Fuji Rock Festival '99 | GIG REPORT |
しげやん的フジロックパフォーマンス: その1 |
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コンサートレポート、そしてディスクレビューではもう超おなじみしげやんも、フジロック'99に3日間参加されまして、これがそのレポート第1弾です。
1月にシークレット・コンサートで来日しているとはいえ,それを除くと1992年以来の日本での正式なライブである.個人的には4月にアメリカでのライブも見ているがこれはあくまでも前座としての出演だったゆえに消化不良だったゆえに,いや〜,どんなにこの日が待ち遠しかったことか! キレイに晴れ上がった苗場の山のなか,トンボがビュンビュン飛来してたりちょうど日が暮れようとしていて雰囲気的にも申し分ない.そのような状況のもと,彼らを見るためになるべく近づこうと前の列を陣取ろうと試みるが,すでにそこは人の山で,結局は前から5列目くらいのポジションを確保.はやる気持ちを抑えながらスタンバイ状態へと入った.すると!壮大なBGMをバックに5人のメンバーおよび2人の女性バック・コーラスが登場したが... おいおいおい,ドラムの Steve がいきなりヘンなマスクをかぶってるよ!最近のビデオやステージでは他メンバーのラフな服装とは対照的にネクタイを外さなかったキメキメの彼だが,かぶりもので皆を脱力させるとは... 1曲目は Rich Robinson のギターがいきなり炸裂する "No Speak, No Slave".普段は無愛想なまでにポーカーフェイスの Rich がやたらとポーズを取りまくることからも彼らの気合の入り具合が伝わってくる.Rich が何のギターを使用していたかは覚えていないが,3カポのギターから始まるイントロは,ただただカッコイイとしか言いようがなかった.来日直前にお腹の緊急手術を受け来日が危ぶまれたキーボードの Eddie も元気な様相で,相変わらず小室哲哉っぽい風貌ながらスゴイ鍵盤叩きを行っていた.そして,ボーカルの Chris! いつもながらカッコイイ動きを決めながらフェイクしまくったハイトーン・ボーカルを響かせていた.最新作からの加入とは思えないほどすっかりバンドに溶けこんだベースの Sven の重低音はいい具合に鳴り響き,どうやらサポート・メンバーから正式にバンド・メンバーへと昇格したらしいギターの Audley のルックスはトホホだが...まいっか. しかし,このような最高のプレイを見せられた聴衆もものすごいことになる.人の波が左右前後へと流れ,将棋倒しになりそうな危険性が何度も繰り返し訪れる.自分の同伴者が倒れそうになるのを見かねて,全く見ず知らずの方が我々を後方に誘導してくれる.いや〜,あの方にはただただ感謝である.(この場を借りてお礼を申し上げます.本当にありがとうございました)コンサート後になって同伴者曰く,「私はヒドイことになっていたのに,あのとき手を上げて盛り上がっていて私のこと助けてくれなかったでしょ」とイヤミを言われたが,断じてそんなことはない.手を上げた状態で身動きがとれなくトホホしていたのだった. 何はともあれ,曲は続く.最新作からの "Go Faster" では女性コーラスが聞こえないほど観客のコーラスの大合唱が起こる.続いては2作目の必殺オープニング曲 "Sting Me".Rich はシークレット・コンサートでは ギブソン ES-335 を用いていたが,本日はギブソン・レス・ポール.しかし,あの独特のギター・イントロのニュアンスは同じように伝わってきて,「結局ウマイ人は何を弾いても決まる」ということを再確認した.その後もまるで「クロウズ・ベスト」とも言うべき選曲で,観る方はただただ声を嗄らすばかりだった.これまでのツアーでの選曲同様,3,4枚目からの曲は "Wiser Time" 以外なかったが,実はこの曲の出来が涙モノ.ちょうど暮れゆく夕陽と,どことなく悲しげなこの曲とのマッチングは絶妙だった. そして,来ました!「この前共演した Robert Plant と Jimmy Page の曲です」とのMCが入った後始まったのは,"In My Time Of Dying". そう,言うまでもなく,Led Zeppelin のクソ長い大曲である.Rich は原曲と同様,オープンA にチューニングされたギターにてスライド・ギターを弾き始める.