Aerosmith 日本のファンは世界一!

横浜アリーナ - 3/14/98 Set List


前のニューヨーク公演のレポートの時、あまりの盛り上がりの無さから「武道館で観るエアロの方が正しい」と書いた。そしてこの日、そのことを確認するために横浜アリーナへエアロスミスのコンサートを観に行った。

結論...。

「やっぱり日本のエアロファンは世界で一番だあ!!!」




12日のコンサートをレポートしてくれたTomokoさんがこんなことを言っていた。「私の席は1階席だったけど、ステージに近くて、下手なアリーナ席よりも良かった」。この日の私の席はまさにその「下手なアリーナ席」のど真ん中。アリーナ席(横浜アリーナではこれを「センター席」と呼ぶ)の後ろから数えて5列目で、ステージはかなり遠い。入場前は「Joeyのスティックを取ってくるぜい!」と意気込んでいたものの、この状況ではどうやらその夢はかないそうにない。しかしこの位置は、去年マジソン・スクエア・ガーデンで観た時とほぼ同じところ。「よし、こうなったら冷静に2つのコンサートを比較してやろう」と考えを変えた私。しかし、こちらの方が明らかに平均年齢が10歳以上は若いオーディエンスの中でいざショーが始まってみると、その当初のもくろみは何処へやら。頭の中が真っ白になり、糞尿垂れ流し状態でステージ上のメンバーの動きに釘付けなっている私がそこにいたのである。

場内暗転と同時にステージ上に落ちる薄くて白い幕。そこにシルエットとして現われたボーカルのSteven Tyler。腰をタテ、ヨコにくねらせ、じらすStevenの姿を見ながら、「早くイカせてくれー」と求めるオーディエンスの歓喜の声が聞こえてくる。すると突然鳴り出したJoey Kramerのドラムの音に反応して、幕の上方で小爆発がおき、メンバー5人が姿を現わした。「Nine Lives」のスタートである。文字通りこの劇的な幕開けに鳥肌立ちまくるが、それにもまして私を感動させたのが、とにかくアメリカなどとは比較にならない客の爆発的な盛り上り様だ。「Love In An Elevator」で挙がったこぶしの数も断然多いし、「Falling In Love」でのノリも尋常ではない。日本公演最終日のこの日、これまでもう複数回ライヴを体験した人も少なくないだろうに、とても再追加公演とは思えないほどの客のノリの良さだ。この感動的なシーンを目の当たりにして、不覚にも涙を流してしまった私。確かにこの横浜アリーナに来るまでの道程で、いつもは読まない山田洋次の本などを読んでしまい、あのべとべとの義理と人情の世界に涙腺がゆるくなってしまっていたこともあったのかもしれないが...。

そんな歓喜の渦の中でも、やはりチェックしなければならないのはギターのJoe Perry。このツアーではお馴染みになったギブソンのJoeモデルを抱えて、回る回る、跳ねる跳ねる、動く動く。早速ステージ横の1階席の方へ歩み寄って挨拶に行ったのがこのJoe Perry。その往復の間にも様々なポーズで決める決める。もちろん注目はステージアクションだけではない。特に序盤では「Love In An Elevator」後半のワウを交えたソロはもう素晴らしいの一言。いつからこんなに上手いギタリストになったんだろこの人は。

そして忘れてはならないもう一人のギタリスト、Brad Whitford。「On guitar, Mr. Brad Whitford!」とStevenに紹介され始まった「Last Child」では、ステージ中央に出てきてその存在感をアピールする。そこではピッキングハーモニクスを随所に聞かせながらのながーい超絶ソロを披露。小さい会場で音が非常にいいこともあって、細部まで聞き取ることができるからとにかく最高だ。

それまでのステージの雰囲気をがらっと変えて始まった「Taste Of India」で注目すべきところはただ一点、ベースのTom Hamiltonである。あの白いばちの様なもの(これがChapman Stick?)をまた使うんだろうか......おお、手に持ってる! よーく聴いているとあのばちをもってベース弦を叩いた時、高音の独特な音が出るらしい。曲のキメの所で「カーン」と鳴らす感じで、なぜだか思わず笑ってしまった。最もインドっぽかったというか、アジアっぽかったのが、あのTomのプレイだったかもしれない。

そうはいってもエアロスミス、何がなくともSteven Tylerである。ステージ西の1階席方面に走ること数回。女性に何度抱き付き、抱き付かれたことか...。ちなみにステージ左側の席にいた女性、Stevenに2度も抱き付いた上に、Joeyのスティックまで取った日には、「あー、またかよ...」という声が...。

そのStevenが「なんかリクエストはあるかい。じゃあこんなのはどう?」と言ってJoeが弾き始めたリフ。それはあの「Chip Away the Stone」のイントロであった。しかしこの日の選曲といったらほんと激シブ。この「Chip Away the Stone」だけでなく、構成が非常に複雑で、投げやりにコーラスを取るJoeの姿が印象的だった「Get the Led Out」、初期の名曲「One Way Street」に「Seasons Of Wither」(Texas Jam '78!!!)と来たものだ。はっきりいって客の盛り上がりはいまいちという感じだったけれども、個人的にはもう嬉しすぎた。特に「Seasons Of Wither」ではほんとに涙が止まらなかったよ。そして後半にはとうとう出ました「Mama Kin」! バンドのほうも、もうこなれまくっているといった感じで、特にJoeのカッティングはすごく荒っぽい。しかしこれがまた初期の荒々しいエアロを追体験しているような気持ちにさせてくれて、また涙、涙!

