テーマ:プロセスのふりかえりを楽しむ! 〜自分自身を見つめるふりかえり〜
「自己発見の旅」との出会いから、Tグループヘ
おはようございます。ただいまご紹介いただきましたGWTネットワークの木村と申します。
さて、今回は、「プロセスのふりかえりを楽しむ〜自分自身を見つめるふりかえり〜」と題しまして、我々GWTネットワークが実践している「自分自身を見つめる」ということに焦点をあてたふりかえりを皆様にご紹介させていただければと思います。
私自身が、この「自分自身を見つめるGWT」に出会ったのは、今から約20年前、坂野先生が究極のGWTと言っていた「自己発見の旅」という3泊4日の研修を受けたのが始まりです。その後、縁あって、坂野先生が担当していたある病院の2泊3日の研修を、我々GWTネットワークで引き継ぐことになり、それがきっかけで、「お互いを尊重しながら、今ここでのプロセスをふりかえる」そんな勉強をするため、南山大学の人間関係研究センターや後で紹介します「H・I・L(ヒューマンインタラクションラボラトリー)等で、GWTのベースになっている、ラボラトリートレーニング(Tグループという名称ですが)を学んできました。
本日は、そんな経験をつんできた「我々が大切にしている想い」みたいなものを、皆さんにお伝えできればと思います。
体験を通して「自分自身を見つめる」ことを知る
さて、それでははじめに、本日の流れですが、シンプルな実習を2つ考えております。ひとつは導入実習で、「自分と他者との違い」「自分自身の傾向」という観点からのふりかえりを体験してもらい、それに加えて、我々が考える「自分自身を見つめる」とは何か?について少しお話ししたいと思います。
そして、つぎの実習で、『ある特定場面を詳細にふりかえるという方法』を使い「自分が他者に与える影響」という観点からのふりかえりをを体験していただきたいと思います。本日のキーワードは、「自分自身の傾向」「自分が他者に与える影響」の2つです。
では、さっそくひとつめの実習に入りたいと思います。
それでは、まず、机の上の荷物を片付けていただき、筆記用具だけを用意して下さい。いいですか?
では、まずこの実習のルールを説明します。
(1)これから、皆さんにひとり一枚づつ白紙をくばります。白紙を受け取った後から、指示があるまで話をしないでください。
(2)つぎに、私からある指示をだしますのでそのとおりに、白紙に記入をして下さい。なお、質問はいっさいできません。すべて自分自身で判断をしてください。ここがポイントです。
(3)また、他の人の様子や他の人の書いたものは絶対に見ないでください。後で見せ合う時間はとります。
ルールはこの3点です。いまの段階で何か質問はありますか?このルールを守ることが、学びを深くしますので、ルールはしっかり守って下さい。※質問があれば、実習に支障がない範囲で回答をする。
では、よろしいでしょうか。それでは、武田さん、白紙を皆さんに配ってください。・・・・・・・
それでは、これから私が説明するとおりに、今配った白紙に記入してください。
また、記入が終わったら筆記用具を置いて紙を裏返しにしてください。全員が紙を裏返しにしたら次の説明をします。絶対に話をしたり、周りを見たりはしないでくださいね。
【課題1】
(1)「その真ん中に正確に四角形を書いてください。(カードを見せる)」
終わったら筆記用具を置いて紙を裏返しにして下さい。全員が紙を裏返しにしたら次の説明をします。
(2)「その上下にバランス良く3つ丸を書いてください。(カードを見せる)」
記入し終わったら筆記用具を置いて紙を裏返しにしてください。
最初の課題は以上です。これからは自由に話をしていただいてかまいません。
それでは今紙に書いたものをグループで見せ合ってひとり一言づつ感想をのべあってください。時間は3分間でお願いします。
(3分間の感想タイム)
【課題2】
それでは他のグループは、どんなものを書いたのか?が気になると思いますので、全員のものを見てみましょう。自分の書いたものを(机)イスの上に置いてください。
それでは3分間時間を設定しますので自由に見て回ってください。時間になりましたら元の席に着席してください。
(3分間の鑑賞タイプ)
それでは、席に戻って下さい。では、先ほどの説明をもう一度確認してみましょう。(2枚のカードを見せる)
「その真ん中に正確に四角形を書いてください。」
「その上下にバランス良く3つ丸を書いてください。」
このふたつの説明で書いてもらった結果(事実)が、今見てもらった全員の絵です。
それではこれから、もうすこしこの結果(事実を)分析するため、データ(事実)を収集してみますので、該当する人は手を上げて下さい。
@書きはじめについて
・書き始めの時、他の人が紙をどのように使っているか気になってついまわりを見てしまった人
・他の人の書いたものを見るまで、自分の書いたものはみんなとほぼ同じだと思っていた人