しかし,構成がひどく複雑なこの曲を見失わないためか,メンバー一同はずっと顔を見合わせているが,たびたび構成をトチる.まあ仕方がないか. 自分が見ていた場所では,この曲で観客の歓声が一瞬引いたような気がしないでもないが,実際はどうだったのだろうか.実際問題として,この曲を知らない人にとってはちょっとマッタリしてしまう瞬間だったかもしれない.しかし,個人的には大満足だった.何せギターがかっこいい.そして,それにからみつく Chris のボーカルが色っぽい.時々トチってはいたものの,途中に入るブレイクは恐ろしいほど決まっていて鳥肌ものだった. 続いては,同じくカバー曲である "Hard To Handle"... Otis Redding のカバーで,デビュー・アルバムにも収録されていた曲である.曲のキャッチーさも手伝い,前曲とは比較にならないほどの歓声が上がる.そして,その次は,誰もが待っていたであろう2作目の大ヒット曲 "Remedy"! 原曲と比べて相当テンポアップしていたが,ただただカッコ良く,Eddie は鍵盤で大炸裂するは,Audrey はブチ切れたギター・ソロを奏でるは,Chris はバック・コーラスの姉ちゃんと絡み合うは.... もうさすがにこれで終了だろう,と思いきや,Fのキーでファンキーなギターのカッティングが始まった.メンバー紹介も兼ねたその曲はてっきり即興で作られた曲と思っていたのだが,後日になってそれは The Isley Brothers のカバー曲と判明した.(アイズレー兄弟,失礼しました〜)メンバー紹介後は満足感・充実感の余韻が残ったままコンサートは終了した. いや〜,大満足.しかし疲れた.自分の周りの人々は激しすぎた.これから Rage Against The Machine が控えているのに!
事前に行われたブラック・クロウズですっかり疲弊した体をいたわるべく,当初はやや遠まきに,芝生に腰掛けながら彼らを見る心構えだった.しかし,どことなく割り切れない気持ちを内に秘め落ち着かない自分に見かねて,同伴者が一言ニコッとしながらささやいた. 「前へ行きたいんでしょ?行ってくれば?」 これで全てがふっきれた!ヘロヘロの体を引きずりながらもステージ前を目指した.一見政治活動家のように思われているものの実は単なるギターおたく(想像) Tom Morello の技を堪能するべく,ステージに向かって右側から攻めていったのは言うまでもない. そして,とうとうその瞬間がやってきた!メンバー4人が登場し,ボーカルの Zack が幕開けのお決まりの言葉を叫んだ. 「Good evening, we're Rage Against The Machine from Los Angeles, California!」 このセリフのテンションの高さといったら,これまでのライブ映像,海賊盤のいずれでも聴いたことのないほどのもの! その一言だけでもう腰が抜けそうになる.そのセリフに引き続いて始まったのは "Bulls On Parade".ヤバ過ぎである.ただただピョンピョン飛び跳ねるしかない.ベース,ドラムの二人は全く乱れることなく,強力なグルーブを出してくる.また,ベースの音には時々ディストーションが加わり,ギターなのかベースなのかよく分からないようなスゴイ音を響かせる.ギターおたくTom は左手でギター弦を擦り,右手でピックアップ・セレクターをパチパチといじり,スクラッチ・プレイを披露する.そして,Zack がどんな海賊盤でも聴かれたことのないような叫びを加え観客一同を煽る.おーーーー〜〜〜〜! 息つくヒマもなく,"Know Your Enemy" .おーー,これまたギターがスゴい.自分なんかが一生かけても出来ないような神業芸をひょうひょうと「これでもか,これでもか」と繰り広げる.ギターおたくここに極まり.ギターとベースの立場が逆転しているような "Vietnow" の次は Tom が派手にペインティングされた Ibanez のギターに持ち替える.そして,この上なく奇妙な音を繰り広げながら新曲が始まった.おそらく半音下げのチューニングに加えて,6弦がさらに下げられており,その奇妙さに磨きが加わっていた. 次は "Bullet In The Head" !!! 「少しはマトモにギター弾けよ!」とつっこみたくなる位にあらゆる技を駆使しているこの曲では,ギターのピッチを足元のエフェクターで2オクターブ上げた上でトレモロ・アームをいじくったり,アンプの前に座り込んでフィードバック音を鳴らしそれをリズミカルにスイッチで切り替えたり,もうやりたい放題.