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ZEPP TOKYO - 9/30/00
さて、このライヴを総括するにあたり、続いて大盛り上がりとなったノー・ダウトのライヴの様子なぞを簡単に。 「ノー・ダウトってこんなに人気があったの?」ってぐらいにクラウドの反応は1曲目から思いっきりダイレクト。抜き足差し足ベーシストの登場から、黒くて薄い「Can't Touch This!」服のボーカル=グウェンの悩ましげな腰グラインド姿の登場に至るまで、いちいちとんでもない大歓声で迎えるオーディエンス。「一緒に歌ってくれるぅ?(うっふんポーズ)」なんてことを言われなくても、なんでそんなに知ってんの?ってぐらいに合唱してしまうし(特に「Don't Speak」はキテた!)、あんた疲れんの?ってぐらいにジャンプしまくりだしで、前から後ろまで、ついでに2階席まで、歌と踊りの波が途絶えることがなかった。いや、だから、やっぱ日本のオーディエンスは最高なのである。ロンドンでのプライマル+レディング3日直後ということもあってその凄さがより際立って見えるというだけでもないのだろうが、みんなノー・ダウトが好きなんだ!ってことがヒシヒシと伝わりすぎるぐらい伝わってきて、アルバム1枚(=Tragic Kingdom)しか持ってない自分が恥ずかしくなってきたよ。 感極まって「日本サイコー!」(←かなりの意訳)という言葉に顕れていたように、バンド側もそりゃあそれで嬉しかったんだろうが、エンターテイメントとして完成されていたプロフェッショナルなショーの構成もすごかった。とは言っても火やら水やら光やらといった大道具・小道具を使うのでは全くなく、その役割の殆どの部分を担っていたのがボーカル=グウェンの身ひとつだったところがこれまたすごい。髪型や表情をその曲の雰囲気によって微妙に変え、女性までもが声を挙げてしまうほどのエロい動きが、嫌味がない頻度で以って彼女の動きの中に組み込まれ、さらに走る・飛ぶ・投げる・絡むの4大要素(?)にてロックバンドのフロントアクトらしさを表現するなど、自分の、そして女という生き物の見せ方を完璧に知り尽くしたかのようなパフォーマンスを披露していたのだから。 その計算高さとプロフェッショナリズムは、常にステージ下方からグウェンの顔と頭に向かって吹き上げられていた扇風機と、黒人+白人+ヒスパニック、といういかにも多国籍なLAらしいバンドメンバー全員の耳に付いていたヘッドフォンにも顕れていたが、ドラマーはフリチンの素っ裸、キーボーディストは今時珍しいコムロちっくなハンディーなキーボード、そしてギタリストの頭にはナメきったかのようなスキー用ニット帽などなど、バカな要素も随所に織り込まれていて、グウェンのみならず他のメンバーのビジュアル表現も我々オーディエンスを飽きさせない。 でもやっぱりそんな笑いと涙の中心に常にあるのはグウェンで、彼女のパフォーマンスの極めつけは、Zepp Tokyoのあの堆く積まれたスピーカーの山の頂上まで自力で登り詰めてしまったあの場面。曲は「Excuse Me Mr.」だったが、命綱なしでスピーカーにしがみつきながら、「すべての男性たちに歌ってほしいわ〜ん」「今度はすべての女の子の叫び声を聞きたいわ〜ん」「準備いい? ねえ・・・・・・Fuckin'準備はいいかいって言ってるのよ!!」などなど言いたい放題やりたい放題。おめえはギターウルフか?!と小声でツッコミを入れてしまったぐらい、彼女は時にバカだった。そして時にキュートだった。時に少女だった。時に売女だった。同じ髪型の、同じ髪色の、同じ表情の、同じメイクの、同じポーズの写真がひとつもないグウェンらしく、ひとつのイメージに縛られたくない彼女の意思が、そのまま顕れたステージだった。 さて、このライヴを総括するにあたり、最後に自分とノー・ダウトの関わりについてひと言。 自分が、留学するとなって4年前にアメリカへ渡米した最初の日、アパートへの入居待ちのためのホテルで最初に見たテレビ映像。電源を入れてまず最初に目の中に飛び込んで来たのが、アトランタ・オリンピックのトラック200Mで快走するマイケル・ジョンソン。チャンネルをMTVに合わせ、最初に目に飛び込んで来たビデオクリップが、カリフォルニアのビーチで陽気な演奏を繰り広げているノー・ダウトの「Spiderwebs」。しかし以降の生活の中でテレビを所有することのなかった自分が、それ以後ノー・ダウトのビデオ・クリップを観ることは一度もなかった。そのビデオでノー・ダウトにハマった!というわけではなく、アトランタ・オリンピックどころの話じゃないほど無茶苦茶不安だったアメリカ生活の最初の日に、その不安とはまったく正反対の能天気さでもって作られていたクリップ中のアメリカ人とノー・ダウトの姿を、自分は忘れることができない。 それから4年の時が流れ、世間的にはシドニー・オリンピックの最中だが、個人的には海外新製品取扱いに伴う英語生活の再開が週明けに迫っている今夜、東京のライヴハウスにてノー・ダウト最後の曲として「Spiderwebs」を聴いた。 だからなんとなくちょっとセンチメンタルな気分になってしまったよ。
next report: Reading Festival (8/25-27/00)
Last updated: 9/ 30/ 00 |