Green Day 完璧だ。

幕張メッセ - 3/18/01


大相撲の大阪場所を見て感化されたとしか思えない、ぶよぶよ相撲レスラーによるなんちゃって取り組みを含んだ前座のパンクバンドの演奏が30分にて終了。掲示板やライヴレポートでおなじみのれいくさんからチケットを譲ってもらった自分とJIROさんが、「いやあ、4月のチープ・トリック、楽しみっすね〜〜!」ってな会話をしていたその直後、そのチートリの「サレンダー」が大音量で流れた幕張メッセ。 自分の記憶としては恐らくクリエイティブマン主催のライヴでは初めての使用となるこの会場だが、荷物を預かってくれるクロークがやたら充実していて、スマッシュ主催の時のように限られたコインロッカーを争奪するような光景は見られずまずひと安心。わざわざブロック指定のリストバンドをはめさせる辺り、すでに予行演習が始まっているような雰囲気のサマーソニックは、今年こそうまくいくといいな。

30分ほど待った後、「Nice Guys Finish Last」でショーはスタート。アルバム「Nimrod」の中で最も好きな曲だけに、この出だしはかなり嬉しい。んでもってこの音の良さは一体どういうことなのだ?!!と面食らうほど、リンプやレイジとは比べ物にならないほどの音の抜けの良さ。ストラトキャスターの音がストラトキャスターの音色として確実に鳴り、ビリー・ジョー(Vo&G)のボーカルも歌詞のひとつひとつまでしっかりと聞き取れる。はっきり言ってこの会場でこの音の良さはひとつの奇跡に近いと思う。ここにまずグリーン・デイのプロフェッショナリズムを感じ、もうこの時点で今日のライヴが楽しいものになることは、自分の目にはもう明らかであった。

でも自分の目には明らかだと言いながら、幕張メッセ後方のブロックにいた自分の目には、メガネを乗せてもステージがさっぱり見えない。周りのいつどこから人や物が顔面に飛んでくるかわからないし、メガネが壊れるのを恐れることが自分に対してストレスをかけてしまうことを考えると、やっぱりこのメガネは単なる邪魔者になってしまう。かけても見えないんだから、どうせだから外しちゃえ!ってことでメガネなしになった自分の目にはステージ上の3人の姿はかすんで見えてしまっているのだが、「もうこの音さえあればいいや!」という気持ちに切り替え、超お気楽に、超前向きに、ショーを楽しむことにする。

2曲目は「Castaway」だ。ニューアルバムからの曲で「ちょっと地味かな?」と思っていたら、これがすさまじい盛り上がり! そしてここからニューアルバムからの曲がいくつか続くのだけれど、グリーン・デイといえば「Dookie」や「Insominiac」といったメジャー発初期の曲群をイメージする自分としては、この爆発振りには正直嬉しいような、戸惑うような。だって「Geek Stink Breath」や「Longview」なんかよりも歓声は大きいし、サビで上がる拳の数も多いんだもん。でも演奏する側としては、こんなに嬉しいことはないだろう。自分達の今の姿&音楽を一番好きでいてくれるファンを目の前にしてプレイできるわけだから。

そしてその演奏する側、といっても姿はよく見えないので、とりあえずビリー・ジョー・アームストロングについて。 とにかく彼の歌はやっぱり激ウマとしか言いようがない。名前が似てるからというわけではないし、血色もかなり違うのだけれども、彼の声質は70年代のビリー・ジョエルにも匹敵する、言わばアメリカ人を代表する歌い手だと思う。ここまでメロディックパンク界の第一人者としてやって来れているのも、この類まれなポップさを持つ彼のボーカルセンスに因る所が大きいと改めて思うし、もう何度となくしつこいまでに繰り返された「え〜〜〜〜〜〜お!」の掛け声も、自分からレスポンスする前にまず聞き惚れてしまったほどだったし。だからみんなも何度言われても苦にならなかったんだろうな。

そして来ました「Welcome to Paradise」。サマーソニックでは1曲目だったけど、この日はショー序盤のハイライト的な位置での登場だ。でもみんなあんまり聞いてないのかなんだか分からないけど、曲中盤の転調部分で「あーー終った」的な拍手が鳴ってしまったのはなぜ? ここでグルーブして最後の爆発部分に及ぶ大事なところなのになあ。

「プリティーな曲をやるよ。」というので何だと思ったら、別にプリティーでも何でもないような「Hitchin' A Ride」だった。ステージ向かって右側に移動したビリー・ジョーは、「ワン・トゥー・ワン・トゥー・スリー・フォー!!」というカウント部分をオーディエンスに何度も何度も繰り返させ、じらしてじらしてじらしてじらした上で最後のオーラスになだれ込むというなかなかツボを心得た演出で、「ここがプリティーだったのかな?」ととりあえず1人で納得するに至る。

わざととしか思えないショボいチョーキングから徐々にカッティングに移って行くことによってその曲の姿を徐々に現していった「Brain Stew」。そして曲の途中にてサポートのギタリストに自分のギターを手渡して「Jaded」へ。ステージ上、特にドラムセットの周りあたりをこまめにジョギングするビリー・ジョーだったが、「そういえばサマソニでもやったっけなあ」と改めて思い出させたそんな光景だった。

