Tグループ体験談

 

「今まで生きてきた自分をひとつの節目である今年、もう一度見つめなおしてみたい」それが今回Tグループを受けようと決めた理由でした。GWTと出会って10数年たちますが、その間故坂野公信先生の「自己発見の旅」をはじめとして、色々な先生のプログラムを受講し、いろいろな人たちの影響をうけて今の自分が成長してきたと感じています。その今の自分をGWTそして人間関係トレーニングの原点であるTグループをとおしてあらためて見つめ直し、新たなスタートを踏みだしたい、そう思ったのです。

○今回参加したTグループの概要

現在日本ではいくつかの団体がTグループを実施していますが、できるならベーシックなTグループを体験したいと考え二つのTグループを受講の候補に考えました。ひとつは、日本の体験学習の中心である『南山大学の人間関係研究所』の主催するTグループ、そしてもうひとつは今回参加した南山短期大学人間関係科の流れにあるTグループです。参考までにこのふたつのTグループの概要の比較をご紹介します。

南山大学人間関係研究センターのTグループ
今回参加したTグループ
日程
5泊6日
3泊4日
参加者
定員 30名
今回参加者10名(2グループ)
会場
(財)KEEP協会・清泉寮
(財)KEEP協会・清泉寮
参加費
73,500円+滞在費実費(50,000円程度)
82,000円(宿泊食事代25,500円含む)
内容
Tセクション14回、全体会6回
Tセクション11回、全体会5回

ではつぎに、今回私が受講したTグループのテキストの中で紹介された、Tグループに関する記述を引用し、その上で私が今回体験したTグループの大まかな流れをご紹介したいと思います。

○Tグループとは

ラボラトリートレーニングは、アメリカの全米教育協会に属するNTL(Nstional Training Laboratory)が1947年に開発し、実施している参加者の主体的実験的な体験学習です。Tグループと呼ばれるセッションがその中心になっています。

Tグループは10名前後の小グループです。その中で参加者自身がつくりだす人と人との相互関係や、コミュニケーションのありかたを、その場で互いに検討しながら学び合います。

このトレーニングのねらいは次のようなものです。

・「今ここ」の関わりを大切にいきる

・自主的、主体的にこうどうする能力を高める。

・ありのままの自分や他者を知り、受け入れる。

・自分のコミュニケーション能力(伝え、きき、見る)を高める。

・グループでの関わりを深める能力をやしなう。

・自分を愛し、他者を愛し、人間への信頼を深める。

【研修テキストから引用】

 

たぶんこのHPを御覧の多くの方々は、上記の説明を読んでも「Tグループ」について今ひとつ判らないと思います。実際私自身もテキストにあるこの文章を読み、また、Tグループに関係する書籍を読んだのですが、実際に自分が体験するまで「Tグループが何か」判りませんでしたし、ある意味では実際に体験しないとTグループとは何かを理解するのは難しいのかもしれません。しかし、いずれにしてもこのHPを御覧の方はTグループに興味を持たれている方だと思いますので、実際にTグループを受けてみたいと思っていただくための動機付けのひとつとして、私が実際にうけたプログラムの流れをご紹介したいと思います。ただここで是非注意いていただきたいのは、Tグループのプログラムは、そのTグループのねらいによって無限にあるものです。したがって、ここで紹介するのはあくまで、ひとつの事例であり、同団体のTグループにおいても今回ご紹介するプログラムを実施しているのではないということをご理解下さい。

また初期のTグループは2週間近くの期間で行われていたものを、整理改良して現在は6泊7日ないし5泊6日で行われるのが効果の点からもベストと考えられています。しかし、今回私が体験したTグループが3泊4日なのは、この団体がより多くの方にTグループを体験してもらいたいという願いから、あえて短期間にプログラムをしているからです。そういう意味では、今回のTグループの進め方は現在もなお試行錯誤をくわえているプログラムで、これからますます工夫されてさらに磨かれるプログラムであることを合わせてご理解下さい。

なお、このプログラムをご紹介するにあたり、ご指導をいただいたトレーナーの先生にご相談したところ、「Tグループは理論や理屈ではなく、実際に体験して感じることが重要であり、『次にこんなことをやるはずだ・・・・』というような先入観を持つような紹介をするのはいかがなものか?それより、実際に体験をしてくまさんが感じたことを伝えた方が良いと思うよ。」と、アドバイスをうけました。たしかに、先生のご指摘することは私も懸念することですので、あくまでのここで紹介するのは、Tグループのひとつの事例であり、Tグループはいつも同じ様なことをするんだという「先入観」はぜひ持たないでいただきたいと思います。Tグループは人生のひとこまと同じです、決して同じものはないことを前提にお読みいただけると幸いです。