A四角形について
・定規を使って書いた人または定規を使おうと思った人
・定規を使おうとなんてこれっぽっちも思わなかった人
・これから沢山いろいろ書くのだからと考えて四角形の大きさを調整した人
B丸について
・丸を3つ書いた人
・丸を6つ書いた人
・自分と違う丸の数を書いた紙を見て「あ!この人間違えた」とちょっとでも思った人(「3つづつ」とも「合わせて3つ」とも言っていない)
C全員の書いたものを見て
・自分と同じ図を見つけたときホッとした人
・自分の書いた図と同じような人がどのくらいいるか気になった人
・他の人の図を見るとき、自分の図との共通点を探した人
・他の人の図を見るとき、自分の図との相違点を探した人
さて、ここまでが実習です。色々なデータがあつまりましたね。それでは、これからふりかえり用紙をお配りいたしますので、ひとり一枚とってください。
では、武田さん、用紙の配布をお願いします。それでは、本日ははじめてなので、記入する前に、多少、補足説明をしたいと思います。
【設問1】この実習で、気づいたこと、学んだことを自由に記入してください。
【設問2】この実習を「自分自身の傾向」という視点からふりかえってみて下さい。この実習のなかで、あなたが「自分自身の傾向(自分の特徴・くせ)」が出ていたと感じる言動(考え方・もののとらえ方)を記入して下さい。自分のどんな傾向(自分の特徴・くせ)が出ていたと感じましたか?それは、自分のどんな言動(考え方・もののとらえ方)からそう思いましたか?
たとえば・・
自分は思い込みがはげしい傾向がある。丸を6個書いた人の思考がまったく分からなかった。
自分は絶対に正しいと思う傾向がある。丸を6個書いた人をみて、あ!この人間違えたと思った。
自分は正解を求める傾向がある。全員の絵を見た時、自分と同じ絵が何人いるか数えた。
とか、@図を描いた時、Aグループで話を時、B全員の絵を見た時のどの場面でもいいですので、その時のプロセスを思い出して、最低ひとつ、出来れば2つ記入して下さい。
ということで、今回は「自分の傾向」という、観点で、今の実習をふりかえってもらいたいと思います。何か質問はありますか?
特に無いようであれば、まずはチャレンジしてみましょう。時間は5分間です。それではスタートしてください。
(シート記入)
それでは、そろそろ時間になりましたが、どうでしょうか?まだ設問1・2が書けていない人はいますか?大丈夫ですか?
では、わかちあいに入りたいと思います。いま、ふりかえり用紙に記入したことを、グループで紹介しあってください。時間は10分間を予定しています。
(グループのふりかえり)
それでは、時間になりましたので、こちらを見て下さい。
初めの実習のまとめとして、我々の考える「自分自身を見つめる」とはどういうことか?を少しお話ししたいと思います。
まずは我々が研修で使っている「自分自身を見つめる」という言葉の定義ですが、よく混同されるのですが、「自分自身を知る」というとは必ずしもイコールではありません。今日は、詳しく説明しませんが、「自分自身を見つめる」というのは、「いまここの自分自身を、細かく見続ける」「刻々と変化する自分自身のプロセスを見続ける」という、定義で、我々の研修会では定義しています。
では、自分の何を見つめるのか?ですが・・・・この図をご覧ください。
研修会では、「自分自身を見つめる」といったときにこの5つの要素を想定しています。
ひとつめの、表面とは、自分が表面にだしているもの、つまり、他者から見えるものです。
表情だったり、口調だったり、しぐさだったり・・・・
ふたつめは、自分の内面、これは他者からは見えないもので、自分の内的プロセス・・・とでもいいましょうか。思考、感情、無意識で自分を守るために行う行動(防衛機制といいます)、見たいなものがあります。
ここの部分は、自分自身の傾向といいますか、性格というか、パターンがあるんですね。
「自分自身を細かく見る」と、この傾向が自分で認識できるようになります。
みっつめは、その傾向が出るときの、思考が働く理由・・・それは、価値観だったり、~すべきだという枠組みだったりします。「自己発見の旅」では、この部分を見つめることが、重要になります。
よっつめは、その価値観、~すべきだという枠組みが、自分の中に生まれた原因・・・みたいなものですね。
そして最後に、自分の表面が、実際に他者に与える影響。
これは、事実として自分が他者に与える影響です。じつは、自分が影響を与えていると思っているものと、実際に他者が感じているものが違う場合が多いのです。
たえば、自分は、人の面倒見が良い。そのひとのために一生懸命に行動している。それを他者がよろこんでくれている・・・・そんな、自己認識だったとして、実際は、他者は、おせっかいだ。いい加減に気づいてくれよ・・・などと実際は思っている。そんなことは、わりと多いのではないでしょうか?
