Green Day / Superdrag |
酔っ払いビリー・ジョー |
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■ Deep Ellum Live, Dallas, TX - 10/30/97
Green Dayよ、なぜこんな小さいハコでやる! うれしすぎるぞ! ニューアルバム発売に伴う全米ツアーの初日。会場のキャパは1000もないはずである。チケットはもちろんソールドアウト。開演前には入り口付近にながーい列ができていた。
その長い列の中で入場を待つ間に、前座のSuperdragの演奏は始まったようである。聞き覚えのないこのバンドであるが、ライヴハウスに入ったとたん身に覚えのある曲が流れてきたのでピンときた。私はラジオから頻繁に流れていたこの曲をこう名づけていたことを思い出したのである。「くそったれのFeeling――−」。だってサビの部分はそうとしか聞こえないんだもの、何度聞いたって。
しかし彼らには気の毒なライヴだった。演奏中の客の反応といえば、中指を立てて「Fuck you!」「Get the fuck off!」といった叫び声ばかり。私なんかはすげえいいバンドだなあ、って感心すらしてたのに...。Green Dayへの期待が大きい分だけ、そのとばっちりがこのSuperdragに来てしまったようだ。特に「We want to do a couple of more songs」っていった時の客の罵声のすごいこと。「What? A couple of more?? Fuck you!!!」って感じで、終わった時には大拍手。このままGreen Dayに同行するというのだから、これからもつらい日々が続いて大変だなあ...。
しかもメンバーはステージ上を動き回って、どうにか客を自分達の世界にひき込もうと必死な様子。その割に演奏はタイトだったし。ピョンピョン跳ねるベースの彼を見た時には、日本の「じゅでぃまり」を思い出してしまったよ。
久々にここに来て思ったことだが、この会場の音の良さといったら他と比べ物にならない。。やっぱこのDeep Ellum Liveは、ライヴハウスとしては超一級。何の変哲もない作りなのだけれど、ものすごくクリアーでシャープな音が耳に入ってくる。ドラムなどまるで生音を聴いているような、そんな錯覚まで覚える程だった。
前座のSuperdragがステージを下りて、いよいよGreen Dayの登場をひたすら待つ。後方に彼らのロゴが入った垂れ幕がかけられ、セットチェンジがてきぱきと進む。もちろん流れている曲は、彼らのお気に入りのパンクレコードばかりである。まだ開演前なのにダイヴしているやつもいる。
10時15分、場内が暗転するかしないかといったあたりで、ドラムのTreがステージに飛び出してきた。続いてギター・ヴォーカルのBillie JoeとベースのMikeが姿を現す。みんなステージに出るのを待ちきれないといった雰囲気だ。それにしてもトッチャン坊や、ちょっと太ったんじゃあないかい? なんか顔がむくんでるぞ。
まずニューアルバムから一曲。恥ずかしながら私はこのアルバムをまだ聴いていないので曲名は分からない。先週クレジット・カードをなくしてから、ちょっとCDどころではない騒ぎになっているからだ。まあそれはいいとして、Treのドラムのスネアがビシビシ来て気持ちいい。Billieのギターもクリアーで、声もガンガン聞こえる。こんなにいい音でGreen Dayが聴けるとは思わなかったなあ。
モニタースピーカーの上に仁王立ちするBillie Joe。しっかし足が短い。ためにためて、煽って煽って、「Welcome To Paradise」のカッティングに猛然と突入する。と、と、鳥肌が...。ただひたすら爆走するGreen Day。この3人マジでかっこいい。
さらによかったのはBillieのMCである。ではここでBillie Joeのこの日の発言集を....