[第1日目]

13:30 受付

14:30 開会・オリエンテーション

15:00 全体会「ねらいの明確化」

16:15 休憩

16:30 T1(Tグループの1回目という意味)

17:30 ふりかえり用紙記入

17:45 休憩・移動

18:00 夕食

19:15 T2(Tグループの2回目という意味)

20:30 ふりかえり用紙記入

20:45 夜のつどい

21:00 終了

 

まず、これが1日目の内容です。今回はGWTネットワークの仲間3名で参加したのですが、まず受付で参加費を払い、名札、宿泊の部屋割り表、生活の案内、2日の朝までの日程表、Tグループのメンバー表等の資料が配られました。そして、部屋に荷物をおいて”ハンターホール”という中学校の教室くらいの広さの部屋に集合し、開会の挨拶・オリエンテーションが始まりました。ちなみに部屋は2人部屋なのですが、同室の人は違うグループの人(今回2つのグループに分かれてTセッションを実施)になっていました。

オリエンテーションでは、生活の案内やスタッフの紹介、明日までの大まかな流れが説明されました。今回の参加者は10名、それに対しトレーナー4名、オブザーバー1名と贅沢な構成でした。参加者の職業は教育関係者(教諭・社会教育主事)、医療関係者(看護婦・心理療法士)、福祉関係者等さまざまでしたが、人と接する事を仕事にする人がほとんどでした。この段階の全体の雰囲気はやや緊張気味でしたが、やったりとした研修のスタートという感じでした。

またオリエンテーションの中で、プログラム上のいくつかの用語が説明されました。

T(Tグループ)とは

トレーニンググループ・セッションの略称です。Tでは、あらかじめ決まった話題はありません。今ここでおこっている事柄を学習の素材にします。今回は2グループに分かれそれぞれ参加者5名、トレーナー2名で、ここの部屋とはちがう小さな部屋で行います。

全体会とは

全体会ではTとは違った状況で、体験したことを一般化したり、新しい試みをします。会場はここの部屋、または屋外を使用します。

夜のつどいとは

共につどい、その日一日の体験を静かにふりかえるひとときです。会場はここの部屋を使います。

 

オリエンテーション後、最初のプログラム、全体会「ねらいの明確化」が行われました。このプログラムもそうなのですが、今回の研修全体はとても洗練され、かつ構造化されたもので、あたりまえのことなのかもしれませんが、ひとつひとつのプログラムはその瞬間その瞬間に適した意味を持ち、それが積み重なることで研修全体として大きな効果、意味を持つのだと感じました。後で知ったことなのですが、この段階で2日目の朝までの日程しか配られていなかったのは、初日の状況で2日目以降のプログラムを大幅に変更できるようにするためで、毎日夜のつどいの終了後、スタッフは明日のプログラムをどうするか話し合って決めていたそうです。これは毎日行われ、それぞれ1日づつの予定しか紹介されませんでした。ただ、ちなみに最終日には実際のプログラムがどう進行したかの日程表がくばられ、後々研修をふりかえられるようにフォローされていました。ここらへんも実に巧みに計算されている、または構造化されているなと驚きました。

さて全体会の内容ですが、まず実施するねらいが説明されました。そのねらいとは、@この研修でのねらいを明確にする。Aここでの学び方・学びのリソースを知る。Bこの研修に向かって歩みはじめる。というものでした。全体会に入り、全体のムードは和らいで来ました。ねらいが説明されたあと具体的には、人間関係トレーニングの実習のひとつである”4つの窓”が行われました。この実習を簡単に説明するとひとりひとりに画用紙とクレヨン等の筆記用具が配られます。まずそのクレヨンの好きな色を使って画用紙を4つのスペースに区分できるように線を引きます。そしてまずそのスペースのひとつにトレーナーから指示された内容(たとえば好きな動物の名前を書く)を記入し、その後書いた内容を2、3人のグループで紹介する、そしてそれを4回くり返すというものです。

今回トレーナーからの指示があった内容は、@この研修にやってきた今の自分の気持ちを色や形や絵であわらす。A普段の私を単語であわらす。Bこの研修に参加する私の課題、取り組みたいことをことばや絵であらわすCこの研修での私のねらいをことばであらわす。というものでした。このプログラムを実施することで、自分自身で今回来た目的を明確化するとともに、言語にして他の参加者に紹介することでそのことを決断する、そんな効果があったのだろうと思います。

