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日本武道館 - 1/9/00
(report #1 by Kats)
WOWOWのカメラクルーと黒人セキュリティーが場内をうろつく中、「スコっ!」と客電が落ちた夕方の5時15分。単独公演としてはレッチリ史上もっとも早い時間での開演ではないかと思われるけれども、赤毛&赤パンツのフリー(b)はすでに不敵な笑みを浮かべていてちょっと怖い。黒帽子のチャド(drs)は強面なんだけれどもドラムセットに座るとちょっとかわいい。 上下ダラダラ紺シャツ&パンツのジョン・フルシャンテ(g)はさらにニコニコしていてやる気でててちょっとすごい。 クリっとして可愛くなったアンソニー(vo)はウロウロしながらちょっと落ち着かない。 フリーの簡単な準備体操から「Around The World」に入ったが、なんとなく音が小さい感じでちょっと肩透かしを食う。(・・・最近どのライヴに行っても音が小さいように感じてしまう。・・・歳? ・・・難聴?) いきなりフリーのベース音が大きくて、オリジナルとは違うベースラインを弾いたりしていたが、やっぱ何と言ってもギターのジョンですよ、ジョン。 サンバーストのテレキャスターと、ロックの定番アンプ=マーシャルから繰り出されるあのペケペケ音。「乾いた」とか「枯れた」とか言うのは簡単で、「シャープ」とか「鋭い切れ味」などと表現するのも簡単だが、エフェクト&ギミックなしでこの人にしか出せないこのトーン。フィンガートレーニング1日8時間やっても、スケール練習1日4時間やってスティーヴ・ヴァイのように速く弾けるようになっても、絶対に獲得することができないギタートーン選びのセンス。これは自分が最も重要だと思うところで、ギターのトーンは平々凡々な努力とか練習とかでは獲得できないむしろそれはまさにその「人そのもの」を表す色でもある。・・・・・・・ってまあいいや。 「オールスタンディングの会場だったらえらいことになってるだろうなあ〜〜」と想像させるほどの大盛り上がりでWOWOWの映像的にもかなりいいものになっていると思うが、その最大のクライマックスは2曲目で早速訪れた「Give It Away」。アンソニーはマイクにかぶりつかんばかりの勢いで、ジョンはピート・タウンゼントのように右腕を掲げ、フリーは身体を45度に折りながらのファンキーモンキーベイベー。時々カクカク踊るその姿は、音に反応して動き回る猿の人形みたいだ。 「WOWOW的には、背後のスクリーンが邪魔じゃないか?」と思わせたバラード「Scar Tissue」、ジョンのコーラスが甲高く響く「Otherside」、メンバーが顔を付き合わせてフェンダーストラトなヘヴィリフ「Suck My Kiss」、フリーの小さいエビジャンプ8連発「If You Have To Ask」。こんな曲やるとおもわなかった「The Organic Anti-Beat Box Band」。「中学の時に日本人の女の子と文通してたんだ。まあペンパルってことでみんな海外にいる子と手紙のやりとりをするんだけど、返事書くの忘れちゃってたら彼女怒っちゃって、手紙を2通交換しただけで終わっちゃった。・・・とまあそういうことを言っておきたいと思った次第なわけだけど。」・・・・・フリー。 「ぐわははは。オーライ、ろっけんろーーーー!!!」・・・・・・・アンソニー。 「ごぎゃーーーーーーー!!!!まざーふぁっかーーーーず!!」・・・・・フリー。 「うぎゃーーーーーーーーーーーーーー!!!!」・・・・・全員。 ジョンのボーカル曲が聴けたり、最終的にはフロントの3人ともシャツを脱いじゃって歓声を浴びていたり、クラッシュの「London Calling」のイントロから「Right On Town」に入ったり、アンコールでは「少年ナイフの曲」と言ってニヤニヤしながらジャムったり、「Get On Top」はイントロだけで結局演奏しなかったり、曲中にドラムスティックを客席にポンポン放り込んだりとやりたい放題だったが、基本的に、フリーとジョンとが向き合って音を確認しながら、様々にグルーヴを変化させながら、まるでスタジオでジャムっているかのような、そんな瞬間を見ることが多かった。 古くて懐かしい「Me And My Friends」の勢いであっさりとライヴは終了し、アンコールには前述の少年ナイフソングを含めて「Sir Psycho Sexy」とジミヘンカバーの「Fire」を演奏。メンバーの誰よりも長い黒髪を縛ってクルクル回転するジョンの姿に感動。ニヤニヤしながら最後に自慢のおケツを見せてくれたフリーの姿に苦笑。 アルバム「The Uplift Mofo Party Plan」「Mother's Milk」「Blood Sugar Sex Magik」から次から次へと引け目もなく代表曲が演奏されるのは嬉しかったが、詞もアレンジも素晴らしいParallel UniverseやThis Velvet GloveやGet On Topなどといった新曲をもっとたくさん披露してほしかったような気もする。でもそれじゃあ85分っていう時間は短いよなあ。演奏時間そのものが短いというよりも、演奏してほしい曲が多すぎるバンドになってしまったのかな。 セットリストはWOWOWの放送(1/11)を見れば分かることでしょう。 (report #2 by しげやん)
