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赤坂ブリッツ - 5/1/99
with Kazuyoshi Nakamura + Wino
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今夜のクラブ・スヌーザー |
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音楽雑誌「Snoozer」が日本の大都市を中心に開催されているライヴ&DJイベント、クラブ・スヌーザー。首都圏地区では新宿リキッドルームがその会場となることが多いが、今夜は「Club Snoozer Special」と題されたそれこそスペシャルイベントとして赤坂ブリッツで催された。
ライヴアクトとして正式な出演が決まっていたのはズボンズのみ。ワイノーは一部メディアでのみその出演が報じられ、中村一義に至っては完全なシークレットゲスト扱い。 がしかし中村一義出演の噂は各所で取り沙汰されていて、彼は半ば公然たるシークレットアクトとしてステージに登場した。
ここではまずDJイベントとしてのクラブ・スヌーザー・スペシャルを振りかえってみるが、はっきり言ってなんだかなあ、って感じだった。
まずブリッツのフロア内は「禁煙」であったことが不満の第一要因。たばこの吸えないクラブは愛煙家にはかなりつらい。いつもならタバコをがんがんにふかしながらお皿を回しつづけるDJ田中宗一郎も、今夜は彼の回りに白い煙は見えないあたらない。当人もつらかったろうが、これって自分にとってもかなりきつかった。
そしてハコがでかい割に客の数も多すぎて自由に踊れない。
なおかつ音が小さすぎ。
ロックとデジロックのつなぎがベックってのはいただけない。
いつもそうだが、ステージ付近のスクリーンに意味がない。
曲中にタナソウに変なお約束ポーズを強要される。
主役は誰なのだ?
客のため、ってことよりも彼のエゴのみが見え隠れする。
なにせ彼の語りは笑えないし。
いまどき、「盛り上がってますか?」と、がなるDJがいるか?
特にこのイベントを象徴していたのが、メガフォンから垂れ流される「ご用のお済みのお客様はすみやかに退場してください」という、本当にむかつく言葉。 「みんなが楽しめるパーティー空間を作りたい」という趣旨から、この無機質で機械的で商業的な言葉を誰よりも嫌悪していたのはスヌーザー自身だったのではなかったのか? パーティーの余韻を楽しむこともなく会場の外に放り出され、まだうら寒い夜空の元で元々低かった熱気がさらに急速に冷めゆく自分を感じるとさらに空しさは倍増。 5000円という入場料に対してここで文句を言うつもりはさらさらないが、クラブDJイベントとしてのこのスヌーザー・スペシャルは大したものじゃなかったと思う。 DJイベントとしての底が見える、というか、なんか結局元に戻ったというか、今までのクラブ・スヌーザーってなんだったの?って感じ。 こんなのが本当にあなたのやりたかったことなのか、タナソウ? でもいい訳は聞きたくないな。マスになるにつれて自分の首を締めるかのように自由度が利かなくなっているようでそれも悲しい。
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ワイノー |
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最初のライヴアクトはワイノー。 曲はほんの少ししか知らず、なおかつボーカル吉村=シャーラタンズのティム、という図式で結びつけていて、戦前の印象は必ずしもよくはなかった。
だが、揃いもそろって「Yes」という文字を反転させたようなロゴの入ったブラックTシャツをあしらったメンバーの中でただ一人白いTシャツを着てすべての視線を集めようとするボーカル吉村は、実際に見るとシャーラタティムではなかった。
まずワイノーはシャーラタンズと呼ぶには若すぎた。そしてシャーラタンズほどのコクもグルーヴもまだなかった。曲なんか知らなくても、シャーラタンズやストーンローゼズを聴いてきた人なら演奏中にすぐに予想がつくブレイクやコード展開やリフの構成。 先立つ微笑ましさがすべてを忘れさせてくれる、と言ってしまっては本人達に申し訳ないのかもしれないが、本当にそんな感じ。 決してのめり込んだり憧れたり、っていう感情は起きないような自分とまったく違う世代の人達なのだなあ、という感じが寂しくもあり、頼もしくもあり、空しくもあり。
いいと思わせたのはすべて日本語の歌詞の部分ばかり。でも音がそんなに良くなくてあまり聞き取れなかったのがちょっとばかり残念。 ステージ上のメンバーはさしたる動きもないので、ステージ上を観ている必要性をさして感じず、下とか横とか上とか前の人の頭とか、なんか変なところばっかり見ていたような気がする。
ワイノー・・・・・・・・。自分にとってプライオリティーの高いバンドではないが、予定調和で緩慢なDJプレイに活を入れるには十分だった。 早く、スヌーザーお抱えの・・・っていう存在から抜け出してほしいな。
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中村一義 |
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ワイノーのライヴから1時間ぐらいかな? タナソウの「シークレットゲスト、中村一義!」という声で本人登場。 なんでもこれが東京での初ライヴお披露目ということで、かなりの注目度高し。 しかし中村一義の音はまったく聴いたことがないわたくし。 でも初ライヴで初めて彼の音を聴くってのもなんかのめぐり合わせか?
アコースティックギターを抱え、椅子に座る若者2人。幸いにしてフロアよりも二段ぐらい高くなった所にいたので、ステージ上はよく見える。 しかし片方は中村一義と分かるが、もう片方は? チューヤン? 「ファーストアルバムからお世話になっているタカノヒロシさんです!」と中村が紹介してもイマイチ状況が掴めない俺。「あ! あの高野寛か!」とやっと分かったのが2曲目の終わるころ。 アコギのボディを叩いてパーカッシブな音を出したり、卓越したスライドギターを見せたりと、どこかおぼつかない中村のギターカッティングと違って、そのプレイはまさにプロフェッショナルそのもの。 ギタリストとしてこれまでも様々なアーティストのレコーディング等に参加してきた高野であるから当然といえば当然か。
それに対する中村一義。 声はいい。 すごくいい。 歌詞はよくわからないがこれもよさそう。 低音とファルセットを組み合わせるメロディーセンスにちょっと鳥肌が立つ。 音程はどうだろう? わざと外してたのかな? 緊張してたかな? その緊張を隠そうとする妙な微笑もちょっとぎこちなかったかな?
