At The Drive-In 隣にアフロ

渋谷オンエアイースト - 1/18/01

with Eastern Youth


オープニングアクトのイースタン・ユースの音を聞きながら会場入口の重いドアを開ける。「うわ! 満員じゃん。 全然奥に進めない・・・・。」ということでちょっと窮屈な状態でイースタン・ユースのステージを見ることになった。彼らをおととしのフジロック'99の映像を見てからちょっと気になっていたのだが、こうして実際のライヴに触れてみると、ほんとすごいバンドが日本でも頑張ってるんだなあ、という感慨で胸が一杯になってしまった。

みんなアット・ザ・ドライヴ・インを観に来ているはずなのに誰もその場を離れようとしないことからも、いかに彼らのステージがお客の心を掴んでいるかが分かる。そしてさらに辺りをよく見回してみると、どちらかと言えば20代前半以降ぐらいの男性が多いかな、といった印象だが、外国人の姿もちらほら見受けられる。 お、アット・ザ・ドライヴ・インに影響を受けているのか? 隣には頭がアフロのやつまでいるぞ・・・・・・・・・・・・・と思ってよく見たらアット・ザ・ドライヴ・インの左利きギタリスト、Omarだった。 つまりあのアフロが俺の隣で一緒にライヴを観ている。 体を揺らせば彼の体に触れるし、話そうと思えば話すこともできる。 

小柄でアフロで普通なOmarは、イースタンの曲が終わるたびに、周りの誰よりも大きな拍手をステージに向けて送っていた。 人が通ると、「うっぷす! あいむそーりー!」と言いながらペコペコして体をよけていた。 イースタンの吉野がMCして会場の爆笑を誘っていると、「面白いなあ。彼がMCするといつもすごいシリアスな感じになるのになあ。しかし僕も日本語が理解できたらいいのになあ。」などと話していたりもした。

お客さんがさらに増えてきて、「あいむそーりー!」状態があまりにも連続してステージに集中できなかったのか、ちょっと空いている場所に移動しようとしたOmar。 その際、自分の後ろをすり抜けていった彼のビッグなアフロが自分のうなじを直撃し、無茶苦茶くすぐったかった。

「アット・ザ・ドライヴ・インのみなさま! ウェルカム! ようこそ日本に来てくださいました!」と吉野が言うも、意味の全然分からないOmarは腕組みして完全に知らん顔。 でもホントにイースタンが好きなんだなあって感じでもう完全にステージに見入っている。(だから俺も話し掛けにくかった。) それもスタッフとかと連れ立っているわけでもなく、オーディエンスの中に独り紛れてステージを見ているのである。 それってなんかすげえいいなあ、などと思っていると、イースタン・ユースのライヴが終わり、自分たちのステージの準備に戻るため、再び自分の後ろを通っていこうとするOmar。 しかし今度はあのアフロヘアーが自分の後頭部から首筋にかけて完全に触れてしまい、ちょっと飛び上がってしまうほどくすぐったかった。



あのアフロに触れられてちょっとご満悦のKatsだが、いよいよそんなOmarがステージに立つ番だ。 アット・ザ・ドライヴ・インのステージを見るのはこれが3度目となるのだが、最初のサマーソニックではあまりの疲労でライヴ半ばにしてダウン → 爆睡。 次のレディングフェスではあまりの人の多さに音はすれども姿は見えず状態。 なおかつ疲労困ぱいだったそのレディングでは、「あああ、なんかアフロなやつがこっちに歩いてくる・・・。」と思ったらやっぱりアフロのOmarだったという、そんなこともあった。 つまるところ今回3度目にしてやっと彼らのライヴをちゃんと観る機会が訪れたのである。

しかしレコードで聞くアット・ザ・ドライヴ・インの音というものをまだ自分の中では完全に消化できていなかった。彼らのパワーを受け止められるだけの器が自分の中にまだないのか、それかひょっとするとそのパワーを吸収するだけの「若さ」というものがなくなってしまったのかもと思うこともある。これは自分がエイジアン・ダブ・ファウンデーションを初めて聴いた時に感じた印象と同じで、「これが今のリズム、今のテンションなんだなあ。ついていけるかなあ。」と若干の恐れ慄きを感じたあの感触に似ている。

しかしアット・ザ・ドライヴ・インはテキサス出身ということもあり、なんだかすごく身近な存在に感じることも事実だ。なおかつアフロな彼には変なところでよく会うし。 そんでもってアット・ザ・ドライヴ・インって、なんだか レイジやオアシスみたいに、ものすごいでっかいバンドになるんじゃないか?といった可能性を秘めているバンドにも感じるし、こんなステージをやる連中が、世界一売れるバンドになったらどうなっちゃんだろう?といった興味も大いにそそられるグループでもある。要するにロックンロールが描いてきた夢を再び見せてくれそうなバンドなのだ。 だから平日なのにこうして無理してでもライヴ会場まで足を運んだのだ。

そんでもって実際のステージはどうだったかというと、昨年発売のメジャーデビューアルバムの曲順の如く「Arcarsenal」「Pattern Against User」に始まった約1時間強の大盛り上がりライヴ大会だったのだが、彼らのエネルギーを受け止めて体内で完全に消化し、内なるエネルギーへと転化することはやはりできなかった。「なんかすごいものを観ている!」という感じは常にあるのだが、まだまだ自分を無我夢中にさせるまでには至らない。さっきまであんなに「ソーリー、ソーリー」言いながら小さくなっていたOmarは、切れに切れまくった挙句、スピーカーによじ登ってジャンプしてしまうほどの狂人と化していたが、「くっそーー!! なんでもっと盛り上がれねえんだろう?!」 と、突然アレが不能になってしまったみたいな情けなさすら自分の中に感じてしまった。 これは、よりによって相手が絶世の美人だったりするとなおさらのことで、ムチャクチャ期待に胸膨らませてたのに、いざとなったらどういうわけだか言うことを聞かなかったなんていう時の自分の不甲斐なさに呆れ返ってしまう、そんな状態にも似ていた。

レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンやミッシェル・ガン・エレファントは、今の自分のテンションにぴったりマッチしたアーティスト達だ。 かたやアット・ザ・ドライヴ・インは、今の自分が許容できるテンションを遥かに超えたエネルギーを発しているアーティストだと思う。 つまり彼らを完全に受容できた時というのは、自分がワンステップ高いテンションに到達しようとしている時に違いない。 だからアット・ザ・ドライヴ・インというのは、これから生活していく上で、自分のテンションを計るバロメーター的な存在になっていくと思う。 レイジもミッシェルも、初めて観たライヴを、当時の自分のテンションではまったく受け入れることができなかったが、生活が変わり、環境が変わり、仕事が変わり、自分自身が変わっていく中で受容できるようになったように、あらゆる変化の中でアット・ザ・ドライヴ・インの音楽とエネルギーを必要とする時がそんな遠くない未来にやって来るような気がしている。



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Last updated: 1/ 18/ 01