Metallica マニアックだぞこら!

代々木第一体育館 - 5/8/98


空耳アワー常連の、あの「メタリカ」である。なおかつコンサート・レビュー始まって以来の、ブルートーンズからメタリカというこの常軌を逸脱したラインナップ。場所は原宿、天候は雨、音はメタルという3拍子揃った今日のこの状況。胸躍らせながらその足を会場の代々木オリンピックプールへと走らせたことは今さら言うまでもなかろう。

しかしだ!! 会場入りして驚いてしまった!! 何なのだこのさむ〜い客の入りは!! フロアーのアリーナ席は何とか埋まってはいるものの、1階席はガラガラ、2階席に客の姿なし。どう甘く見積もっても半分ぐらいしか客は入っていない。こんなに空席の目立つ代々木オリンピックプールは初めて見たよ。アメリカではいまだエアロスミスと同等かそれ以上の人気を誇るメタリカだが(ちなみに、去年同じ会場で行われたダラス公演では、メタリカがソールドアウトしたのに対し、エアロのチケットは結構売り残っていた。)、アルバム「LOAD」発表から来日まで結構間があったこと、最新アルバム「RELOAD」のレイドバックした音作りがファンの間で賛否両論を巻き起こしたこと、そしてエアロを含めた相次ぐハードロックバンドの来日ラッシュなどもあって、この時期の来日は結構きついものがあったようだ。しかし言葉を変えれば、この日この会場に集まった人達はそれこそ本当のメタリカファンなのであって(多分私も.....?)、それが証拠にまじめな短髪メタル少年達で開演前から会場内のヴォルテージは最高潮。ギターテクニシャンがステージに出てくるだけで大歓声が挙がる上に、もう総立ち状態である。ショーが始まる前からこんな感じなのだから、客電が落ちたときの騒ぎと言ったらもう.....。

ギター、ヴォーカルのジェームズ・ヘットフィールドは、ぞろぞろと他のメンバーを引き連れて、まずお約束のこの一言。「How are you all doin', まざふぁかーず!!」。思わず吹き出す不謹慎な私。いやああおお!! 1曲目からマニアな曲だああ! 今日は「So What?」じゃなくて「Helpless」と来たかあ!!! (←ちなみにこれは私を無理矢理連れ出した同行友人の叫び声。)なんかもうマニアな曲のオンパレード。入手していたウドー・ホームページの横浜アリーナのセットリストと全然違う。人気の「Sad But True」もオミットされ、代わりに「The Thing That Should Not Be」である。これってまるでエアロの横浜最終日のよう.....。

もうメンバーの動きは軽快そのもので、ステージの左右に伸びた長い花道を縦横無尽に駆けめぐる。なんとヴォーカルマイクも5本(中央:3、左右の花道:2)立てられていて、ジェームズは1曲の間にそれぞれのマイクを使い分けるという離れ業をも見せてくれた。そしてギターの(一時期私とアパートをシェアしていたアメリカ人にそっくりな)カーク・ハメットは、お得意のワウでのソロを交えながら、スーパーテクニカルなギターフレーズを半身になりながらいとも簡単に弾きこなす。ベースのジェイソンも「ヨヨギプールに来るのは5年ぶりだぜーい!」と一人はしゃぎ回っている。ドラムのラーズは黒い短パン一つで上半身は裸。しかししっかりと黒い靴下も履いているので、その姿はまるで酔っぱらったオヤジかプロレスラーのよう。しかしながら全員勝手気ままにやっているように見えて、実は各自のポジションの取り方や、動きの無駄のなさなど、結構計算高さが見られるのも面白い。

もちろんオーディエンスだって負けてはいない。「Fuel」ではみんな唄いまくるし、もうチャンスさえあれば「オイ!オイ!オイ!」というかけ声を連発するし、曲間にもギャーギャー騒ぎまくる。特にアリーナ前方にいた客はメンバーに何度となくドリンクを浴びせかけられていたが、それでも狂ったようにこぶしを振り上げているのだから仕方がない。「Nothing Else Matters」のサビの部分ももちろんだ大合唱だ!

もうショーの後半部分も、初期の最も「メタル」だった時代のナンバーが次々と繰り出される。それもまどろっこしいスローなナンバーは全部カットだ!、と叫ばんばかりの怒濤の勢い。大ヒット曲「One」まで省いてしてしまうこの曲構成。ロックギターの真骨頂、パワーコードでひたすらぐいぐい押しまくる。音も代々木というハコの割にはクリアーだし、これは「メタル」という範疇を越えた、ただのロックンロール以外の何者でもない。

ラーズがキレまくり、ジェームスが唾を吐きまくり、カークがスライドを弾きまくった3曲のアコースティックナンバーは、その工夫の割にはちと退屈してしまったが、その後エレクトリックセットに戻っての怒濤の2曲は凄かった!! まず「Master Of Puppets」。「ますたー!ますたー!」というところで当然こぶしが挙がりまくる。そしてお待たせ、私が唯一ギターでコピーに励もうと思わせた曲(だがもちろんモノにはならなかった)「Enter Sandman」!! 永遠のギターリフ! キャッチーなサビ! 分かりやすいギターソロ! もうこれ以上何が必要なのだ!? さすがにこの曲はファンの間でも最も人気のあるナンバーと見えて、このショーの中で盛り上がりは最高潮。ジェームズは左右の花道にあるマイクそれぞれで歌い、叫び、客を煽りまくっている。

そしてこの曲で今日のショーは終わりと思いきや、客の大歓声に答えるかのように各自ポジションにつき、楽器を再びセッティングし始めた。そして「Over Kill」が始まってしまったあああ! もう何も言いません。これも最初から決まっていた演出とはいえ、もうみんなプロフェッショナルです。これってまるでプロレスでも観ているような納得づめの爽快感がありますうう!! メンバー各自が一言ずつ挨拶をして帰っていくところなんて、メタリカのみなさんってなんて律儀な方達なんでしょう!! ジェームズは「この数週間の日本ツアーは楽しかったっす。特にウドーさん、その他のスタッフ(名前列挙)のみなさん、そして来てくれたみんなに感謝するっす。」って言ってくれるし、ラーズは「We'll see you again very soon!!! 」なんて嬉しいことも言ってくれちゃったりして......。

まあそんなこんなでなかなか素晴らしいコンサートだったわけだが、ちなみに私は強烈な足の痛みもあって、実はショーの最初から最後までガラガラのスタンド席で座って観ておりました。コアなメタリカファンの方々、誠に申し訳ありませんでした。どうかお許しください。

  1. Helpless
  2. Four Horsemen
    (or Creeping Death?)
  3. Of Wolf And Man
  4. The Thing That Should Not Be
  5. Fuel
  6. Memory Remains
  7. Bleeding Me
  8. Nothing Else Matters
  9. Until It Sleeps
  10. King Nothing
  1. No Remorse
  2. Am I Evil?
  3. Stone Cold Crazy

  4. Low Man's Lyric
  5. Poor Twisted Me
  6. Last Caress

  7. Master Of Puppets
  8. Enter Sandman
  9. Over Kill


| Back | Home |


next report: The Bluetones (4/25/98)


Send comments to: Katsuhiro Ishizaki

Last updated: 5/ 10/ 98