Slash's Snakepit 柵、壊れる。吉本、しゃべる。

横浜ベイホール - 11/11/00


いやあ〜〜〜〜。何時の間にやらガンズンな時代になったもんだ。ガン!と来て、ズン!と来るからガンズン。じゃなくて、かつてロッキング・オンでは「ガンズン」と呼ばれていたのだ。渋谷陽一が、「ニルバナ」「キース・リチャード」と呼ぶみたいに。

いやあ、去年11月に発売のライヴアルバムといい、今年4月に来日したイジー・ストラドリン&ダフ・マッケイガンといい、来年1月に復活予定のアクセル・ローズといい、またしてもガンズンな時代になったもんだ。おまけに(というか、俺にとっちゃこれがメイン。)今日はスラッシュ率いるスネイクピットの5年半振りとなる来日公演だったりするわけで、ハードロックはもう時代遅れ、ヘヴィロックがナウなヤングのトレンディーじゃん、と言われているかどうか知らないけど、今時のヘヴィロックなんて、スラッシュのギターリフにパブリック・エナミーのライムを乗せたようなものばっかりだから、ガンズン大盛り上がりは当然といやあ当然の流れ。結局みんな、ハードロック大好き、ギターリフ大好き、なわけで、そんなガン!でズン!なリフ作りの天才がこの小さいライヴハウスに登場とあっては、ガンズン大好き、スラッシュ大好き、椅子席ファック!な自分が行かないわけにはいかない。

横浜ベイホールといやあ、今年5月にミッシェルを観て以来2度目の会場となる。でもやっぱその時と較べちゃうと客が少なめだなあといった印象は否めなかったが、そりゃまああん時はミッシェルだったからねえ〜〜、と思い返し、とりあえずまずは腰を下ろして寝ることにする。よく眠れなかった上に疲労も溜まっていたから。んでもって結構マジに寝に入る。終いには20分ぐらい寝てしまう。するともう開演直前とあいなり、ちょっと得した気分を感じながらフロアの方に降りていってみる。まあベイホールってステージが低いからどこで観ようがスラッシュの低いギターは見えないと思っていたから。だからどうせなら前で観ようと。

開演時間を10分ぐらい過ぎ、お馴染みのトンガリ帽子と「魂」という文字が入った黒Tシャツに身を包んだスラッシュが登場。ドラムのビートを合図にして、ニューアルバム最初の曲からギグがスタート。「ああ、やっぱあの人がボーカルだったのかぁ」「ベースの人はなんだかゼブラヘッドに似てるなあ」などと余計なことを考えていると、ギブソンギター&マーシャルアンプのお馴染みのコンビでちょっとかっちょいいギターリフをブリブリ弾き始めるスラッシュが目の前にやってくるわけだが、しかしだ!!! 近い!! スラッシュが近い!!! ほんとに近い!!! 開演を待っていた時は良く分からなかったけど、ほんとにベイホールのフロアは狭い! 手を伸ばせばそこにスラッシュがぁ〜〜。東京ドームで豆粒ぐらいだったあのスラッシュがぁ〜〜。って感じでほんと信じられん。生きてて良かった。

と、思っているのは自分だけではないようで、周りのむさい青年たちも目をキラキラ輝かせながら、往年のギターヒーローをわし掴みにしようとステージ前に挑みかかってくる。オールスタンディングのライヴではお馴染みの「オイ!オイ!オイ!オイ!」といった掛け声も、フロアを揺るがすジャンプジャンプで右往左往も、スラッシュという人を目の前にしているとなんだか新鮮でちょっと感動。シワの数が昔よりも若干増えたかな?ってなスラッシュも、嬉しそうにニコニコしながらちょこっとだけジャンプしている。ニューアルバムはかなりヘナチョコだったけど、その音の感じというか、見せ方及び聴かせ方というか、ライヴだとまた全然違うなあ。

