Lenny Kravitz / The Black Crowes がっかり

Blockbuster Desert Sky Pavillion, Phoenix, AZ - 4/27/99


アメリカのアリゾナ州からしげやんが速攻レポートしてくれたのは、なんと今全米で話題のレニー・クラヴィッツとブラック・クロウズのジョイント・ツアーの模様です。ありがとうしげやん! でもいいライヴだとなお良かったのにね・・・・。




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The Black Crowes

ふとしたきっかけで4月末にまとまった休暇が取れることになり,アメリカは南西部,アリゾナ州フェニックスという街でコンサートを観ることになった.しかも,The Black Crowes (以下クロウズ),Lenny Kravitz (以下レニクラ)という強力な大物2組のジョイント・コンサートである.Ticketmasterでチケットをオンラインで事前に入手した上で,いざ会場へと向かった.ネット上の情報によると開演は午後6時30分,彼ら以外に前座2組が共演するとのことで,余裕をかまして午後8時30分,会場に到着した.

ひたすらだだっ広い駐車場に車を止め会場に向かった.その遠くから会場の音が少しずつ鮮明となっていったが,「あれ,この曲聴いたことある」...あちゃ,すでにクロウズの演奏が始まっていた!とんでもない大失態である.さらに,自分はてっきりレニクラが前座だと思っていたので,最悪の場合「レニクラは見逃してもクロウズは全部見られるもんね〜」と思っていたのだが...駐車場を猛ダッシュし会場にかけ込んだ.

会場はステージを中心とした扇形で,前には座席があるが後ろは芝生席.ビデオソフト販売会社 Blockbuster 社が関わっているためなのか,以前行ったことがある New Jersey 州 Camden の同社のホールと作りが全く同じであった.

あくまでも推測ではあるが,1〜2万人のキャパはありそうだった.自分の席は座席ではあるものの最後方,しかも左端のためスピーカーがステージへの視界を邪魔してしまっていた.そのため,ステージ左側は全く見えなく,ベースの Sven およびサポート・ギタリストの Audrey は殆ど見ることが出来なかった.まあ,自分は幸運にも昨年1月のシークレット・コンサートを最前列で観ることが出来たため,おそらく,どのような座席であってもこのような不満は出てしまったのだろうが...ボーカルのクリスは,日本公演でも着ていた銀のスパンコールのシャツに赤ジーンズ,というあまりにもトホホな服装ではあったが,声の出は非常に良く,あらゆるところでフェイクを決めまくり,リズミカルな体のクネクネとした動きは男でも思わず見とれてしまうほどカッコ良かった.

前述のような経緯のもと,クロウズのライブ前半は見逃してしまったため前半の曲目は知る由もないが,到着時は2枚目からの佳曲 "Morning Song" のギターバトルの最中であった.続いては新作からの "Heavy",さらに大御所オーティス・レディングのカバー曲(1作目収録),"Hard To Handle" だったが,この出来がまたえらく良かった!1作目をはじめて聴いたときには「原曲よりかっこいい」と思ったが,今回はそのヴァージョンに深みと重みが加わり,とてつもないノリを創り出していた.

しかし...どういう訳か観客の反応は冷ややかであった.確かに "Hard To Handle" のようなアップテンポの曲ではそれなりに反応が見られたが,次の "Wiser Time" のようなマッタリとしたノリが少しでも出るや否や,観客はトイレへかけ込んだりビールを買いに行ったり,と落ち着きがなかった.結局,一番盛り上がったのはクリスが曲の合間に4文字言葉を使用したときで,どこかのアホがステージ上に紙コップを投げ入れたことにクリスが立腹して「こんなものを投げ入れるのは誰だ?どうせそんな奴は p**** だから名乗り出ないだろうけどさ」など,珍しく MC を入れまくっていた時であった.

気がつくと1作目の名曲,"Jealous Again" が演奏され,続いて日本公演ではオープニングで演奏されたため遅刻した時点で聴けないと諦めていた "Remedy" が演奏された.「いい選曲ですな〜」と勝手に思う自分の気持ちを盛り上げるべく,キーボードのエドが曲のアタマから壮絶なピアノの早弾きを入れたり,クリスが女性コーラスと掛け合いを行ったりした.

しかし,曲が終わったところ... 客電は付き,観客はシーンとし,アンコールを求める声も皆無だった.この時点で,遅れ馳せながらクロウズはあくまでも前座だった,ということに気がついた.そのためか,クロウズ終了後はあちらこちらで「もうレニクラ,待ちきれない〜」や「ようやく終わったね〜」などの声が聞こえた.もちろん英語でだが.


(途中から)
  • Morning Song
  • Heavy
  • Hard To Handle
  • Wiser Time
  • Jealous Again
  • Remedy


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    Lenny Kravitz

    クロウズのセットが終わり30分間,ビールを買うために長蛇の列に並んだが,いちいちビールを買い求める客と店員が毎回毎回アメリカン・ジョークの応酬を行ってうため一向に列が進む気配がない.結局ビールを買い終わる前にレニクラ達がステージに上がり始めた.たかがビール一杯で30分も時間をつぶした自分の愚かさに反省しながら急いで席へと戻った.