自己発見の旅の研修では、まず「フィードバックという方法」を習得した上で、「今ここで、自分自身が他者に与える影響、事実に気づく」そんなプログラムが用意されています。
場面を特定してのふりかえりで「他者への影響」の事実を知る
では、次のステップの実習に入りたいと思います。
今度は、実習のある場面を切り取り「他者への影響」という観点からプロセスをふりかえり、「いまここで」の出来事を素材として自分の傾向を考える。そんなことにチャレンジしてもらいたいと思います。
具体的にいうと、Aさんが図を描いている時、@Aさんに対してどんな印象を受けたか。その理由は?AAさんの行動を見ていて、自分が感じたこと(きっとAさんはこういう想いで、この線を描いたんだろうな?Aさんはこう考えてこの色を選んだろうな?等、もちろん推論でいいです)。そうすることで、自分の言動が、他者にどんな影響を与えていたか?という事実を知ることができるのです。
いいでしょうか?
では、各グループに模造紙とペンをお配りしますので取りに来て下さい。
(全グループが取りに来たて、着席をしたら・・・)
では、これからグループで協力して、机の上の模造紙に絵を描いてもらいます。
絵は、ひとりひとり順番に、私の指示にしたがって、描いてもらいますが、先ほどと同じように質問はできません。私の指示を聞いて、自分の判断で記入してください。ここがポイントのひとつです。
まずはじめに、「一番はじめにグループで絵を描く人を決めて下さい。絵はその人から時計回りで順番に描いてもらいます。」、一番はじめに絵を描く人が決まったら、マジックのセットを、模造紙の真ん中において下さい.全部のグループが決まったら次のアナウンスをします。
だいたい決まったみたいですが、まだ決まっていないグループはありますか?
それでは、「絵を書く順番の確認をしましょう。1番目に書く人、手を上げてください。2番目に書く人(1番目に書く人の左隣の人です。いいですか?)、3番目に書く人、4番目に書く人、5番目に書く人、6番目に書く人(5人グループは、1番目の人がもう一度描いて下さい。)、大丈夫でしょうか?
では、1番目の人は立ち上がって、マジックのセットを手にもってください。その中で1色のマジックを選んで下さい。自分の好きな色でも、今の気持ちにぴったりの色でも理由は何でもいいですが、何か自分なりの理由を決めて1色を選んでください。そうしたら、残りのマジックのセットを机の端において下さい。選べましたか?
それでは、「模造時に直線を一本描いて下さい。長さ、角度、位置などは自由です」
書き終わりましたら、マジックをもとのケースに戻して、次の人にマジックのセットを渡して下さい。
2番目に描く人も、同じように何か自分なりの理由を決めて1色を決めて、残りのマジックのセットを机の端において下さい。大丈夫ですか?
それでは、「模造紙に三角形を描いて下さい。数や大きさ、位置などは自由です。」
書き終わりましたら、マジックをもとのケースに戻して、次の人にマジックのセットを渡して下さい。
3番目に描く人も、同じように何か自分なりの理由を決めて1色を決めて、残りのマジックのセットを机の端において下さい。大丈夫ですか?
それでは、「模造紙に円を書いて下さい。数や大きさ、位置などは自由です。」
書き終わりましたら、マジックをもとのケースに戻して、次の人にマジックのセットを渡して下さい。
4番目に描く人も、同じように何か自分なりの理由を決めて1色を決めて、残りのマジックのセットを机の端において下さい。大丈夫ですか?
それでは、「模造紙に一番目の人が描いた直線より短い直線を描いて下さい。」
書き終わりましたら、マジックをもとのケースに戻して、次の人にマジックのセットを渡して下さい。
5番目に描く人も、同じように何か自分なりの理由を決めて1色を決めて、残りのマジックのセットを机の端において下さい。大丈夫ですか?
それでは、「模造紙に正確に四角形を描いて下さい。」
書き終わりましたら、マジックをもとのケースに戻して、次の人にマジックのセットを渡して下さい。
6番目に描く人(5人グループは、1番目の人がもう一度描いて下さい。)も、同じように何か自分なりの理由を決めて1色を決めて、残りのマジックのセットを机の端において下さい。大丈夫ですか?
