くるり 軋轢→よっちゃん→デリシャス

新宿リキッドルーム - 8/31/99

with DMBQ + Number Girl


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Number Girl

リキッドルームオープン何周年だかの記念イベントの第3弾とかなんとからしいが、とにもかくにもこのメンツ。 フジロック(くるり&DMBQ)、及びエゾロック(ナンバー・ガール)出演アーティストの組み合わせということで、とりあえず今が旬で最も勢いに乗っている日本人バンドの共演と相成ったわけである。

しかし実はこのイベントのことを知ったのはその前日だったので、前売りチケットなど持つべくもなく、行き当たりばったりの当日券狙いでリキッドに猪突猛進してみる。 そして会場に着いたのがおよそ開演時間の午後7時。 当日券あり。 オッケー。 

そして例のごとく7階に上がってみると、もうバンドの演奏が始まっている。 あ、どうやらナンバー・ガールみたい。 でも自分はてっきりナンバー・ガールが3バンドのトリだと思っていたので、かなりショック。 なにせ恒例の「九州は博多から参りました、ナンバー・ガールでございます。」という挨拶が聞けずじまいになってしまったのだから。

そしてそのナンバー・ガール。 驚くべきことに自分は、この2ヶ月で彼らのライヴを観ること3度。 最初がスリーター・キニーの前座で。 2回目がイクタくんの御好意で見せてもらった渋谷タワーレコードでのインストアライヴで。 この2回目のタワレコでのライヴはレポートを書いていないのでよくわからないと思うけど、とにかくヴォーカルの向井秀徳節が全開で笑えた。その中でも、「チケット、ソールドアウト? じゃあ作ろう。」という言葉は名文句として絶対に忘れられない。 演奏の方も最初から最後までダラダラまったりのパフォーマンスの応酬で、向井を除いた3人のメンバーでのジャムセッションもあり、ザ・フーのカヴァーもありと、ほんとなんでもありで楽しませてもらった。 よってあらためてイクタくん、サンクスっちゅうことで!

というわけで今回はリキッド・ルーム。 「ライトをちょっと照らしてもらえますか? ・・・・いやあ、よくもこんなにアタマ数そろえましたね。」と向井が言うほど、フロアは人で埋まっている。 ほんと、連中がトリでも良かったんじゃないか? と思わせるほどの熱気と笑いが会場を包み込んでいる。

実は彼らのファーストアルバムを購入したのは、ほんの数日前のことなのだけれど、正直どうにも不満。 彼らのライヴパフォーマンスに較して余りにもこじんまりとした仕上がりになってしまったような気がしてならない。 確信犯的にボリュームを抑えた向井のボーカル。 シンバル類の鳴りがやたらとやかましく感じるミックス。 ちょっとのっぺりした感じに奥へと引っ込んでしまったギターの音。 あの向井の歪んだ表情はどこへ? ・・・たぶんアルバムを先に聴いていたとしたら、ナンバー・ガールは自分の中に何も残さなかったバンドで終ってしまったと思う。

でもライヴにおいてのナンバーガールはその表情を一変させる。 よく言われる向井秀徳のシャウト。これが周りのメンバーの音を差し置いて、とにかく耳に体にまずダイレクトに飛び込んでくる。 勢い余って曲が終った瞬間に「いやーー!!(それとも「うりゃー!!」? もしくは「とりゃー!! 」?」。 スーパーカーのミキなどは問題にならないぐらい可愛いギターのひさ子ちゃんのギターは、カッティングされるために生まれてきたような赤いテレキャスターを弾く向井の激しいクリーントーンの合間をぬって、するりするりとステージの全面に押し出されてくる。 まるでジミヘンバンドのミッチ・ミッチェルか、ザ・フーのキース・ムーンか、と思わせるほどオカズの多いアヒトのドラムも、耳障りなくバンドサウンドに溶け込む。 ナンバーガールの音は薄っぺらなCDケースに収まりきれるはずもなく、自分ちのちっぽけなスピーカーではその音圧を感じられるはずもなく、ナンバーガールはリキッドルームのどでかいスピーカーを揺らしつづける。

服装はいつもの通りの洗いざらしと思われる半袖シャツの向井。 「そこの最前列のキミ! 名前は? どっから来たの? 横浜ぁ? じゃあハマっ子の○○ちゃんに捧げるこの曲、『桜のダンス』。」って感じで笑えることをたくさん言ったのだけれど、正確に思い出せる言葉はほとんどない(爆)。 まったく意味なしのブレイクダンスでカクカクカクカク。 演奏の合間に長い長い長いブレイク(=汗拭き→チューニング→汗拭き→水飲み→汗拭き→カポ付け)がしょっちゅうあって、そして何を言うかと思えば「東京の建物と建物の間には10センチぐらいの隙間がある。」と来た。 そんで『タッチ』。

