Fuji Rock Festival 98 in TokyoTHE DAY 2
2日目のベスト5

1位 ベン・フォールズ・ファイヴ
2位 プロディジー
3位 イアン・ブラウン
4位 コーン
5位 プライマル・スクリーム

次点 ケムリ、布袋、ミッシェル、他


第1位 ベン・フォールズ・ファイヴ (Green Stage)

ミッシェル・ガン・エレファントのときはあんなにぎゅうぎゅうだったフィールドのAブロックも今は閑散としている。目をステージ上に向けてみると、かなりの数のスタッフによって、ステージ上にグランドピアノが運び込まれているところだ。その横にはシンプルなベースとドラムのセット。ピアノの近くには、マーシャルのギターアンプも見える。もうセットチェンジに30分以上はかかっている。高く上った太陽からの光がじりじりと肌を焼き尽くしてゆく。

そんでもってやっとメンバー3人が登場。ベンちゃんの後ろのほうに陣取っていたため、彼の髪の薄さがイヤでも目に付く。やがてその右にいるベーシストが高音弦を使ってギターのような音を出し始めたのだが、思わず横にいた女性が「あれギター?それともベース?」と尋ねていたぐらいだ。そしてピアノが入る。ごめん知らない曲だ。だってアルバム1枚しか持っていないから(すまん)。でも曲を知らなくってもすんなりのめり込むことが出来るところが、ベンフォールズのマジックだ。路上で演奏する多芸なバスカーのようなもんである。

フィールドは満員とはいかないのだが、逆にスペースがあり余裕を持ってみられて素晴らしい。そしてなおかつだんだんだんだんと客の盛り上がりも大きくなってゆく。「コンニチハ。ベンチャンデス。」と流ちょうな日本語で大爆笑を誘い、「イチ、ニー、サン、シ」と日本語でカウントをとるのも笑えた。

途中でジャンプしたはずみでストラップがギターからはずれ、慌てて楽屋に戻ったベーシスト。彼のいない間、のんびりと指にヴァンデージを張るベンちゃん。ピアノの上に仁王立ちしたかと思えば、ピアノとマイクを使ってスクラッチ風の音も出す。最後は「I Want My Money Back」を日本語ヴァージョンで歌い、イスを遠く後方からピアノの鍵盤上に投げつけて演奏は終了。なんでもやる、なんでもある、なんでもこい。今日のメンツがかなりテンスな感じだっただけに、ベンちゃんのステージは何の先入観もなく純粋に楽しめた。こういう人達って長いフェスには欠かせないよね。

[ Return ]

第2位 プロディジー (Green Stage)

50分のインターヴァルとのアナウンスを聞いて思いっきりだらける私。いや、ただだらけていたのではない。しっかりこのプロディジーに向けて体力を温存していたのだ。この前、ロラパルーザでプロディジーを観たのもこの8月2日。なにか個人的にこの日にはプロディジーとの運命的なものすら感じてしまうのだ。でもまああの時の感動を越えることはないな、とは思いながらも巨大なステージセットが次々と積み重ねられていく様を遠くからボーっと眺めていた。

開演予定時刻の数分前に、ようやく重い腰を上げてたどり着いたのがBブロックの前方。でも思いの外ステージはよく見える。

ほんとうに50分のインターヴァルをおいてプロディジーのショーはスタート。新たにサポートに加わったドラマーと、グルーヴの核リアム、そして今回はSGではなくレスポールのTVモデルのような赤いギターを持ったギタリストがまずステージに登場。一呼吸おいて、髪の伸びたマキシムと、イギリスの国旗をあしらったジャケットを着たキースがステージに躍り出てきた。1曲目は「Rock 'N' Roll」。ギターのカッティングが気持ちよく、ドラマーが加わった分だけ演奏に重みが加わっている。マキシムは「Where the fuck are you?」と叫び続けるが、客は「いぇー!」と叫ぶだけ。正しいfuckの使い方は、Surival English」を参照のこと(笑)。

「Funky Shit」「Breathe」と立て続けに人気のファンキーチューンが並ぶ。オーディエンスも歌詞を良く覚えていて(といってもかなり短いけど。)、サビの部分は大合唱になった。でも今回は前回と違って、マキシムにちょっと冴えが見られない。フロアに降りてみたり、色々とコミュニケーションを取ろうとしているが、なんかすべて空回り。その代わりキースにはもう大物としての風格すら漂っていて、スクリーンにその姿が映るだけで大歓声が上がる。やばいぞマキシム。なんとかせねば。おれはあんたが好きなんよ。

途中でリロイがステージ右側に姿をあらわす。「さあ来い!!」と一瞬身構えたら、やってくれました。軽やかなステップであっという間にステージ左はじへ移動。なんかタコのようにくねくね踊るぞ。でもかっこいい。表情も豊かで楽しい。

