Worldwide Love WWLはオー脚の彼方へ

郡山カヴァーズ - 5/24/98


O脚だ...........。ステージ前方には厚い幕が掛かり、機材をセッティングするPAYACOさん(G, Vo)の足だけが見える。ふっと我に返り辺りを見回すと、客の1割は外国人という、まさにバンド名にふさわしい国際的な雰囲気。なおかつSEはX脚のレニー・クラヴィッツということで、気分が悪かろうはずはない。

Ei-Chan(B)がミキサーに準備オッケーの合図を出し、メンバーの姿が暗闇のステージ上に浮かび上がる。黒のギブソンを「標準」の位置に持ったPAYACOさんをステージ右手に、プレシジョンベースを大事に抱えたEi-Chanが左手に、そして中央後方に大魔人のようにそびえ立つドラムのTankayoさんが、「うりゃあ、いつでも来い!」という気合いの姿を見せている。

1曲目「ネイポン」のギターリフを鬼気迫る様相で刻むPAYACOさんに圧倒されたのか、客もじっと彼女たちの演奏に耳を傾けているという感じだ。というよりも、もう踊りまくって暴走しそうな自分を、優しく唄いかけるPAYACOさんのボーカルを耳にすることでかろうじて自分の理性の動きを呼び覚まし、それによっておもむく本能に自制をかけているといった感じなのである。この日のテーマである「エロ」はまさしくそんな理性で本能をコントロールする客の雰囲気に溶け込み、なおかつさらなる高い境地へ我々を導いてくれるような、かつてフレディー・マーキュリーが説いたようなそんな幻想さえも抱かせるものであった。

「Honey Were」「Tulip」など彼女らの代表曲や次のアルバムに収録されると言う新曲がプレイされた後、Ei-Chanのヴォーカルのよる「ロボD」が演奏される。機材トラブルなどもありなかなか曲に入れずもどかしい表情を見せるPAYACOさんであるが、それは緊張感漂うフロアを和ませるための巧妙なテクニックであることは、恐らく客のほとんどが察知したことであろう。開放のDじゃないんだあ、と個人的にはPAYACOさんのギターテクから学ぶ点も多かったこの曲であるが、Ei-Chanの哀愁漂う、それでいて深みのあるボーカルに感じ入った輩も少なくはあるまい。Tankayoさんのドラムのスネアも気持ちよくグルーヴのツボをとらえていて、ドラムセットの前に奉られていた「ロボD」も心なしか笑みを浮かべているようにも見えた。

個人的なお気に入り「Radio One」や「Atomic Ammmonite」などは、オリジナルよりもさらにパワーアップされ、PAYACOさんのボーカルも往年のブルースシンガーを思わせるほど力強い。この自信から出た結論なのであろう、いよいよ次のサードアルバムではPAYACOさんにとっては初のフライトになる海外レコーディングを敢行するとの発表がなされた。とうとうWWLも世界のみんなのものになってしまうのか、という嬉しい反面、一抹の寂しさがフロア内を包む。しかしドメスティックなものにとどまらない活動を目指すWWLにとっては、これは当然の選択であったいえるであろう。抑えきれない涙を拭いながら、心からの健闘を祈りたい。

そんな感じで涙あり、笑いありのコンサートも、気が付いてみるとアンコールを求める拍手が会場を揺るがしていた。するとここでこの日のビッグ・ビューティフル・サプライズが待っていたのだ。なんとフィリピンからのスペシャルゲスト、「Henachoko Ponpies」がステージに登場。一体全体いつの間にWWLと入れ替わったのか全く気が付かなかった私。まさに呆気にとられた一瞬であった。その7色のアフロヘアーを持つスペシャルゲスト「Henachoko Ponpies」が各自自己紹介をし(でもなぜかフィリピン人なのに中国人のような名前だったのが気にはなったが、)、軽いジャムを繰り広げる。なぜかTankayoさん似のベーシストWongはニコニコと楽しそう。さすが陽気なフィリピン人だ。

この曲を最後にステージを降りた「Henachoko Ponpies」であったが、またしてもステージを降りるその姿を見逃してしまう。気が付くとステージ上にはWWLの面々が顔をそろえている。「ばいばーい」と楽屋に下がった「Henachoko Ponpies」に手を振るPAYACOさんであるが、横の方からは「凝った演出だなあ」という声も聞かれた。

そしてラストは私の最大のお気に入り「Gimme Some Darlin'」である。これは私のために演奏されているのだ、と勝手に解釈し、「あい・どん・まいん!!!」のところで私は死んだ。そのふらふらした体で外へ出てみると、おもてはどしゃ降り。私の歓喜の涙を洗い流すには十分すぎるほどであった。

  1. ネイポン
  2. Skip Chameleon
  3. Frog Attack Horror Show
  4. ドリルマン
  5. Tulip
  6. Honey Were
  7. Telegram Man
  8. アジアのたまご
  1. Ready Freddie Go
  2. Secret Of 正直ロボD
  3. Grandpa Train
  4. Radio One
  5. Atomic Ammonite

  6. Gimmie Some Darlin'

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Last updated: 5/ 24/ 98