H.O.R.D.E. Festival '97 |
元気な人と疲れた人 |
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■ Saratoga Performing Arts Center, Saratoga Falls, NY - 8/10/97
featuring Beck + Kula Shaker + Primus + Neil Young + Ben Folds Five + etc...
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HORDE Festival '97 at a glance |
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以前ロラパルーザ関係のページに「これが自分にとって最初で最後のフェスになるであろう」といったことを書いたが、実はまたチャンスが訪れた。それが去年から始まったこのH.O.R.D.E. Festivalである。フェスの意図は良く分からないのだけれども、ロラパルーザと同様にある一定数のバンドが全米各地を興行してまわるタイプのフェスティバルで、去年はBlues Traveler, Lenny Klavitz辺りが出ていたらしい。今年はトリがNeil Young & The Crazy Horseで、その他にMorphine, Sky Cries Maryなどが日替わりで出るような感じ。私がこの日を選んだのはもちろん、Beck, Ben Folds Five, そしてKula Shakerが出るからだ。恐らくこのツアーで最高のメンツが出る日であろう。
会場のSaratoga Performing Arts Center(SPAC)はSaratoga Fallsといういわゆる観光名所のようなところにあって、巨大な公園の中にある。どこからどこまでが敷地なのか分からないのだけれども、多分10万人は行っても何ら問題のない会場である。多少渋滞には巻き込まれたが、それほどストレスを感じることのもなく到着。会場時間から2時間ぐらい遅れて入場する。
私はその中心となるSPAC内の椅子席のチケットを確保していた。入場の際にSPAC内の人は紫のリストバンド、その他の芝生席は緑のリストバンドをつけなければならない。紫の人は極小数で、なんか優越感のような変な気分。この日のメンツはSoul Coughing, Toad The Wet Sprocket, Primus, Ben Folds Five, Beck, Kula Shaker, Neil Young & The Crazy Horseが主なところで、その中でBen Folds FiveとKula Shakerはセカンドステージへの登場。このフェスの面白いところは、メインステージとセカンドステージが連携していて、メインステージのセットチェンジの間にセカンドステージの演奏が行われるといった具合。よってセカンドステージの演奏時間はおよそ30分。一応両者間を往復すれば全てのバンドが見られるというわけである。
メインステージは椅子席、その後ろが芝生席。その後方にセカンドステージがあって、そっちの方が賑わっているような感じ。屋台もたくさん出ていて、飲食物以外はこれが軒並み安い。ペンダント、ブレスレット、Tシャツなどは10ドル以下が当たり前。作りもそんなに悪くなさそう。記念にどうかとも思ったが結構自分の財政状態がすでにかなり圧迫されていたのであきらめる。
SPAC内に入ると、まず天井の鉄筋が気になる。もしやと思ったが、演奏が始まってやっぱりという感じ。音が金属に反射してノイズを作り出している。非常に音が悪い。少しがっかりだ。その他目に付いたのが、今更ここで言うまでもないが、椅子席での客のマナーの悪さ。勝手に前の空席に座っては、セキュリティーに注意されすごすごと帰っていく客。しかしセキュリティーの目を盗んで勝手に前に来る奴が後を絶たない。「何が悪いんだ」と必死に口論している常識はずれの連中もいる。こういう連中は別に前に来て踊るわけでもなくただボーっと突っ立っているだけ。こっちとしては邪魔以外の何者でもないわけである。椅子席のマナーは間違いなく日本の方がいいよ。本当にむかつく。
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主な出演者のライヴ |
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この日の私の目玉は何といってもBeck、そして半年ぶりの再会Kula Shaker。よってこの両者のレヴューが中心になる。他のアーティストに関しては簡単にここで触れておく。
- Soul Coughing
- 日本でも人気が上がっているようだが、面白いバンドだ。都会的なファッション身を包んだメンバーはジャズからロックからロカビリーまで幅広い演奏を聴かせた。キーボードが身体の横幅ほどもない小さい奴でかわいらしかった。スネアの抜けも良かったし、ウッドベースも効果的だと思う。
- Toad The Wet Sprocket
