■ The Bronco Bowl, Dallas, TX - 9/24/97
会場に向かう途中の車の中で聞いていたダラスのFMラジオ番組に、突然Dave Grohlがゲストで出てきた。半月程前にPat SmearがFoo Fightersを脱退したこともあって、もちろん話題はその穴を埋めることになった新ギタリスト、Franz Stahlのことが中心である。「16、7の頃に知り合って、もう兄弟同然の中なんだ。彼がFoo Fightersのギタリストになってたかもしれないね、本当は最初から」。そしてドラマーのTaylor Hawkinsの話にも及ぶ。「彼は実はダラス出身なんだ。奴の故郷に帰ってきたんだよ」。
会場入りしたのが9時過ぎ。てっきり前座でもまだやっているのかと思いきや、ステージにいるのはもうFoo Fightersである。早すぎる登場に一瞬面食らってしまう。しかしまだ始まったばかりのようだ。一応まずこの日のセットリストを記しておく。
- This Is A Call
- Wattershed
- Hey, Johnny Park!
- Monkey Wrench
- Alone+Easy Target
- Doll
- See You
- My Poor Brain
- For All The Cows
- The Colour And The Shape
- Weenie Beenie
- Up In Arms
- Everlong
- New Way Home
- My Hero
- I'll Stick Around
何せ一曲目の「This Is A Call」はアンコールに演ると聞いていたので、本気でもう終わりかと思ってしまった。 しかしセットリストを見ての通り、ギタリストが交代しても今まで通り基本路線は変わっていない。
ところで、このDallas郊外にあるBronco Bowlは、ライヴハウスをやや大きくしたような会場で、ステージ前が半円形のスタンディング席、そしてその周りを取り囲むようにして椅子席が用意されている。おそらく千人ぐらいは収容可能であろうが、しかし客の入りはひいき目に見てもようやく7割といったところ。特に椅子席の空席が目立つ。Daveも「初めて見た時、ちょっと俺らには大きすぎるんじゃないかと思ったよ(笑)」とMCで言っていた。
そのDaveだが、白のギブソンSGギター、時にはエクスプローラーを抱えて飛ぶ飛ぶ、叫ぶ叫ぶ。見た目普段着といった感じだが、青いシャツを脱いだ時に見えたあの汗で胸に張り付いたTシャツ。しょっぱなから飛ばしまくっていたから無理もない。その上、ラジオで「ドラムやるよ」と言っていた通り、2度に渡って太鼓を叩いてくれた。もうこの人に関しては何も言うことはない。
そして注目の新ギタリスト、Franz Stahlである。この人、その辺に転がっていそうな普通の短髪兄貴である。Patのエキセントリックな感じと違って、極々シンプルな佇まい。たぶん道ですれ違っても気がつかないんじゃないだろうか。でもギターの方は新入りとは思えないほどしっかりしている。メインギター、レスポール・ゴールドトップのチューニングも頻繁にやっていて、音へのこだわりも見て取れた。でもコーラスの方はもう少しかな。ほとんど聞こえなかったし。
MCでDaveがFranzを紹介する。「Screamってバンドで一緒にやっていた人で、Scream時代には、その次のバンド、Nirvanaの時よりも非常にいい経験をさせてもらった」。この彼が「Nirvana」と言った瞬間、会場内にものすごい拍手と歓声が起こった。しかしPatがいた時もそうだったが、Daveの謙遜ぶりには頭が下がる。この人絶対にいい人だよ、本当に。でもなんでメンバーが次々に辞めていくんだろう。
ところで、ステージを見つめる客の方だけれども、思ったほど盛り上がっている感じでもない。遅れてやってきたけれども、ノリの悪さに乗じてジリジリとステージ前へと歩み寄る私。ノイジーな割りには音はものすごくいいし、なにせあのフーファイだし、とにかくじっとしていられなかったのである。モッシュは起こるが、あんなもの東京の通勤ラッシュ時の満員電車に比べればどうってことはない。押されたら押し返すまでである。小中学生に負けるわけにはいかない。しかしとなりですさまじい殴り合いの喧嘩が始まった時はちょっとヤバかった。ボコボコにやってたし、とばっちりは御免だ。なにせ眼鏡だけは壊されたくないもんで。これがないと明日からの学習に差し支える。
でもモッシュってなんかだんだん飽きてきた。たぶん5年後にはあんなもの誰もやってないと思う。その時Foo Fightersってまだ生き残っているだろうか。いや生き残っていて欲しい。しかし今の彼らって曲の構成と人気度を取ってみても、たぶん最高の時にあるんじゃないかと思うことがある。Nirvanaの強い追い風はまだ彼らを前へ前へと進めてくれているし、Nirvanaの遺産で今のアメリカのロック音楽界はどうにか食べていけている。とにもかくにもFoo Fightersは次のアルバムにかかっているし、ギタリストの交代がいい意味での刺激になってくれることを祈っている。モッシュが飽きられてしまったその時、彼らはステージ上で何を見せてくれるのか。 Dave自らが作ったNirvanaという時代に戦いを挑むFoo Fighterたちにとっての新しい局面が、間もなくやって来る。
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Send comments to: Katsuhiro Ishizaki Last updated: 9/ 25/ 97
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