それでは、「模造紙に20センチ以内の波線を描いて下さい。」
書き終わりましたら、マジックをもとのケースに戻して、次の人にマジックのセットを渡して下さい。
では、次のステップの説明をいたします。このステップは、自分の行動が他者にどんな影響を与えていたかを知る。そんなステップです。
進め方を説明します。まず1番目の人が描いていた時を思い出して、その場面で自分が感じていた事、1番目の人の行動(具体的には、マジックのセットを手にとって、1色選んで、線・図形を描いて、マジックを仕舞って次の人にマジックセットを渡すまでの約1分間)を見ていた時の自分が頭の中で考えたかをテーマに、5分間グループでディスカションしてください。司会は、2番目に描いた人に(手をあげてください)、タイムキーパーは3番目の人(手をあげてください)にお願いします。5分たちましたら1番目の人は、「今のフィードバックを聞いてのホッとなひとこと(感想では無く、今ここの瞬間気分)」を最長でも15秒程度(あまり長く話さないのがポイントです)、話して下さい。 (1番目の人に合計6分程度)
1人目のプロセスのふりかえりがおわりましたら、今度は2番目の人の人にも同じように進めます。
7番目の人まで、プロセスのふりかえりが終わりましたら、手を上げてください。終わったグループからふりかえりシートをくばりますので、シート記入に入っていただきます。
全グループが終わった段階で、次のステップの説明をいたします。終了予定時刻は○時○分になります。もし、その時間までに紹介が終わっていない場合は、今日は次ぎのステップに入っていただきますので、各グループ時間管理をしながら進めてください。では、はじめて下さい。
※基本的に 3分+α×6回=30分間を想定し、早く終わったグループはシート記入で調整する。最後に終わったグループは、シート記入をしないで、そのままふりかえりに入る。
また、想定時間になった時点で5番目の人へのふりかえりが終わっていたらその場で終わりにしてつぎの説明にはいる。(※5~6人グループを設定)
では、そろそろ時間になりました。全員一度こちらの方を見て下さい。
それでは、これからふりかえり用紙をお配りいたしますので、ひとり一枚とってください。
では、武田さん、用紙の配布をお願いします。
【設問1】この実習で、気づいたこと、学んだことを自由に記入してください。
【設問2】この実習を「自分自身の傾向」という視点からふりかえってみて下さい。この実習のなかで、あなたが「自分自身の傾向(自分の特徴・くせ)」が出ていたと感じる言動(考え方・もののとらえ方)を記入して下さい。自分のどんな傾向(自分の特徴・くせ)が出ていたと感じましたか?それは、自分のどんな言動(考え方・もののとらえ方)からそう思いましたか?
先ほどと同じふりかえり用紙です。時間は5分間です。それではスタートしてください。
(シート記入)
それでは、そろそろ時間になりましたが、どうでしょうか?まだ設問1・2が書けていない人はいますか?大丈夫ですか?
では、わかちあいに入りたいと思います。いま、ふりかえり用紙に記入したことを、グループで紹介しあってください。時間は10分間を予定しています。
(グループのふりかえり)
では、そろそろ時間になりましたので、こちらをご覧下さい。持ち時間が残り少なくなってきましたので、まとめに入りたいと思います。
お互いを尊重し今ここでのプロセスをふりかえる場『Tグループ』
今日は、キーワードでいうと 「自分自身の傾向」「他者への影響」の2つに焦点をあてた体験をしていただきましたが、いかがでしょうか?
GWTではいろいろな気づきを得ることができます。色々な幅広い気づきをたくさん得ることも大切なことです。それと同じように、視点を決めて、グループメンバーの力をかりて、お互いを尊重し、深く、じっくりとふりかえることも、面白いことだと私はかんじています。
「自分自身を見つめる」という視点のふりかえり、ぜひ皆さんの活動の中でも活用していただければ、とてもうれしく思います。
では、最後に現在も我々が学んでいる「Tグループ」を、いくつか紹介させていただいて、まとめに変えたいと思います。
ひとつは、私がはじめて「Tグループ」を体験したHIL(ヒューマンインタラクションラブラトリー)」です。ここは、JICE(立教大学キリスト教教育研究所)の所員だった、元南山大学教授の中堀仁四郎氏が主催する「Tグループ」で、年間(北海道、山梨(清里)、沖縄)の3つの会場で実施されています。特にお勧めするのは、沖縄のTグループ。聖クララ修道院という会場で行うのですが、私が感じるに一番、自分自身を見つめるには効果的な環境、そしてスタッフがそろっている場だと感じています。
もうひとつは、南山大学大学院教育ファシリテーション専攻の修了生が中心となって運営する「グループトレーニング研究会」が実施する「Tグループ」です。こちらは年1回の開催です。今年は、2015年2月11日(祝・水)~14日(土)、愛知県犬山市にある犬山国際ユースホステルで行われます。募集の締め切りは1月16日(金)ですので、興味をもたれた方はぜひ気軽に問い合わせてみて下さい。
いずれのTグループも、「お互いを尊重することを大切にし、今ここでのプロセスを深くふりかえる」そんなことが体験出来る、そしてGWTのアドバイザーとしても成長を図ることが出来る場です。
我々がその昔、坂野先生から「もし、くまさんが本気でアドバイザーを目指すなら、是非一度は受講したほうがいいよ」と勧められた「Tグループ」を、最後に、皆さんにご紹介させていただきました。
では、これで我々の発表を終わりたいと思います。本日は、ありがとうございました。
(終了)