George Harrison |
ジョージ、震えてたっけ |
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■ 横浜アリーナ - 12/ 1/91
with Eric Clapton and His Band
まだバブルの余波が残っていた日本だからこそ実現したこのスーパーコンサート。あのジョージ・ハリスンがこの日本のみでツアーを行うと聞いた時には、日本が金持ちで本当に良かったと実感した。元ビートルズのメンバー、リンゴ・スター、ポール・マッカートニーが次々の日本の地を踏み、コンサートを行っていった89年と90年。ビートルズという呪縛から開放され、やっと素直に過去の曲群に向き合えるようになったもう一人のビートル、ジョージ・ハリスン。よりによって今回は60年代からの友であり、かつての妻を寝取られた憎き敵でもあるエリック・クラプトンを従えてのツアーである。いろいろな意味でも信じられないこの組み合わせ、ジョージにとっては74年以来17年ぶり、クラプトンにとっては息子を転落事故で亡くしてから久々の復活ライヴとなったのである。
そしてこの日の横浜アリーナ公演はそのツアーの初日。がちがちに石膏で固まったかのようなジョージ・ハリスンがそこにいた。緊張しているのが素人目にもはっきりと分かる。一曲目の音が出るまでオドオドして視点が定まらない。とてもあのビートルズ武道館公演で、観客席に手を振っておどけて見せたあのジョージだとはとても思えない。クラプトンのバンドがいかにも場慣れしている感じでニコニコしているものだから、なおさらその差がはっきりして見えるのである。
一曲目はいきなり中期ビートルズの「I Want to Tell You」だ。緊張したジョージを気遣ってか、コーラスから歌はスタートした。しかしジョージの震えは止まらない。どうにか終わって「Old Brown Shoe」。クラプトンがコーラスを取る。ジョージの最初の代表曲「Taxman」ではクラプトンのギターが冴えまくった。ストラトギターでのチョーキングでこちらをのけぞらせてくれる。この日だけ披露されたという「Love Comes To Everywhere」「Fish on the Sand」なども飛び出す。だんだんジョージも緊張が取れて比較的リラックスしてきたようである。
ビートルズの「White Album」からの「Piggies」を歌い終わったところでエリック・クラプトンを紹介して、いったんそでに下がるジョージ・ハリスン。ここからはクラプトンの独壇場であった。彼のマテリアルから4曲披露したのだが、もう演奏のレヴェルが全く違うのである。クラプトンは弾きまくるし、バンドの息は完璧である。何か弱いものいじめをしているようで、ちょっとジョージがかわいそうにさえなってくる。はっきりいって今まで観た中で最高のクラプトンの姿がそこにはあった。
「Wonderful Tonight」のきれいなアウトロが終わると、スティーブ・フェローニの力強いスネアの音が聞こえてきた。90年代に入ってのジョージの唯一の全米ナンバー1ソング「Got My Mind Set on You」である。シャツを交換したジョージが再び登場。ノリのよいボーカルだ。続いてジョージ版ブルースソング「Cloud9」。クラプトン、ジョージ共にゆったりとしたギターソロを聞かせる。クラプトンにアコースティックギターを抱えさせての「Here Comes the Sun」と「My Sweet Lord」。なんと贅沢なバージョンなのだ。スライドギターを弾くのは、アンプラグドで名バイプレーヤーぶりを見せたアンディ・フェアウェザーロウである。
ビートルズ時代のことを歌ったと言われている「All Those Years」などもあって、クラプトンがソロを弾きまくった「Isn't It a Pity」で本編は終了。当然アンコールの拍手が鳴り止まない。みんなあの曲を聞きたいからである。なおかつここで前にいた頭のでかい長髪のおっさんが帰ってくれた。これでやっと安心してステージが観れる、そう思った私の拍手する手にも力がこもる。
ピアノの例の穏やかな単音のイントロが静かに流れ始めた。さああの歴史的名曲で、このホームページのタイトルのアイデアもいただいている「While My Guitar Gently Weeps」である。ビートルズの「White Album」に入っていて、クラプトンの泣きのギターが全面にフィーチャーされているこの曲。入場料の1万円をこのナンバーのために捧げた人も少なくはあるまい。オリジナルではギブソンを弾いていたクラプトンであるが、この日はお馴染みのフェンダー・ストラトキャスターでその泣きのギターに挑戦。ほぼオリジナル通りのフレーズに鳥肌立ちまくる。逆にジョージはギブソンのレスポールをもって、クラプトンのソロの合間にアドリブを入れる。本当に見事である。高い金払った甲斐があったというものだ。
最後の最後は「Roll Over Beethoven」。客とステージとの掛け合いがあったり、キーボードのグレッグ・フィリンゲイズが女性コーラスの2人と踊りを見せたりするなどしてパーティー気分が溢れている。そんな中で2時間半にも及ぼうかというコンサートはその幕を閉じた。現役バリバリのクラプトンバンドの中で、操り人形のようであったジョージ・ハリスンではあったが、やっとビートルズという歴史の一端に直に触れる機会を与えてくれた彼には、感謝せねばなるまい。
- Set List - 12/1/91
- I Want to Tell You
- Old Brown Shoe
- Taxman
- Give Me Love
- If I Needed Someone
- Love Comes to Everywhere
- Fish on the Sand
- Something
- What Is Life
- Dark Horse
- Piggies
- Pretending
- Old Love
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- Badge
- Wonderful Tonight
- Got My Mind Set on You
- Cloud 9
- Here Comes the Sun
- My Sweet Lord
- All Those Years Ago
- Cheer Down
- Devil's Radio
- Isn't It a Pity
- While My Guitar Gently Weeps
- Roll Over Beethoven
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Send comments to: Katsuhiro Ishizaki Last updated: 12/31/97
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