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渋谷クラブクアトロ - 12/11/99
with Wilburry
レコードではいまいちピンと来なかったカナダ出身パワーポップバンド=スローン。よってロッキング・オンのチケプレに当選しなければ行かなかったであろうこのコンサートだったけれども、しかし蓋を空けてみてびっくり。とってもいいコンサートでした。アルバムは最新の「Between The Bridges」しか聴いていないのにこんなに楽しめるとは思いませんでした。ロッキング・オンさん、ありがとう。
まずは前座にWilburryという日本のバンドが登場。でもいきなり演奏がバラバラで、はっきり言ってまったくつまらなかったので一旦外に出る。レコードは楽しめるかもしれないけど、スローンの前座としてはきつかったかな。外のロビーではレコード会社のお偉方がいて、12日の日本最終公演終了後、打ち上げがあるってことを小耳に挟んだ。・・・だからなんだ?
スローンの登場は7:50頃。ライヴが始まるともうくんずほぐれつで、ステージもフロアーもタフでファニーでエキセントリック。メンバー個々人がそれぞれバンドを作ってフロントマンになったらメジャーデビューできそうな、そんな高品質・絶対保証のパフォーマー揃いなのである。とにかく客を自分たちの世界に引き込む手法が巧みで心憎い! 自分が期待する「プロフェッショナル」なステージングのほぼすべてがそこにはあって、絶対にオーディエンスを飽きさせない。
- 1. まずは日本語
- 「アリガトネー」「ジャネ」「ドモ」「チョーサイコー」「チョータノシイ」「モット?」「チョット!」「アリガトー for マッサージ!」
- 2. 続いて各メンバーの担当楽器
- それぞれがリードボーカルを取るのはもちろん、リードギタリストを除いたメンバーの演奏楽器もかつてのバレーボールのローテーションのごとくコロコロ変わる。でもそれが片手間な遊び的なものではなくて、どの楽器をやらせても巧いのだからビックリする。特に、初めからTシャツ姿のドラムのアンドリューと、白いスーツを着たベースのクリス。両者ともまるでおもちゃと戯れているようにパワフルで軽快なドラムプレイから、でかい手で繊細に弾くキーボードプレイまでこなし、アンドリューに至ってはハムバッカーピックアップのエレキギターを持ってスローン風ブラック・ドッグ「Sensory Deprivation」のメインリフを弾くまでに至る。
- 3. さらにお客とのコミュニケーション
- スローンビギナーの自分が羨むほどのファンサービス。オーディエンスと目が合えば必ずニコニコ。狭いクアトロのフロアーを2つに分けてのコール&レスポンス。それに応えて完全に歌う多くの客に目を丸くしつつ、ちょっとその輪に入れない自分が悔しくもある。どうやら本国カナダでのライヴではお約束となっているらしい「すろ〜〜〜ん。すろ〜〜〜ん。」の声も息が合っているし、日本盤CDのボーナストラックが演奏されたのも日本特別ファンサービスの提供だったのか。
- 4. ところがハードロッキン!!
- 1番驚いたのがこの点で、まるでハードロックバンドの如くギターもドラムもラウドだ。レコードとはまったく違う音圧で迫る様はまるでレイジかリンプかグリーンデイか。 黒のリッケンバッカー、切れる弦、フィードバックするギター、クライベイビーなソロ、高く上がる足、振り回す腕、仰け反る背中、飛ぶメガネ。
- 5. 意外にも多い綺麗な姉ちゃん達
- だからメンバーも張り切っていたのか?!
- 6. 最後に謙虚
- 「今夜はフレーミング・リップスのライヴもあるし、色々なチョイスがあったわけだけれども、うちらのライヴを選んで観に来てくれてありがとう。」
1本のタバコも吸い終わらないうちにアンコールに呼ばれて飛び出たクリスのピアノ弾き語り。ある意味、顔的にもエンターテイン的にも、アル・ヤンコヴィックとベン・フォールズを足して2で割ったようなこの人。顔がかっこよければポール・マッカートニーにもハリー・コニック・Jrにも、ひょっとしてカナダ産ベックにもなれただろうが、幸か不幸かそういうことにはならず、今、こうやってバンドの牽引車としてスローンのカラーを決定付けている。ベースをやってもキーボードをやってもドラムをやっても、華があるのはこの人である。でもこういう才能と拮抗するだけのメンツを集めたってところもやっぱすごいな。
パワー・ポップとしてひとくくりにされているけれども、レコードで聴くのとはぜんぜん違い、その「パワー」の部分を全面に押し出した見事なバンドアンサンブル。出てくる音を聴くと難しいことを演ってる風なのに、これまた苦労しているような顔を見せないところはやはりプロフェッショナル。スローンの真骨頂はライヴにあるのだなあ、としみじみ思いつつ、「レコードはライヴ感覚では作らない(Sloan Official Siteより)。」とは知りながらも、改めてレコードを聴くと「やっぱしょぼいよこれ!」と感じてしまうのはどうにかならないものかな。
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Send comments to: Katsuhiro IshizakiLast updated: 12/ 12/ 99
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