■ Texas Motor Speedway, Fort Worth, TX - 11/ 1/97
後方の大スクリーンにウェブ・ブラウザーが開き、stonestour.comのページが大写しになる。11/1−Dallas/Fort Worth公演の投票結果と題して、そのページがスクロール・ダウンされると、そこには各曲ごとの投票結果がポイントで示してある。この日一位を獲得したのは、「Under My Thumb」との接戦に僅差で勝利した「Star Star」である。「よっしゃあ!!」と下でこぶしを握り締めた私。聴きたかったんだあ、この曲。キースのイントロからして文句無くロックン・ロールしていたこの曲。思いっきり「starfucker starfucker」と叫んでしまったよこの保守的な土地で。ミックもロニーとともにコーラスを取る。しかしここで疑問がひとつ。何でみんなの投票で選ばれたのに、客の反応はこんなに薄いの? みんな座っちまったぞ。誰が投票したんだ一体。
この曲でのキースのソロは、「Love You Live」のソロのようにメジャーからマイナーに入る感じではなくて、マイナー一本槍で通した。あまりにも「Love You Live」のイメージが強いため、ちょっと奇妙に感じてしまった。
「Do you feel like singing?」と聞く、赤のストラトを持ったミック。大歓声が上がると「Ok, I'll do the shit again」と小声で言ってまた笑いが起こった。曲は「Miss You」である。Voodoo Lounge Tourの時よりも若干テンポアップしているような感じ。ダリルのベースが強調されているような感じで、この曲は彼の持ち味を発揮するのに最高にファンキーなナンバーである。
曲の途中で「You think I'm....」と歌って一瞬間を置くミック。すると客の方から「Crazy!!!」と大声が上がる。客とのミックとの掛け合いも、いろいろなパターンが用意されていて、客の方も何とか合わせようと必死。「Pretty good, pretty good」とミックからお褒めの言葉も。ご当地テキサス出身のボビー・キーズのサックス・ソロの後、ロニーがソロを取るのはいつもと同じ。でもこの日のロニーのソロは素晴らしかった。フレットいっぱいに使っての単音、複音交えてのソロには、正直恐れ入った。ニューアルバムを聞いても、なんか最近生彩が無いなと思っていたけど、どうしてなかなか。まだまだ素晴らしいギタリストである。キースはチャーリーの前に陣取って、淡々とリフを引き続けている。ここでは御役御免といった感じだ。
続いてメンバー紹介。キースが紹介されると、そのまま彼はステージ中央にやってきて、「ここってテキサスだよなあ。みんなどう調子は? 戻ってこれて嬉しいよ」とぼそぼそ話し始めた。そして「I missed your ass」と言って笑いを取るキース。「じゃあ、そんなみんなにこの曲を。All About You」.......
演奏が始まったとたん、みんな一斉に座り、大声で話し始めた。いわゆるこれが「トイレタイム」かあ、と感心してしまった。ほんとにだれも聴いてねえぞ、おーい!! かわいそうなキース。カメラ目線で悲しげなバラードを熱唱するキースの目には大粒に光る涙が.....ということはないが、みんな一斉に座ってしまうのを目の前にしながら歌うのはつらいなあ、などと思ってしまった私。いい曲なんだけどなあ。
もうひとつのキースの曲はスーパーマニアな「Wanna Hold You」。5弦ギターで威勢良く始まったこの曲だが、いかんせん誰も知らない。でもこれはすごく良かった。ぺらぺらに薄いオリジナルに比して、ここで聴けるその曲はとても分厚い。隠れた名曲に新たな息吹を与えてくれたような感じだ。
「God bless you all」とキースが言ったのを合図にいったんそでに下がるメンバー達。すると間もなくしてステージど真ん中から、橋(?)がするすると伸びてきた。どこまでも伸びる橋。小学校の時に避難訓練で見た、消防ハシゴ車を思い出してしまったよ。やがてその橋はスタンド席正面に設けられていた小さいステージにまで伸びて、やっとその動きを止めた。そしてチャーリーを先頭にしてその橋を渡ってセカンドステージに向かうメンバー達。「スタンド席の皆さんこんにちは」と挨拶するミック。しかし私のところからだとメインもセカンドもあまり距離が変わらないので、そんなに感激するわけでもなかった。セカンドステージはアリーナとスタンドを隔てている柵の目の前に設置されているので、ミックはまるで檻の中にいる人間達に向かって話している感じではなかったのだろうか。
そのセカンドステージでの一曲目は「Little Queenie」。「Go Go Go, Little Queenie」というさびの部分でこぶしを振り上げるのはわずかな人ばかり。しかしほんと、どっかの安クラブで演奏しているような感じ。それだけステージは狭い。肩を寄せ合って演奏しているストーンズ。この曲はキースのR&Rギタリストとしての上手さが光ったナンバーだ。
ミックが再びギターを抱えての「Crazy Mama」。キースはてっきり5弦かと思っていたので、白ピックガードのテレキャスを持った時はびっくりした。この曲の単音リフを弾いていたのは誰だったのだろう。なにせセカンドステージでの演奏中はスクリーンには何も映らないもんで、詳細はいまいち分からないのだ。おまけに音はセカンドとは全然方向の違うメインステージの方からしか出てこないので、ちょっと変な感じ。何か本当に演奏している感じがしないのだ。
セカンドステージ最後の曲は前回のツアーを彷彿とさせた「You Got Me Rocking」。アレンジもそんなに変わっていない。ロニーのスライドも相変わらず。キースのアクションがこの曲で全快になる。
