Dinosaur Jr. / Precious 爆音轟音大魔王

Trees, Dallas, TX - 10/25/97


何と顔のでかいヴォーカル....。これがこの日はじめて見るPreciousの最初の印象だ。Dinosaur Jrの前座に今回抜擢されているこのバンド、客のしらけきった雰囲気からしても、やはり無名に近い様子。私も当日ライヴハウスのドアのところでこの前座の名前を目にするまで全く知らなかった。

Vo.G.B.Dr.の4人編成のバンドなのだけれども、何といってもヴォーカルがヘン。はっきりいってデブだ。服のセンスもものすごい。シルバーのラメの入った丈の短いシャツの下に長袖のシャツを着込んで、下はスパッツのようなものを履いている。長髪も見事に暑苦しい。Pink FloydのDave Gilmoreを無理矢理ヴォーカルにしたてあげたような感じ。動きも爬虫類っぽくて、何かに取り付かれているんじゃないかと心配にさえなる。

まあDinosaur Jrの前座なので音は大体想像できると思うが、なんか60年代後半のサイケなギターポップといった感じ。しかし、そのヴォーカルはみたくれは変だけれども声はいい。ギターは1人だけハードロックのような佇まいでテクも確か。ベースは普通のおっさんで、ドラムは...忘れた。

「You suck!(おめえら最低!)」といって早く退場することをうながす客。「Yeah,we suck」といって答えるヴォーカル。10曲近くやっただろうか。「次のバンドはDinosaur Jrだぜえ」とヴォーカルが言ってバンドはそそくさと帰っていった。

30分ぐらいして、そのDinosaur Jr が登場。ステージ上はごついアンプでその約3分の2が埋め尽くされている。機材だけじゃなくて、Vo.& GのJ Mascisの顔もやはりでかい。ベースのMike Johnsonは「Hello, howdy」と丁寧にご挨拶。

しかし、でかいのはアンプとJだけではなかった。なんとスピーカーから出る音のでかいこと! 今このレヴューを書いている時点でも、まだ耳鳴りが止まらないほどの轟音。客も同じように感じたようで、「It's too loud! (音がでかすぎる!)」と叫ぶ者も。それに答えてベースのJohnは、「確かに音はでかいねえ。でもこれがロックン・ロールだ。」と言ってさらに音をでかくする意地の悪さを見せつける。

その爆音の主、J Mascisのギターとヴォーカルの存在感はさらにでかい。この一言に尽きる。レコードなんかとは比べ物にならないほどの気合の入ったプレイで、ステージ上を暴れまくる。私は残念ながら最新アルバムは聴いていないので、半分以上は知らない曲だったが、それでもその熱心な演奏の姿には心打たれた。Johnの言葉通り見事にロックン・ロールしていたJである。

1時間半ほどで、アンコール2曲を含んだライヴは終了。何もかもがでかいことづくめのこの日だったが、個人的に最もでかかったことは、会場に向かう途中でクレジット・カードを無くしてしまったこと。激しい耳鳴りの中で、いまだもってこのやばい事態がいまいち良く把握できていない私であった。


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Last updated: 10/ 26/ 97