ホスピタリティ・トレーニング

 

レクリエーション・インストラクター養成カリキュラムが変更になったことに伴い、グループワークトレーニングと関連領域にある『ホスピタリティ・トレーニング』という概念がカリキュラムの中でも重要な要素として取り入れられるようになった。そこでここでは、『ホスピタリティ・トレーニング』とは何かを、レクリエーション・インストラクター養成テキストを参考にしながら紹介したい。

 

1.ホスピタリティ・トレーニングとは

 

 ホスピタリティ・トレーニングとはホスピタリティとトレーニングを併せた造語である。直訳すれば「接遇訓練」となる。企業の新入社員研修で、必ず実施されるものに、「お茶の入れ方」「接客マナー」「電話対応」等が行われる。しかし、ここではマニュアル的な対応方法を学ぶわけではない。むしろ相手の立場に立って、相手が心地よさを感じるようなおもてなしの意識を常に持って接すること、そのことが相互の快い関係を生み出すというコミュニケーション・ワークの基本をざまざまなトレーニングをとおして体得してほしいのである。
 こうしたトレーニングの中で、相手の気持ちをくみ取り、快い気分にさせてくれるインストラクターとしての技術を学ぶのである。
 トレーニングは、知識として知っていただけでは、何もならない。実際にそのことを行うことが出来なければ、意味がない。しっかり身につくまで練習をくり返すことが望ましい。

(出典:レクリエーション・インストラクター養成テキスト「楽しいをつくる」)

2.ホスピタリティ・トレーニングの構造

 

 人と人との出会いからかかわり合いが促進され、関係が継続していくように働きかける技術をコミュニケーション・ワークという。この技術は、自分が相手(他者)とのかかわり合いをつくるための働きかけと、他者と他者とを結びつけるための働きかけの二つがある。前者をホスピタリティ・トレーニングで学び、後者をアイスブレーキングの手法で学ぶが、両者に共通することは、人と人との関わり合いの原点である「相手に対して自分を開き、受け入れていく」接遇にある。

(出典:レクリエーション・インストラクター養成テキスト「楽しいをつくる」)

3.ホスピタリティ・トレーニングの構成要素

 

 ホスピタリティ・トレーニングは、自分が相手(他者)とのかかわり合いをつくる技術であるから、「言葉」「動作=非言語伝達」の二つの要素が元にある。相手との快い関係を保つ技術によりトレーニングが構成されている。つまり、ホスピタリティ・トレーニングは「言葉」「動作」という媒介行為を元に、相手とのかかわり合いをつくっていく展開手順を学び、自己表現を可能にする条件をつくり、心の開放をしていくプロセスを体系化したものと言える。

(出典:レクリエーション・インストラクター養成テキスト「楽しいをつくる」)

4.ホスピタリティ・トレーニングから学ぶこと

 

@非言語伝達技術
A言語伝達技術
Bラポールづくり(共通項の見つけ出し、共感のアクション)
Cペーシング(相手と息を合わす・交流・話し合い)
D表現力(自己表現)
Eともにある自分の存在の認識

(出典:レクリエーション・インストラクター養成テキスト「楽しいをつくる」)

5.ホスピタリティ・トレーニングの実際

 

ホスピタリティト・レーニングの実際例としてテキストに紹介されている「無言伝達トレーニング」のすすめ方を紹介する。

@代表者1名が全員の前に立つ。(グループごとで行うときは、メンバーの1人が、グループの前に立つ)
A代表者は”語群”の中から1語文を暗記し、全員にわかるように、声を出さずに、表情・しぐさだけで伝える。このとき、声をださなければ、口は開けてもよい。もちろん、もちろん読みあげる口ぶりもよい。
B代表者が1回表現したところで、何を表現したかを聞き手側がいっせいに言う。バラバラな反応の時は、もう一度、表現をしなおしてもらう。
C当たったら、代表者を交代して同様にすすめる。
D全員終わったら感想をのべあう。
(※テキストには特に表記がないため加筆)

(出典:レクリエーション・インストラクター養成テキスト「楽しいをつくる」)

 

6.ホスピタリティ・トレーニングの今後

 

ホスピタリティト・レーニングの今後の開発は、(財)日本レクリエーション協会が中心に組織している「ホスピタリティ・トレーニング研究会」が中心になって行うことになっている。この「ホスピタリティ・トレーニング研究会」には、日本GWT協会の三信巌理事長をはじめ、三好理事・岡崎理事等が参画しており、今後の「ホスピタリティ・トレーニング」のとGWTの関係が深くなることが考えられる。
今後の「人間関係の体験学習」のひとつの流れとして是非注目をしていただきたい。

 

<用語解説>

○ホスピタリティ(hospitality)
 接遇・厚遇・親切にもてなすこと。

○トレーニング(trainning)
 訓練・鍛錬・くり返し同じことをして身につける。

○ラポール
 元はフランス語。心理学用語で、親密度を意味する。

 

★参考文献

レクリエーション・インストラクター養成テキスト「楽しいをつくる やさしいレクリエーション実践」 
(財)日本レクリエーション協会編

ホスピタリティ・トレーニングの部分の著者紹介

社団法人全国子ども会連合会 常務理事・事務局長 宇田川 光雄 先生