと頑張っている人達はいるしといった具合に、歳も座席もへったくれもない混沌としたテンションの中でAC/DCに対する迎撃態勢が整ったあの様子はかなり感動的だった。自分ももうちょっとAC/DCに対する情熱と知識と思い入れとがあったなら、と腕組みしてうな垂れながら反省。




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Last updated: 2/ 20/ 01