海賊盤などでは早弾きプレイをしているギターソロ後半では何するのかと思いきや,4小節間,ただただ2弦15フレットをチョーキングしまくる. その後は Woodstock '99 でもやっていたキーがDの新曲である.正直なところ,今一つ記憶に乏しい.新曲終了後,Tom はギブソンのダブルネック・ギターを抱え,それだけで "Tne Ghost Of Tom Joad" が演奏されることがバレバレである.まあ,この曲は悪くはないが,未だに何故ダブルネックを使わなければいけないのか,その理由がサッパリ分からない.単にギターおたくの自己満足のためなのだろうか... 何はともあれ,Tom がギターおたく心を満足させた後はギターとベースが向き合う!熱狂的なファンならば,それだけで "Bombtrack" の始まり,と推察出来るだろう.そして,とうとう来ました,"People Of The Sun"! Tom が六角レンチを持ち,「苗場でギコギコギコ」が現実のものとなる.いや〜,この2連発はやはり強烈である. その後はドロップDチューニングとしたテレキャスターへと持ち替え,映画"Godzilla" のサントラに収録されていた曲,"No Shelter" へと突入する.正直なところ,この曲についてはあまり良い印象はなかった.しかし,実際は意外とライブ映えした.一拍ごとにあらゆるカッコ良さが出現し,これまで抱いていた悪印象を悔い改めた.しかし,この曲のギター・ソロもこれまた人をバカにしている.ワミー・ペダル(ギター音にハーモニーをつけたり音程を変える機能を持つエフェクター)をかけながらワウ・ペダルをジワ〜〜と踏み込んでいくのだが,どう聞いても人をバカにしているようにしか聴こえない.なんてったって,皆がモッシュやらボディー・サーフで大変なことになっている矢先のギター・ソロが「ジュワ〜〜〜,ジュ,ジュワ〜〜〜」だから. フジ・ロック・フェスティヴァルのスポンサーである Virgin グループ,そして Levi's に対する皮肉的な即興ラップを Tom の変態ギターのバックのもと繰り広げたのはいかにも彼ららしいが,このような彼らを見ると「自己矛盾」という言葉がアタマの中をよぎるのは自分だけだろうか.何はともあれ,来ました来ました "Freedom"! そして,その興奮も止まないうちに,"Killing In The Name Of" が続いた.しかし,この頃になると Zack はバテていた印象を受けた.日本の蒸し暑さを考えることなく最初から飛ばしていたゆえになのだろうか.そういえば Tom のシャツも異様に汗ビッショリだった.何はともあれ,Zack はややペースダウンしていたが,それを補うべく観客一同が叫んでいたのは言うまでもない. このように,「苗場でギコギコギコ」計画は無事終了した.ライブでギコギコやるのもいいが,1年以上も延期となっているニューアルバムをはやく出してほしいものである.
正直なところ,自分はそんなに熱心な Kinks のファンではない.有名どころの曲数曲を知っている程度で,今回のライヴの事前には "Lola" が歌えれば満足,くらいの認識しか思っていなかった.昨日と比べて観客数は遥かに多いものの最前列を陣取ることは容易だった. 暑い暑い炎天下のなか,Ray オヤジはサイド・ギタリストを引きつれて登場.どうやら,たった2人のみでグリーン・ステージの数万人(推定)を相手にするつもりだ.生ギターのコード・カッティングが始まったが... いきなり "Lola"! そして,それが感動的なほどにカッコ良い. その後,熱心に聴きこんだわけではないものの一度はどこかで聴いたことのある曲のオンパレード.その美しさ,静かななかにも感じられる力強さにはとてつもない威力が感じられる.視界が妙に悪くなり,それが炎天下により流れてきた汗なのかと思いきや,涙が流れてきたためだった. "You Really Got Me" が Van Halen のオリジナル・ナンバーだと信じていた者は決して少なくないだろうが,そのような者に対しても本家本元の説得力にてオヤジは迫る.「自分が最も好きな歌」という MC の後紹介された "All Day And All Of The Night",そして "Waterloo Sunset" という大感激の選曲では果たしてどれだけの人が涙を流したのだろうか.少なくとも自分はかいた汗と同じ位の涙が流れた.そういう意味の充実度では2日目のベスト・ライヴだったかもしれない.
