Fuji Rock Festival '99

GIG REPORT

しげやん的フジロックパフォーマンス その2


コンサートレポート、そしてディスクレビューではもう超おなじみしげやんも、フジロック'99に3日間参加されまして、これはそのライヴレポート第2幕です。


見なきゃダメ フェミ・クティ 


Femi Kuti に対する予備知識は全くなかったのに何故かこの人のライヴにはスゴい期待があった.それは何なのか,自分でもさっぱり分からなかった.日本からあまりにも遠すぎるナイジェリアからはるばる彼らを招いたスマッシュの並ならぬ熱意を事前に感じていたのか,それとも何らかの予感が働いたのか.気がついたらグリーン・ステージの最前列で彼らの登場を待っていた.

オープニングではパーカッションの人たちが壮絶な16ビートを繰り広げだし幕を開けた...その昔聴いた Earth, Wind and Fire のライヴ盤のオープニングをどことなく連想する.続いてギター,ベース,キーボードなどのメンバー,そしてニコニコと踊り始める陽気なペアルックの面々がずらずら登場.しかし!そんな彼らの顔が真顔になり,ホーンを持ちフレーズを吹いた瞬間....スゴイことになった.こんな彼らの前では,日頃「ノリ」とか「グルーヴ」とかを議論することが恥ずかしくなる.ただただウネる!!

派手な衣装およびセクシュアルな踊りをニコニコと行う3人の女性コーラスが登場し,その後ようやくフェミが登場.その歌,どことなくジェームス・ブラウンを彷彿させるステージ・アクションはただただスゴいが,それ以上に強烈なカリスマ性が漂っている.

そして,フェミの恐ろしさが最大限に発揮されたのは彼がサックスを持った瞬間だ.壮絶なビートのなかサックス・ソロが始まるが,これが文字通り人間離れしているのだ!!数分間,指をビロビロと動かし速いフレーズが続くが,その間サックスの音は全く途切れることなく,だからといってフェミの顔の表情は全く変わらない.おいおいおい,全然息継ぎしていないよ!そして,そのフレーズが終了した後は何くわぬ顔でステージをピョンピョンとジャンプし,歌で魂の叫びを伝える.一体どういう体の構造をしているのか?調べてもらった方がいいんじゃないか?

そんなフェミ一同の前ではもうなす術がない.ひたすら踊り狂うだけ.

終わった後は「超人現象を見てしまった」という気持ちが脱力感とともに残ったこのライヴ.すでに2日間,あらゆるライヴを体験しまくり体への負担が大きかったなか,第3日目のグリーン・ステージの一番手という出演時間はかなりキツかったが,見逃した人には... ただただ「残念だったね」と伝えたい.


起承なしで転結 ニーヴ 


Neve のアルバムはわずかに聴いていた程度であったが,そのキャッチーかつメロディアスなフレーズが印象的ゆえに,グリーン・ステージには見向きもせずにホワイト・ステージにて最前列をキープした.同行者に「まさかモッシュないよね?」と聞かれて「ないない」と答えた自分がアホだった.ライヴ開始直後よりスゴイことになってしまったではないか!人の波にただただ揉まれ,帽子は飛ばされ,サングラスはぶっ壊され,背中や首はダイヴ野郎に蹴られ,後ろの人々のコブシで頭頚部を殴られ,ただただ唖然.「おいおい,まだ初日なのに」と考えるのは年をとった証拠なのか...

まあ,そんな壮絶な観客のリアクションが確実に Neve の面々の気分を盛り立てたことは間違いない.とてもデヴュー・アルバムを出したばかりのバンドとは思えないほど場慣れしており安定感がある.さらに,ライヴならではの音の迫力が加わりただただカッコイイ.ちょっとデカプリオ入っているボーカル(+ギター時々),アメリカ原住民の血が混じっているようなベース,印象うすいドラム,そしてそこら辺のギター屋にいそうな陽気なギターあんちゃんの4人編成は頑張る.Neve スティッカーを最前列の面々にばらまいたりアルバム名を繰り返し連呼したりなどバンドのプロモーションにも余念がないが,それを抜きにしたら10年選手と言われても信じてしまう位だ.予想以上に重圧感のある音塊,心にしみるような良いメロディ,ドラマチックかつ起承転結のついた曲群は素晴らしく,もみくしゃになりながらも心は揺さぶられる.

