Smashing Pumpkins Shakedown 2000

日本武道館 - 6/30/00


前夜、会社の同僚の送別会で1時間弱の間にリットル単位の日本酒を飲み、その後新宿ローリングストーンでのローリング・ストーンズ・ナイトを経た関係上、今日の自分は思いっきり二日酔い状態。夜になっても全く酒が抜けず、もう完全にダルダル状態で武道館へ向かうことになってしまった。「でもまあ椅子席だし、スマパンだし、ノープロブレムでしょう!」・・・・・と思っていたら甘かった。今日の席は武道館の2階席最前列。まあ武道館を知る人なら分かるだろうけど、2階席というのはつまるところ3階席のことであり、つまるところとーーっても高い場所にある席なわけである。 そしてその最前列とくればあなた、目の前には柵があるわけでもなく、ネットがあるわけでもなく、膝ぐらいのところに手すりがあるだけで、さくっと見下ろせばはるか10m以上の高さのかなたにアリーナ席の頭、頭、頭・・・・。落ちたら間違いなく死ぬ。いや俺だけじゃなくて下にいる人達も死ぬ・・・・と思った瞬間にめまいが・・・・。(だが、自分は高所恐怖症ではない。)

「Age Of Innocence」でいきなりジェームス・イハの機材にトラブルが生じ、スタッフが慌ててそれを直しにかかっていたその時、自分の両腕がなぜか痺れ始めて全く感覚が無くなった。ビリー・コーガンがステージ前方に出てきて「Everlasting Gaze」のイントロのリフを弾き始めた時、なにか汗ではないような、ちょっと油っぽいような、かなり冷たいような、そんな分泌物が体全体を覆い尽くした。「やばい、目がかすむ〜〜。」と思った瞬間、ビリーコーガン目掛けて赤いスポットライトが当たり、かなり眩しかった横浜公演を思い出す。

でもそんな自分の2日酔いを、心地よい陶酔の世界へと導いてくれたのはやっぱりパンプキンズのロックンロール。「Everlasting Gaze」からメドレーのように流れた「Heavy Metal Machine」には、やっぱ脂汗も一瞬にして止まるぐらいのかっこよさがあった。オーディエンスの方も、この曲でダイブ、じゃなくて大分リラックスして場の雰囲気もつかめてきたようだった。「今夜はスペシャルゲストがおりまして・・・」などというものだからハッと我に返って「れ、れ、れいじ??」などとも思ったが、「相撲レスリングチャンピオンで・・・・」などいうものだから、「あけぼの?? むさしまる??」などとも思ったが、「ジェームズ・イハでーす!」ってあんた、足元が滑りそうになったよ。かなり寒いアメリカンジョーク、というかどこがどう面白いんだかさっぱり分からないそれはもう素晴らしいジョークの連続に頭がすっきりしました。ありがとう。

いや、ちょっとマジメな話、この夜、初日の横浜では言わなかった「ラストツアー」という言葉がとうとうビリーの口から出ていた。色々な公演地を巡り、いよいよ最後なんだ、という気持ちに拍車がかかったのか? そしてその言葉に、「ああ、本当にこれが最後なんだあ。」と実感すればまあ丸く収まるのだが、全然そんな感情が湧いてこないのがまったくもって不思議なところだ。いや、確かに「Cherub Rock」では目頭が熱くなったし、まさかエレクトリックで聴けるとは思わなかった「Today」ではほんと泣きそうになったけれども、それは別に「解散するから」という悲しみから来るものではなく、「ああ、いい曲だなあ。」という純粋に曲本来が持つパワーとスリリングな演奏に対して沸き起こった感情であることは間違いない。なおかつステージ上にもフロアー上にも、そんな解散ムードなどは微塵も見られない。 1位でゴールインしたマラソンのオリンピック選手に、「俺は3ヵ月後に癌で死ぬんだ。」と言われるようなもんだろう。・・・信じられるはずがない。

セットリストも前回と完全に変更されており、俺の大好きなメロンコリーからの「An Ode To No One」で本編を締めくくるという展開に、思わずヘッドバンギングしてしまい悪酔いしそうになったが、ステージ後方の絵がより幻想的なものになったアンコールに「Mayonaise」が聴けてちょっとすっきりさわやかになった。 ジェームズとビリーが向かい合ってあのアルペジオを弾き始めたときはさすがに唸ったが、「パンダボーイズ、パンダガールズ知ってる? ああ、ヤマンバ? こうやって踊るんだよね。(そしてパラパラを踊るジェームスとメリッサ。) みんなも一緒に歌ってね。」との言葉と共に始まったアコースティックバージョンの「1979」も良かった。ドラムのジミーまでアコギを持っていたが、ローコードのカッティングオンリーでズブズブとマッチョに進む彼の姿には心奪われる何かがあった。(・・・いや、ない。) ジェームズがコケようが、ベースのメリッサに「なにやってんの?」ってな顔をされようが、演奏をいつまでも止めないそんなオッサン達に「別れ」という言葉はまったく似合わない。どこまでも陽気に振舞おうとするその姿に多少の痛々しさを感じつつも、1979年にチープトリックを通じて知った武道館という極東最大の地において、彼らは新しい一歩をこの武道館から踏み出そうとしている。 スマッシング・パンプキンズという物語は、「Ava Adore」においてビリー・コーガンの口から高らかに歌われた「We must never be apart.」という言葉において、徹底的にロマンチックな感動と希望とともに完結されようとしているのだから。



  1. Age of Innocence
  2. Glass And Ghost Children
  3. Everlasting Gaze
  4. Heavy Metal Machine
  5. Blew Away (vo. James)
  6. Standing Inside Your Love
  7. Cherub Rock
  8. I Of The Morning
  9. To Sheila
  10. This Time
  11. Ava Adore
  12. Try, Try, Try
  1. Rock On
  2. Bullet With Butterfly Wings
  3. Once In A Lifetime
  4. ?
  5. Blue Skies Bring Tears
  6. Today
  7. An Ode To No One

  8. Blank Page
  9. Mayonaise

  10. 1979



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Last updated: 6/ 30/ 00