The Black Crowes 秘密の黒烏としげやん

渋谷オンエア・イースト - 1/27/99


今回は「しげやん」こと、重村さんから提供いただいた、1日限りのブラック・クロウズ・シークレット・ギグ・レポートを掲載させていただきます。しげやんさんにはこの場を借りて厚く御礼申し上げます!


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チケット入手までの道のり

1月12日に通算5作目 "By Your Side" を発表したばかりの The Black Crowes. このアルバムでのぶっちぎれてしまったカッコ良さに打ちのめされている矢先(・・・・このアルバムにまだ打ちのめされていない人は、まずディスクレビューを読みなさ〜い!!)に,一部サイトにてシークレット・コンサートの噂が出没し始めたのはその直後だった.最初のうちは「信憑性あるの?」と半信半疑だったが,TV や ラジオでその告知が始まるとなるや否や,その情報は確実なものとなり,それからチケット入手のための争奪戦が始まった.

...しかし,27日のコンサート前日になっても結局チケットは入手できないまでであった.最後の手段として現地調達しかないのでは,と思っていたところであったが,当日未明になり,ようやくチケットを1名分だけ入手することが出来,ロクに眠れない中,渋谷へと向かった.


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シークレットギグ、その直前までの私

会場の渋谷オンエアーイーストへ行ったところ,何と!待ち合わせしていた人が一番前に並んでいるではないか!その時点で心臓がバクバクしている.間もなく整理番号の配布が始まったが,当然の如く整理番号は1番以外の何物でもなく,何かしていないと,とてもじゃないが突然死しかねないような状態だった. 開場までの時間,他の最前列組と共謀して,海外のコンサートなどでよく見かけるようなメッセージボードに "Welcome back to Japan"などのメッセージやイラストを書き込み,最前列でそれを掲げるべく万全な準備を行った.また,会場周辺をウロウロしていると,楽屋入口ではローディー達がヒマそうに雑談をしている.しばらくするとそのローディーが何やら服の中をあさり出した.まさか,この日本においてマリファナでも吸い出すんじゃないだろうな?と思っていたところ,彼らが皆に下のようなシールやらギターのピックを配り始め出したのだった.感謝感謝.

これがそのシールさ! そうこうしている間にも時間は午後6時20分!開場後,当然の如く最前列,ど真ん中をキープした.かかる BGM は Todd Rundgren や Grand Funk Railroad.以前のビデオでステージ前 BGMに Grand〜の "Are you ready" を使用しているシーンがあったのだが,よほど好きなのかもしれない...そして,ステージが暗転!かかる BGM は,何とチャイコフスキーの 1812年!一瞬,故 Cozy Powell がドラムソロをやるのかと思ったのもつかの間,メンバー達がステージに参上したのだった!


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ライヴが始まった・・・・即座に頭カラッポ・・・

「1812年」が途切れた瞬間,出てきた大爆音は大傑作の2作目 "The Southern Harmony and Musical Companion" からのシングル曲, Remedy! 更に,最新アルバムのオープニング曲 "Go Faster",その次は2作目のオープニング曲 "Sting Me" と黄金ラインアップが続き,もうアタマの中は真っ白になる.とても曲順なんか覚えていられない!

メンバーを一通り見渡してみる.目の前,ツバが飛んできそうな距離にいるボーカル Chris はアクションを決めまくりで,そのカッコ良さは男の自分でも過ちを犯しそうなくらいである.良い意味で,若い頃の Steven Tyler を彷彿させるあまりにもリズミカルな腰使い,そして調子もよほど良いのか,ボーカルもフェイクを決めまくる.一方で弟の Rich は淡々...というか無表情にリズミカルなギターを弾くが,これまたカッコ良い!オープンGにチューニングしたギターでイカしたコードプレイを決めまくる.もう一人のオリジナルメンバー,ドラムの Steve Gorman は何故か黄緑色のYシャツに緑のネクタイと,他のメンバーとのルックスのマッチングを全く考えていないミスマッチの極みではあるが,必要最小限なドラムセットから繰り出されるリズムは安定感の塊である.

新加入のベーシスト,Sven Pipien は他のメンバーが「やっと本当のベースプレイヤーに出会えた」と言うように,ベーシストに要求される重低音の安定感,という点では申し分なく,さらにかなり力強いアタックのためか,重低音と一緒にベキベキと中低音がビンビン鳴り響き,ベーシスト+αの役割を果たしていて,バンドの新たな核となっている.2作目から参加のキーボーディスト, Eddie はジャケ写真では年齢不詳のため,自分は「仙人面」と勝手に呼んでいたが,観客からは「コムロ〜」というヤジが飛んで,そういえば小室哲哉にも似ていることに気がつく.残念ながら PA の関係上,自分の位置から鍵盤の音は殆ど聞こえなく,残念.サポートギタリストの Audley Freed (Cry of Loveという,バンド名の如くジミヘンに多大なる影響を受けたと思われるバンドのギタリスト)はテク的には申し分なく,だからといって身分をわきまえているのか,決して出しゃばることはない.さらに,セクシーな女性コーラス2人組が,この上ないスパイスを音楽的・視覚的に加えている.