- このバンド正直あまり好きではない。テクも確かだしいい詩を書いているようだけれども、まずあのファッションはどうにかならないものか。ギターとベースのTシャツに短パン、そして白いソックスにシンプルなスニーカー。ヴォーカルも似たようなもので、客よりも地味だ。曲調も皆似たように聞こえ、今のアメリカのチャートにいる典型的なバンドの一つ、という印象しかない。知ったのはこの日がギタリストの誕生日だということ。バースデイソングとケーキが捧げられていた。
- Primus
- 予想はしていたが、ステージ前のモッシュ・ピットに大量の人がなだれ込んだ。 一瞬無法地帯と化す。ものすごい盛り上がりでモッシュを繰り返す。ステージ上ではあのウッド・ストック94で見たあのPrimusそのままに、ポップと言う言葉とは無縁の演奏を繰り広げた。飛んできたタオルがベースの上にかかってしまい、いったんプレイがストップすることも。やっぱりこのバンドのテクはすさまじいものがあって、多分世界一といっても過言ではなかろう。多分普通のポップソングでも書いたら、大ヒットなどは極々簡単なのではなかろうか。しかし彼らは今の自分達のおかれた位置が一番心地よいのであろう。しかし唄いながらどうやってあんなベースラインが引けるのか、本当にものすごい人達である。
- Ben Folds Five
- PrimusとBeckの合間のセカンドステージでの演奏。レコードは聴いていたのだけれど、それとはまた違った印象が。驚いたことに女性ストリングス隊との登場。さらに驚いたことはメンバー各自が様々なテクニックを持っていて、ギターレスという編成を我々に感じさせない。ベースは高音弦を使ってギターのようなフレーズを弾くこともあれば、ギターシールドをベースから引き抜いてそのピンとコネクターの接触する際のノイズを使ってリズムを出したりと、なかなかの工夫を見せる。ピアノもマイクを使って面白い音を出していたっけ。しかしBeckのメインステージへの登場を間近に控え落着かない私は、ステージ半ばでこの場を後にする。
- Neil Young & The Crazy Horse
- このツアーのトリ。しかしながら何せ今最もトレンドなBeckの後では具合が悪かった。かなりの客がその演奏の前に帰ってしまったようで、モッシュピットに押し寄せる人も少なかった。なおかつ正面からスポットライトが当たらないので非常に表情が読めない。しかし軒並みの言い方だが、50を超えてあのステージングには本当に舌を巻く。大音量で髪を振り乱してソロを弾きまくるNeil Young。特に弾き語りは最高にカッコ良かった。名曲「My My, Hey Hey」も聴けて大満足。最後はギターをフィードバックさせて帰っていった。
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Beck |
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さあ日もどっぷり暮れた頃、いよいよBeckの登場である。初めて見る彼のステージ。予定時間より少し早く開演だ。バンドメンバー(多分8人だったと思う)がステージに姿を見せた後、Beckがノシノシと登場。この暑いのに長袖の白いスーツにグレーの帽子。そして白いうちわを持っている。
一曲目は「Devils Haircut」。Primusを凌ぐようなフロアの盛り上がり。Beck叫ぶ、叫ぶ。煽る、煽る。テキサス出身として嬉しかったのは、彼が「おまえたち」を意味する言葉として、「you all」とか「you guys」ではなく、アメリカ南部の方言「ya'll」(ヨーって感じ)を使っていたこと。 多分これはこの言葉を黒人が好んで使うことからBeckも影響されたのだと思うが、しかしこれでグッと親近感が湧いたことには違いない。しかしBeckってあんなでかい声張り上げて客にものを言うとは知らなかった。ほのぼのBeckという日本のメディアなどから作り上げられたイメージとはかなり異なっていて、逆に恐いぐらいだった。
4曲目に早くも「Loser」登場。この時彼は自分のギターアンプに両足でいっぺんに飛び乗った。かえるのようなこの姿が滑稽で、多分これをショーの間3回ぐらい繰り返したと思う。最後のときはさすがに危ないと思ったのか、ギターアンプをわざわざ手前に一生懸命づらしてからジャンプしたっけなあ。
「Novacane」「The New Pollution」「Hotwax」なんかを演ってブレイクダンスも見せた後、弾き語りで「Pay No Mind」。決してNeil Youngにも引けを取らない素晴らしい演奏。しかしこの人本当にハーモニカがうまい。客に拍手を要求したもののテンポが速すぎて「ちょっと速すぎるぞおめえら。」といった一幕も。
「Jack-ass」で再びバンドに戻ったBeckは「Where It's At」で全快になる。DJが皿を回し、半袖になるBeck。きれいにアイロンされた白いシャツだ。しかし背広を脱ぎ捨てるのかと思いきやまた着る。はたまた客に飛び掛かられ危ない一幕も。サびをみんなで大合唱。ラジオでもよくかかっていてこの曲の人気は絶大だ。