さて、セカンドステージでの演奏を終えると、メインステージへの花道を戻るメンバー達。その間にあの「Sympathy For The Devil」のテープの音が聞こえてきた。ちょっともう食傷気味のこの曲のアレンジであるが、とにかく寒いもんで歌って踊るしかない。「I shouted out, "Who killed the Kennedys?" 」という部分は、私がケネディが暗殺された教科書倉庫の前を通る時にいつも叫ぶ一節でもある。ちなみにこの曲でキースは、あの69年ツアーあたりで弾いていたリフをちょっと聴かせてくれたし、エンディングも見事なまでにビシッとに決めてくれたことが印象的であった。
続く「Tumblin' Dice」ではミックがサビに入る部分を間違えて、無茶苦茶な演奏になってしまった。御愛敬、御愛敬。しかしこの曲でのロニーのソロには驚いた。ギターのヘッドのところに小型カメラが付いていて、そのフィンガリングの様子が巨大モニターに映し出されるのである。あれには驚いた。どれほどの人が気が付いたかなあ。
「Honky Tonk Women」では最初のカウベルの音が聞こえず、いきなりキースがイントロに入った。もちろんピアノのチャック・リーヴェルのソロの時の、キースのちょっかいも欠かさない。でももうちょっとイントロで引っ張ってくれると嬉しいんだけどなあ。
「Start Me Up」では前回ツアーと同様に、「ぼん!」という小さな爆発がイントロとともに起こる。いやあそれにしても、キースのギターの音のでかいこと。ラストの「Jumpin' Jack Flash」でもバリバリに弾きまくってたなあ。そのかわりロニーのギターがいまいち聞こえなかったよ。ちなみにキースはこの曲で、ステージ前のせり出しまで行って、ピックを投げたのだが、失敗して目の前にひらひらと落っことしてしまった。見ていてこっちが赤面。
いったんメンバーがステージを下りて、アンコールを求める歓声と拍手が巻き起こる。この間、後方のスクリーンには地図が映し出され、だんだん場所が絞られてゆく。そして最後にこの会場のテキサス・モーター・スピードウェイの一点が地図上に示されるというアイデアである。
そんなこんなでキースが勢いよく再び登場。「Brown Sugar」だ。しかしながら頭の音がスピーカーから出てこなかった。ちょっとずっこける。でもこれもストーンズだ、許そう。最後の方のストーンズヒットパレード集は、なんか前のVoodoo Loungeツアーの延長のようで、まるでヴィデオでも見ているかのようだった。
ステージ左右を行き来するキース。客とのコール&レスポンスに熱心なロニーとミック。アンコールを終え、挨拶を済ませ、ステージを下りるストーンズとそのサポートメンバー達。その時ひらひらとヘリコプターが頭上からステージ裏へ着陸。広いサーキットでのライヴであるがゆえに見られたこの光景。あのヘリコプターにメンバーは乗っていくのだろうか。
きれいな花火を見ながら、寒さもあったし、席もよくなかったけど、何だかんだ言って楽しんでしまったなあ、などとボーっと考えていた。アメリカだから、ストーンズはどうの、っていうのはあまり感じなかったし、客ののりからいえば、日本の方がいいようにも思えた(まあテキサスだしね)。
でもこれだけは言える。ストーンズは年を取っていない。年を取ったのは客の方である。ストーンズが、オープニング・アクトに今バリバリの若いミュージシャン達を使い、プロディジー、オアシスの曲を開演前に流すなど、どんどん若返っていくような感じだ。客の年齢層に合わせようとするならば、前座にフリートウッド・マックでもビージーズでも使えばいいのである。ノスタルジーと呼ぶには少なすぎる客の知識。そんな連中に向けて今回のコンサートは行われているわけではないことを、今回私は身をもって知った。本当のファンのためのコンサート、そして新しいストーンズファンの獲得、これが今のストーンズの目指すところであるように思う。
それから、開演前に、「今夜はみんなでロックしようぜえ」と大声で言っていたおやじ、あんたが一番最初に席に腰を下ろしてしまったのを、俺は見逃さなかった。81年ツアーのTシャツを大事に着ているおやじもいれば、流行だから来るおやじもいる。最後に言う。やっぱりアリーナは座席なしにして欲しい。好きなやつは前で、どうでもいいやつは後ろで、これが絶対いいに決まってる。ストーンズにも、そのファン達にも。もちろんその恩恵を一番受けるのは私であるのだけれど。
- Set List - 11/1/98
- Satisfaction
- It's Only Rock 'n Roll
- Let's Spend the Night Together
- Flip the Switch
- Gimme Shelter
- Dead Flowers
- Anybody Seen My Baby?
- Bitch
- Out of Control
- Star Star
- Miss You
- All About You
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- Wanna Hold You
- Little Queenie
- Crazy Mama
- You Got Me Rocking
- Sympathy For the Devil
- Tumblin' Dice
- Honky Tonk Women
- Start Me Up
- Jumpin' Jack Flash
- Brown Sugar
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Send comments to: Katsuhiro Ishizaki Last updated: 11/ 2/ 97
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