King Brothers 王様の負け

渋谷AX - 3/3/01

with Number Girl


「お、おっかしいなぁ・・・・」

腕組みしながら考え込んでしまった終演後。あんなもんじゃないだろうキング・ブラザーズ。 2年前、ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン新潟公演のオープニングアクトとして見せた、メインのジョンスペを食ってしまうほどの衝撃のステージはどこへ行ってしまったんだ??

あの傍若無人に見えた3人のメンバーが、ためらって、戸惑っていた。今の彼らの人気からすれば広すぎるとも思える会場内の空気を、ナンバーガールによって暖められたそれ以上の熱気で以ってその温度を高めることのできないもどかしさ。左右にあった中型のモニタースピーカーに登って飛び跳ねることもなく、ステージダイブもたった1度のみ。これだけお客さんが入っているなら、飛んだり跳ねたり壊したり何でもかんでもやりそうなものだが、フロアとステージとの余りの熱の違いが、彼らからやる気みたいなものを奪ってしまったのだろうか? 余りにもお上品かつ清楚なライティング効果が彼らにはとても似つかわしく映り、そのくせPA卓近くで1番音がいいところにいながら、MCとボーカルはほとんど聞き取れない。しかし、こんがらがった世界をさらにグチャグチャにこんがらかしてとっ散らかしていくキンブラが、逆にこの状況をどう切り裂いてぐちゃぐちゃにしていくのか、それを楽しみにしていたのだが、せっかくもらった広いステージ領域を狭くしか使えず、「おめえら最低だ!」との叫びを聞けば聞くほど逆に彼らの懐に引きずり込まれていくキンブラのこんがらがったロックンロールが、ナンバーガール目当てで会場へ足を運んだオーディエンスの心を突き破るまでには至らなかったようだ。ギターのネックか何かに顔面をぶつけ、左まぶたから流していたマーヤの血も、ナンバー・ガールのピュアで透き通ったロックンロールを真っ赤に染めることはできなかった。

そしてそのキンブラのステージをさらに失望たるものにさせた張本人=ナンバー・ガール。申し訳ないけど、この人達、現在のところ、とんでもなく、最高。 これほどのライヴができるバンドを、メジャーデビュー直後に紹介してくれたキクさんに感謝するとともに、バンドがこんな風に変わっていく様をつぶさに見て来れた、そのことがただ単純に嬉しい。訳あって開演時間にはちょっとだけ間に合わなかったのだが、こんなとき、普通だったら会場入りしてからその場の雰囲気に馴染むのに時間がかかったりするものなのだけれど、今夜に限ってはそんなことはまったくなし。もう「ビートの塊」としか言いようがないナンバーガールの音が、フロアへ飛び込んで間もない日常レベルのアドレナリンを、体内で一気に上昇させてくれるのがわかる。「タッチ」で飛び跳ねているひさ子ちゃんを見ているだけで泣けてきて、「Samurai」の時にはほんとに涙がじんわりしてきた。「鉄風鋭くなって」を含め、レコードを聞くと肯定的な感想を持てない彼らの曲群も、肯定的どころか圧倒的としか言いようがない表情で以ってぶった切ってしまうのが彼らのライヴの特徴だが、そういったバンドと出会うのは大変に久しいことだったりする。(・・・ミッシェルだって、実は自分なんかライヴよりもレコードの音の方が好きだったりして。) テレキャスターの特徴的とも言えるクリーンなコードカッティングのキレを、これまで誰にもできなかったレベルにまで研ぎ澄まし(・・・だからすぐにチューニングが狂ってしまう?)、手数はやたら多いのに全然嫌味がなく、ぶっといグルーヴを与えまくるドラムとの相乗効果で、バンド全体がどんどん加速していく。ほんと、こんなバンドのライヴはそうそう見れませんよみなさん。観ておける時に観ておきましょう。ヤバいです、ヤバすぎます。

「王様 VS 侍!」と題された今日のイベントだったけれども、完勝したのはもちろんお侍さんの方。ナンバガのキレのいいグランドテクニックが、キンブラの凶器(狂気?狂喜?)攻撃&場外乱闘を許さなかったところが最たる勝因か? 今日の王様は、どっかに武器を忘れてきちゃったんだろうなきっと。ああ見えてもナンバガより全然若い20歳そこそこのやんちゃな王様達の次回のサムライ討伐は、こんなことじゃきっとすまないでしょう。 



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Last updated: 3/ 5/ 01