「みんなでFuck Youと叫んでくれえ!」
「今度はGo back to California, son of a bitchと叫んでくれよお!」
「じゃあ帰るよ。バイバーイ」
「今日俺なんか変なんだよ。なぜだか分かる? オレ酔っぱらってんの、今日」
「昨日ダラスで飲みすぎちまってよう(Last night I was so fucked up here in Dallas)」
「テキサスのビールってうまくってよう」
「次の曲はHootie & The Blowfishの曲。いやMatchbox 20のだ。あはは、Fuck them!!」
「ここじゃあ、こないだBad Religionがやったらしいな。Fuck!!」
「おめえらCrackだのCocaineなんかやってんだろ。わかってんだよ俺には。俺も裏でやってるしな」
「よし、リクエストを受け付けよう。その曲? そりゃ後で。(どこがリクエストなんだよ)」
まあ、笑った笑った。この日Billie Joeが太ってみえたのはただ単に二日酔いのせいだと判明。その証拠にライヴが進んで汗をかくにつれ、みるみる顔のむくみが取れていくのが分かるのである。
さっきも言ったように新曲はよく分からなかったのだけれど、とりあえず彼らのファースト、セカンドからは「Having a Blast」「Chump」「Longview」「SHE」「Jaded」、そして高速ヴァージョンに生まれ変わった「Geek Stink Breath」などなど。「コードに合わせてこぶしを突き上げてくれ」と言って始まった「Brainstew」もよかった。Billieはしっかり客に練習させてたもんね。しかしながら、この日のハイライトは意外なところにあったのである。
新曲を披露しているGreen Day。その途中で、ベースとドラムだけがリズムを刻みはじめた。そこでBillie Joeは突然、「誰かギター弾けるやつはいる? おまえは? そこのおまえは?」と客に向かってききはじめたのである。「ほんとに弾ける? じゃあそこのキミ」といわれてステージに引っ張りあげられたのは、中学生と思しきかわいい女の子。Billieのストラトが彼女に渡され、一生懸命コードを教わるその女の子。このときそこにいた誰もが「おい、弾けるわけねえだろ、そのチビに」と思っていたに違いない(しかしチビとはいってもBillieとたいして身長は変わらない)。
数秒後、その子は恐る恐るカッティングをし始めた。驚いたことにだんだん曲になっていくのである。瞬く間にストロークが安定すると客から大歓声が起こった。それに調子づいた彼女、ニコニコしながら、体を揺らし始めたのだ。たいした度胸だ。その演奏に合わせて歌うBillie Joe。彼はちょっと女の子のリズムがずれると、丁寧にフィンガリングを直したりもしてくれていた。Billie Joe、あんたきっといいギターの先生になれるよ。
そんなこんなでアンコールに「When I Come Around」をもってきてライヴは無事終了。たった1時間ちょっとのギグだったけれども、すごく中身の濃いライヴだったように思う。Billie Joe、この人すごくいいかげんなようにみえるが、案外繊細ですごくプロフェッショナリズムを追求している人のように思えた。だからフジのフェスの前に予行演習的なギグをやってみたり、この日のライヴもツアー初日だというのに、一瞬の弛緩もスキも見せない完璧なショーをやってのけたりするのである。下を向いてカッティングに専念しているようにみえるが、実はよく見るとちらちらと上目遣いに観客の様子をうかがっているのも象徴的だった。ノリを微妙に読み取り、巧妙な話術で客を飽きさせない。メジャーデビューアルバム「Dookie」の爆発的な成功の後、セールス的には失敗に終わり、Green Dayバッシングが巻き起こったセカンドアルバム。よく考えればあのフジのフェスティバルもRed Hot Chili Peppersがそうだったように、Green Day健在! というところを、日本国内だけではなくて、世界中にアピールする絶好の機会だったに違いない。よってあれが中止になって最も悔しがったのはGreen Day本人達だったのではなかろうか。
もう崖っぷちに立っているといっても過言ではない今、そしてこのツアー。相当のプレッシャーの中で最初のステージに上がったこの日、その緊張を紛らわすには酔っぱらうしかなかった、というのはただの深読みし過ぎか。
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Send comments to: Katsuhiro Ishizaki Last updated: 10/ 31/ 97
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