ちなみに私自身がその時記入した「Cこの研修で私のねらいをことばであらわす。」は、ありのままの自分をだしてその自分をみつめてみたい。自然(ナチュラル)、感じたことを感じたままに行動、言葉にする。気持ちのこもった言葉・・・というふうなものでした。実際には参加者それぞれが色々な目的や気持ちで参加をしていたようです。この記入した画用紙は、4日間の間全体会の行われる部屋の壁に貼られ、自由に他の人のものを見ることができ、また自分で「Cこの研修で私のねらいをことばであらわす。」の部分を書き足したいと思えば書き足しても良いということになっていました。

また、このプログラムは自己紹介とアイスブレイキングの意味もあり、このプログラムが終わったときには全体は和やかで楽しい雰囲気になっていました。

この後15分の休憩を入れて、いよいよ本格的なTグループのスタートです。先ほどの全体会をやった部屋は2階にあり、これからTグループをやる部屋は1階にありました。部屋の広さは7人が椅子に座り丸くなって若干周囲にゆとりのある程度の広さで、こじんまりとした広さという感じでした。部屋は角部屋で2方向に窓があり、とても開放的で明るい部屋でした。私が所属したグループは男性2名女性3名、男性2名のトレーナーで、7人で輪になって座りました。また、もう1人女性のオブザーバーが部屋におり、この方は一切グループの話には参加をせずTグループでのメンバーのプロセスを記録する役割として部屋におりました。なお、記録としてはすべてのTグループの内容をテープに録音し、研修中この部屋の中でのみ自由に再生し聞くことができる仕組みになっていました。(これから2年間くらいは山梨看護短期大学で保管し、自分が参加したTグループのテープのみ聞くことができるそうです。)

Tグループのスタートはトレーナーからの説明からはじまりました。正確には記憶していないのですが、「これからの時間はあらかじめ決まった話題はありません。またトレーナーが何か指示を出したり、司会役もしません。みなさん自由にこの時間を使って下さい」「またここで話された内容は、この部屋以外では話さないで下さい。いろいろな話が話されると思いますが、あくまでこのメンバーの、この場だけでものにすることを約束して下さい。」というような趣旨だったと思います。ということで、大変残念ですが実際にどの様な内容がTグループの中で話されたかはこのHPでも紹介できません。ただいえることは、Tグループの実際の内容は、その時のメンバー、そしてトレーナーによって様々で、2度と同じ様なTはやることができない。そして、メンバーひとりが違っても大きく内容が違っていただろうと思います。

さて流れの説明を続けたいと思います。T1はおおよそ1時間で終わりました。終わり方は、ちょっと不思議なのですが、おもむろにトレーナーがふりかえり用紙を配りはじめ、ふりかえり用紙の書き方を説明して、記入した人から退室するという形でした。何回かTを行っていったらひとつのルールみたいに自然と流れたのですが、正直いってT1の時は不思議な感じでした。

ふりかえり用紙には、いくつの設問があり、Tが11回あったのですが毎回同じものを使用しました。設問の内容は次のような感じです。

○今のセッションでの出来事は?:設問ではなく自分の記録として記入する感じでした。
○今のグループで私は全く不自由であった、非常に自由であった(7段階のスケールで表現)
○今のグループで私は全く魅力を感じなかった、非常に魅力を感じた(7段階のスケールで表現)
○今のグループの雰囲気を単語で表すと
○今のセッションで、グループに影響を与えたのは誰のどのような発言や行動でしたか?(肯定的でも否定的でも、自分自身も含めてできるだけ具体的に)
○今のセッションで、私に影響を与えたのは誰のどのような発言や行動でしたか?(肯定的でも否定的でも、自分自身も含めてできるだけ具体的に)
○今のグループで気になることや、気になる人は・・・・(肯定的でも否定的でも、自分との関係を含めて具体的に)
○その他自由に

A4の用紙にこの様な内容が書かれていて、大体10分〜15分位で記入をしていきました。通常のGWTや人間関係トレーニングとは違いこの段階でふりかえり用紙に書いた内容をグループで紹介(わかちあい)するようなことはしませんでした。その変わり、メンバーのふりかえり用紙は常にTグループを実施する部屋におかれ、そのTグループのメンバーであればいつでも自由に他のメンバーのふりかえり用紙を見ることが可能というルールでした。また、設問のうちスケールで表現された2問については、グループとしての集計がされ、また影響関係についてもソシオメトリー的に集計がされ、それも自由に閲覧することが可能になっていました。

