■ 日本武道館 - 10/31/93
--- FM Station誌93年12月6日号に私の投稿が掲載されています。
アンプラグドが大ヒットして、新たなファンを獲得しての今回の来日公演。全公演、もちろんチケットは完売。そんな中で私はこの日、武道館最前列のチケットを奪取していた。コネなどでとったものではない。れっきとした電話予約でとったものである。一生涯のうちで最初で最後かもしれない武道館最前列。よってこの日のコンサートへの期待は並々ならぬものがあった。
しかしながら今日は実は今回のツアーでクラプトンを見るのは3回目であったのだ。だから最前列とはいえども、ちょっとマンネリ気味。新鮮味にはちと欠けていたけれども、クラプトンのギターの音がステージ上のアンプからじかに聞こえてくるー!!! 何と言ってもこれを聴きに来たのである。
ちなみに初日はどうだったかというと、ほんとライヴが始まるまでまったくどんな内容になるのか見当がつかなかったからさあ大変。何せこの年クラプトンはツアーってものをしてなくて、演奏をしたのが年頭のロンドン、ロイヤル・アルバート・ホールでの定期公演ぐらいなものだったのだ。アンプラグド一辺倒のライヴになるのか、それともヒット曲ばかりの演奏になるのか、それとも前回のツアーのような内容になるのか、まったく予想がつかなかったのである。
そしてふたを開けてみれば、いきなりアコースティックブルースでのスタートだ。だんだんエレクトリックなものへ移行していくのだが、これまでのクラプトンのショーと違うところは、長いギターソロというものが無くて、全ての曲が3、4分ぐらいにコンパクトにまとめられていたことである。それもアンプラグドからは一曲目の「Malted Milk」のみという潔さ。で、クラプトンが曲を次々と紹介していくのだが、普通のファンには馴染みのない曲ばかりで、客の間では段々と惑いの色さえも出てきたことは事実である。
7、8曲ぐらいこのブルースセッションが続いただろうか。するとわりと長めのインターヴァルをとったかと思うと、突然「Cream」という小さい掛け声とともに、白のフェンダーストラトキャスターを持ったクラプトンがアドリブソロを弾き始めたのである。これがゲロうま! もう待ちに待たされただけに全身鳥肌状態。いや鳥肌なんてものじゃなくて、頭の先から足の爪先まで稲妻が駆け抜けたような感じだ。こんな感覚は初めてのことである。
しかしこの時私は信じられない光景を目にしたのだ。前にいた女は横にいた男に向かってこういったのである。「クラプトンってギターもうまいね」...一瞬耳を疑ったよ俺は。
まあそれはともかく曲は彼のCream時代の代表曲「White Room」。照明もこれまでの10倍ぐらいの明るさになる。続いて「Badge」「Wonderful Tonight」と代表曲を立て続けに披露したかと思うと、突然ジミ・ヘンドリックスの「Stone Free」まで飛び出してしまう。思いっきり大音量でギターをフィードバックさせて終わったかと思うと、今度はガット・ギターを持っての演奏である。良くも悪くも起伏の激しいコンサートである。
「Tears in Heaven」をさらっと演奏して「Crossroads」「Tearing Us Apart」「Cocaine」などなど有名曲のオンパレードだ。アンコールはもちろん「Layla」だ。それも有名になったあのアンプラグドバージョンではなくて、オリジナルバージョンでの演奏である。この時はクラプトンがアドリブしながらステージに1人で出てくるのだが、日によって長さが違っていて、特に最前で観ていた最終日は短かった。そして曲中のソロの時にはステージの隅からすみまで動き回って客を煽っていたのだが、やはりこの時はそれもなかった。よってステージ向かって右側にいた私の目の前に来てくれることもなかったのである。
なんか結構やりたい放題やられたなあ、という感じである。それでなおかつ筋金入りのマニアから、アンプラグドでファンになった人まで、全ての人にそれなりに満足を与えるライヴでもあった。と同時にこのコンサートは翌年に出されたブルースアルバムの布石となった内容であったことも間違いない。
- Set List - 10/31/93
- Malted Milk
- Terra-Plane Blues
- How Long
- 32-20
- Kidman Blues
- County Jail
- Forty-Four
- Blues Leave Me Alone
- Tell Me Mama
- White Room
- Badge
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- Wonderful Tonight
- Stone Free
- Circus Left Town
- Tears in Heaven
- Crossroads
- Tearing Us Apart
- Groaning the Blues
- Cocaine
- Ain't Nobody's Business
- Layla
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Send comments to: Katsuhiro Ishizaki Last updated: 12/31/97
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