涙に濡れた目をこすり、再びステージ上に視線をやると、ステージ中央にはJoe Perryの姿が見えた。「この前のライヴでもいい時間を過ごさせてもらったよ」と一言あいさつして始まったJimi Hendrixのスローブルース「Red House」。まるで黒人ブルースシンガーのように歌おうとするJoeだけれど、うーん、もうひとつかなあ...。やっぱジミヘンとかバディ・ガイがカバーしたバージョンとかと比較しちゃうと分が悪いかも...。そして2曲めはFreetwood Macの「Stop Messin' Around」。前回の来日でのプレーですっかりお馴染みとなったこのナンバー。ギターの入りも前回とまったく同じ。Joe、Brad、ドラムセットの真横に下がったSteven(ハーモニカ)、そしてサポートのRuss Irwin(キーボード)へとソロがまわされ、再度Joeのソロ。エンディングを迎え、「ドウモアリガトウ」と日本語で挨拶したJoeの顔は、どこか恥ずかしげであった。

しかし 何もギターを弾いたのはJoeとBradだけではない。「Kiss Your Past Goodbye」が終わると、Joeのテレキャスターを肩に抱えて登場したTom Hamilton。かたやJoeはフェンダーのベースをぶらさげてニコニコしている。ここで曲に入るのかと思いきや、いきなりストーンズの「Jumping Jack Flash」のリフをチロチロと弾き出すこの2人。そして「Sick As A Dog」へ。メインのギターはあくまでもBradだが、Tomもなかなかのギターカッティングを聴かせる。しかしJoeのベースの音が大きく感じたのは気のせいか。そして曲の途中でギターだけのパートになった瞬間を見計らって、JoeはStevenに自分のベースを手渡す。このときばかりは、いつも動き回っているStevenと違って、指先に神経を集中させ、微動だにせずベースを引き続けるSteven。残ったJoeはJoeyに代わってドラムを......ってことはないか(笑)。

まるでメドレーのように「Dream On」から「Cryin'」へと曲が進行するのにあわせ、まるで一人一人に優しく語りかけるように、これら殊玉のバラードを歌うSteven。そのStevenは観客に「いち、にー、さん」と叫ぶように呼びかける。その掛け声と同時に始まったのが「Dude」。うーん、何ともドラマチック。会場大爆発。やっぱ、最近のヒット曲は盛り上がるなあ。

アンコールの「Walk This Way」が始まる前に、「Eat the Rich」のラップ部分をStevenが口ずさむ。当然その曲をやるものと思って大歓声をあげるオーディエンス。私もここまできたらもうやっちゃってくれー、と思っていた。しかしそんなサプライズへの願いは叶わず、「Walk This Way」へ。Joeのギターの入るタイミングがちょっと変だったが、あれは意図的なものだったのだろうか。しかし「Mother Popcorn」がなかったのが少し残念。お次の「Sweet Emotion」でマラカスのようなものを振るSteven。ここで、ステージ後方でにらみを利かせていた3体のコブラがフニャフニャになって姿を消す。そしてLed Zeppelinの「Dazed And Confused」を経て圧倒的なエンディングへ。Tomokoさんの12日のレポートにもあったように、Joeはここでも「Blue Christmas」をプレイしたが、バンドの音が止んでもしつこくメロディーを引き続けていた自分に思わず苦笑い。

全体的な印象として、序盤で爆発的に盛り上がり、中盤渋い曲が続いて(私は非常に嬉しかったが)多くの人達はちょっとダレて、後半「Mama Kin」あたりからまた元気さを取り戻した、といった感じ。最近のアルバムで好きになったというファンにはちょっとつらいライヴだったかもしれないけれど(なにせ「Livin' on the Edge」もやらなかった。)、私にとっては大満足のコンサートであった。ニューヨークのライヴではすごく地味に思えたステージセットも、この日はその派手なライティングといい、爆竹などの特殊効果といい、今のエアロの魅力を伝えるには最高のものであったように思う。それにしてもオーディエンス側の想像以上の盛り上がりにはほんとに感動させられた。やっぱ日本のファンが最高だよ、正しいよ。うん、絶対そうだよ。


  1. Nine Lives
  2. Love In an Elevator
  3. Falling In Love
  4. Same Old Song And Dance
  5. Seasons of Wither
  6. Taste Of India
  7. Janie's Got A Gun
  8. Chip Away the Stone
  9. Get the Lead Out
  10. Pink
  11. Last Child
  12. One Way Street
  13. Red House (v: Joe)
  1. Stop Messin' Around (v: Joe)
  2. Kiss Your Past Goodbye
  3. Sick As A Dog (g: Tom, b: JoeSteven)
  4. Nobody's Fault
  5. Mama Kin
  6. Dream On
  7. Cryin'
  8. Dude

  9. Full Circle
  10. Walk This Way
  11. Sweet Emotion


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3/9/98 - 東京ドーム公演2日目へ

8/6/97 - NY・マジソン・スクエア・ガーデン公演へ

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Last updated: 3/ 15/ 98