「Voodoo People」に「Firestarter」に「Poison」ときたもんだからもうたまらない。もう無茶苦茶かっこいいねえ。やるねえ。でも「Mindfields」はちょっとテンポがとろくってダレ気味。ここでの生ドラムはちょっと邪険だったかも。フロントはやっぱりマキシム(笑)。

そして「Smack My Bitch Up」。この曲を、ショーの後半で聴くのもなかなかかっこいいねえ。でもほんとうに良かったのは最後の「Fuel My Fire」。テンポが超高速で、ビシビシきたー!! 飛んだぞこの曲ではー!! やっぱしっかり休憩しといてよかった。

[ Return ]

第3位 イアン・ブラウン (Green Stage)

これもセットチェンジ長し。その前の布袋のステージが終わった時点ですでにイアン・ブラウンの開演時間を過ぎていたため、ひょっとしてイアンのステージはものすごく短くなるんじゃないか?とちょっと心配する。ん?あれ?あのギターアンプの前にいるのアジスじゃん。なんだ自分でギターのセッティングをしてるのか。なんか笑えるなあ。

さてそんなこんなでイアン・ブラウン登場。まったくもってとほほなかっこに笑いを通り越して、結構あきれる。頭にはお地蔵様のようなカサをかぶり、しっかりアゴ紐もしばっている。そしてその右手にはうちわまで持ち、のんびりと黒いタンクトップを着た上半身を扇いでいる。それで「ゲンキ?」なんて言われた日には・・・・、頼むよイアン。腹がよじれるよー。

カヴァー曲はなし、というローゼズの不文律をさっそく破るかのように、一曲目はジミ・ヘンドリックスの「Little Wing」。アジスのイントロですぐに分かってしまった。なおかつこれは私が歌える唯一の曲でもある。イアンのボーカルはなかなかのもので、音程もはずさない。でも体の方はまるで足踏みをしているようで、全然動かずに、一点を見つめながら歌うだけ。でもこの曲では結構キた。なおかつアジスはまるでジミヘンばりに歯でギターソロを弾いていたし。

続いて「Nah Nah」。やっとフィールドに熱さが戻る。そして中近東風のアジスのギターソロ。イアンもハーモニカで演奏に参加。パーカッショニストがイアンのマイクで叫ぶ。ベーシストは終始ニコニコだ。ローゼズの元メンバーで、次に出番を控えていたプライマル・スクリームのマニは、何を思いながらイアンのステージを聴いていたのかなあ・・・・。

しかし思ったことは、イアン・ブラウンのステージというよりもむしろ、アジス・イブラヒム・バンドのショーといった感じも受けた。さすがにジョン・スクワイアの代わりにイアンがローゼズのギタリストとして選んだだけあって、この人無茶苦茶ギターがうまい。ライトハンドでワウをかけながらのリフ、豊富なフレーズに対する知識、演奏の安定感、そして時にはジミヘンのようにネックを手で滑らせて、ヴォーカルマイクにギターをこすりつけて音を出す。でもそのときはストラップがギターからはずれちゃって苦笑いしてたけどね。

イアンの目立つ場面が少ないせいであろうか、フィールドの歓声が少なく、思わずイアンから「ゲンキ?」という言葉をかけられてしまう。でも「Can't See Me」や、ビートルズの「Dear Prudence」の一節が盛り込まれた「My Star」では大ダンス大会になった。しかし相変わらずイアンは一歩一歩足踏みするだけだが。

予想外のアンコールでは「Sunshine」を演奏。この曲の前、私はイアンが「Star Will Shine」と言ったような気がして、「おー!ローゼズの曲をやるのかー!」と思ってしまったが、これは大きな勘違い。でもあの地蔵傘にサングラスをかけてる人って初めてみたよ。あの傘は一体全体どこで手に入れたのかなあ。イギリスで流行るかも?!

  1. Little Wing (Jimi Hendrix Cover)
  2. Nah Nah
  3. Corpses
  4. What Happened To Ya Part I
  5. See The Dawn
  1. What Happened To Ya Part II
  2. Ice Cold Cube
  3. My Star
  4. Can't See Me
  5. Sunshine

[ Return ]

第4位 コーン (Green Stage)

もう始まる前から異様な雰囲気。ハードコアな面子でフィールドAブロックは埋め尽くされている。すでに放水も始まっているし、どこからともなく「コーン!コーン!」という大合唱も起こる。ここでスタッフから異例の諸注意がステージ上から促される。「いかなるトラブルがおきても、主催者側は責任を持ちません。」 確かに去年の初来日公演が突然キャンセルになってしまい、そのストレスがたまっているのだろう。何を隠そう私も同日に開催された去年のロラパルーザでこのコーンを観られるはずだったのに、これもやはり直前でギタリストの骨折でキャンセル。自分としてもこのライヴに期するものはかなりあった。

しかしセットチェンジが長いぞ! 「今2時ぐらい?」なんてマイクに向かって言ってる場合じゃねえぞ!! スタッフは一人を除き、全部デブだー!! 走れおまえら! 動きがとろいぞ!! 健康ブーム真っ盛りとはとても思えないこのカリフォルニアからの面々。だからアメリカの「健康」なんて言葉は信用できないのだ。SEのオーシャン・カラー・シーンのセカンドアルバム、全部終わっちゃうんじゃないかと心配しちゃったぞ!