2作目 "Significant Other" を出し絶好調の Limp Bizkit(以下リンプ),そんな彼らの勢いのスゴさに異論をはさむものはいないだろう.フジロックの2日目の何が楽しみだったかって,リンプ以外には考えられない.東京スカパラダイスオーケストラは最高にカッコ良かったし,Ray Davies には文字通り涙が出たし,リンプの後のジョンスペには期待が高まっていたが,何てったってリンプの破竹の勢いは別格だ.ちょうど1週間前に行われた暴動やらオッパイやら色々とあった Woodstock '99 におけるリンプのビデオを事前にチェックしてきただけに,その期待は高まる一方だった. しかし.疲労ゆえにリンプ前は苗プリでまったりとしていたのだが,それが災いし"Significant Other" のオープニングを飾っていた怪しげな "Intro" のシンセ音が始まったのは入場ゲート周辺を歩いていたときだった.膝が笑うのを必死にこらえながらステージを目指し,"Just Like This" の途中でやや遠めながら充分にハジけることが出来るスペースを確保した. 次の曲は "Tell Me What You Got".この曲,アルバムを聴いたときから感じてはいたが,アメリカの地名の連呼が延々と続くラップ,よくも忘れないものだとただただ感心.あ,そういう問題じゃないか.しかし,ボーカリスト Fred のラップは本当にカッコイイ.あと,イントロのドラムが最高にイカしてる!途中の 「everybody, get the fuck up!!」 では声を一緒に張り上げさせてもらう.続いては1枚目からの名曲 "Counterfeit".起承転結のついたドラマチックな曲だけに,この曲でダイブする,と決めている人はいるかと思っていたが,案の定,曲がクライマックスに達するとご昇天している人が空中にやたらと見受けられる. ライヴ開始直後は Fred ばかりに目がいっていたが,しばらくして,ギターの Wes が Woodstock '99 同様おどろおどろしいメイクを施し黒塗りコンタクトを両眼に入れてることに気づく.その顔が大画面スクリーンにアップとなるとムチャクチャ怖い.しかし,ムチャクチャうまい! Ibanez の7弦ギターを抱えているが,やたらとオリジナリティーにあふれていて,何をどう弾いているのか見当すらつかないような不思議な音が出現する.また,ベーシスト Sam は5弦ベースを駆使し,ドラムの John はピッコロ・スネアであの独特なカンカンしたスネア・ドラム音を叩き出し,重々しいギター&ベースと好対照を成す.DJ Lethal は...シンセっぽい音,ギターっぽい音も出したりして音の厚みを出しているようだ. 怒涛の攻撃はまだまだ続く."Break Stuff" などの重々しい曲の後は Korn の "Blind" や Rage Against The Machine の "Bombtrack" さわりだけを演奏して観客をジラすが,これはおそらく彼ら一流のジラシ芸なのだろう.ご丁寧にも Fred が "Ya know, it's just another bombtrack〜〜" とラップしていたのには大爆笑.そして,"Bombtrack" (原曲はEのキー)をC#のキーで演奏されていることに気づき,その時点でようやく彼らがチューニングを3半音下げているのを発見する.さっきからやたらと C# とか F# の曲ばっか目立っていたのはそのためだったのか... これが独特のサウンドの謎の一つだったのか.... なーんて,余計なことを考えていると,Wes がボーカルマイクに向かい,どこかで聴いたことのあるギター・リフを始めた.おいおいおい,メタリカの "Master Of Puppets" ではないか! そういえば,どこかのレビューで "Master Of Puppets" を引き合いにしたこともあったような... そして,その後いよいよ Fred が観客席へと乱入した!文句ナシのハイライトだろう.まあ,Woodstock '99 ではあの暴徒ともいえるような集団の中に入っていった Fred のことだから「この位ならチョロイぜ」とでも思っていたのかもしれないが.当然の如くモッシュ・ピットは大暴れ,あちらこちらで足があさっての方向を向いている.あれを間近に見ることが出来た人はさぞかし幸せかと思う. しばらくして印象的な "Re-arranged" のベース・ラインが始まるが,ダイヴご一行様にとっては一休みといったところだろう.しかし,自分としてはこの曲が非常に感動的なものだった.感情を少しずつしぼり出しながら,どことなく切なさを感じさせるこの曲が苗場の夕暮れという雰囲気と最高にマッチし,また同時に彼らの底の深さを思い知らされた. そんな感慨にふけっていると,始まったのは "Nookie"! DJ がイントロでジラしている間に Wes が一見ベース・ギターにも見える4弦ギターへ持ち替える.曲が始まるともう自分も周りも大騒ぎ.その後 Fred が "all the ladies..... say yeah...." と女性陣を煽った直後,"Faith" のギター・カッティングが! 数万人が "Get the fuck off!!" で一体となったように感じられた. きっと彼らは,ライブの楽しさや起承転結の重要性を数え切れないほどのライブの場数をこなした末に完璧に掴んでいるのだろう.その底力,実力,とにかくおそるべしである.
