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大阪城ホール - 1/15/00
(reported by yas-b)
Primal Screamの新曲『Swastika Eyes』を聴いたときに、イヤな感じがした。う〜んデジタル。ここまで無機質になっちゃうの?って寂しくもあり、おいてけぼりな心境だった。これが他のバンドだったらなんてことないのだが、Primalsってとこが引っかかった。世間より半馬身飛び抜けたセンスを持った奴らが満を持して放った新曲がこれだ。 ボビーって今にも死んじゃいそうな存在だ(快く言い切ったが全く悪意なし)。最近はそうでもないが、あの貧乏くさい体型、写真はだいたい「誰か俺を(鈍器で)殺してくれぇ〜」みたいな感じだったし、例え死んでも、僕の中で「なんでだよ!」という無意味な関心はわかなかったと思う。死が似合う男。僕にとってボビーはそういう男である。イメージ的に、生死の平均台を泥酔したまま渡っているような男には、非常に説得力があると思う。死と少しでも接触した人の意志の強さは生半可ではない。戦争を体験したじいさんの精神は、ドムドムトリプルバーガーのように無駄にごついし、医者に「死ぬよ」と言われて煙草を止めた人の決意は、少年の朝のそれより硬い。「金欠だから煙草止めよう」なんてのはフニャフニャだ。フニャフニャフニャだ。露骨にバイアグラを鼻の両穴に1粒ずつ押し込んでやりたい。自分も全ての穴に押し込んでほしい。とにかくボビーの言動は、嘘臭い部分も多いのだが、説得力はある。今は薬から抜けた彼を信頼して間違いはない。そんな男が、スマップ中居の「ピーコのモノマネ」ぐらいに自信を持って出した曲があれだから戸惑った。 そして、時系列にならないが、アメリカ、Nine Inch Nails。『The Fragile』での無機感。こりゃ確信だ。ボビーとトレント。馬券でいえばグラスとスペシャル。そのぐらい固いのである。Beck君が行き詰まっている様である今、彼ら2人の視点には要注意なのである。 トレントも死にそうじゃん(ホント悪意なしよ)。入ってくる情報から浮かび上がる人間像は、もう死のプールの飛び込み台に、海パン(ブリーフ)一丁で意気揚々に構えている。構えては、ピアノを弾きに戻ったり、ギターを弾いてはまた飛び込み台に向かったり、とにかくギリギリ臭い。特に今作については、精神的にそんな状態だったらしい。曲の出来が不甲斐ないと、「うぎゃー!」ってなったりしたらしい。「うぎゃー!死にてー」とか。ここで僕が考えたこと。そこまでして何のために音楽活動してるんだろう?それは深い。深すぎてわからないので、次のお題。なぜライブをするんだろう?友達がいないという噂だから、寂しいのか?「一緒にパーティーしようぜ」ということなのか?それを確かめたいところである。 1月15日、大阪城ホール。広島から鈍行で7時間。青春18切符というハッスルぶりで今回は挑んだ。まだ若いぜという自己主張と、アンチブルジョワジーなパンク精神・モッズ魂からド鈍行という選択になった。7時間という苦痛、あー無駄。ダメダメ。チョメチョメ。悩むことなく帰りは新幹線に乗っていた。しかし不甲斐ないことに新幹線も「立ち」という苦痛だったのである。「意〜味な〜いじゃ〜ん」(←「ダメダメ」とか、大阪の友人がやたら使うので、帰ったらすっかりうつっていた)ああ、ああ、18切符は半分も使わず有効期限を迎え、超緊急時の糞紙となりそうである。ブルジョワな動きである。 ネットでは、事前に関東公演の状況がヒシヒシと伝わってきていた。 『NIN初日、すごいっす。放心状態っす』 『もうね、泣いちゃうよあんた、あれ見たら』 『これから先、他のライブがちゃんと見れるかどうか心配っす』 出発前にこれを読んで、期待は見栄っ張りなほどにパンパンに膨らんでいた。ライブ前に、あまり情報過多になると裏目ることがある。「最高でっせ」というファンの盲目的な意見を鵜呑みにして高ぶって、いざ!となってみると大したことない。いや、期待ほどじゃないというか、期待しすぎだコノヤローというか、大きなお世話だこんにゃろーというか、伊集院(デブ)てめぇズラだろ!とか、とにかく裏目ることがある。イヤしかし今回はかつてないほどの皆さんの熱い書き込み、どうやら期待しても良さそうなのである。 (すっとばして、ああもうホールなのさ)20分遅れで客電が落ちる。メンバー登場。やはりトレントは、当時のたのきんトリオ(たまきんトリオ※でもいいが)ですら身に着けるのを拒んだであろうというような、あのノースリーブGジャンだった。ルックスも時代の先を行きすぎているのかもしれないが、あれは駄目だ。ダメダ・・・言ってやりたい。1曲目は、新作の冒頭曲。このホールが初めてなのでよくわからないが、音が小さいような感じ。場所が悪いのか?場所が悪いんだろう。とりあえず凄いのは、演出。めまぐるしく変わるライティングは初めて見るものだったし、特筆すべきは中盤の映像効果。ステージが巨大なスクリーンで覆われて、そこに有機でサイケな映像が曲に合わせて撮されていく。波、空気、宇宙、生命。全ての尊さを伝えたかったのか、脆さをわかってほしかったのか。生命のチープさ云々。とにかくその空気に圧倒された。スクリーンの奥には、メンバーの姿がおぼろに見える。波の奥でトレントが静かにピアノを弾く。これは見ないとわからない。確かに伝えようがない。このライブを見た人にモノマネでもやってもらってほしい。じゃなきゃわかりにくい。そして炎の映像と共にスクリーンが上がり、完全に別人のトレントがいた。最初は、僕の中ではバンドのボーカルでしかなかったが、炎の中の彼は迫真だった。もうその後は、音と演出とパフォーマンスの渦に飲み込まれるのみ。楽器をぶっ壊すのもデタラメじゃないし、MCがほとんどないのも必然だ。呆然と伏せてしまった。客との一体感なんて無い。トレントが望んだのはそんなものじゃなかった。自分の世界を作り上げ、ただ強引に力ずくで自分の世界に引きずり込むこと。それで自分の存在 意義を確かめているのか? あの世界が見れたのはラッキーだった。ライブ自体は、僕にとってはベストではなかった。それはスタンディングじゃないとか、でかいホールだったとか、環境的なことなのだが、トレントの世界を「覗けた」ことには違いない。あの感覚はトレントしか与えてくれないだろう。そして、そんでもったら、ほんでもってぃ〜来週出るボビーの新作、2月の来日はどうなっているのだろうか?インフルエンザには負けてないだろうか?実はそれが不安だったりする。 ※たまきんトリオ・・・十数年前、広島のとある小学校で結成されたおちゃらけトリオ。3人ともボケだったため、すぐに解散した。
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Last updated: 1/ 28/ 00 |