The Hard Night's Day テキサス訛のビートルズ

Texas A&M University-Commerce, Commerce, TX - 6/10/97


名前を見て想像の通り、ビートルズのコピーバンドである。ダラスのライブハウスのハコバンであるというこのThe Hard Day's Nightがうちの大学で無料野外コンサートをやることになった。といっても、キャンパスの狭い中庭に数十人か数百人を集めてやったライブであるが、テキサスとはいえ当然そこはビートルズ、お年寄りから子どもまで幅広い層の人間が集まった。

バンド登場。ポール役のベースが左利きであること以外、別に本物に似ているわけではない。歳も20代か。MCもリバプール訛りならず、テキサス訛りのビートルズである。バンド名の由来の通り「Hard Day's Night」でショーはスタートする。演奏はまあ、ごく普通のレベルで(ビートルズだからなあ、そのあたりは)、ジョンもがにまたでやるわけでもなく、ヘアースタイルもごく普通のアメリカ人である。「She Loves You」「Ticket to Ride」「I Feel Fine(しっかりイントロでギターのフィードバックも入れていた)」などの初期の代表曲を演奏する。客もそれなりに拍手喝采。するとジョン(役)がキーボードに座り「Lady Madonna(!)」「Don't Let Me Down」「I'm Down」などを披露して見せた。さらにマニア泣かせの曲「Dr. Robert」「Getting Better」などもやる。ここで若者は帰る。そして「Back in the USSR」「Yesterday」「Get Back」を披露し、「Twist And Shout」で本編は終了する。ここで年寄りは家路を急ぐ。まばらな拍手の中で、メンバー再び登場。様々なリクエストが客から飛び出す。彼らはその中で一番声の多かった(といっても2、3人)「I Saw Her Standing There」を演奏する。そして個人的に最もやってほしかったこの曲「ターンタタタタター、タター、タタタ」…つまり「Day Tripper」を一番最後に聴かせてくれた。私は一人でほくそえんでいた。

結局世界に何千、何万といるであろう、ビートルズコピーバンドの中の一つのライブだったわけである。それ以上でなければ、それ以下でもない。このライブで人生が変ったりなんてことは誰にもありえない。でも楽しかった。イントロが始まるたびの、あのニヤリとする瞬間。たまらない。私は部屋に戻るなり、ためらうことなくビートルズのアルバムをCDプレーヤーにかけた。しかしそこにあのニヤリとする瞬間はない。コピーバンドってそういうものなのだと思う。


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Last updated: 8/ 25/ 97