Blues Music Festival 72歳だぞおい!!

Cola-Cola Starplex Amphitheater, Dallas, TX - 9/20/97

featuring B.B.King + Jimmy Vaughan +
Robert Cray Band + etc...

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Blues Music Fest '97 at a glance

またまたフェスティバルがやってきた。その名もブルース・ミュージック・フェスティバル。毎年開催されているようで、今年はB.B.Kingをトリに、若手(でもないかもう)ブルースギタリスト、Robert Cray、そしてご当地テキサス出身で、故Stevie Ray Vaughanの兄、Jimmy Vaughanなどが主なメンツ。会場は一ヶ月半前にLollapalooza 97を観たダラスの野外音楽堂で、開演予定は夕方6時とのことであった。

開演直前に会場に着くと、想像はしていたけれどもその年齢層の高さにまず驚く。Lollapalooza、そしてこの前に観たRage Against The Machineと比べて、確実に平均年齢は20は違うはずである。両方とも自分より年上の人を探すのが大変だったが、今回は年下探す方が難しいぐらいだ。そして例によって白人ばかり。黒人はもとより、黄色いのも見ない。俺なんて隣に座ったおっさんに、「まわりみんなアメリカ人だぜえ」なんて言われちゃったもんなあ。一応「まあ、慣れてますから」って言っておいたけど。

ステージはメインの一つだけかと思っていたのだけれど、ちゃんとセカンドステージらしきものもあって、そこでの演奏はすでに始まっていた。音は渋いテキサス・ブルースかと思いきや、いきなりジミヘンの「Voodoo Chile」である。テキサスだから、ジミヘンというよりはむしろStevie Ray Vaughanのそれと言った方がいいかもしれない。でもさすがに演奏は立派。セカンドステージとはいえ、一応トップクラスのブルースミュージシャンには違いないわけで、軽く見ちゃいけない。それも、音をモニターしているスタッフがいなかったところを見ると、ステージ上のメンバーがすべて音を調節しながらライヴしているわけである。ただもんじゃあないなこの人達。

6時になってメインに移動。椅子席のちょうど真ん中あたりに座る。最初のバンドの演奏はもう始まっていたのだけれど、野外音楽堂内はまだまだ閑散としているような状態。次の黒人のカントリー・ブルース・ミュージシャンのショーの頃にやっと6分がた埋まってきた。おやじ、おばさんは結構のんびりしているようだ。

ところでこの名も知らぬ弾き語りブルース・ミュージシャンだが、まさに戦前の黒人ミュージシャンといった風貌で、ドブロギターのスライドから、ハーモニカまで、雰囲気たっぷりの演奏。足を踏み鳴らしてリズムを取っているのだけれども、その足元にもしっかりマイクがあって、彼の左足でステージを踏み鳴らす音が、まるでメトロノームのように会場にこだましていた。

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Jimmy Vaughan, Robert Cray Band

そしてJimmy Vaughan。お世辞にもおしゃれな風貌とは言い難い彼だが、例のごとく半身になって熱唱。彼のギタースタイルはそんなに好きではないのだけれど、まあうまいことには違いない。しかし彼のバックバンドの中で目を引いたのが、何といっても黒人男性コーラス2人組である。ブルースバンドでこういう取り合わせは見たことがない。ただの普段着でステージ隅に立っている若い彼らは、単純にメンバーの中で浮いてみえて、最初は邪魔に思えて仕方がなかった。だけど歌はうまいし、踊る踊る。こんなブルース初めてみたよ。ブルースといえば楽器のソロ演奏が常だけれど、彼らの場合それは踊り。2分間ぐらい彼らのソロのダンスが続いた。もちろん会場は拍手喝采。ステージ自体が地味だっただけに、あれは良かった。

