Sleater-Kinney Hot *ock to you

新宿ロフト - 6/28/99

with Number Girl


| Back | Home |


Number Girl

最近、新宿歌舞伎町に移転して新装オープンとなった老舗ライヴハウス、新宿ロフト。 お馴染みのシマシマのフロアと奥行きのあるステージはそのままに、客のキャパを大きく、そしてよりゆったりと、バーでくつろぎながら音楽に耳を傾けることもできる・・・・・・・・・・・・と言いつつわたくしこれがロフト初体験。 この情報は、旧新宿ロフトが閉店したときのテレ朝のトゥナイト2から仕入れたものだ。 まあとにかく大型スクリーンがあったり、受付の姉ちゃんがやたらと愛想がよかったりと、とにかく至れり尽くせりなわけですよ。

そしてまずはナンバー・ガール。男x3、女x1の日本人バンド。 あまりにもルックスが素人っぽすぎて、最初マジでローディーかと思った。「スリーター・キニーさんの来日おめでとうございます。こんばんは。福岡県博多から来ましたナンバー・ガールです!」とメガネのボーカル&ギター(黒のテレキャス)さんがまず挨拶。 結構かっこいいしゃべり方をする。 そんで彼のカッティングから演奏開始。 一発目からもうとにかく轟音、轟音、轟音。もひとつ轟音。 久しぶりに鼓膜が震えまくるとんでもない爆音プレイで、ボーカルがなにを歌っているのかも全然分からない。 でも、おおお、これがロフトの音かあ、パンクだなあ、となにげに感動してみたりする。 

ああ、日本語で歌ってるんだあ、と分かったのが演奏の最後の方だったけれども、プレイはかっこいいぞ。 特にいいのは右側のギターの女の子。 ちっちゃい。 ギターよりもちっちゃいかもしれない。 ギターのボディーに体が全部隠れちゃいそうだ。 でも飛ぶ飛ぶ。 なんだかチューニングもまともじゃないっぽい。 ひょっとしてソニックユースっぽいのかなこれって。

とにかくボーカルはこっちをみて「ぐわっ」と歌うので、なんか逆に彼の顔をマジマジと見つめてしまう自分。 メガネを取って汗を拭き拭きする彼の姿になんか妙な親近感というか、垢抜けなさというか、ロックっぽくなくて逆にそれがロック。 アメリカで3月にレコーディングしてきたという曲を最後に、25分の爆音ステージは終わった。 音がでかいと思ったのは俺だけか?と思っていたら周りのみんなも見終わってから耳をほじくり返していた。  


| Return To Menu |


Sleater-Kinney

前座のナンバー・ガールが終わって、なんだかあっという間にスリーター・キニー。 ちなみに彼女らはベースレスの3人組女性バンドで、本国アメリカでは音楽雑誌スピン、ローリングストーン両紙から高い評価を受け、97年発表の前作「Dig Me Out」は各誌リーダーズ・ポールのベスト5に入ったりもしている。 先日まで行なわれていた新作「The Hot Rock」発表に伴う全米ツアーでは各都市の大規模ライヴハウスが完全にフルハウス。 そんな絶好調スリーター・キニーをここ日本で観られるってのは千載一隅のチャンスだ。 こりゃあ観にゃあ損だなあと思いつつここ何ヶ月、チケット取るか取るまいか迷ったのだけれど、平日ってことでなんか行けるか行けないか分からなかったので、なんとなくチケットを押さえずじまいだったのだけれど、どうにかこの日時間が取れ、なおかつ当日券が出るということだったので、チケットなしで歌舞伎町に乗りこんだのであった。

でもまあそんなに意気込むほどの客の入りではなくって、はっきりいってこんなにゆったりとライヴを観られたのは今までかつてなかった。 客は200、どう多く見積もっても300でしょう。 それもなんだか遠巻きにバンドを観ている人達が多くて(・・・業界人もちらほらと・・・)、一段下がったフロアは閑散としている。 これはナンバー・ガールの時だけのことなのかなあ、と思っていたのだけれど、スリーター・キニーのステージが始まってもそれは変わらず。 でもこのステージを観ないとはやっぱりもったいないよなあ。

