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赤坂ブリッツ - 9/19/99
なんとなく今年のマニックスの来日公演の時の状況を思い出させるなあ、といった感じで、ニューアルバムはこれまでの路線からすると新機軸とも言える内容だったし、東京公演は赤坂ブリッツを中心とした追加公演含む、日、月、火の3デイズ。 まあ来日の数からするとスウェードの方が断然多いわけだけれど、自分が本当にいいなあと思い始めたのは3rdアルバムの「Coming Up」からだったので、これが自分にとって初めての生スウェード体験となる。
5時まで仕事で、6時の開演に間に合うかなあと若干の心配はあったものの、「駅前探検倶楽部」で下調べしていた通りの乗り換え時間を経てなんとか開演直前に会場にすべりこむ。 とりあえずタバコを一服してため息をついていると場内から「ワー!」といった歓声が聞こえてきて場内が暗転。 自分は当然ギターのリチャード・オークス側で観ることに決めていたから、フロア右側のドアから身体を闇の世界へと滑り込ませる。
広い場内に浮遊するストリングスの調べ。 それとは対照的にメンバーの名前を大声で連呼する満員のオーディエンス。 その前方には、宮殿をイメージさせるようなステージセットから「Head Music」のロゴがほのかな光りを放っている。
・・・・とまあこんな堅苦しい話を吹っ飛ばしたのは、青いシャツのリチャード・オークスが、「Can't Get Enough」のイントロを弾き出し、キーボードのニールがやはりギターで追従し、ヴォーカルのブレット・アンダーソンの姿がスポットライトに照らされたその瞬間だ。 近頃のイメージ通りブレットは黒の上下で、モニタースピーカーに右足を掛け、身を乗り出すようにして歌い始める。 そしていきなり身を翻してドラムセットによじ登りジャンプ。 マニックスの時のようにステージライトがムチャクチャ豪勢なため、後ろの方からでもブレットのしわの数まで数えられそうな勢い。 マイクをクルクル回してキャッチする様は、なんか変にポール・ロジャースを思い出させたし、「オイ! オイ! オイ!」と煽る様はなんか体育会系っぽくてちょっと笑えた。
肝心要のリチャード=
なんかぽっちゃりした感じ。青のフェンダージャガーかジャズマスターのようなものを持って短い髪をちょっと振り乱す。ギブソンのES-335を持って「Trash」や「She」を弾いているのを見るとなんだかマイケル・J・フォックスみたいだが、「Metal Mickey」や「Animal Nitrate」なんかでの黒いレスポールカスタムの音はもうハードロックそのもの。 「Elephant Man」あたりのリチャード(レスポール)とニール(ストラト)のダブルギターでのリフも今までにない感じで気持ち良かった。 リチャードは「Lazy」の途中では、ヘッドのぺグを緩めて音を落として、そしてまたすぐのチューニングに戻すというなかなか実験的な演奏をさらっとなにげに披露。 だからもっともっと前面に出てきてもいいじゃん、とも思ってしまう。 若いんだし、それが逆にブレットを引き立たせることにもなると思うんだけど。
しかしまあライヴ中に思ったこと。 それは「Coming Up」がいかに名曲揃いのとんでもないアルバムだったかってこと。 というかファーストアルバムの曲群、「Coming Up」からのもの、そして最新アルバム「Head Music」からのナンバーとこの3つを比較して、アルバムそれぞれのキャラがくっきりと立っているということ。 そしてその中でも特に自分にとっては「Coming Up」からのものがツボにハマっているということ。 初期の「Animal Nitrate」なんかは前任のバーナード・バトラーの影を意識しすぎて、逆に硬質なものになっているような感じがしたし、「Head Music」からのものはそれはそれで素晴らしかったが、むしろ「Coming Up」からの曲の引き立て役に回ってしまっていたような気がした。一番期待していた「Electricity」も、「Head Music」というロゴの光りとともに、リチャードのワウワウギターが前面に出過ぎて、スタジオ盤ほどの軽快さはちょっと無くなっちゃってたかなあといった感じもした。(・・・でもすごく良かったけど。) というかバックの演奏は、変な話、シャーラタンズやリーフみたいなディープサウスな重みと余裕があって、それが「Coming Up」からの曲と絶妙にマッチしていたこともツボだったんだと思う。 やっぱ「Beautiful Ones」はスーパー名曲だし、2階席の人達もスタンディングで踊っているのを見て涙が出そうになった。そして「Filmstar」「By The Sea」「Lazy」とたたみかける構成には正直参った。
「She's In Fashion」の最後で綺麗なハーモニーを聴かせて、ブレットもリチャードも満面の笑み。 アンコールでは、「素敵な夜だったよ。来てくれてありがとう。 明日の夜もまた会いましょう。そしてその他の人達とは2年後か3年後かに会いましょう。 今日は何曜日だっけ? おお! サンデー・ナイト!」と言って始まった「Saturday Night」。 この曲のサビの部分がいつまでもいつまでも頭からこびり付いて離れない。 よってこれが今夜の、"Head Music"。
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Send comments to: Katsuhiro IshizakiLast updated: 9/ 20/ 99
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