向井秀徳という人のメガネは特注のものなんだと思う。 なんでも見える、なんでも見透かす、そんなメガネだ。 視界に入るものは、すべて拡大鏡のごとく大きく見えてしまう。 というか、大きく見えすぎて困ってしまう、そんなメガネなのかもしれない。 すべての事象が、大きく、時には過剰に、彼の目には飛び込んできているのかもしれない。 それは10センチのコンクリートの隙間であろうと、最前列の女の子であろうと、大きな街が透き通って見えるほど。  

そんな「透明少女」を最後に、ピクシーズ、ニルヴァーナ、ソニック・ユースのライヴではありえない、フロアーに笑顔だけを残したこのコンサート。 ・・・・・・・向井秀徳。確信犯。恐るべし。   、


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DMBQ

フジロックでやられた。 このバンドのドラム=♀。 どんな♂の目も釘付けにする彼女のドラミング。 でもね、別に彼女のドラム(というかそのエロエロ姿)だけを観に来たわけじゃないのよ。

フジロックのときも思ったのだけれど、このバンドって紛れもなく純度100%のブルース・ロック・バンドだ。 このライヴでも聴かれたのだけれど、ギタリストが何気なくイントロで弾いた、ブルースの王道、E7コードの手ぐせフレーズ。 同じ言葉を何度も何度も叫びつづけて、その合間にギターのオブリガード&タメタメチョーキング。 そのステージアクションにだまされそうになるが、マディー・ウォータースあたりが当時の聴衆に叩きつけた(当時としてはかなり)ラウドなエレクトリック・ブルースに似た感覚がここにはあると思う。

どんなに複雑なリズムを弾き出そうとも、そのルックスが他と異なってエキセントリックであろうとも、自分の好きなバンドはみな紛れもないブルースバンドだったりする。 知らぬ間にまぎれ込んでいるブルース・フィーリングを持つバンド、それはストーン・ローゼズであったりスウェードであったりシャーラタンズであったりするのだが、殊に「ギターロック」という観点からすると、ガンズ&ローゼズも、セックス・ピストルズも、プライマル・スクリームも、クーラ・シェイカーも、みな同じ線上にあるブルースバンドということになる。 ブルースに必要な5つの音。 これさえあれば上記すべてのグループのフィーリングを捕らえることができてしまう。 30年前のロックも、現代の最新のロックも、自分にとって同じ感覚で捕らえることができるそのわけは、「ブルースフィーリング」という変わらない共通の感覚が根底にあるから。 そしてそんな感覚を今もっとも色濃く持つバンド。そしてそのたった5つの音で表す目に見えない独特の感情=ブルースフィーリングを、過剰なまでのステージングと、バンドにおける各人のプレイヤビリティとで確実に体現しフロアにアピールしているバンド。 それが日本ではとにもかくにもあのミッシェル・ガン・エレファントであり、ハイロウズであり、そしてまたこのDMBQだと思っている。 自分の知る限りでは。

そんなブルース・バンド=DMBQ、この日のスタートは、まずバンドメンバー自身によるステージのセッティングに始まる。 でも誰も歓声を上げないけどね。 しかし自分にはドラムのエロエロ光線がもう眩しくて眩しくて。(・・・・ってなにがブルースフィーリングだおい。) 

ライヴが始まって、この手のバンドには珍しいサンバーストのストラトを抱えた真ん中のギタリストは鬼の形相でこちらへ掴みかからん勢いだ。 左のベーシストはテンガロンハットに変なフレームのメガネを携えてまったくもってベーシストらしからぬ動きをステージ狭しと繰り返す。 右のボーカリスト兼ギタリストは、いきなりの機材トラブルでアンプから音が出ない。 そしてドラムのよっちゃんは・・・・(後述)。

「えっと、間が持たないんで、ライヴの告知を。」「9月3日が練習で、9月4日がクラブチッタ川崎でオールナイトイベント。」「1曲を60分やって終わります。」「そんで次がギョガン・レンズと下北沢のクラブQue。」「そしてその次がズボンズと赤坂ブリッツ。」「Queの次がブリッツだぜおい!」「そしてですね、オリジナル・ラヴの田島貴男さんに気に入っていただき、このたびクアトロで彼らのライヴの前座をやらせてもらうことになりました。」「オリジナル・ラヴの前座にDMBQ・・・。 これっていいんでしょうか。大丈夫なんでしょうか。」

さすがに福島県出身の田島貴男という感じだが、このMCの中で初めてドラムのよっちゃんの声を聞くことができた! いやあこの声っていったらもう・・・・(以下何を言っても無駄に称賛の嵐なので、勝手に自主規制)。

