■ 渋谷公会堂 - 2/11/99
1995年発表のアルバム "A Boy Named Goo" からのバラード "Name" がヒットし一般にその名を知られることとなった The Goo Goo Dolls.自分はそれまでは存在も知らず,てっきり新人かと思いきや,そのアルバムですでに5枚目だった.同時期,近くのレコ屋で500円で購入した1枚目(1987年発表)を聴いたが,「本当に同じバンドか?」と思うくらいタテノリ,パンキッシュ,荒削り...なんせ曲名からして "Hammerin' Eggs (The Metal Song)","Slaughterhouse","Don't Beat My Ass (With A Baseball Bat)" など...けっこうスゴい.他にも,Cream の "Sunshine of Your Love" や Blue Oyster Cult の "Don't Fear the Reaper" などの名曲を,何も考えずにタテノリで攻める演奏には一瞬ギャグすら感じられるほどであった.しかし,"A Boy Named Goo" ではパンキッシュなアップテンポの曲が多いなかにも豊かな色彩があり,バンドの格段なる果てしない進化が感じられた.その後映画 "Twister" のサントラにアップテンポの佳曲 "Long Way Down" が収録され、 "City of Angels" からバラード "Iris" が大ヒットした矢先の 1998年末,アルバム"Dizzy Up the Girl" が発売された.パンクっぽい曲はもはや一部に過ぎず,アコースティックな音を巧妙に用いたり,曲のヴァリエーションが更に広がりを見せており,今回のライブには相当の期待のもと挑んだわけである.
会場は渋谷公会堂.何てったってその昔「トップテン」をやっていた会場である.会場の午後6時を約15分過ぎたところで The New Radicals の BGM がフェードアウト,オルガンの SE が鳴り響き始め,まるでアイドルが登場してくるかのような派手な照明が始まる.歓声も黄色い声が圧倒的で,トップテンの司会をやっていた堺正章と榊原郁恵が出てくるのかと思いきや,当たり前だがメンバーたちが登場.John Rzeznik (vo, g), Robby Takac (vo, b),Mike Malinin (dr) のメンバー3人の他,サポートでギター1名とキーボード1名の計5人,という布陣である. メンバーそれぞれを観察してみる... 派手な照明も相まって,最近やたらとビジュアル系が入っている John.一瞬 B'z の稲葉某がギターを持って1人B'z をやってもおかしくないようなルックスでもある.Robby はそれまでの写真がウソかと思うほどの巨体で長州力似で,やたらと大げさなアクションはVan Halen のMike Anthonyを彷彿させる.ドラムの Mike,キーボードの人は地味過ぎ.特記すべきはサポートギタリスト!上下とも黒皮で攻め,ブロンドの長髪,おまけにチェーンがジャラジャラ腰の辺りをうろつき,すっかり80年代メタルしている.まるで Whitesnake時代のSteve Vaiか,メタル時代のKissのBruce Kulick のようなルックスはヤング・ギター誌の表紙を飾ってもおかしくないほど.しかし,そのルックスとは裏腹に,ギターソロは殆どとらせてもらえず,ルックスに似合わないテレキャス・タイプのギターでひたすらバッキングをしていた.ご愁傷様... オープニング曲は新作の1曲目,"Dizzy",続いて前述の "Long Way Down" と続く.CDと比べて歪み度を数倍増したアレンジながらも,なかなかかっこいいオープニング.しかし,その後前作・最新作を中心にアップテンポの曲が続くが,ひたすらその歪み具合が続くとは,この時点で予想だにしていなかった... PA はかなり酷く,ヘンに中音が強調された(おそらく相当イコライジングがかかっていると思われる)ギターが不自然に目立って,ベースは全く聴こえない.John はストラト・タイプのギターを曲ごとに替えるも,音の区別は分からない.何といったって,ギターが歪みまくっている上に,コンプレッション、コーラス、リバーブなどのエフェクターがオバハンの厚化粧の如くかかりまくっていて,音色のバリエーションはないに等しい状態であった. さらに,演奏自体も,そのような爆音系以外の変化には乏しく,最新作でようやく開花したかに思えたアレンジの絶妙さは全く感じられない.ライブでの迫力とかノリ,という安易な言葉では説明できないほどの単調さ,としか言いようがない.その単調さに見かねて同行者が帰りたがるが,バンドの名誉挽回を期待し,さらに「せっかく高いチケット払ったんだから〜」と貧乏性も災いし,最後まで見ることにする. その後も大きな変化がなくライブは進行する.甘い声のJohnに比べ,ワイルドなRobのボーカル曲では多少の変化があるのかと思いきや,それは淡い期待に終わる.たまに生ギター(とはいってもエレアコ・ギターであるが)で変化が加わるかと思いきや,直後に大爆音.前作の "Naked",最新作の "Slide" "January Friend" "Bullet Proof" も,原曲ではあらゆる色を呈していたものの,同じようにしか聞こえない. そうこうしているうちにサポートギタリストがマンドリンを持ち,"Iris" のイントロが始まり,観客は盛り上がる.さすが全米チャート1位曲である.しかし,ここでも原曲で壮大な雰囲気を創り出していたストリングスは安っぽいシンセの音で代用されており,またまた興覚めしてしまう. "Iris" が終わるとメンバーたちはステージ脇へと引っ込む.この時点で午後7時10分(開演は午後6時すぎ).その後アンコールを2曲やり,ようやく生音に近いようなギターとベースのデュエットが始まり,はじめてベースの音らしきものが聴こえる.最後は再びギターに歪みがかかりまくり,そのディレイ音をリピートさせながらギタークラッシュをする.しかし,これも演技くささがどことなく目につき,30年前の Pete Townshend や Jimi Hendrix の形だけをマネしている虚しさが心のなかをよぎる.「それだったらギターちょうだい」とつぶやくが,残念ながらそれは John の耳には届かない.それが終わった後客電がつき,終了のアナウンスが始まる.午後7時25分.その後に渋谷の街でしこたまワインを飲みイタメシを食いまくり,店を出るが,午後9時45分.あれま〜. 「新作の出来の良さ」と「ライブでの失望さ」とのギャップ,という点では今まで色々と見てきたライブの中でも最低の類に入る方かもしれない.期待さえしていなければ,そしてPAがもう少しでも良ければ,そんなに後味の悪いものでもなかったかもしれないが.せめて日本ツアーのあとに控えているアメリカ・ツアーでこのような点が少しでも改善するのを祈るだけである. 〈注)これは,あくまでも私,しげやんが感じた印象であり,webmaster の Kats さんの志向・好み・方向性などとは一切関係ありません.苦情・文句などはしげやん宛によろしくお願い致します.
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