そして,アンコール.ギタリストが妙にニヤニヤしながら一人でまったりとギター・フレーズを奏で始める.おや...待てよ,これは Pink Floyd の "Another Brick In The Wall (part 2)" ではないか? それに気がついた瞬間,バンド全体が音を出し始め,それを裏付けるべく 「We don't need no education...」と歌い始める.ボーカリストは歌い始めこそ原曲に忠実に,低い声でささやくように歌うが,そのボルテージは次第に上がり,やがてその歌い声は絶叫へと変化.アメリカ人だったら誰でも知ってそうなこの曲を観客に歌わせようとするものの日本ではそういう大合唱にはならなかったが,まあいっか.ひたすら充実感,満足感が余韻として残った良いライヴだった.


これから転結 オーシャン・カラー・シーン 


確かに自分は Ocean Colour Scene (以下OCS) を前の方で見た.しかし,正直なところ,それはそんなに積極的なものではなく,たまたま同伴者が OCS についてぜひ前で見たい,という希望があったからだった.自分は OCS については "Hundred Mile High City" しか知らなかったのだが,正直なところあまり好印象は持っていなかった.曲調,リズムといい聴くたびに 「Thin Lizzy っぽいな」「間奏が ""Good Morning Little School Girl" (Yardbirds などがカバーしたブルーズの名曲) っぽいな」などと雑念が浮かび上がり,どうしてもアルバムを買う気にまでは至らなかった.

強い日差しに少しずつ雲が増え始めて涼しくなってきた頃,彼らはステージに登場した.オープニングはいきなり "Hundred Mile High City" だ.さて,困った.これで自分の知っている曲は全て終わってしまう!でも,そんな勝手な自分の懸念をよそに,彼らは演奏を続ける.おいおい,全然カッコイイではないか!ライヴにおけるこの曲の見栄えといったら,まるでこの日のために「仮の姿」をアルバムで提示していたのでは,と思えるほどである.その後あらゆるタイプの曲が続くが,メロディおよびアレンジの類稀な素晴らしさにはただただ感心.情感深いボーカルも聴かせる泣かせる.

時にギタリストが鍵盤を弾いたり,サポート・メンバー...というか,スタッフがスティール・ギターなどを弾いたりするが,基本はあくまでも4人のグルーヴだ.ギタリストはゴールドトップのギブソン・レスポールを黙々とかき鳴らすが,その音は芯が太く力強い.ドラマーはやたらとシャープでタイトだが,時々キース・ムーンを彷彿させるようなオカズを加える.そして,ベーシスト!そんなに上手いというわけでもないが,ドラムとの組み合わせは絶妙だ.高音のフレーズがけっこう目立ち,これがまた決まっている.そして,何より楽しそうだ!終始ニコニコしながら曲の合間にはおどけまくる.クラプトンのようにベースのヘッドに煙草をはさむもののモタモタしていて曲に出遅れそうになる.そして...ボーカルの力強さ,説得力の強さといったら!ライヴ前のネガティヴな発言はすべて撤回だ.確か近日中発売予定のアルバムからも2曲ばかし演奏したが,この出来がまた良い良い.分かりました,アルバム買いますので.

そして,アンコール.「これから Oasis の曲をやります」との MC にて,一瞬どの曲をやるのか,色々と考えをめぐらせる.しかし,始まった曲は!ビートルズの "Day Tripper" ではないか!いくら何でも反則もいいところである.頭の中が真っ白になり,ドーーーーッと最前列まで突進する.言うまでもなくそうしたのは自分だけではなく,周囲は壮絶なモッシュ状態へと変化をとげ...この1曲だけでライヴ1本分の汗が流れ落ちた.




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Send comments to: Jun Shigemura

Last updated: 8/ 26/ 99