まず「私はキャリー。こちらがコリン。そしてこちらがジャネット。」と自己紹介したのには笑ったが、その黒のリッケンバッカーを持ったキャリーのギターカッティングが始まって、「こりゃあやっぱ違う。本物だわー。」と一瞬にして思わせるところがすごい。ナンバー・ガールも素晴らしかったけど、やっぱこの1音で彼らとの格の違いを見せつけるところはさすが王者の風格。 曲はちょっとマニアックな「The Day I Went Away」で、みんなの反応はちょっと薄かったけど、自分はもう「これはヤバいライヴになるなあ」、と直感的に分かってしまった。なんてったってドラムのジャネットの乳が揺れすぎだもん。

「Get Up」「The End Of You」「Dig Me Out」と新旧取り混ぜた曲構成の中で、向かって左側のリードギタリスト=キャリーはなんだかニコニコで、「アリガト」とうつむき加減に言うところがちょっとかわいい。 メインボーカル&ギターのコリンはなんだかぶっきらぼうな感じだけれども、彼女の叫びだけでもうワタシは完全にコリンの虜。 どう考えても彼女は俺のほうを見て歌っている。 でもちょっと恥ずかしいのでやっぱキャリーの方を見てみると、へたれなピートタウンゼントみたいに、右手をくるくる回して天井にぶつかりそうになるぐらいジャンプしている。 いやほんとに天井まであと30センチ。 だからちょっとばっかりハラハラしながら見ていた、ってことはないけど。

「Buy Her Candy」「Hubcap」なんかのちょっとまったりナンバーでも、「こいつらひねくれてんなー」と思わせるようなビート感でこっちを飽きさせない。 ドラムのジャネットは、マラカスを振りながらスネアを叩くという芸当も見せながら、メンバー全員なんだかそんなにテクニックはないんだけれど、ひとつひとつの音に全神経を注いでしまうような独特の音の色彩感覚を持っている。 そもそもナンバー・ガールの時とは比べ物にならないほどの音のよさ(=適度な音量)で、「さあ、聴くぞ!」という感じにさせ、なおかつ「さあ、踊るぞ!」といった感じにさせられる。 でもメンバー自体がそんなグッド・ルッキングじゃないので、「さあ、見るぞ!」って感じにならないけど、それが逆に彼女等の武器でもあり強みでもあるのだろう。 それが証拠にオーディエンスの女性率が高くて、最前の女のコはメンバーにTシャツをプレゼントして大喜びされていたっけ。 アメリカのトップバンドでありながらどこか「隣のお姉さん」的なメンタリティーとアティテュードが女性にうける理由なのかもしれないな。

ニューアルバムのトップを飾る「Start Together」や、新曲「Was It A Lie?」、独特のリフでぐいぐい引っ張る「Heart Factory」なんかも超絶グルーヴ吐き出しまくりで、もう止まりません。 それなのにメンバーは汗をかいている様子もなしで、曲間で静まるオーディエンスを見ると、「あらあ、静かねえ。」と余裕をぶちかまし、「ここ東京に来れてうれしゅうございます。」とお約束の一言。 なんだか気合入ってるんだか気合入ってないんだかさっぱり分かりません。 でも下手に愛想振りまかないところがこれまたいいのかも。

本編は「Turn It On」で終了して、暖かいロフト風の拍手と歓声で即座にステージに戻ってきたメンバーは「This song is for Yuka.」という一言で「Little Babies」へ。 なんだかほんわかムードになってみんなニコニコ。 そして最後の最後はこれまたラヴリーな「Words And Guitar」でキャリーもオーディエンスも飛びまくっておしまい。「アーリガトォ。サヨナラ」でほんとにさよなら。 全部で15曲強ぐらい演奏したかな? でもメンバーはともかく、お客さんはみんなそこを去り難いような、みんな名残惜しげな、そんな雰囲気だったよ。 

そんでライヴが終わって外に出て、スリーター・キニーのアルバムの促販をしていて、持っていないアルバムをやっぱり買ってしまって、それはメンバーのサイン色紙つきだったってのもあったんだけど、色紙ごとに書かれている言葉が違っていて、自分のに書かれていた文字は、彼女らの「Hot rock to you」という歌詞をもじった、「Hot cock to you」・・・・・・・・・・・・・。俺に言ってどうするっちゅうの。 キャリーってほんとベタだなあ。 やっぱ新宿歌舞伎町ってことで、何はともあれおしまい。




| Return To Menu |


| Back | Home |


next report: The High-Lows (6/18/99)


Send comments to: Katsuhiro Ishizaki

Last updated: 6/ 28/ 99