我らがジョンスペのフジロックへの登場は2日目,小さめのホワイト・ステージのトリ.一方の大きめのグリーン・ステージではケミカル・ブラザーズ→ブラーという流れで,ジョンスペにとっては厳しい逆風だった.そのためか,ジョンスペが始まる前(始まった後も)人の波はホワイト→グリーンへと留まるところなく流れていった.正直なところ,自分もフジロック直前までどちらを見るか迷っていた.しかし,同行者の一言が全てを決めた. 「ジョンスペこそライヴで体験しなきゃ...」 そうだ.何故それに気がつかなかったのだろう.それをきっかけに,自分たちは何も迷うことはなくジョンスペの一部終始を見ることを決意した. フジロックの直前に全機材の盗難に遭う,というあまりにも悲惨な経験を経たため機材は以前のものとは明らかに違う.ステージに鎮座しているアンプは... ジュダはフェンダー・ツイン・リヴァーヴと Vox,ジョンに至っては何とブギー.そのブギーの上にはちゃんとテルミンが置かれているが,これもきっと臨時調達したものなのだろう.ライヴ開始前のサウンドチェックでジュダの機材の音出しが行われるが,その音が異様にショボイ.音の伸びも冴えもひどく悪く,高音のシャープさが全く感じられない.これはあくまでもサウンドチェックのみの問題だろう,と自分に言い聞かせるようにはしていたが,ライヴ開始後その不安は現実のものとなってしまう. オープニングは "Bellbottoms".ラッセルのドラムはいつもながらドタバタと「おいらはドラマー」状態で壮絶なリズムを刻み,ジョンはギターを弾くヒマもなく吠えるあおる.しかし,アメリカ国旗をモチーフにしたシャツを身につけたジュダは... 音がショボ過ぎる.持つテレキャスターは以前所有していたそれと形が同じであっても音は明らかに違い,先ほどサウンドチェックで感じていた悪印象がそのまま持続している.また,全体的に音量が控えめで,音圧が充分とは言えない.次は "2 Kindsa Love",しかしジュダのショボイ音が気になり,どうも乗りきれない.そのためなのか,ジョンは妙に落ち着きなきなく,半ばヤケのようにハジケまくる. しかし,そんな細かいことを考えていたのはほんの一瞬である.だいたいラッセルのドラム・ビートの前では全てがどうでも良くなってしまう.上下左右に体が動き,同行者が腰の異変を訴え始める.いや〜,腰に悪いったらありゃしない.そんな腰をいたわりながらちょっと休み,そして空を見上げると...美しい星空...ちょうどステージの真上に北斗七星が見えた. その後,彼らは曲間の「間」を殆ど入れることもなく,文字通り "Attack" がひたすら続く. "Magical Colors" "Gonna Make It Alright" "Blues X Man" などで皆をブチ切れさせ,ジョンスペがテルミンと戯れた後彼らは一旦ステージを後にした.しかし,これで終わるはずがない,終わらせない. 怒涛のアンコール攻撃.これがスゴい.止まらない.メドレーで「これでもか,これでもか」と嵐のように曲のオンパレード,確か6曲目くらいにお待ちかねの "Wail" が演奏された後も延々と続く.「Acme」の曲が多かったように覚えているが,一体何曲演奏されたのかサッパリ分からない.次第にジョンスペのブチギレの度合いはエスカレートする.「ロッケンロー〜!!」と叫び,シャツを脱ぎ,半ケツを惜しげもなくさらし,テルミンにHな指使いをもっていたぶり,それでは飽き足らずテルミンを片手でわしづかみにして仁王立ち.最後はラッセルのみステージに残り,何かに憑りつかれたかのように超絶リズムをドコドコバタバタ・ズンズンブンブン鳴らしフィナーレを迎えた. ライヴ終了後まるでゾンビのように呆然と立ち尽くすなか自分も同行者も悲しいほどに腰が痛かった. 「ジョンスペのライヴは腰に悪い」 ということを身を持って実感した.ライヴ終了後歩きがぎこちなかったのはきっと自分達だけではなかったはずだ.