この曲が終わってBeckはステージそでに下がったので、私はてっきり終わりかと思った。間髪おかずKula Shakerのでるセカンドステージへと勢いよくダッシュする。するとまたほどなくしてメインステージの方から歓声が聞こえてきた。どうやらBeckがまた出てきたらしい。曲は「High 5」。もう戻れない。中間地点で右往左往する。
- Devil's Haircut
- Novacane
- Minus
- Loser
- The New Pollution
- Hotwax
- Derelict
- Beercan
- Pay No Mind
- One Foot In The Grave
- Jack-Ass
- Where It's At
- High 5
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Kula Shaker |
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Beckが終わったのを確認して、再びセカンドステージ方向へ駆け寄る私。ステージ左側に着くやいなやメンバー登場。半年前にダラスで観て以来の彼らの姿にまず驚いたことは、ヴォーカル、ギターのCrispianの変貌ぶりである。恐ろしくたくましく精悍な顔つきしている。髪形も少し変わったような印象。ブラウンの皮ジャンに、これまた黒い皮のパンツ。暑くないのだろうか。それからキーボードのJayのひげが伸びたこと。ますます60年代後半のミュージシャンのように見えてならない。
例のごとく「Hey Dude」でショーはスタート。スライドギターでゆっくりと間合いを計った後、イントロへ。このイントロ部分、以前より長くなったような気がする。しかしまだまだ彼らの名前はアメリカ人の間には浸透し切れていないといった感じで、この曲を知っている人は少ないようだ。相変わらずステージ上を飛び跳ねるCrispianのギターソロも、長いツアーのせいか多少アレンジが加えられていて、オリジナルとは少し違っていた。この日のセットリストは以下の通り。
- Hey Dude
- 303
- Grateful When You Are Dead
- Tattva
- Hush
- Govinda
2はオリジナルよりややテンポダウンした演奏。やっぱり人気があるのが4と6のインド風の楽曲で、前の方ではモッシュまで起こった。この2曲、アレンジも凝っていたような感じで、以前より長く、幻想的な雰囲気に拍車をかけていて、更にその魅力を増していたように思った。時間の制約で6曲しか聴けなかったのが残念ではあるが、その中でもやっぱり彼らのグルーヴは健在で、非常に嬉しかった。
演奏を終え、ステージを降りるメンバー達。このステージを降りる姿が丸見えで、これからメインステージでNeil Youngの演奏が始まるというのに、私は彼らの姿をじっとフェンスごしに眺めていた。バックステージは丸見えで、と言うよりもバックステージなどという凝ったものは何にもなくて、ただだだっ広い草っぱらの真ん中に、よく公園なんかにおいてある長テーブルと椅子が2組あるだけ。英国でナンバー1をとったことのあるバンドとはいっても、アメリカでは大変なんだなあ、などと思っていると、Crispianは着ていた皮ジャンを脱ぎ捨てて上半身裸になる。隣に座ったドラムのPaulの話にも上の空といった様子で、ソフトドリンクを一本手にしたっきりうな垂れて動こうとしない。ベースのAlonzaはファンと写真を撮ったり、Jayも女の子(多分彼女)と仲良く話したりして元気そうなのとは対照的であった。
ひょっとしてサインなんかもらえるかも、などと密かな期待をしつつペンと紙を握り締めてフェンスの外から一部始終をボーっと眺めていること数分間。Crispianの横にいた赤毛の女性が我々の方に寄ってきて、紙とペンを持っていってくれたのである。私のペンを使って次々とサインをするPaulとCrispian。ほどなくして同じ女性がサイン入りの紙とペンを持ってきてくれた(注:後にこの女性はCrispianの奥さんだということが判明)。隣の女の子が「Crispianと握手したいんだけれど。」というとその女性は「彼は今病気だから、ごめんね。」、と言って丁重に断る。来日中も体調が悪かったというから、この人ひょっとして病弱な体質なのかも。肉食え、肉。
まあ音の悪いことを除けば、楽しいコンサートではあった。しかしこういったフェスティバル、客のほとんどはその出演ミュージシャン達が好きだというよりはむしろ、フェスに参加することが、なんかトレンドでCoolだと思ってその場にいるような感じがしてならない。モッシュももはや形式化されすぎていて、あれ自体一体何の意味があるんだろうかと考えてしまう。飲んで、食って、暴れて、挙げ句の果てにきれいな芝生の上にゴミを四方八方散らかし放題。フェスってそんなもんだよ、と言われればそこまでであるが、何か釈然としない気持ちが残った、そんなフェス体験2度目の私であった。
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Send comments to: Katsuhiro Ishizaki Last updated: 8/ 25/ 97
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