■ 渋谷クラブクアトロ - 5/17/98
これがアルバムを一枚しか出していないバンドのライヴかあ、本当にい?!!!? 持ち歌が少ない分とてつもなく短いショーになるのではないか、という戦前の予想とは裏腹に、この日のジャグアーのライヴはオアシスの武道館ライヴよりもはるかに長い、なんと2時間!! 「もっともっと」というオーディエンスの声に促され、バンドもその熱意をはるかに上回るようなハイテンションの中で繰り広げられる中で、これこそジャグアー始まって以来の最高のショーになったのではなかろうか。
と言ってはみたものの、開演前はこんなに素晴らしいギグになろうとは到底予想だにしていなかった。まず、お馬鹿なKatsさん、なんとこの人おうちにこの日のライヴのチケットを忘れてきてしまったのだあああ!!! 全てを準備万端に整えていたにもかかわらず、肝心のチケットがなければ何の意味もない!! 実のところライヴに行く時にチケットを家に忘れて取りに戻ったなどということは今回が始めてではなく、何を隠そうこれが3回目。今回の場合、JRの切符はフリー・チケットだったため金銭的には事無きを得たが、当然のことながら時間が非常に危なかった。この日はライヴの前にレコ屋巡りなども企んでいたのだが、そんな予定は一瞬のうちにしてパー。チケットを家に取りに戻り、ライヴの会場に駆けつけるだけで精いっぱいな感じである。
そんなこんなしてどうにか渋谷に着くも、さらなる不幸が私の身に襲い掛かる。何を思ったか私は、あの艶っぽいエリアにある、渋谷ON AIRに行ってしまったのだあああ!! ON AIRの張り紙を見て頭が一瞬パニックになる私。「酒井法子コンサート? の、のりぴー? な、なんのこっちゃい?」。しかし手元にあったジャグアーのコンサートチケットをもう一度よーく見ると、そこには「渋谷クラブクアトロ」の文字があるではないか!!! もう開演時間の6時はとうの昔に過ぎてしまっている。慌ててクアトロのある渋谷パルコにダッシュ!! ゼエゼエ言いながらパルコの4階にたどり着くも、ああ、バンドの音が聞こえる!!! そう、もうライヴは始まってしまっていたのだ。我ながら自分の馬鹿さ加減にあきれてしまい、その場にへたり込んでしまいそうになった。
傷心しながら、クラブ内に潜入。女の子が6、7割という感じでほぼ満員だ。ああ「Into Yesterday」だあ....。ええ曲やなあ、と物思いに耽けるもつかの間、フロアの左サイドへの潜入に成功。マルコム(Vo.& G)はすぐ目の前だ。「ここトーキヨーに来れて嬉しゅうござんす。あんたらもファッキン・ナイスでございますね。ああラヴリー・ラヴリー」というマルコムのMCが聞こえる。そのマルコムはブルーのTシャツを着ており、ジュリアン(B)、タム(Drs)はそれぞれレッドとオレンジのTシャツを着ている。マルコムは想像していたよりもふくよかな感じで、黒のギブソン・レスポール・スタンダードを握る左手も思いのほかごっつい。なおかつこの人、ギターにカポを付けたり外したり、チューニングを合わせたり変えたりと結構忙しい。そのせいで曲間には妙な間が生まれるのだが、そこはバンドの軽妙な話術で上手くかわしていた。ベースのジュリアンが話し出そうとすると、マルコム:「おめえリードシンガーか?」、ジュリアン:「すぐに受け継ぐよ」と言ってみたり、マルコムがギターのチューニングでポンポンと音を出すのを見てドラムのタムは、「これいい曲だろ?」と冗談を言ってみたり、マルコムが「コ・ン・ニ・チ・ハ。いやあまだアリガトとちょっと戸惑うなあ。」と言うと、タムは「ヨク・ヤッタ」とぼそっと言って会場の爆笑を誘う。マルコム:「それどんな意味?」タム:「Well-doneってことさ」などと和む一幕も。ミネラルウォーターを飲みながら「ごめん。みんな英語よく分からないってことは俺らも分かってるつもりなんだけどさ・・・」などとマルコムも弁明していたが、オーディエンスのほうは彼らの英語はよく分かっているようで、バンドメンバーの問いかけに対して結構敏感に反応しているようだった。外国人スタッフがパチパチとステージ上で写真を撮っていたのが気にはなったが...。
途中、タムのキーボードとマルコムのアコギによる、アコースティックナンバーなども数曲交えながら、ギグの方はハイテンションのまま進行してゆく。個人的には割と早めのナンバーよりも「A Vision」のようなゆったり目のナンバーが良かったように思う。グルーブに身を任せていると何もかも忘れることができるような、そんな錯覚にも襲われてしまった。アレンジは曲によってはレコードそのままのものもあれば、また逆にインプロヴィゼーションを大胆に導入したものもあるなどメリハリがあって、とても新人バンドとは思えない堂々としたステージングだったように思う。
