Jerry Lee Lewis だまされた・・・

The New Daizy Theater, Memphis, TN - 12/26/96


われわれは騙されていた。Jerry Lee Lewisは最初から出る予定がなかったに違いない。あの客の反応はそうとしか思えない。われわれのような、無垢な旅行者を騙すなんて...。

その時、私は大学の冬休みを利用して、日本から来た友人と、アメリカ南部を旅行中であった。その途中で立ち寄ったメンフィス。当然我々は、プレスリーの家と、ブルースのメッカで、B.B.キングの店などもある、Beale Streetを訪れた。その通りの外れにあるライヴハウスの表の看板に「Jerry Lee Lewis公演」の文字はあった。今何歳だか知らないが、あのロックン・ロールを作った御大であり、「ブルー・スエード・シューズ」を作ったあの天才であり、ジョン・レノンもうならせたあのピアノの達人である。その人のライヴが翌日にある。これは観に行かなくては...。それが間違いだった。

8時過ぎに会場入りする。いっぱしの劇場といった風情で、テーブル席ではみんな飲んで食っていい気分。やっぱり心なしか、年齢層は高い。しかし突然、すさまじくきれいなねいちゃん達が目の前を通ったりもする。客は少なかったけれども、時間が時間だし、まだまだこれからだろう、と思っていた。これからだんだん客が減るとも知らずに...。 ステージでは前座の演奏が既に始まっており(今思えば、これらがメインだったんだなあなんて)、結構うまいポップグループが演奏していた。特にギターはさりげなくバカテクを見せたりする。しかし、ベースは誰かに似ているなあ、なんてそんなこんなでボーっとしていると、演奏は終わった。

次はなんとロッド・スチュワートのカバーバンドの登場で、ロッド役は何とさっきのバンドのベーシスト。遠めに見るとよく似ている。「マギー・メイ」「ホット・レッグス」「今夜きめよう」などのヒット曲を連発する。なぜかフェイセズ時代の曲はやらなかったが、MCではブリティッシュ・イングリッシュで客の笑いを誘い、曲が終わるたびに、「Very kind, very kind」を連発していた。近くに来たのだが、良くみると本物の顔を上下に圧縮したような顔をしていて笑えた。友達は寝ている。このロッドのそっくりさん、すげえきれいな女の人を連れていた。にせものでも女には持てるらしい。

次に出てきたバンドが、いかにもなブルース系ロックバンドで、即座にブラック・クロウズを思い出した。しかしこのバンドの違うところは、百億光年経っても売れなそうなことで、かったるいグランジ系ボーカリストと、ジミー・ペイジをコンクリートに百万回叩き付けたような風貌のギタリスト(地元では有名ならしいが)らによる、至極まっとうなブルース・ロック。当然友達は再び寝に入る。私もこっくり来た。

熟睡一歩手前でこのバンドの演奏が終わると、次はいよいよ御大ジェリー・リー・ルイスの登場の番である。ステージ中央にピアノがセットされ、まるで、新学年になって新しい先生を教室に迎える児童のような気持ちで、氏の登場を待つ。しかしここで悲しい知らせが。

「ジェリーは本人の都合で今日は来れません」

看板に思いっきり偽りあり。期待は一気に溜め息に変わる。金返せと言うような気持ちにもなれない。しかし他の客の様子を見ると、特にがっかりした様子でもない。これってみんな知ってたの? 我々2人が完全に騙されたとしか言いようがない。かわりにメンフィスの楽器屋のピアノ弾きと、ベーシスト・ロッドと、崩れジミー・ペイジが出てきてジェリー・リー・ルイスの曲を演奏したが、こっちは思いっきり虚脱状態。飯も食ってない我々は、さっさと劇場を後にした。しかし彼らの演奏は、相当リハーサルをつんだように聴こえたなあ、なんて思ったりして。


| Back | Home |


next report: Lenny Kravitz (11/18/95)



Send comments to: Katsuhiro Ishizaki

Last updated: 8/ 25/ 97