お次はお目当ての一つ、Robert Cray Band。メンフィス・ホーンズも加わってより厚く、タイトな演奏。前かがみになって歌うRobertのギターは相変わらずペケペケしていて、ほんとどうやってあんな音だしてるのが不思議でならない。ソロもそうだけれども、カッティングも切れ味が良くて、うまいよこの人本当に。うまいだけじゃなくて、しっかりしたオリジナリティーを持っている。誰もまね出来ないなあ。

ここまできてコンサート全体に関して気がついたことは、各演奏者がコテコテの3コードブルースというよりはもむしろ、もっと幅の広いリズム&ブルース的なショーを見せていたということ。ブルースとR&Bの境界線なんて思っているほどあってないようなものなのかもしれない。それから客の方だけれども、ミュージシャンのソロの間は、他の客としゃべっているか、酒飲んでいるか、寝ているかなのに、演奏が終わると割れんばかりの拍手と歓声。まあ、よっぽど楽器に興味のある人でもない限り、長いソロなんて退屈かもしれない。俺でさえあくびしちゃったこともあったし。

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B.B.King

そのRobert Cray Bandのときの退屈なムードは、B.B.Kingの登場とともに一変する。スタンディング・オベーションで彼を迎えるオーディエンス。でも俺なんかはなんか見せてもらわないうちは拍手もする気にはならないのだけれど。

1曲目はツインドラムとホーン隊を加えたバンドメンバーのジャム。そして2曲めにB.Bが入っての「Let the Good Times Roll」。ああギターの音が割れて聞こえない、なんて思っていると、次のナンバーで音質はがらりと変わった。相当高い音圧はそのままに、レコードのようにクリアーな音がスピーカーからはじき出され始めたのである。Rageのライヴもこんなんだったらもっと楽しめたのになあ、なんて考えてしまった。

さらに驚かされたことはB.B.のギターテクニック。正直ビデオや何かでは、彼のソロはまあそこそこかなあ、なんて思ったりして、普通のライヴじゃあもうちょっと手を抜くんだろうなあ、などとうがった見方をしていた。しかし、バリバリに弾きまくる目の前の彼の姿には、ただただよだれを流してひれ伏すしかなかった。ミストーンらしきものもほとんどなし。そして彼のトレードマーク、例の手首をくるくるまわすフィンガー・ビブラートはほんとに美しい。いつものブルースのお手本のようなフレーズの中に、時々ジャジーな味付けがなされていて、彼の表現の豊かさに溜め息をつくばかりだ。

コンサート半ばでメンバーとともに椅子に座ってショーを続けるB.B.King。「もうこの道50年だよ、50年」と語る彼は本当に大きく見えた。笑顔を絶やさず、巧みな話術で客を引き付けて放さない。もう心技体すべてそろった筋金入りのエンターテイナーであり、ブルースミュージシャンである彼は、まさに音楽界のキングと呼ばれるのにふさわしい。曲の流れもまったく弛緩を許さないきっちりとした構成がなされている。この歳でどうやってあの長いショーの一つ一つの構成を覚えるのか、まったく仰天させられることばかりであった。

曲のほうは、「Rock Me Baby」「Sweet Little Angel」「Why I Sing the Blues」「Five Long Years」「Ain't Nobody's Business」など完全にB.B.Kingのベストといった感じ。そして、最後はJimmy Vaughanとともに25年以上前の大ヒット曲「The Thrill Is Gone」でコンサートを締めくくった。私はこの曲聴きにきたようなもんだったから、感動的な曲の入り方に全身鳥肌立ちまくってしまった。

もうこの日のフェスはB.B.King一人に尽きる。Prodigyの完全無欠のショーを見た同じ場所で、また御大の圧倒的なステージを観てしまった。いやー、ダラス・テキサス、たまにはいいこともあるもんだ。一応本場だもんね。しかしこの人もう72歳なんだよ。たかだか25で、疲れた疲れた言ってられないな、俺も。


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Send comments to: Katsuhiro Ishizaki

Last updated: 9/ 21/ 97