Bob Dylan あれは絶対にロボットだ


Hershey Park Arena, Hershey, PA - 8/13/97


なんなんだここは。広大な大平原に突如現るアミューズメントパーク。まさにそんな感じなのがこのHershey Park。近くにペンシルベニア州の州都があるとはいえ、一体こんなとこに誰がくるんだろうか、まったく。その中にある野外コンサートホールにボブ・ディランが来るというのだから驚きである。何でもまもなくブライアン・アダムス、シェリル・クロウなども来るというのだから結構立派なものだ。

このHershey Park Arena、「アリーナ」と聞こえはいいが、馬鹿でっかいステージの前に、一つ10ドル以下で売っているプラスティックの椅子をならべ、その後ろが一段高くなっていて幅10メートルぐらいの芝生席になっているだけである。なにか村の盆踊り大会にでも来てしまったような感じ。本当にあのボブ・ディランが出るのか未だ持って信じられない自分がいる。みんなのんびりアイスなんか食っているもんだからなおさらだ。

前座はまずブルーグラス系のカントリーバンド。テキサスから来た自分としては、この手の音楽を今更こんなところで聴きたくはない。何せこういう超保守的でスーパー時代遅れなバンドは正直耐えられない。早く終わることのみを祈る。

次の前座が女性ヴォーカルを中心にしたバンド。そこそこ人気があるようで前の方に人が集まった。何でもこのヴォーカル、つい最近までストリートミュージシャンをしていたとかで、今の自分の境遇が信じられないとか。ギターの腕は確かで唄もうまし、話術もなかなか。アコギでワウまでかけていた。一時間ぐらいやったと思う。結構長かった。

さてボブである。最初に白状してしまうと、私そんなに詳しくない。次のセットリストも同行した友人の記憶を頼りにしている。

  1. Absolutely Sweet Marie
  2. Ballad Of A Thin Man
  3. Tough Mama
  4. You Ain't Goin' Nowhere
  5. Silvio
  6. To Romona
  7. Tangled Up In Blue
  8. Cocaine
  9. God Knows
  10. Simple Twist of Fate
  11. Highway 61 Revisited
  12. Sooner Or Later
  13. Knockin' On Heaven's Door
  14. Rainy Day Women

割とマニアな曲が多いせいか、客の反応はいまいちだった。ディランの登場時は皆総立ちだったが、次々と席に座ってしまう。しまいには「立ってられちゃ前が見えねえ」とばかりにおやじと若者がけんかしていた。セキュリティが座ってくれって言うもんだからなおさらだ。若者が座ればその前の人が立っているもんだからまた見えない。うーん、結構年齢層の幅広いコンサートってこういった意味でも難しい。

ステージ上のディランはギブソンギターを大音量で弾きまくる。何せソロが長いぞ。でも結構うまい。もう年齢的にも老人の域に入りつつあるというのに、ほんの2、3ヶ月前に死の縁をさまよった病み上りの人間とはとても思えない。でなおかつこの人、このくそ暑いさ中、黒のスーツを着ているのである。ひょっとして手術の時、身体の中身をコンピューターかなんかと交換したのではないだろうか。いやまじで。

途中でアコギは弾いたもののまったくの弾き語りというのはなくて、必ずバンドと一緒。いやあハーモニカが聴きたかったなあ。やっぱり私は本編最後を飾った11が一番のお気に入り。それにしても彼は3回もアンコールに答えてくれた。名曲13はやっぱり一番盛り上がった感じで、Like A Rolling Stoneを演らなかったのが個人的に少し残念。

客は私のようにディランを見るのは初めてという人は少ないようで、まるで同窓会でまた会った古い友人のように彼を迎えていたような気がする。よく飛び交う「ボビー」という掛け声には何かすごく暖かいものを感じた。本当にいい意味で、ステージ上にあの神々しいボブ・ディランの姿はなかった。


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Last updated: 8/ 25/ 97