■ 赤坂ブリッツ - 1/17/99
いきなり笑った。ど、ど、どうしたんだポール・ドレイパー。何がきみをそんなに変えたんだ? くねくねくねくね、ってあんた。リズムと全然合ってないのにやけになって身体くねらせてまったくもう〜。ほんで顔がいたって真面目なもんだからうちらはどうしていいのか分からないではないか。まさか本気で笑わせるつもりだったのかぁ、ポール・ドレイパー!!?? そんな風に心の中で笑いが渦巻く中、演奏された曲は「Negative」。これが始まった瞬間、ステージ後方に「MANSUN」のロゴ入り垂れ幕(?)が登場した。基本的には前回の来日とほとんど同じスタート。それまでのSEとしてセックス・ピストルズの「No Feeling」「Bodies」「Liar」が流されていたのもまったく同じ。ポールの衣装が前回のHMVのイベントのときとも同じように見えた。ギターのチャドのエクイップメントも同じ。マーシャルの古いコンボとVOXのコンボのコンビネーションだ。ポールはマーシャルのスタック。ストーヴのベースはやはりプレシジョン風のやつだ。変わっていたのはチャドの衣装がいいとこのぼっちゃん風だったこと、アンディーのドラムセットが青色だったこと、そしてやっぱりポール・ドレイパーが踊っていたことか・・・・・。腰を振り、手を振り、頭を振り・・・・あはははは。ごめん。 2曲目はチャドがギターをフェンダージャガーに持ち替えて「Being A Girl」。いやあ、しかしみんなよく歌うなあ。前回の来日時に比べて圧倒的にみんな歌詞を覚えている感じ。そして驚いたのがこの曲は今回、フルヴァージョンで演奏されていたこと。前回の来日時は前半部分しかプレイされず、尻切れトンボのようなヴァージョンになっていたからこれは嬉しすぎる。そしてまだ2曲目だというのにステージから飛び降りて最前列の客とハイタッチ。おいおい、いきなり盛り上げすぎだって〜。フロアの前の方はぐわんぐわんうねっていて立っているのも大変だぞ。歌詞を覚えてきたはずなのに、そんなもんで一瞬にして全部頭から吹っ飛んだ。マイクスタンドはよく倒すし、スタッフの人が何度も何度もマイクスタンドを交換に来てたっけ。 そしてまたしても自分を驚かせたのが「Stripper Vicar」で登場したポールのギターだ。今回使用しているのはいままでのギブソンではなく黒のリッケンバッカー。かつて、ビートルズのジョン・レノンが使っていたようなモデルだ。んでもってそれをマーシャルのアンプで鳴らす・・・・。ちょっと変だ。でもこのギターをじゃーんと鳴らしながら始まったこの曲でのポールは至極気持ちよさそうだった。 そしてそのままチャドの赤のES335とポールのリッケンバッカーが難攻不落のフレーズを絡め合う「Everyone Must Win」。しかしまあシングルのカップリングって感じで結構マニアックな部類に入る曲だと思うんだけど、みんな無茶苦茶飛ぶねえ。ひょっとしてやけになってる? なんか気持ち的にはちょっと複雑だったな。この理由は後述するけど。 東京初お目見えの「Special / Blow It」を挟んで待ってました「Shotgun」。最初のブレイクのところで、耳に手を当てて「なに?」みたいなポーズを客に向けてとるポール。ちょっと意味不明。でもこの曲の中盤から後半にかけてのグルーヴは本当にCool!!。チャドは小指にスライドバーをはめてのボトルネックプレイ、そしてそのスライドバーを指にはめたまま普通のフレーズも難なくこなす。チャドのギターは本当に日進月歩でうまくなっているような感じもする。 一方ベースのストーヴが見せ場を作るのは「Mansun's Only Love Song」だ。シンプルなフレーズしか弾かない彼だが、この曲だけは別格だ。シンプルなギターカッティングの隙間をぬって、コードチェンジの一瞬の間に強力なドライヴィングフォースと化すストーヴのベース。無茶苦茶歌った。ポールの裏声にもチャレンジしてみる。 でもポールの裏声といえばやっぱり「Wide Open Space」を挙げないわけにはいかないだろう。この曲も全部歌わせてもらう。前にいた人はさぞかし迷惑だったことだろう。もうこっちも頭がふらふらするぐらいに歌っちゃったし。 歌うと言えばやっぱりこの曲「SIX」。とにかく大好きだ。98年のベストと言ってもいい。当然馬鹿みたいに歌う。そしてそのご褒美だろうか。ポール・ドレイパーからペットボトルの水を浴びせられる。「おりゃおりゃおりゃおりゃ・・・」と手招きしてじらすもんだから、ほんとにいやなやつだポールって。この曲でのチャドのギターはやはり青のテレキャスター。なんとなくまだしっくり来てないかなあとも思うんだけれど、チャドのこの曲のプレイにもかなり余裕が出てきたようにも見えた。よしよし。また聴いてみたいなこの曲は。しかしアンディーのドラムもすごかったこの曲では。バカバカ叩きまくっていたよ。 そしてこれまでもそうだったんだけれども、ポールはほとんどのナンバーで曲紹介をしてから演奏を始めていた。普通にしゃべった言葉は「ずいぶん暑いねえ」ぐらいの季節のご挨拶ぐらいのものだったと思う。そしてこの「She Makes My Nose Bleed」も曲紹介をして始まった曲のひとつ。もちろんこの曲でも俺は歌う。『Only number must be, must be・・・』ってところでは思わず五木ひろしになっちゃった。でもなんだか知らないけどこの曲ではチャドのギターの音が突然聞こえなくなったりもした。