そのデブの1人が日本で買ったと思われるビデオカメラを手に持ち、もういい加減、暑さでだれ始めた頃、メンバー数人がステージに現れた。それを追って他のメンバーがなめたことに自転車に乗って登場。しょっぱなから笑える。なおかつみんな噂通りのアディダスづくめ。やっぱどっかヘンだわ、この人達。

とうぜんもちろんギターアンプはマーシャル。頭振りまくってのリフ。ついでにギタリスト顔面流血。フィールドはダイブだモッシュだ。でもそんなに危険な感じには見えない。それどころかみんな怖がって前に行こうとしないから、結構空間が空いている。ハードコアな人たちはこういうライヴになれているから、どことなく余裕さえあるのだ。その証拠に、戦前の周囲の緊張感とは裏腹に、演奏が中断させられることは一度もなかったし、前方から疲れ果てて後ろに下がってくる人もほとんどいなかった。

今年最初のライヴということでバンドの演奏はちょっと堅いようにも見えたが、ヴォーカルのジョナサンはスコットランド風のバグパイプを吹いたりして、ハードコアの中にも一種の潤いと個性をもたらしていた。個人的には、ハードコアというよりも、なんかポップな感じがして、地面を飛び跳ねてるのが結構楽しかったなあ。

[ Return ]

第5位 プライマル・スクリーム (Green Stage)

前に行きたいのは山々だったのだけれど、まあプロディジーもあるということで、後方でのんびり観ていた。でもそれがかえって良かった。曲順を間違えて紹介したボビーは思いのほか健康そうだったし、ベースのマニはノリまくって楽しそうだったし、ほんとよかったよかった。「ロックス」では当然大盛り上がりだったが、それよりも「コワルスキー」や「ハイヤー・ザン・ザ・サン」なんかの音が会場全体に響きわたっていくのを聴いているとほんと気持ちが良かった。

[ Return ]

その他 ケムリ、布袋、ミッシェル・ガン・エレファントなど

モントローズ・アヴェニュー(Green Stage)
メインステージ、2日目のトップバッター。予備知識全くなし。でもさわやかな感じで好感を持つ。ケムリのステージから戻るとき、セックス・ピストルズの「Steppin' Stone」が聞こえてきた。早くアルバム出しましょう。

ケムリ (White Stage)
みんなモントローズを見に行ってしまったので、ひねくれ者の私はセカンドのケムリを見に行く。まあ普通。でもヴォーカルの表情が豊かで、なかなかプロフェッショナル。日本人、という特殊性だけじゃなくて、もっともっと音楽的に個性がでればいいなあ、なんても思う。とにかくスカコアっていうカテゴリーから飛び出してほしいなあ。

ミッシェル・ガン・エレファント (Green Stage)
アルバムは2枚ほど持っていて、カーステの常備品。とにかくギターのブラッシングストローク「すかちゃかちゃー、すかちゃかちゃー」というのを観てみたかった。フィールドは爆発的に盛り上がっていたように見えたし、演奏中断も何回かあったけれども、なんか演奏がいいから盛り上がっているよりも、あまりにもライヴに不慣れなファンで勝手に転んで、怪我して、その結果中断しているといった感じで、あんまり気分は良くなかった。確かにあのブラッシングストロークは見物だったし、楽曲も素晴らしいのだけれども、やっぱりベンフォールズとかコーンとかと較べちゃうと、あの古典的なロックンロール的手法はやっぱどうみても古いよなあ、って思ってしまった。「おい、まだキース・リチャーズやってるよ。」と他の人間は笑ってたんじゃないかと思って、ちょっと心配したというか、なんか恥ずかしくなってきたりもした。日本じゃトレンドでいられるけど、海外じゃあ厳しいなあ、と改めて思ってしまったのだ。でも勘違いの無いように言っておくと、好きなんだよこのバンドは。矛盾しているように聞こえるかもしれないけど、ギターは特に最高! あのブラッシングストロークも見られたし!

布袋寅泰 (White Stage)
なんと言っても私はこの布袋寅泰のライヴをこれまで2回観ていて、このフジフェスの中でもっとも馴染みのあるミュージシャンだったりする。あははは。

ジミヘンの「Purple Haze」のイントロで始まる。やっぱちょっと恥ずかしい。でもなんでこのフジロックはこんなにジミヘン流りなんだろう。そこから「Supersonic Generation」へ。まああとは実はよく分からないのだけれども、いつものようにエディ・コクランの「Come On Everybody」もやった。アレンジも昔と変わらない。悪くはないんだけれど、良くもない。とにかくフィールドに寝そべってリラックスさせてもらった。


| Back | Home |


Send comments to: Katsuhiro Ishizaki

Last updated: 8/ 3/ 98