2作目の "Hotel Illness",ラスト近くで使われると勝手に思っていた最新アルバムからのシングル曲 "Kickin' My Heart Around" と名曲が続き,至福の時を堪能している間もなく,2作目からのヘヴィーなシャッフル,"Sometimes Salvation" のイントロが場内に鳴り響き,思わず涙が出てしまう.この曲を一聴するだけで一生忘れないような「間」の嵐であるこの曲は,その「間」の中に彼ら以外では誰も出しえないような「美しさ」を感じさせる,前半での大きなハイライトとなっていたことは間違いない.

まだまだ必殺技は続く.やはり2作目からの "My Morning Song" では間奏に Led Zeppelin の "Whole Lotta Love" の間奏および各メンバーのソロが挿入され,ベーシストが The Who の John Entwistle ばりのソロを弾く.その後は1作目,3作目,4作目,新作からバランス良く取り入れた選曲が続き,気がついたら 1作目の大傑作曲,"Jealous Again", そして 2作目の "No Speak, No Slave"へと続き,一旦ステージを去る.

アンコールではスローなナンバー,"She Talks To Angels" に続き,多分誰もが待っていたであろう,1作目のオープニング曲,"Twice As Hard"!もうこのギターのイントロだけで「何もいらない」と思っていたら,それまで無表情にギターを弾いていた Rich が兄 Chris とコーラスを一緒のマイクで歌う.おいおいおい.さらに,最新作オーラスの後世にまで語り継がれるような名曲"Virtue And Vice" で締め,彼らはステージを去っていった...


  1. Remedy
  2. Go Faster
  3. Sting Me
  4. Hotel Illness
  5. Kickin' My Heart Around
  6. Sometimes Salvation
  7. My Morning Song 〜
    Whole Lotta Love 〜
    My Morning Song
  8. Heavy
  1. Blackberry
  2. Thick N' Thin
  3. Wiser Time
  4. By Your Side
  5. Jealous Again
  6. No Speak No Slave

  7. She Talks To Angels
  8. Twice As Hard
  9. Virtue And Vice

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正気に戻ってその興奮を振り返る

以上のように,コンサートとしては最高のものであったが,そもそもこれは招待されたシークレット・コンサートであり,もし仮にこのライブが「新作ビデオ撮影会」や「アコースティック・ライブ」,さらには「クロウズ漫才」であろうが誰も文句は言えない訳である.しかし,フタを開けてみると,通常のライブとほぼ同じ曲数で,ギターなどの機材は一通り持ちこんでいるだけでなく,コーラスシンガーまで同行している.さらに最新アルバムだけを演奏して宣伝すれば良いものを,全アルバムから満遍なく選んだ申し分ない選曲になっていて(実際,全17曲中新作からの曲はわずか5曲),むしろ「何故?」という疑問すら抱いてしまう.

確かにレコードを売る側からしてみると,彼らのようなライブバンドのプロモーションとしては関係者にライブを観てもらうのが効果的であろうし(実際観客席は一般客と業界席が区分されていて,業界関係者多数が観ていた),新作発表に伴う話題作りという点からしても,なかなか良い案だとは思う.しかし,それだけのために彼らがここまで気合の入ったコンサートをするとは到底思えない.

自分としては,2枚目の日本語ライナーに「俺達はミュージック・ジャンキーなんだ」と Chris が自ら述べているように,音楽に取り憑かれた彼らの「抑えられない音楽への衝動」が彼らをここまでさせ,素晴らしい演奏を皆に見せてくれたのでは,としか思えない.もちろんこれは一ファンの思い込みに基づく考えかもしれないし,真実までは知る由もないが,少なくともそのように感じたファンは自分だけではなかったと思う.何はともあれ,それほど素晴らしいライブであり,アリーナ・クラスの彼らを至近距離で見ることの出来た最初,そしておそらく最後のチャンスだった.


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おまけ・・・・しかし重要: For Guitarists Only!

このバンドのサウンドの骨格を作っているのは Chris & Rich の兄弟であるのは言うまでもないと思う.特に,Rich はオープン G チューニングを中心とした独特のコードの響きで,唯一無二のオリジナリティを創り出している.自分が見る限りでは,いわゆる普通のチューニングでの演奏は1曲もなく,オープン G (低音弦より DGDGBD) の他,それを半音下げた オープン F# (C#F#C#F#A#C#) (Kickin' My Heart Around),オープン E (EBEG#BE) (She Talks To Angels),確実ではないが DADGBD (Virtue and Vice) など,あらゆるチューニングを駆使してのギタープレイが光っていた.両ギタリストが使用していた機材は以下の通り.

Rich Robinson:
ギター ・Fender Telecaster (ブロンド,フロントにハムバッカーPU 搭載)
・Gibson Les Paul (ゴールドトップ,フロント: P-90, リア:ハムバッカー)
・Gibson ES-335 (ワインレッド,Bigsby トレモロ搭載)
・おそらくカスタムメイドのレスポールモデル (錆びたような独特のカラリング).
アンプ ・Matchless ヘッド(何故かロゴが "CORKSCREW" とつけ代えられている)
・Hiwattヘッド(これまたロゴが "HARRY JOYCE" とつけ代えられている)
・いずれも Marshall のスピーカー.

Audley Freed:
ギター ・Gibson Les Paul (ゴールドトップ,フロント・リアともに P-90)
・Fender Stratocaster (赤,おそらく最近のモデル)
アンプ ・Bogner ヘッド
・Fender Twin ヘッド(一見オールド風デザインだが?)
・いずれも Marshall のスピーカー.


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Last updated: 1/ 30/ 99