GWTと構成的グループ・エンカウンターとの関係

 

グループワークトレーニングと構成的グループ・エンカウンターとの基本的共通点は両方とも「グループ(体験方式)」であることである。これは一見単純なことのようであるが、実は重要な意味をもっている。つまり、「グループ(体験方式)」としてのルーツは同じであるということである。そこでまず、この両者に共通する「グループ(体験方式)」の歴史的ルーツをひもときながら両者の違いを考えていきたい。

 

<歴史的ルーツ>

構成的グループ・エンカウンターが広く世に認知されるようになったのは、1981年国分康孝氏が「エンカウンター」(誠心書房)を出版してからである。国分氏はこの著書の中で、「グループ・エンカウンターは1949年にブラッドフォード、ベネ、リピットらがTグループと命名したときを以て、その誕生と考えられる。」と述べている。また、今日のエンカウンター・グループの流れとしていくつかの流れを説明している。

(1)全米トレーニング・ラボラトリィ(NTL)<東部地区>

アメリカ東部を中心に広まった考え方で、具体的にはメイン州ベセルで1940年代に生まれた。クルト・レヴィンがその基礎を築き、ブラッドフォード、ベン、リピットらによって1949年『Tグループ』として命名された。ここでのグループのねらいは、「集団のなかの対人関係技能の開発」である。ここでの考え方は後に、グループ・ダイナミックス、行動科学の領域としても発展している。

(2)エスリン研究所<西部地区>

アメリカ西部を中心に広まった考え方で、具体的にはカリフォルニア州ビック・サーに1962年に設立された。基本的にはパールズのゲシュタルト療法が大きく影響している。このゲシュタルト療法の基礎となっているゲシュタルト心理学とは「心理学の歴史上の要素主義(精神現象を分析しその構成要素を定義し、それらの要素の結合としてもとの現象を説明しようとする考え方)を排し、<全体は部分の総和以上のもの>として全体の優位性を主張する心理のことである。ここでのグループのねらいは、「各個人の心理学的成長」である。

(3)西部行動科学研究所(WBSI)・人間研究センター<西部>

西部行動科学研究所は、現代カウンセリング(来談者中心療法)の創始者のカール・ロジャーズが1964~1968年所属していた機関で、ロジャーズはここのスタッフの半数とともに独立し、人間研究センターを1968年設立させた。もともとロジャースは1946年シカゴ大学カウンセリング・センター在籍時より、「集中的グループアプローチ(シカゴ・グループ)」を試みており、1964年WBSIより招請されたことをきっかけに個人セラピーをやめ、グループに専念することとなった。ここでのグループのねらいは、「個人の成長、個人間のコミュニケーションおよび対人関係の発展と改善(治療的成長)」である。

 

ここまでをまとめると、GWTおよび構成的グループ・エンカウンターのルーツはアメリカにあり、ひとつは東部地区を中心とする「グループダイナミクス、行動科学的な対人関係技能の開発を目的とするグループ(Tグループ)」、もうひとつは西部地区を中心とする「心理学的カウンセリング的な個人の成長を目的とするグループ(エンカウンター・グループ)」である。
そして、1960年代にこれらのグループが普及・繁栄する過程で、両者が影響しあい、そして結びついたものが今日の中核になっていると考えられる。

また、日本における歴史的ルーツとしては次の4つがある。

(1)日本グループ・ダイナミックス学会<東部:NTL>

九州大学教授三隅二不二氏が1949年日本グループダイナミックス学会を設立し、行動科学分野で発展さててきたもの。

(2)カウンセリング研究討論会<西部:ロジャーズ>

友田不二男氏らが1955年カウンセリング研究討論会で実践して、ロジャーズの考え方と共に発展させてきたもの。

(3)立教大学キリスト教教育研究所(JISE)<東部:NTL>

柳原光氏らが1958年第1回教会集団生活指導者研修会として実施し、JISEが発展させてきたもの。

(4)人間関係研究会(非構成的グループ・エンカウンター)<西部:ロジャーズ>

畠瀬稔氏(1969年ロジャーズのもとで学んできた)が、1970年「エンカウンター・ワークショップ」として実施し、人間関係研究会で普及してきたもの。