あれは意図的なものだったのかな? 本編最後は「Taxloss」なるほどあの「ふにゃにゃにゃ、にゃにゃにゃ」っていうフレーズはアーミングで出していたのかー、と一人で納得。まあそれはともかく、曲の後半でのヘヴィーなギターリフのアクセント部分では拳まで上げちゃうポール。そして「さんきゅー・ぐっない・とおきよー!」ってことで一端退場。 ちょっとしょぼいアンコールの拍手の中、「The Chad Who Loved Me」のストリングスフレーズと共に戻ってきたマンサンのメンバー。そのまま同曲を演奏。でもちょっといまいちだったかな。相変わらずポールは手をばたばたさせてるよー。これを見ているだけでも来た甲斐があったというものだ。なんか欽ちゃんみたいに飛んじゃうしなあポールは。 気が付くとニット帽をかぶっていたドラムのアンディー。「Drastic Sturgeon」を終えて「Legacy」へ。青のテレキャスから紡ぎ出されるチャドのギターはやっぱりオリジナルとキーが違っている。オリジナルはEだが、ここではC。だから一緒に合唱しているつもりでもなんか音痴になっちゃう。しかしあんまり盛り上がらないなこの曲はー。最高にかっこいいナンバーなんだけどな。アウトロもかなり短くなっちゃってるのはどうしてだろ。フラフラとずっと揺れていたいのに。 ラストは予想通り「Take It Easy, Chicken」・・・・・チャドのあの黄金フレーズである。初めてライヴでこの曲を聴いて以来、耳を離れないこのギターリフ。まったくもうこのラストナンバーではポールだけじゃなくてチャドまでなにげに飛んじゃうし。そしてそのポールはやっぱりClub SNOOZERでのギグのように、自分のギター(・・・といっても珍しい青のテレキャスター。ネックはローズウッド。)を振り回して、アンプでフィードバックさせて、マイクにネックを擦り付けてノイズを出して、そんでギターを下に置いてベナベナベナベナと訳わからん音を出していた。 まあこれはポールがキレた、というよりもむしろ、もはや演出のひとつとして定着しているものなのであろう。確かにポールの踊りも変だったけど、あれも計算され尽くした演出の一つなんだろうな。とは言え、前回の来日以降のツアーで獲得していったポール流の音楽表現にケチをつけるつもりはない。でも前回の来日時のような一触即発的な緊張感を、もう彼らには期待していけないのかなあ、と思ってちょっと寂しくなったりもした。今日の公演も彼らにとっちゃ単なるツアー中の1コンサートに過ぎなかったんだろうな。でもバンドのまとまりとライヴ全体の構成は前回のそれとは比べものにならないほどに飛躍的な向上を見せていたように思ったのでその意味で満足。無い物ねだりかな? 期待のし過ぎなのかな? そしてさらにちょっと気になったこと。それは客の盛り上がりがちょっと異様だったことだ。「異様だ」というのはすなわち、なんだか当然盛り上がるべき曲ではいまいち乗り切れなくて、なんでこの曲のこの場面で?といったときに妙な盛り上がり方をしたということ。「Wide Open Space」や「Legacy」「She Makes My Nose Bleed」あたりの超有名曲ではなんだか寂しい反応だったのに、「Everyone Must Win」や「Special / Blow It」、「Six(のミドル部分)」といったいわばマニアックとも呼べるような曲での爆発度が高かったこと。いやもちろんその辺はバンドのパフォーマンスにも理由があるのだろう。 しかしその最たる原因は、周りを見回してみることである程度の察しが付いた。どうやら傍若無人に暴れ回ることだけを目的に来ている男子が数名いる。そしてその人達は、ビートが速くなると前後左右関係なく暴れ出して人にぶつかる。それは人目にはなんだか盛り上がっているように見えるが、それはただ単に将棋倒しの波を作ったりしているだけだったり、背中を蹴ったり、顔を殴ったり・・・・。それが証拠に彼らの口元が曲に合わせて動くことは決してない。そんな連中が真摯なマンサンファンの女の子をなぎ倒している光景はすごく気分が悪かったな。ギグの内容が良かっただけにこれがすごく残念だった部分として残った。 それはともかく、バンドの演奏力は飛躍的な向上を見せるマンサン。しかしそれを上回るスピードでポール・ドレイパーのカリスマ性は高まっている。ギターをあまり弾かなくなったポールなのに、一方でその存在感はますます強くなるばかりなのだから・・・・。しかしなんだか完璧すぎてなんだかどんどん我々の側を離れていってしまっていくようでちょっと寂しい気もする。でもなあ、こうなったら行くとこまで行っちゃってほしいなマンサンとポール・ドレイパーには。どこまで行けるんだろうね。もう次のアルバムが楽しみになってきちゃったな。
当日のライヴ開始前、14名の方々と『マンサンオフ会』なるものを開催しました。その参加者の中でホームページをお持ちの方々がそれぞれに様々な視点からこのマンサンギグをレポートしてくださっています。ご覧になってさらにこの素晴らしいギグの雰囲気をつかんでください! ● ラルズエッヂ (あゆみさん)
まあ何も言わず、前回のスヌーザーギグでも同行した某Dさんの裏マン(・・チン?)レポートを読んでみて!
next report: thee michelle gun elephant (12/19/98)
Send comments to: Katsuhiro Ishizaki Last updated: 1/ 28/ 99 |