No Doubt 実は嫌いだったのだ

ZEPP TOKYO - 9/30/00

with Snail Ramp + Scaful King


このライヴを総括するにあたり、まず最初に非常に客観的な感想なぞを。

ほんのここ2〜3年の話だが、東名阪+福岡の中型〜大型ライヴハウスにおいて多くの外国人ロックアーティストがライヴをするのが当たり前になってきた。そしてそれに伴って増えてきたのが、外タレ+日本のバンドという対バン形式のライヴだ。まあ海外のロックコンサートにおいては極当たり前の前座制度。日本においてもビートルズを始めこの形式でライヴを行ってきた外国人ロックアーティストはいくつかいたが、それが当たり前のものとして捉えられるようになったのはここ数年のことだと思う。ウィルコ・ジョンソン+ミッシェル、ジョンスペ+ギターウルフ、シャーラタンズ+ワイノー、ペイヴメント+スーパーカー、レイジ+ブッチャーズ、アット・ザ・ドライヴ・イン+イースタン・ユースなどなど、例を挙げればキリがないし、自分もそんな対バン形式のライヴを数多く観てきたわけでもないが、海外バンドとの力量の違いをまざまざと見せつけられたり、また逆にトリの外タレを喰ってしまうほどのショーを繰り広げてしまったりと、それまでの単独ライヴ形式では味わえなかったスリルを楽しむことができるようになった。自分のようにどちらかというと洋楽一辺倒な聴き方をしているリスナーにとってみれば、噂や音は聞いていても単独公演を観るまでには至らない日本人バンドのライヴを同時に体験できてしまう、という意味でもかなりお得感の強いものだったりもするわけで、この日のような所謂スカ系日本人ロックバンドの2大巨頭=スキャッフル・キング&スネイル・ランプが前座として登場するこのライヴは、それぞれのライヴへの興味もさることながら、スキャッフル・キング&スネイル・ランプ 対 ノー・ダウト、日本対アメリカみたいな方向に自分の興味は強く向かっていた。

とは言え、この3つのバンドに対する自分の知識はわずかなもので、スネイル・ランプとノー・ダウトは各々アルバムを1枚聴いたことがある程度で、スキャッフル・キングに関してはメンバー構成すら知らなかった。知っているのは「人気がある」「フジロックに出た」「スカコアっぽいロックを演っている」ぐらいなものであった。しかし最初に断っている自分の客観的な興味というものは、これら日米バンドの対決、及びそれに伴って発生するバンド側及びオーディエンス側のケミカルにあった 。ヘイ・ボーイ・ヘイ・ガール、ミュージックはレスポンスなのであった。

そして結果的に、客観的に、今夜の対バン形式のライヴは大成功だったと言っていいと思う。スキャッフル・キングが、まあ演奏は荒削りだったけど、「ダイヴ禁止」のアナウンスがあったその10分後に自らステージダイヴを試みたボーカルの何気ない心遣いにいたく感激しながら、スカというよりこれはソウルじゃないかってぐらいの独特の雰囲気を感じさせる中で、ギブソンギターの太いカッティングと、ボーカル含めた3人のホーンセクションの暴れっぷりが我々の耳と目を楽しませてくれるなど、テンポと小気味の良いステージ運びがオーディエンスの足腰に心地良い刺激を与えてくれた。スネイル・ランプは、いきなり(数人の方々にお配りした「サマーソニック対策CD-R」なる編集CDにも収録していた)「B.M.W」からショーをキックオフし、「少しでもこの曲を知っている人がいてくれたらいいなあ〜〜〜」などと呑気なことを言いつつの「Mind Your Step」では、”あ、これ知ってる。”的な耳打ちをするオーディエンスを数多く目にしながら、「あんだ昔メタルだったでしょ?」的に密かなるテクニカル&パワフル&シャープなギブソンギターと、欽ちゃんジャンプ連発のベース&ボーカルに目がくぎ付けになってしまったりもした。早く終わんねえかな〜的なムードは全くなく、また逆に前座だけ目当てな客も少なく見え、十分過ぎるほどの刺激とエンターテイメントによって、ノー・ダウトに向けての密度の濃いウォーミングアップ時間を与えてもらったような感じだった。「次はノー・ダウトだ。さあ、いつでも来いこのやろーー!」みたいな笑顔のファイティングポーズでもってこのLA出身のバンドを迎えるという最高のムードを、この日本を代表する2つのバンドが作り出してくれたのである。よってアメリカVS日本などという対決構造はすでにもうどこかへ飛んで行ってしまっていたが、ここでさっきまでスネイル・ランプを観ていた日本のオーディエンスにノー・ダウトが爆発的なパワーと大合唱の嵐をもたらしているのを観れば、ここに日米対バン形式ライヴによる化学反応はあったのか?という質問に対する答えが「イエス」となることに必然を感じるのは当然であろう。ほんとこんな心と体が温かくなるライヴは久々だもの。