「古い曲を聴きたいか? むちゃくちゃ古い曲を聴きたい?」と問いかけた上で始まったのは「2000 Lights Years Away」。そして「Knowledge」へ。途中でサポートのサックス奏者が出てきてアドリブでのソロをかましていたのだが、ここでもうお約束となりつつある、客にギターを弾かせる演出が始まった。でも今日は今まで自分が見てきたギグとは違って、ギターのみならずドラムもベースも客に弾いてもらうという趣向になっていたのだが、「ドラムヤルヤツイルカァ?」と聞かれてステージに上がった緑色の髪を持つ彼は、ライドシンバルを軽快に叩き、小節の頭にバスドラを入れながら、しっかりと8ビートのドラムを叩いていた。まさに、「ちくしょーーー!! むちゃくちゃうらやましい!!!」と思わずにはいられない光景だったのだが、ベースに選ばれた彼もしっかりとマイク(B)のベースラインをコピーしており、ギターに選ばれた女の子も、ストラップが長すぎて座って弾くしかなかったものの、一応しっかりとコードカッティングできていた。 いやあ、この3人で新しいバンド組めばいいじゃん!と思ったのは言うまでもない。

この後はサマーソニックの時と同じく、その彼らにステージダイブをさせた直後に「Basket Case」。さすがにこれは特別な曲と見えて、ここまでボーっとステージを眺めていたお客さん達も、ブロック最前列目掛けて突進。ほんと、あっという間に自分の周りから人がいなくなってしまった。でもその代わり踊るスペースが十二分に取られたため、ほんと久しぶりに気持ちよく飛び跳ねることができて大変よかった。次の曲は「She」だし、自分みたいな初期からのファンにとってはもう言うことは何もありません。

ビリー・ジョーのアルペジオのフレーズだけで大歓声の「Minority」にてショーの本編は終了。アンコール、というかちょっと小休止を取っただけでステージに舞い戻ってきたビリー・ジョーだったが、ここで弾き語りで「カンパイ〜〜♪ トキヨー〜〜♪」との謎の歌を披露。オーディエンスも一緒になって歌ったので、「That was cool!!」という言葉が出るほどご機嫌になったビリー・ジョー。そしてそのまま1人でスポットライトを浴びたまま「Good Riddance」へ。強弱を巧みに操ったギターカッティングに乗って歌われるこの曲では、多くの人がサマーソニックラスト直前に上がった花火を思い出したことだろう。ベックの「One Foot In The Grave」にも匹敵する、まさに感動的な歌とギターだった。

ビリー・ジョーがアコギを弾くのを初めて見せてもらった「Warning」。そしてやはり同じくニューアルバムから「Waiting」。ステージからメンバーが去り、ドラムのトレがフロアタムを投げ捨て、シンバルをぐちゃぐちゃにしてしまったので、もう終わりかなぁ?と誰もが思った直後、サクっとステージ横に立っていたサポートギタリストがアコギで柔らかいコードストロークを奏で始めた。ニューアルバムラストに収められている「Macy's Day Parade」だ。オーディエンスからなんとも言えない溜息混じりの感嘆の声が挙がる。ドラムセットを壊した振りして、実はバスドラとスネア、そしてハイハット類はそのまま残していたトレの業もなかなかなものであったのだが、そんなミニマムなセットによって鳴らされた「Macy's Day Parade」はほんと感動的だった。まあこれまでのグリーン・デイにしてはちょっとドラマチックに決めすぎかなあといった感も無きにしもあらずだけれども、とにかく自分は最高の形でこの1時間40分ほどのショーを締めくくったと思う。

以前、テキサスのライヴハウスで彼らのライヴを観たときも書いたように、グリーン・デイはとにかく徹底的にかつストイックなまでにプロフェッショナルなパフォーマーだということに尽きる。アマチュアっぽさを売りにしたようなチマチマしてダラダラしたライヴが大嫌いな自分にとって、グリーン・デイのこの清清しいまでのプロフェッショナリズムを目にすると、ほんと自分の身が引き締まるような気がしてならない。俺はここまで自信を持って人を楽しませるだけのプロフェッショナルな業を持っているだろうか?と自問自答するとともに、そんな業の獲得に向けて明日からまた頑張ってみるか、と改めて姿勢を正してくれるバンドは、グリーン・デイ以外に見当たらない。



  1. Nice Guys Finish Last
  2. Castaway
  3. Church On Sunday
  4. Blood, Sex And Bouze
  5. Geek Stink Breath
  6. Longview
  7. Welcome To Paradise
  8. Hitchin' A Ride
  9. Brain Stew
  10. Jaded
  11. 2000 Lights Years Away
  1. Knowledge
  2. Basket Case
  3. She
  4. King For A Day
  5. F.O.D.
  6. Minority

  7. Tokyo Kanpai Song - Good Riddance
  8. Warning
  9. Platypus(I Hate You)
  10. Waiting
  11. Macy's Day Parade
(最初の方がちょっと怪しいです)




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Last updated: 3/ 18/ 01