夕食を食べ、部屋に戻って一息つくとTグループの2回目の開始時間になっていました。Tグループを実施する部屋に入ると「席を変えてもいいんですか?」という質問がでて、T1とは違う椅子にそれぞれが座り第2回目のTセッションが始まりました・・・。

あっというまに45分が過ぎ、ふりかえり用紙がおもむろに配られてT2が終わりました。ふりかえり用紙を書き終えた人から、2階の全体会の行った部屋に移動しました。部屋はやや照明が落とされ、静かな曲がBGMにながれていました。全員がそろうと、トレーナーが「これから夜のつどいをはじめます。」と宣言し、静かに自分自身で今日1日を思い出して下さいという指示がありました。そして5分後「これで夜のつどいを終わります」のことばで、第1日目は静かに終わりました。

 

[第2日目]

 7:30 朝食

 9:00 T3

10:15 ふりかえり記入

10:30 休憩

10:45 T4

12:00 ふりかえり記入

12:15 昼食・自由時間

14:00 全体会2

15:00 ティータイム

15:30 T5

16:45 ふりかえり記入

17:00 休憩・自由

18:00 夕食

19:15 T6

20:30 ふりかえり用紙記入

20:45 夜のつどい

21:00 終了

 

2日目の朝は清里の鳥の声で目覚めました。時計を見るとまだ5時30分と早かったので、同室の人を起こさないように部屋を抜け出し、清泉寮の周りにある自然観察路を散策しながら、昨日の1日のことを思い起こしながら、『自己との対話』を1時間ほど楽しみました。

清泉寮にもどりバイキングの朝食を食べ終わると、いよいよ2日目のTセッションのはじまりです。やはり席替えをしてあたらな気持ちでTがスタートしました。この日の午前中はT3・T4と休憩時間を挟んでだ連続Tセッションだったのでハードでしたが、かなりこの段階になると”本音の話し合い”になっていたので、感覚的にはあっというまにお昼という気がしました。

お昼を食べ、思い思いに自由時間をすごしリフレッシュしたところで、全体会2がありました。全体会2のテーマは「1人で過ごす」でした。ねらいは@自然にふれるAここでの自分を、今一度みつめるというもので、具体的内容は清泉寮から外に行き1人になれる場所を探し、静かに自然と会話し、自己と会話をしてみる。午後3時(40分後)この場所に戻ってくるというものでした。このプログラムも実に良いタイミングで計画されているなと感じました。それは、Tグループを4回つづけたことでグループのメンバーのリレーションがかなり確立されており、安心して自己開示ができる雰囲気が生まれていたこと。そして、これからはじまるもうひとつ深まりをもったTセッションの自分自身の心の準備時間になっていたからです。事実、この時間に「今回参加した目的をもう一度再確認し、次のTセッションでは自分は○○しよう」と決断し、その後のTセッションに望んだ参加者はかなりおりました。

3時近くになり全体会が行われる場所(ちなみにハンターホールという名称の部屋です)に戻ると、お茶の用意がされておりゆったりとした午後のティー タイムとなりました。Tセッションに全神経を集中するためかなり疲労するのすが、こういったちょっとした”ゆとりの時間”が、リラックス効果を生み、またTセッションに集中できるのだと感じました。

そしてその後、Tグループを行う部屋に移動しT5、ふりかえり用紙記入、休憩・自由時間、夕食、T6、ふりかえり用紙記入と続きました。この段階でのTグループでの内容は、初期のT1・T2と比べるとまるっきり違うものになっており、単語で表すと「本音」「深い」「あたたかい」「共感」というような感じになり、後で紹介する九州大学の野島先生の仮説でいえは、導入段階(T:当惑・模索、U:グループの目的、同一性の模索、V:否定感情の表明)から展開段階(W:相互信頼の発展、X:親密感の確立、Y:深い相互関係と自己直面)にステップアップしたというかんじでした。

2日目の最後のプログラムである夜のつどいは、詩の朗読で「星野富弘著『風の旅』花より」が読まれました。ちょうどこの時のメンバーの気持ちに響く詩の内容で、詩を聞きながら色々なことを感じているようでした。

