Tグループについての知識2

 

2.書籍からの抜粋資料(続き)

故坂野先生の蔵書から「感受性訓練:Tグループの理論と方法」(L.P.プラットフォード、J.Rギップ、K.Dベネ著・三隅二不二監修・日本生産性本部昭和46年発行)という1970年に世界ではじめてTグループについて書かれた書籍の日本語版をお借りしてきました。ここではその中から特に記録しておきたいなと思う部分を引用という形で紹介したいと思います。

ATグループが影響を受けた関係分野について書かれている部分

社会科学ないし行動科学から得たもの

(1)トレーニング・ラボラトリの革新者たちは、広範囲にわたる社会科学、行動科学の理論構成や具体的研究における、つまり”静的な”記述、分類に重点をおく段階から、動力学(ダイナミクス)に重点をおく方向に変化したことによって勇気づけられた。動力学的研究はとくに、状況の診断やラボラトリ・トレーニングの中心課題の計画的変容過程に対して、役立つ知識と概念を提供するものであるとみられた、書記のラボラトリ・トレーニングの興味の中心は、発達する集団力学の分野であり、特にクルト・レヴィン(Kurt Lewin)の理論的貢献が注目された。

(2)アクション・リサーチの方法論の理論ないし実践的発展が、関心の的であった。アクション・リサーチは、実践的な問題解決過程の改善に、科学的方法論を利用するためのモデルを提供した。それはまた、協力関係と科学的手段によって、変革を誘導するためのモデルを提供した。

哲学から得られたもの

哲学の発展からも資料が得られた、社会的知性の増大のために、民主的ないし科学的方法論に関心がもたれたが、その関心は、ジョン・ディーイ(john Dewey)の思想や、他のアメリカの実験主義者たちの思想を資料として用いようという方向にむかった。特に有用だったのは、R.ブルース・ラウプ(R.Bruce Raup)の実践的判断の理論に関する研究や、また、政策決定や意志決定において民主的方式と科学的方式に統一を見いだそうとする諸々の研究であった。そして、これらの方法論とレヴィンの理論であるアクション・リサーチとの間にみられる密着な関係が、とくに注目されてきた。

社会的実践の発展から得られたもの

(1)ラボラトリの創設者たちは、再教育の手段として第一次的集団の過程(primary grope process)を用いる若干の試みが、それより前にあったことを知っていた。彼らは、スラブソン(S.R.Slavson)やモレノ(J.L.Moreno)やその他の人々によって発展させられた集団心理療法に注目した。もっとも彼らは、トレーニングを心理療法と明確に区別はしていたけれども、創設者たちはまた、成人教育で用いられた広範囲の集団討議法によって影響されたし、ソーシャル・グループ・ワークによっても、ある程度の影響をうけてきた。

(2)研究会や会議では、集団への各成員の参加が学習の主軸をなすように、全体の学習体験を計画しようとする努力がなされてきたが、そのような努力は、トレーニング・ラボラトリのあり方を形づくるのに大いに貢献した。

(3)さまざまな組織体において展開してきたリーダーシップ・トレーニングの計画(プログラム)は、ラボラトリが関心をもつものとしてみられてきた。これらのプログラムの多くが社会科学的ないし行動科学的基礎づけを欠き、かつ民主的道徳性を欠くという批判については、先に述べた。

(三隅二不二 訳)

2001.1.26記録


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