■ 渋谷クラブクアトロ - 2/2/99
またまたまた、またしても今回、「しげやん」こと、重村さんから提供いただいたファーストボール・ライヴレポートを掲載させていただきます。しげやんさんには前回のブラック・クロウズ・レポートに引き続きお世話になりっぱなしです! この場を借りて再び厚く御礼申し上げます。
第2作目 "All The Pain Money Can Buy"
およびシングル曲"The Way" が大ヒットしているテキサス出身のトリオ,Fastball.メンバーはMiles Zuniga (g, vo) (32歳),Tony Scalzo (b, vo) (34歳),Joey Shyffield (dr) (37歳) という,いずれもぽっと出の若手新人ではなく,いずれも長らくテキサスにて音楽活動を続けてきた人たちとのことである.
"The Way" は,一時期ラジオをかける毎に流れていたほど大ヒットした曲で,おそらく皆さんも一度は耳にしたかと思う.邦題が「哀愁のフリーウェイ」という,あまりにも時代錯誤的なものであるが,それにも一理はあって,そのサウンドはとても現代的とは言えなく,メロディーは昭和20〜30年代の本邦の歌謡曲を彷彿させるような懐古的ものであった.試しに,「青い山脈」の伴奏風にこの曲をアレンジしたとしても何の違和感もないだろう.ギターソロも50年代の Gene Vincent や Elvis Presley のバックの演奏などを思い出させるような演奏で,これだけでもただならぬ個性を感じていた自分としては,相当な期待を胸に抱いてコンサート会場へ向かった.
都合のため開演より15分遅れで会場入りするとすでに演奏は始まっていた.会場内で発見した友人によると3曲目とのこと.キーボード・サイドギターを弾くサポートメンバーがいるが,あくまでも脇役.メンバーは皆派手なアクションもなくひたすら演奏に徹する.ステージの垂れ幕およびギターアンプ(Vox AC-30 および Fender Bassman) を隠す幕,いずれにもテキサスの州旗が使われ,一瞬ダラス辺りのライブハウス(もちろん行ったことはないが...)にいるような錯覚に陥り,ついついバーボンを注文したくなる.
ギターの Miles は,やはり相当なくせ者である.控えめの歪みで Gibson Les Paul Standard, Epiphone Casino, メーカー不明のセミアコなどを弾き,ギターソロでは和音やロカビリー風のフレーズを多用する.Tony (Fender Jazz Bass 使用)とボーカルを交互にとり,それで曲のイメージにバリエーションがつけられる.
"The Way" は5曲目にサラッと演奏され,「この1曲だけじゃないんだよ」というメンバーの意気込みが感じられる.当然皆は盛り上がる.以降,1作目 "Make Your Mama Proud" と2作目から次々と演奏が繰り広げられるが,何故か黄色い歓声が多い.これにはメンバー達も相当ビックリしているようで,「かっこいい〜」という声が飛ぶと,キョトーンとして "What does that mean?" と逆に問い返していた.2作目からのこれまたキャッチーな曲"Sooner Or Later" を演奏してフロアが盛り上がると,もうメンバー達は引っ込んでしまう.おいおい,まだ自分が着いてから30分くらいしか経っていないのに.アンコールに応えて,コーラスが耳に残る佳曲 "Fire Escape"で皆を盛り上げ,1作目から1曲を演奏し,そして...
前日のコンサートを観た人からは,同じくテキサス出身の大ベテラン,ZZ Top のカバーをやった,という情報があったが,この日は The Who の隠れた名曲,"The Seeker" が演奏された! それまでの控えめの歪みがウソのように,この曲ではキッチリと歪ませ,カッティングを決めまくる.(だったら最初からもっと歪ませてもいいのにと思ったのは自分だけなのか...)それに応えて他のメンバーも決めまくり,超エネルギッシュ!個人的にはこの曲での演奏がベストで,周囲の迷惑を顧みず,自分および同行者で Pete Townshend よろしく手をブルンブルン回してそれに応えた程だったが,誰もこの曲を知らないためかフロアでの反応は乏しかった.知らない曲でも盛り上がってもいいとも思うのだが.
現時点ではオリジナルアルバム2枚分しか曲のストックがないようで,いずれの曲も平均点以上はクリアしているものの,いかんせんレパートリーという点では不充分で,それゆえにコンサートの緩急,という意味ではどうしても限界があるようだったし,アンコール含めて1時間,というのもやむを得ない,と感じた.しかし,"The Way" は言うまでもなく,"Sooner Or Later" "Fire Escape" "Better Than It Was" など,あまりにもキャッチーで印象的な名曲があることは事実.そのような「一度聴いたら忘れられない」ような名曲が今後ますます増えて欲しい,という期待および将来性を感じさせる彼らであった.
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or Katsuhiro Ishizaki Last updated: 2/ 3/99
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