隣にいたのが某Sくんということもあってちょっとショーンレノンを思い出させた中村一義の振る舞い。 ライヴアクトとしてどうとかこうとか全然言えない、まだそんな状態にある中村だが、次はフルバンドでぜひ。 アコギでの3曲のみの演奏じゃちょっと物足りないよ。 まあ自分で打ち込みしてきたというドラムループ音も悪くはなかったけど。
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ズボンズ |
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さてズボンズ。 アンダーワールドの「ボーン・スリッピー」から、という流れはちょっと意図がわからないが、まあ許す。
最初に言いたいのが、前のほうでこのライヴを観ていて分かったこと。それはクラブ・スヌーザーにおいてズボンズのライヴを前のほうで観ているオーディエンスのこと。これには以下の4タイプの人間がいることがわかった。
- ズボンズの根っからのファンで、ズボンズのライヴはこんな感じ、ということを予め知っている。
- ズボンズの根っからのファンだが、今回ズボンズをナマで観るのは初めて(自分含む)。
- ズボンズのことはほとんど知らないが、暴れるのだけは大好き。
- ズボンズのことはほとんど知らないが、ずっと前にいたので、このまままだ前にいても大丈夫だろう。
この場合、1番の人達はほとんど問題ない。 端から見ていても微笑ましいし頼もしい。 2番と4番はやや怪しい。 3番はかなり怪しい。
1番と2番の人の比率はどのぐらいだったろう? そんなに多くなかったような気がした。 歌詞に合わせて歌っている人がかなり少なかったし。
他に比べて絶対数は少ないかもしれないが、やはりとにかく多かったのはやっぱり3番。 なぜかというと焦点の定まっていないクラブ・スヌーザーだから。 なんでもありのクラブ・スヌーザーだから。 ズボンズのファンばかりじゃないクラブ・スヌーザーだから。
どうやら4番そうな女のコが、ライヴの途中で3番のダイバーに顔面をキックされ泣き出した。 2番の子達は愛情のままに、ボーカル&ギターのドン・マツオの歩む方向へドドドドーーー、っとなだれ込んであわや将棋倒し。 それを1番の人達が抱き起こす。 曲調に関係なく3番の人達はおもしろ半分に前の人に体当たりする、手で押す、リズムに関係なく方々飛びまわる。
以下は「盛り上がりを考える」に譲る。それら無節操なオーディエンスの姿を見て、「盛り上がっている」、と勘違いしてしまいそうになるが、とにかくアンコールの拍手が少なすぎ。 いかに他力本願か、予定調和か。 まだ「ズボンズに楽しませてもらっている」という域を脱していない感じがする。 これはクラブ・スヌーザーの意図するところなのだろうか?と改めて問いただしたくなってくる。
そのズボンズ。ドラムがバッファロー・ドーターのメンバー(だった)フトシという人に代わってかなり質感が違っているように聞こえた。 とにかくバカバカとスネアの勢いが凄まじいが、特に序盤、自分はかなりの違和感を感じてしまった。 一応、ドン・マツオがローリング・ストーンズの日本一の理解者ということで例えさせてもらえば、チャーリー・ワッツの代わりにスティーヴ・ジョーダンがドラムを叩いている感じ。 もっと分かりやすく言えば、スティーブン・アドラーの後釜としてガンズ&ローゼズに加入したマット・ソーラムのような、レニの次にストーン・ローゼズのドラムとして加わったロビー・マディックスのような、そんな違和感がズボンズにもあった。 ドラマーとしてはものすごい腕を持っている様子だが、これまでのズボンズの色には合っていない、そんな感じが最初はした。特に「Gimme Some Money」「Jumbo」あたりのまったりノリが聴かれなくてかなり残念だった。
でもそのストーンズのカバーでも有名な「That's How Strong My Love Is」は思いっきりハードになっていて、この辺からかなりいい感じになってきた。「Mo' Funky」のグルーヴはドラムが変わってもオリジナルのそれを保っていた。 でも思ったほど後半までそのグルーヴが持続していなかったような気もした。
いまどきステージ上でベーシストとギターのチューニングを合わせるドン・マツオも笑えるが(・・・なおかつかなりチューニングが狂っていたし。)、「おう、いえい」「おうーらい」「あー・ゆー・れでい?(・・・あー・ゆー・れでぃ?ではなくあくまでもあー・ゆー・れでい?)」を繰り返すドン・マツオも笑えた。
アンコールで演奏された「Black Ink Jive」はやはり良かった。飛んだ。歌った。この曲では自分自身の中でまさに戦闘モードになってしまう。他が見えなくなってしまう。フトシのドラムはこの曲の色に合っている。
恐らくもっともっとグルーヴ度の高い演奏が出来る存在ではないか、と思えてしまったので決して満足のできる出来とは言えないこのライヴだったが、それは自分がストーンズの「Rip This Joint」を演奏することを期待していたから・・・・と言えないこともない(笑)。 とにかくやっぱり単独かもしくはフェスティバルで彼らを再び観てみたい。
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Send comments to: Katsuhiro Ishizaki Last updated: 5/ 2/ 99
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