でも、2曲目が終わったところで「みんな! ちょっと後ろへ下がってくれ。 誰も怪我させたくないからな。」と言ったボーカルの兄ちゃん。「なんで?」というのが正直な感想で、こんなのスタンディングライヴじゃ大人しい方じゃん!と思っていたからそれもなおさらだ。しかしミドルテンポの3曲目が終わった直後にはいよいよプロモーターの吉本興業が登場し、「みなさん後ろへ下がってください! ここで5分だけ時間を取らせてもらいます。前の柵が壊れそうです。怪我人も出てます。公演中止にはしたくないので後ろに下がってください!」というアナウンスがある。 しかしどう見てもあんた漫才師でしょ?って感じの人がしゃべっているが故に緊張感がイマイチ薄い。そのうちスラッシュまでもが、「ウシロニ、サガテクダサーイ。」と言うに至ってしまうわけだが、5年半ぶりに聞いた彼の肉声が「ウシロニ、サガテクダサーイ」かと思うとちょっとがっかりしつつ、彼自身、まあほんとのところはちょっと嬉しかったに違いないと思うとちょっとだけ俺も嬉しかったりするわけで。

ステージからメンバーが姿を消してしまったその後は、フロア最前列の柵に金槌でクギを打つ音を聞きながら、主催者の「後ろに下がれ」コールの連呼に段々嫌気がさしつつも、服や財布の落し物の持ち主を探したりして場の盛り上がりを沈めようとする主催者側の行動をじっと観察する。クツの落し物を見つけたときには、「これはパンクのライヴじゃあないんですから。ロックのライヴですからねみなさん。」と、スキあらばウケを狙おうとするところはさすがに吉本興業。

でも、ミッシェルでも壊れなかった柵が、なんで今日壊れた? 

終いには自分を含めた半分ぐらいの人が前のフロアから締め出しを喰らい、フロア遥か後方へと追いやられてしまう。なんとしてもショーのキャンセル は避けたい、払い戻しはしたくない、といったところはさすが現在の吉本興業。2万人のオーディエンス目掛けて、「前に押さずに上へ飛んでください!」と言い放ったスマッシュとはちょっと違うね。

なんやかんやの問答による20分ぐらいの空白の時を経て、「お待たせしました。間もなくバンドが登場します!」と言った時にはすでにその真後ろにスラッシュが仁王立ちしていて、「おめえら、今まで俺が観てきた中で最高のロックンロールオーディエンスだ! でも怪我しないように行こうぜぇ! 残りのふぁっきんナイトをぶちかまして行くからよぉ!(・・・かなりの意訳。)」と鼻息を荒くした後、またまた快調に飛ばし始めたスラッシュズ・スネイクピット。

お約束のコール&レスポンス=「えーお! えーーお! えーーおぉぉぉぉ!」を3回もやってしまうちょっとくどめのボーカリストは、完全なネイティブ・アメリカンで、スラッシュと並ぶとなかなかいい雰囲気を醸し出すことに成功。綺麗に編み込まれたレゲエヘアーからちょっと目線をずらすと、あと5センチ下げればモノが見えそうな豹柄パンツがそこにある。でもこの人、ちょっとホモっぽいと思ったのは自分だけかも。 いや、ホモっぽいといえばベースの人もその仕草とかがちょっとホモっぽく、バックチェリーのボーカルみたいなサイドギタリストとなかなかいい間柄であるに違いない、と邪推している。

前回のツアーでは全くやらなかったガンズンナンバーもここでは2つほど披露。「It's So Easy」では「Why don't you just......」の後にみんなで「ふぁっくおふ」を、そしてスラッシュ自ら曲紹介をした「Mr. Brownstone」ではなんとなくみんなでアクセル踊りを、それぞれ堪能させてもらう。 でもスラッシュ本人は、ガンズンの曲を演ってるときはあんまり楽しそうじゃなかったけどね。

咥えタバコでも、上半身裸でも、スクリーンで見ると周りより浮きまくっていても、とにかくスラッシュはかっこよかった。 しかしもっともっとレベルの高いカリスマティックな人達とタッグ組んでやってもらわないと、一部の限られた人達にとっての、往年のギターヒーロー的存在で終わってしまうわけで、それはもったいないなあ、この人をもっと大々的に復活させる方法はないものかなあ、と独りで苦悩してしまうぐらい、スラッシュはやっぱりかっこよかった。





  1. すべて「Ain't It Grand」からの曲
  1. It's So Easy
  1. すべて「Ain't It Grand」からの曲
  1. Mr. Brownstone
  1. すべて「Ain't It Grand」からの曲


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Last updated: 11/ 11/ 00