さて、このライヴを総括するにあたり、続いて大盛り上がりとなったノー・ダウトのライヴの様子なぞを簡単に。

「ノー・ダウトってこんなに人気があったの?」ってぐらいにクラウドの反応は1曲目から思いっきりダイレクト。抜き足差し足ベーシストの登場から、黒くて薄い「Can't Touch This!」服のボーカル=グウェンの悩ましげな腰グラインド姿の登場に至るまで、いちいちとんでもない大歓声で迎えるオーディエンス。「一緒に歌ってくれるぅ?(うっふんポーズ)」なんてことを言われなくても、なんでそんなに知ってんの?ってぐらいに合唱してしまうし(特に「Don't Speak」はキテた!)、あんた疲れんの?ってぐらいにジャンプしまくりだしで、前から後ろまで、ついでに2階席まで、歌と踊りの波が途絶えることがなかった。いや、だから、やっぱ日本のオーディエンスは最高なのである。ロンドンでのプライマル+レディング3日直後ということもあってその凄さがより際立って見えるというだけでもないのだろうが、みんなノー・ダウトが好きなんだ!ってことがヒシヒシと伝わりすぎるぐらい伝わってきて、アルバム1枚(=Tragic Kingdom)しか持ってない自分が恥ずかしくなってきたよ。

感極まって「日本サイコー!」(←かなりの意訳)という言葉に顕れていたように、バンド側もそりゃあそれで嬉しかったんだろうが、エンターテイメントとして完成されていたプロフェッショナルなショーの構成もすごかった。とは言っても火やら水やら光やらといった大道具・小道具を使うのでは全くなく、その役割の殆どの部分を担っていたのがボーカル=グウェンの身ひとつだったところがこれまたすごい。髪型や表情をその曲の雰囲気によって微妙に変え、女性までもが声を挙げてしまうほどのエロい動きが、嫌味がない頻度で以って彼女の動きの中に組み込まれ、さらに走る・飛ぶ・投げる・絡むの4大要素(?)にてロックバンドのフロントアクトらしさを表現するなど、自分の、そして女という生き物の見せ方を完璧に知り尽くしたかのようなパフォーマンスを披露していたのだから。

その計算高さとプロフェッショナリズムは、常にステージ下方からグウェンの顔と頭に向かって吹き上げられていた扇風機と、黒人+白人+ヒスパニック、といういかにも多国籍なLAらしいバンドメンバー全員の耳に付いていたヘッドフォンにも顕れていたが、ドラマーはフリチンの素っ裸、キーボーディストは今時珍しいコムロちっくなハンディーなキーボード、そしてギタリストの頭にはナメきったかのようなスキー用ニット帽などなど、バカな要素も随所に織り込まれていて、グウェンのみならず他のメンバーのビジュアル表現も我々オーディエンスを飽きさせない。

でもやっぱりそんな笑いと涙の中心に常にあるのはグウェンで、彼女のパフォーマンスの極めつけは、Zepp Tokyoのあの堆く積まれたスピーカーの山の頂上まで自力で登り詰めてしまったあの場面。曲は「Excuse Me Mr.」だったが、命綱なしでスピーカーにしがみつきながら、「すべての男性たちに歌ってほしいわ〜ん」「今度はすべての女の子の叫び声を聞きたいわ〜ん」「準備いい? ねえ・・・・・・Fuckin'準備はいいかいって言ってるのよ!!」などなど言いたい放題やりたい放題。おめえはギターウルフか?!と小声でツッコミを入れてしまったぐらい、彼女は時にバカだった。そして時にキュートだった。時に少女だった。時に売女だった。同じ髪型の、同じ髪色の、同じ表情の、同じメイクの、同じポーズの写真がひとつもないグウェンらしく、ひとつのイメージに縛られたくない彼女の意思が、そのまま顕れたステージだった。




さて、このライヴを総括するにあたり、最後に自分とノー・ダウトの関わりについてひと言。

自分が、留学するとなって4年前にアメリカへ渡米した最初の日、アパートへの入居待ちのためのホテルで最初に見たテレビ映像。電源を入れてまず最初に目の中に飛び込んで来たのが、アトランタ・オリンピックのトラック200Mで快走するマイケル・ジョンソン。チャンネルをMTVに合わせ、最初に目に飛び込んで来たビデオクリップが、カリフォルニアのビーチで陽気な演奏を繰り広げているノー・ダウトの「Spiderwebs」。しかし以降の生活の中でテレビを所有することのなかった自分が、それ以後ノー・ダウトのビデオ・クリップを観ることは一度もなかった。そのビデオでノー・ダウトにハマった!というわけではなく、アトランタ・オリンピックどころの話じゃないほど無茶苦茶不安だったアメリカ生活の最初の日に、その不安とはまったく正反対の能天気さでもって作られていたクリップ中のアメリカ人とノー・ダウトの姿を、自分は忘れることができない。

それから4年の時が流れ、世間的にはシドニー・オリンピックの最中だが、個人的には海外新製品取扱いに伴う英語生活の再開が週明けに迫っている今夜、東京のライヴハウスにてノー・ダウト最後の曲として「Spiderwebs」を聴いた。

だからなんとなくちょっとセンチメンタルな気分になってしまったよ。




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Last updated: 9/ 30/ 00