自分はレッチリに『Blood Sugar Sex Magik』から入ったクチだった.正直なところ,アルバム名につられて思わず友達から奪った『Mother's Milk』はりアルタイムで聴くことが出来たものの当時はあまりピンと来なかった.しかし,『Blood〜』はスゴかった.友達が車の中,大爆音で初めて聴かせてくれたときの衝撃は忘れられない.うねるフリーのベース,友達曰く「やる気があるのかないのかよく分かんない」アンソニーの歌声,やたらと忙しそうなチャドのドラム...そして,そして.ジョンのペケペケためためギター! あれからもう随分と経ったような気がする.ジョンはプッツンして脱退し,その後入ったデイヴ・ナヴァロがフィオナ・アップルに血染めのラヴレターを書いていたかと思ったらジョンは出戻ってきたし,『Californication』が発売されたところどこでもチヤホヤされ,FM を聴くと毎日のように「Scar Tissue」 がかかっている.そんな彼らだが,どうなることか.... さて.メンバーが登場!フリーがベースを歪ませ,アンプに向かいフィードバック音を炸裂させる.それとともに他のメンバーが音を加え,ブレイクとともにジョンのペケペケ音が出現し「Around The World」が始まり!そして,このライブは遠い昔...『Blood〜』を初めて聴いたときの衝撃... それを上回る衝撃となるのだった. アンソニーの声の素晴らしさ,そして改めて感じる歌声のリズムの良さ!あまりにも力強過ぎるチャドのドラム!そして同行者曰く「ロンブーの淳クンに似てる」フリーは例の意地悪バアサンのような腰使いでベキベキと弾き,ボーカルパートにもかかわらず高音弦でオカズを入れまくる.音響がムチャクチャ良く全てのフレーズまで聴き取れるのはフリーの弾き方なのか,それとも PA の上手さなのか. そして,そして!ジョンだよ! ジョンが弾くこの曲のギターフレーズは鬼のように簡単である.しかし,鬼のように難しいことも事実である.ギターを弾く人は試しにトライしてみるとよく分かると思う.もうあの弾き方はジョン以外の何物でもなく,そのカッコ良さにただただ脱帽するしかない.さらに,途中でそのジョンがあまりにも美しいコーラスを加え,マジに涙が出そうになる.しかし,間髪入れず「Give It Away」が始まり,涙をこらえてハジケる以外になす術がなくなる. 個人的な前半のハイライトは「Scar Tissue」だ.ストラトキャスターの哀愁漂うギター音をあそこまで情感をこめて伝えられる人はもうジェフ・ベックとジョン位しかいないんじゃないか,という位に美しい音が武道館を支配する.その美しさのあまり同行者が無謀にも「あのギター欲しい」と言うくらいだ.いや,それはいくら何でも無謀でっせ... その後にも「Suck My Kiss」「If You Have To Ask」「Under The Bridge」などの名曲を披露するなか,ジョンがグレッチのギターに持ち替え,フリーと顔を見合わせながら「OtherSide」のイントロを弾き始める.これがまた美し過ぎる!ジョンの歌声がこれまた天使が空から舞い降りてきたかの如く美しく,今度こそは本当に涙が出てしまう. しかし,そんな自分を現実に戻してくれるのが意地悪バアサン...もとい,フリーだ.アホアホな語りを入れ,その合間に指が10本あっても足りないようなフレーズを遊びで加え,その都度皆を唖然させる.フリーと顔をつき合わせながら鬼のようなフレーズで音楽の会話を楽しむチャドとジョンを見るに従い,改めてこのバンドにおける即興演奏の必要性を痛感する.そういえばジョンが復帰後のフリーのインタビューで「再びセッションで曲が作れるのが楽しくて仕方ない」と語っていたが,ただただ納得. あまりのテンションの高さに圧倒されながらメンバー達はステージを後にするが,これまでの武道館のライブで体験した中で最大の歓声とともにメンバー達が再登場.どことなくキング・クリムゾンを彷彿させる雰囲気の「Sir Psycho Sexy」の後はブッチギレ「Fire」!!!チャドのテンションが高過ぎでもう開いた口がふさがるヒマもなく曲は終わってしまい,フリーは美尻を披露して... ライブは終わった. 時間にして1時間30分弱.しかし,そんなことは関係ない.あまりにも圧倒的で強烈なインパクトが心の中に刻まれたのだから!
next report: The Chemical Brothers (1/8/00)
Jun Shigemura. Last updated: 1/ 13/ 00 |