もうそのインプロヴィゼーションの極致、「Mantra」で本編は終了。「家に帰りたくないよお。東京は本当に素敵な街で、恋してしまったみたいだよ。」などと言いながらも帰っていくメンバー。もう演奏時間はすでに一時間は超えていたし、ひょっとしてこのままで終わりなんじゃないか、とも思っていたのだが、不思議なSEにのって再びメンバーがステージに登場。待ってました「Up And Down」だ! まずギターなしでボソボソっと歌い、そして怒涛のギターリフヘ! 当然のことながらフロアはぐしゃぐしゃ状態になる。そしてこの曲が終わると、「みんな楽しんでる?!」「イェーイ!!」「本当に?」「イェーーーイイイ!!!」「じゃあこれが最後の曲なんだけど」「ノーーーー!!」「多分ね」「アハハハハハ!!」......んんん...もうマルコムと客との息もぴったりじゃあああ。思わず私は「笑っていいとも」を思い出してしまったよ。
そして「アルバムの最後に入ってる曲」と言って紹介したアコースティックな「Closer To The End」を終えて、再び袖に下がるバンド。今度こそはほんとに終わりだと思い、おもむろに帰ろうとした私だが、まだまだこれだけじゃショーは終わらない。再びバンドメンバーがステージに姿を現わすと「これはBut Tomorrowのシングルに入っている曲なんだけど...。今まで一回もステージではプレーしたことがないんだ。これが始めてなんだよ! 忘れてないといいんだけど。」と言って始まった曲がこの日のサプライズ「Then I Forget」であった(Thanks、ともりんさん!!)。正直なところ聴いたことのない曲なので、マルコムが正しく歌っていたかどうかは分からなかったのだけれど、それはそれでなかなか良かった。それよりも何もそれはこの日のショーが彼らにとってどれほどスペシャルなものであるかがうかがえ知れる場面でもあった。
そして再びエレクトリックセットに戻り、「今日はオールナイトで演りてえよお!!!」と叫ぶマルコム。この日が日本最終公演ということもあり、関係各位への挨拶をステージ上から一通り終えると、なぜかフロアからは「Do you like Japanese girls?」の声が......。っとこの質問には答えなかったマルコムであるが、ここでリクエスト大会をする、とのお言葉が彼の口から聞かれた。ベースのジュリアンも「どの曲? どの曲?」と言うので様々な曲名がオーディエンスの方からあがったが、私の耳には「But Tomorrow」 のリクエストが一番多かったような気がした。しかし「2回もプレーしなくちゃなんないのかい」と言って始まったのは「I Quit」。そしてもう1曲は「Coming Alive」。この日のセットリストの上半分がタムの横から見えていて、ギグの最初にこの曲がプレーされていたことは分かっていたのだけれど、遅れて来たため数曲を聴き逃してしまった私にとっては、これはこの日初めて聴くナンバーだ。もう最後のアウトロ部分は客との掛け合いもさることながら、静から動へと切り替わった時のあのマルコムの危機迫らんばかりのあの表情。ジュリアンも汗を飛び散らしながら最後の力を振り絞っている。素晴らしい、素晴らしすぎる!
もうとにかく2時間弱という予想打にしなかった演奏時間もさることながら、特にマルコムが絶好調でぶち切れまくっていたのが印象的であった。もしこの先彼らがオアシス並みにビッグになる日が訪れたのならば、この日のライヴはロック史上に残る名演として語り継がれることになるであろう、とまで言い切れるほどすさまじいライヴであった。この言葉が幻のものとならないためにも、ぜひ彼らには売れて売れて売れまくってほしいと願わんばかりである。また来たら絶対に行きます。
- Coming Alive
- Rubber Band
- Into Yesterday
- But Tomorrow
- Ring Road Around My Heart
- I Quit
- Sweet Soul Music
- Better Blue
- Together
- Take Your Time
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- Nothing
- A Vision
- Mantra
- Up And Down
- Closer To The End
- Then I Forget
- I Quit
- Coming Alive
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Send comments to: Katsuhiro Ishizaki Last updated: 5/ 17/ 98
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