今年のフジ・ロック・フェスティヴァルにZZ トップ(以下ZZ)が出演することが決定したとき,誰もが目もしくは耳を疑ったはずだ.そして,その直後苗場へ行くことを決意したのは自分だけではあるまい.少なくとも,最終日の大トリを努めた ZZ を見るために最終日の夜まで残った人々はそういう人たちが相当いたはずだ.最終日ゆえに体には相当なガタが来ていたが,気合をふりしぼりステージ前のブロックに突入した.すると ZZ 仕様のヒゲを装着している人,「ジージートップ」とカタカナでオリジナルTシャツを作っている者,それだけで相当笑える.一緒に写真を撮らせてもらえれば良かった,と今となっては後悔しているが. ステージは極めてシンプルなセット.ドラマー Frank Beard 用のやや派手目なドラムセットは中央,そしてその両脇には,向かって左に Dusty Hill (ベース),右に Billy Gibbons (ギター)のアンプの山.以上.シンプルすぎるゆえに,「本当に演奏するのか?」「口パクじゃねーの?」など,あらゆる心配が頭の中を駆け巡る.しかし,メンバー達が登場するや否や,当然ながらそんな心配は必要なくなった.彼らが音をひねり出すだけで,全てが決まったから... BillyとDusty はサングラス,ヒゲのみならず,ギター(テレキャスター・タイプ)・ベース(プレシジョン・ベース・タイプ)も銀ラメのペア・ルック.Frank にサングラス,ヒゲはなく,80年代に MTV で飽きるほど流れていたビデオ・クリップの風貌からは相当な年齢的変化が感じられたが,まあこれは当たり前だろう. オープニングは!何と1975年発表の「Fandango!」のオープニングを飾るブギ,"Thunderbird" だ!アルバムと比べるとテンポはゆっくり目であるが,だからと言ってタルい訳ではなく,猛烈な重みが感じられる.70年代ZZを知る者にとっては涙モノの選曲,そうでないものにとっては超絶ブギ大会の始まりを告げる必殺ナンバーである.しかし,わずか3人しかいないのにこのウネリ,重みは何なのか!? 休むヒマもなく, ギターのイントロが最高な "Waitin' For The Bus" .ベストアルバムの編集方法と同様,メドレー形式でスロー・ブルーズ "Jesus Just Left Chicago" へと突入する.もうカッコ良すぎである.個人的には Phish がこの曲をライブ・アルバム「Slip Stitch And Pass」でカバーしていたことなどこの曲に対する猛烈な思い入れがあっただけに,この選曲には大感激.その興奮が収まらないのに,続いてはやはり古めのナンバー, "I'm Bad, I'm Nationwide".途中の「チャー・ラー・ラー・チャー・ラー・ラー」のブレイクで鬼のようにタメまくるため,そのビートは地上を這うかのごとく引きずられる.まるでアメリカの田舎のハイウェイを一台の巨大トラックが進むかのように... さて,ここまではひたすら70年代,「古き良き時代」のZZの名曲集.しかし,80年代のMTV時代大ヒットを飛ばしていた頃のZZが一番聴きたい,という人は自分も含めて大多数だったろう.しかし,そんな我々の気持ちもヒゲオヤジ達にはバレバレだったに違いない.オヤジ達はあえて知らんぷりをし,最近の曲 "Pincushion" を演奏したり渋いブルーズを用いてただただジラす.もうじれったい! そして,ようやく来ました!大傑作アルバム「Eliminator」から "Got Me Under Pressure" である.原曲で使用されていた安っぽいシンセの音はなく,ただただ重いギターが苗場を支配する.その後"Just Got Paid" ではオープンEにチューニングされたギブソン・レスポールを持ち出したりするがあくまでもメインはテレキャスター.正直なところ曲順はあやふやであるが,後述のセットリストのような70年代〜90年代の幅広い選曲が繰り広げられ,そして... "Sharp Dressed Man","Gimme All Your Lovin'","Legs"と「Eliminator」からの大名曲3連発が始まった.オヤジ達にさんざんジラされた者達としては,ただただ楽しむしかない."Legs" ではごく僅かにシンセ音が使われていたが,あくまでも主体は3人が出す音である.プロモーション・ビデオでもお馴染みのペア・ルックのギター&ベースをポーズを加えながら繰り広げ,彼ら達は一旦ステージを後にした. 当然の如くアンコール.ドラムのビートより始まる "Tube Snake Boogie" では再びフロントの2人がおどけポーズをとりまくり,その都度大歓声.そして,メドレー形式で続いた ZZ 不朽の名曲,"La Grange" と "Hush" のブギ2連発ではもう何も言うことはない.最後にバスドラムが鬼のように連打され,オヤジ達の熱い一夜の,そしてフジ・ロック’99の終焉を痛いほど感じながらもただただ弾けた.ライヴ終了後,感動のあまり抱き合う人たちがどれだけいたのだろう...
Last updated: 8/
18/ 99 |