この日のTグループ(T5)で私自身はトレーナーから「くまさんは言葉で受け答えするのはうまい、でもその先の「心の部分」での交流はまだまだ・・・たとえば、「くまさん」「木村さん」の話(T2)、あの瞬間の会話の内容ではなく、会話しているときの自分の気持ち、そして、その人とのかかわり合い自体をあじわって見たらどうかな」とアドバイスを受けたのが忘れられなく、そいの夜1時間ほどTグループを実施した部屋にいき、T2の時の録音テープを聴きながら、あの瞬間を思いだし、客観的にふりかえりを行うことができました。このようなことができるのも、今回のTグループの素晴らしい所で、細部にわたり色々なことが想定され、対応がなされていたきがします。

[第3日目]

 7:30 朝食

 9:00 T7

10:15 ふりかえり記入

10:30 休憩

10:45 T8

12:00 ふりかえり記入

12:15 昼食・自由時間

13:30 全体会3

15:30 休憩・自由

16:00 T9

17:15 ふりかえり記入

17:30 休憩・自由

18:00 夕食

19:15 T10

20:30 ふりかえり用紙記入

20:45 夜のつどい

21:00 コミュニティー・アワー

 

3日目の流れもほぼ2日目の流れと同じでした。ただ変化したのはメンバーのTセッションへの望み方で、多くのメンバーが「次のセッションではこんな話をしてみよう。」というような、それぞれのセッションがはじまる前にある程度の考えを固めて望んでいた様です。Tグループの印象も単語で表すと「ゆっくり」「あったかい」「共感」「じわ〜」という感じでした。

午後に行われた全体会3は、人間関係トレーニングの実習にもあるノンバーバル実習が行われました。ねらいは、@今のグループを表現する、Aお互いのグループにかかわっている姿勢、気持ち、期待、思いなどを知る。B各自のこれからの期待をさぐる。の3点が説明されました。具体的にははじめに15分間個人で「今までのグループをふりかえり、その中での自分を紙粘土などでつくる」という作業が第1段階でした。その後、今の作業中に気づいたことを5分間でメモしました。第2段階はグループで模造紙の上に各自の作った”自分”を配置し、今のグループを表現することです。この作業を無言で行い、模造紙にはモールやクレヨン、マジック等で絵を描いたり、立体的に飾りをつけたりすることも可能でした。この作業が10分間行われ、その後また1人になって今の過程をふりかえり、感じたことを5分間でメモしました。第3段階はグループのふりかえり(わかちあい)です。グループでメモをもとに第1段階・第2段階の過程で各自が感じたことを30分でわかちあいまあした。この実習には次の段階があり、第4段階は「これからのグループへのかかわりや自分の期待を持って作品”グループ”をつくりかえる」というもので5分間、その後30分グループで感じたことを話し合いました。

この実習をとおして、私自身は残された3回のTグループを自分はどのように望もうか?ということを強く考え、今までのTセッションの中での自分、そして各メンバーとの関わりを改めて見直した上で、残り3回の方針を決断しました。そういう意味では、この実習がTセッションの内容をもうワンステップ上げる起爆剤になっていたのだなと、今ふりかえり文章を書きながら感じています。

全体会の後は、少し休憩をはさんでT9、ふりかえり記入、自由時間、夕食、T10、ふりかえり記入、夜のつどいと続きました。この段階でのTセッションの内容はT6・T7と比べるとまた違った感じの段階になっており、単語で表すと「一体感」「今ここで」「共に生きる」「心のふるえ」というような感じになり、後で紹介する九州大学の野島先生の仮説でいえは、高展開グループとして展開段階(W:相互信頼の発展、X:親密感の確立、Y:深い相互関係と自己直面)が更にステップアップしたというかんじでした。

3日目の最後のプログラムである夜のつどいも、詩の朗読で「カーム、クローネンバーグ、ムトウ著『共同と孤立に関する14章』共にあること」が読まれました。2日目も思ったのですが、実にその時のメンバーの気持ちに響く詩の内容で、体験と詩が共鳴しているようでした。

 

[第4日目]

 7:30 朝食

 9:00 T11

10:15 ふりかえり記入

10:30 全体会4

12:15 昼食・自由時間

13:15 全体会5

14:00 閉会

 

 最終日の朝は不思議な感じで目覚めました。個人的にはこの時、クルト・レヴィンの変革理論の「解氷から再結氷へのプロセス」でいう、解氷状態にあり、自分自身のイメージが攪乱され、ある不安やおそれを感じている状態でしたのです。最終的にはT11でメンバーやトレーーからのフィードバックをうけ再結氷したのですが、正直この朝の段階ではもうあと何回かTセッションがほしいそんな気持ちだったことを思い出します。