そして彼女のドラムだが、これがまたもうすごいって言ったらありゃしない。(・・・ってこれ以上何を言っても大袈裟で、やっぱり信じてもらえないと思うので以下自粛)。

とにかく今日のライヴのハイライトは、よっちゃんがドラムセットの上に立ち上がって、ドラムスティックを両手に持ってバンザイしたとき。 いや、バンザイ、というより、よくヌード写真集なんかで、被写体の女の人が水辺に両足のひざあたりまで突っ込んで取るポーズというか、なんというか、とにかくそんな感じ。 この日のよっちゃんはいわゆるビキニスタイルだったからなおさらだ。(・・・・以下こんなエロ話ばっかりになりそうなのでやっぱり自粛。)

とにかくボーカルはよう聞こえないが、ドラムはその細かいニュアンスまでよく聞こえた 、そんなライヴ。 ブルースという憂鬱を、ドラムのスネア音で吹き飛ばす、そんなライヴ。 耳障りがいいはずのブルーススケールを、ぐちゃぐちゃに歪ませて猥雑に鳴らす、そんなブルース。 DMBQのブルースは、よっちゃんの腹筋にあると思う。


くるり

マニー・マークが心地よく流れるリキッドルームは、DMBQの流れを引きずることなくあっという間にくるりモード。 なんとなく「くるりー」って感じの男の子、女の子でフロアの前半分は埋まっているが、それよりもさらに「くるりー」って感じの男の子がステージに立っている。 くるりのボーカル&ギターの岸田なんとかクンだ。 黒のストラトキャスターを持って、ゆらゆらとアルペジオを弾き始めたのだが、胸のあたりをよーーくみると、彼の着ている服はオレンジ色したDMBQのTシャツだということがわかった。

しかしDMBQの野獣どもに較べてこの岸田くるりクンという人は、なんだか頼りないほどにか細い男だ。 某suzukiくんに似ている、と巷では言われたりもしていたが、suzukiくんよりもむしろ、自分の台湾人の友達で、「Naked」という言葉がやたらと好きな、ジャック・チェン(ジャッキー・チェンではない。)という男に似ている。 よりによってえらの張り具合がかなり似ている。 不思議に跳び回る風情が大変似ている。

「もののけひめ」という曲ではじめてその生声を耳にする岸田くんのボーカル。 ギターのカッティング音はかなりブライトだが、それに合わせるかのように彼の声もブライト。 2曲目でいきなりギターの弦を切らしていたが、たま〜〜〜〜〜〜〜〜に、ほんとにたま〜〜〜〜〜〜に、クーラ・シェイカーのクリスピアン・ミルズみたいな動きもあったりして、彼のパフォーマンスはビジュアル的にもそんなに悪くない。 しかしさらに言うと、ベースの佐藤くんの歯並びはかなり綺麗だった。 そしてついでに言うと、ドラムの森くんは、ジョンスペのドラマーになれるかもしれない。

そしてお待ちかね、岸田くんのMC。 いや、正確には、岸田くんとドラムの森くんのMC・・・・・・じゃなくて通訳。

岸:「Hello. 」
森:「こんにちは。」

岸:「We are Qururi.」
森:「私達はくるりです。」

岸:「Sorry, I can not speak Japanese. Only speak English.」
森:「すいません。私は日本語を離せません。英語しか話せません。」

岸:「We are challenging.」
森:「私達は挑戦しています。」

岸:「We are going to............worldwide.」
森:「私達は世界を目指しています。」


・・・・当然場内大爆笑。 特に自分は、その台湾人ジャック・チェンと話し方が思いっきり被ってしまい、胃がつりそうになった。 

さらに、

岸:「I wanna.... I wanna talk about train......Tokyo train.」
森:「私は東京の電車のことを話したい。」

岸:「I hate summer 」
森:「私は夏が嫌いです。」

岸:「because」
森:「なぜなら」

岸:「recently」
森:「最近」

岸:「air-condition」
森:「エアコンが」

岸:「ah...... air-condition of Tokyo」
森:「電車の空調が」

岸:「is poison for me.」
森:「私にとっては毒だからです。」


・・・・かなり素敵だ。曲間でドリンクを飲みながら、小声で、

「hmmm.....Delicious.....」

と言ってしまうほど徹底した岸田くん。結局メンバー紹介まで英語で通した。よって最後まで自分は彼の日本語を聞けなかった・・・・。

曲は一番最近のシングルを試聴したことがある程度なのでよく知らないのだけれど、レコードよりもボーカルの音像が立っていて、やっぱこのバンドのメインは岸田くんの書く詞なんだなあ、ってことを改めて感じさせたりして。 ベースの佐藤くんは、イーグルスのティモシー・B・シュミット的な美味さがベースプレイ、コーラスの両面に見られてよかった。 どこがどういい、というわけでもないのだけれど、とにかく良かった。 なんか安心した。

アンコールを求める拍手が鳴り止まない中、ギターのフィードバック音だけを残して潔くステージを後にしたくるり。 激しさと静けさの中で、岸田くんはなかなか出来る男である、ということを知った。  



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Last updated: 9/ 3/ 99