    この場で改めてレニクラの業績について振り返ってみたい.殆ど自分で全てのパートを演奏し宅録的な雰囲気が強かった1作目・2作目では一部マスコミが「黒いジョン・レノン」と評して取り上げたりデビュー前のショーン・レノンが参加していたりして,ビートルズとの比較が絶えないような状態であった.3作目では "Are You Gonna Go My Way" が日本でも大ヒットして来日公演がアルバム前後に行われたりしたが,一転してロックン・ロールに重点を置いた4作目はセールス的に芳しくなく,以降レニクラはしばし沈黙を守った.そして,5作目「5」を発表した後,レニクラは断髪式に挑み,デビュー当時からのトレードマークであるドレッドヘアーを刈り落とした.音楽的にも大変貌を遂げ,それまでひたすら否定していたソウル,R&B に対して堂々と開き直ったかのような演奏を繰り広げていたため,自分を含むデビュー当時からのファンはただただ戸惑うばかりであった.もっとも,これら楽曲を一つのライブでどのようにまとめるのか,という妙に意地悪い期待感は個人的に抱いてはおり,このようなことがアタマの中をかけめぐる中,ライブへと気分を集中させた.

    ライブのメンバーは,昔からのツアー・メンバー,Cindy Blackwell (ドラム),Craig Ross (ギター)の他,ベース,キーボード,ホーン2名,コーラス2名,という布陣で,特に Cindy は相変わらずのサイボーグ的な動きでとんでもないドコドコ・ドラムをノッケから叩いていた.レニクラの髪の毛はやはり短く,さらに,ヘンなサングラスとピチピチした青色のスーツを身につけた姿は正直なところ非常にかっこ悪かった.まるで Jacksons 当時(というか,整形前)のマイケル・ジャクソンの出来そこないのようだった.さらに,ノッケから最新作の "Live" ,2作目の大ヒット曲 "It Ain't Over 'til It's Over",最新作の "Supersoulfighter" と伝統的な黒人音楽風の曲調が続いたためか,レニクラの MC もやたらと黒人英語風の "Yo" ("You" ではない)が目立っていて,ストラトキャスターの高音が響くカッティングもどことなく軽く聴こえてしまった.

    しかし,これらの曲で観客席は異様とも思えるような盛り上がり方だった.4文字言葉で一番盛り上がるのはクロウズ同様であったが...考えてみると,レニクラは人口約100万人の街で1〜2万人のキャパをこなしているのである.これは相当スゴいことなのではないか? 極めて単純な計算ながら,街に住んでいる人々の 50〜100 人に1人がこのライブ会場にいることになる.そんなに最近のレニクラはアメリカで売れていたのだろうか?

    4作目からの "Tunnel Vision" は皆には馴染みが薄いようだが,ノリは良く,けっこう盛り上がる.しかし,一方で,2作目からの "Fields Of Joy" "Always On The Run" の2連発の盛り上がりはそれほどでもなく,ちょっと肩すかしを食らう.ギターをレス・ポールに持ち替えたことも関係してか,相当太くて力強い音ではあったのだが...さらに,後者では延々とサックスやフルートのソロが続き,相当中だるみする.続く "Rosemary" ではギブソンの生ギター1本で弾き語りを始めるが,個人的にはこの瞬間が最も印象深かった.しかし,やはり観客の反応は今一つだった.ライブそっちのけでひたすらチークダンスしているカップルなんかが雨の後のタケノコの如く出没していたが,このような踊ることを目的でライブに来た人たちにとってはさぞかしつらかったかと推測される.

    続いては,"Let Love Rule".泣く子も黙る1作目の大名曲である.レニクラも昔から愛用しているエピフォン・ギターに持ち替え,感情むき出しのボーカルを聴かせる.さすがにこの曲ではネコも杓子も盛り上がる.この曲が発表されてすでにだいぶ時は経ってしまったが,この曲の単純ながら重みのある "Love" に対するメッセージは全く色褪せることがなく,すべての観客の心に訴えるものがあったに違いない.曲を始める前に述べていた

    "Love is so important...love is so simple, that sometimes it gets so complicated..."

    というセリフもあいまって,自分も色々と複雑な気持ちを抱く中,レニクラが観客席に降りて皆にコーラスを求めた.もっともこれは昔からのお家芸で,ボディーガード10人くらいに囲まれての観客席入りだったため,個人的にはちょっと興ざめしてしまったが.

    この曲が終わった後はアンコールを求める声が鳴り止まなかったが,自分は「この声を4分の1でいからクロウズに分けてやってくれ」と心の中でお願いしていた.無駄な努力ではあったが.その後メンバー達がステージに再集結し,最新アルバムからのヒット曲 "Fly Away" および 3作目の "Are You Gonna Go My Way?" を演奏した.こうなってくると,もう座席も何もあったものではなく,観客は皆ステージ前に集結した.この際,改めてアメリカ人たちの体格の良さおよび身長の高さに圧倒され,前にいるもののステージはなかなか見えなかったのが悲しかったが...


    1. Live
    2. It Ain't Over 'til It's Over
    3. Supersoulfighter
    4. Blues For Sister Someone
    5. Tunnel Vision
    6. Fields Of Joy
    1. Always On The Run
    2. Rosemary
    3. Let Love Rule

    4. Fly Away
    5. Are You Gonna Go My Way


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    Last updated: 4/ 28/ 99