 朝食のあと、最終のTセッションであるT11が行われ、メンバーそれぞれが満足のいくTセッションが幕を閉じました。たぶん、エンカウンター・グループではここで終了なのだと思うのですが、Tグループではこの後に重要なセッション、つまりGWTでいえば、Tセッション全体をひとつの実習にみたてた「ふりかえり」「日常化」の段階がプログラムされていました。 

全体会4は「全体のふりかえりと分かち合い」、ねらいは「Tグループや全体会の体験をふりかえり、そこでの自分の気づき、学びをひろいあげる」ということで行われました。第1段階としてひとりになってセッション毎に気づき、学びを書き出す作業を1時間行いました。具体的には1枚のシートに1セッションを記入し、全体会3枚、Tセッション11枚、合計14枚を記入、各シートには@わたしにとって印象的な出来事は(列挙する)、A私が気づいたこと、学んだことは(列挙する)の設問がありました。もしプログラム全体が5泊6日だと2〜3時間位かけてじっくり行うらしいのですが、今回は正直時間が短かったことが悔やまれました。なお、このふりかえりをする材料として、毎回Tセッションの終了時に記入をしていた「ふりかえり用紙」がそれぞれ配られ、それを見ながら思い出していました。

そして第2段階は、自分の気づき、学びをグループで分かち合うというものでした。ここでの話はTグループのときの「今ここで」の話ではなく、この3日間全体をふりかえってという「あの時、あの場所で」というもので、つまりどちらかというと客観的にそして分析的に話し合い、さらなる気づきを得ることができたセッションでした。

昼食を終え最終セッションの全体会5は「現場に向かって」ということで、日常生活にもどる準備をすることをねらいに実施されました。日常生活にもどる準備というのは一見不思議に感じられるかもしれませんが、Tグループ自体が非日常的なグループ、どこが非日常化といえば「本音のみでふれあい、話し合えるグループ」という観点ですが、この中での自分を、そのまま日常生活の中で表してしまうとやはり問題があるということで、どちらかというとクールダウンする意味と、具体的にこの場で気づいたことを具体的行動としてどう表していくかという行動化の意味の2つの観点があったと私自身にはそう感じられました。

具体的内容は第1段階として「ここでの体験をふまえて、これから帰ってやってみたいことを@仕事の場面で、Aプライベイトな場面で(家族、友人、近隣など)の2つの視点からふりかえりました。そして第2段階として2人組になり書いたものを分かち合いました。おおよそ10分間と短い時間でしたが、落ち着いた時間になりました。

そして最後に閉会は、「あまりがんばって、日常生活にここでの経験を活かそうとしないこと、ゆっくりじっくりあせらないで取り組んでほしい」というアドバイスと旧約聖書「伝道の書第3章」が紹介され、静かにでも暖かく4日間のすべてのプログラムが終了しました。

私自身がこの3泊4日のTグループで学んだことは、スキルというより『感覚』という表現する方がぴったりくるものでした。Tグループの別名が『感受性訓練』とされている、そんなことを実感をしました。

今回は私が体験したTグループの概要の紹介だけになってしまいましたが、内容的に興味のある方は是非、ナカニシア出版、野島一彦著「エンカウンター・グループのファシリテーション」(2000円+税)を参考にしてほしいと思います。この本はエンカウンター・グループの紹介をしたものですが、Tセッションのコンテントも似たところがあると感じました。

最後に繰り返しになりますが、今回ご紹介したプログラムは私が経験したTグループのひとつの事例にしか過ぎません。実際はメンバーが1人変わっても雰囲気や状況が変わり、またそれにあわせてプログラムの展開をするため、二度と同じTグループはできません。したがって「一般的にグループはこんな内容をするんだ」というような”先入観”は持たないで下さい。もしあなたが体験する場合は今回ご紹介する内容とは絶対に違うはずです。

そして、Tグループの本質は、理論や理屈ではなく、Tグループの体験で培われる、あえて言葉にするとすれば”感覚”であると思います。ですのでTグループにご興味のある方は是非実際にTグループを体験してみてください。体験してはじめて、Tグループとは何かを知ることができるのだと、今回の経験で私自身が発見したことですから・・・・

 

○今回私がお世話になった団体では「山梨県」「北海道」の2カ所で年1回Tグループを実施しております。興味のある方はご連絡先をお知らせいたしますので、メールでお問い合せ下さい。(kumasan@eva.hi-ho.ne.jp)