Natalie Merchant すすり泣きしげやん

中野サンプラザ - 3/26/99


もう、ここのレポートではお馴染みのしげやんこと重村さんのレポートです。 いつもながら本当にすばらしい!! ナタリー・マーチャントに馴染みのある人もない人も、しげやんとともに泣いてください、歌ってください、微笑んでください。 そしてしげやん、いつもどうもありがとう!




元 10,000 Maniacs のボーカリストとして一世を風靡し,現在はソロ・アーティストとして活動し先日ソロ2作目"Ophelia" を発売したばかりの歌姫,Natalie Merchant.この人の存在がなければ,現在の Alanis Morisette をはじめとする女性アーティストたちの活躍もなかった,と思えるくらいの影響力を各方面に与えてきた偉人である.実は昨年末に来日公演が予定されていたものの体調不良のためドタキャンとなり,その雪辱戦としての意味合いも持ったコンサートに対するオーディエンスの期待は開演前から伝わってきた.

...などなど,評論家的なことは今となっては色々と書けるが,実は恥ずかしながらコンサートが始まるまで Natalie Merchant に対する知識は殆どゼロに等しかった.リアルタイムで 10,000 Maniacs が活躍していたときは有名な曲は耳にしたことがある程度だったが決してのめり込むわけでもなく,ソロ活動もそれほど気にとめるわけでもなく現在に至っていた.

そのため,正直なところ,コンサートに対する期待はあまりしていなかった.換言すれば,何をどのように期待したらよいのか見当がつかなかった.コンサート会場にはつきもののダフ屋のオヤジ達もどことなく気合が抜けていて,「チケットあるよ〜,定価より安くするよ〜」などと声をかけてくることからもチケットの売れ行きの状態が伝わってきた.そのためなのかコンサート前は緊張感というものは全くなく,開演直前まで近くのファーストフード屋ででねばったり,パンフレットの写真を見て友達と「写真写り悪すぎだよね〜」などと好き勝手なことを畏れ多くも議論していた.(実際,最新アルバム "Ophelia" の裏ジャケットの写真はすご過ぎる.本人はこの写真を本当に気に入っているのだろうか...)

さて,コンサートは始まった.バッキング・メンバーは5人で,以下のようなメンツであった.

・ Zack De La Rocha (Rage Against The Machine ボーカリスト)似のギタリストその1.
・ Silver Sun というバンドのガリ勉ボーカリスト君似のギタリストその2.
・ Adrian Belew (King Crimsonのギター&ボーカル) 似のドラマー.
・ Keith Scott (Bryan Adams バンドのギタリスト)似のベーシスト.
・ Dolores O' Riordan (Cranberries のボーカリスト)似のキーボーディスト.

1曲目は新アルバムのタイトル・トラック "Ophelia",続いて前作 "Tigerlily" のオープニング曲 "San Andreas Fault" と続いたが,もうこの時点で冷静にはいられなかった.そして,コンサート前にあらゆる邪念を抱いていた自分の愚かさに気づきひたすら心の中で懺悔した.

とにかく,声が素晴らしすぎる.人間の声がここまで表情を変えて,会場の皆の心にズタズタと裸足で上がりこんでくるような,そのような壮絶なインパクトを与える状態のインパクトは,曲を知っているか否か,などという比較のレベルを超えたような,本能に直接訴えるものであった.

選曲という点でもヴァリエーションの豊富さ...具体的には,10,000 Maniacs 時代の名曲に加えて,David Bowie のカバー(Space Oddity) や故 Jeff Buckley のカバーまでも披露したその幅広い音楽性は特記すべき点であろう.そのうち,大人しく座席で見ていた観客が少しずつ吸い寄せられるように最前列に集まり始め,歌姫もそれに喜び,皆に握手しまくったりプレゼントを受け取ったり大ハシャギである.しかし,そのようなファンサービスをしながらも,歌のクオリティは全く変化することもなく,結局コンサートが終わるまでそのクオリティをずっと一貫していた.

歌姫を引き立てるバッキング・メンバーたちも,前述のような個性豊かなルックスゆえに「もし彼らが"似"じゃなくて本人たちだったら本当に怖い,そんなバンドなんか聴きたくない〜」という邪念も一瞬頭の中をよぎったが,それはすぐに消え去った.当たり前ではあるが,彼らは歌姫の歌を生かす演奏に徹していた.特にキーボーディストのハモンド・オルガンの演奏は,Tom Petty & the Heartbreakers の Benmont Tench を彷彿させるようなソウルフルなものであり,これまた心の琴線に触れてくるような力演であった.

個人的には最新アルバムのナンバー "Kind & Generous" が最大の山場だったように覚えている.この曲の "Thank you, thank you, thank you, thank you..." と延々と繰り返すサビは壮絶であった.何故なのか分からないが,自分が今まで感じてきた喜怒哀楽の思い出全てが一瞬にしてフラッシュバックして心に訴えかけてくるような衝撃度を感じ,誰にも見られないように涙をふいた.

自分は現在に至るまであらゆるコンサートは見てきたが,ここまで emotional なコンサートを今まで経験したことはなかったかもしれない.コンサートが終わった後はもう二度と感じえないくらいの充実感と感動がひたすら持続し心から離れない...そのような素晴らしいコンサートであった.



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Last updated: 4/ 5/ 99