GWTで使用する心理学用語解説

 

行動主義ゲシュタルト心理学構え自己実現集団規範(ノーム)リーダーシップPM理論マズローレビンロジャースエンカウンターグループ感受性訓練(Tグループ)グループカウンセリング自己開示行動変容グループダイナミックス

行動主義

 現代心理学における基本的方法論の一つ。科学的心理学とは行動の科学であり,その研究対象は客観的測定の不可能な意識ではなく直接観察可能な行動であり,その目的は刺激 = 反応関係における法則性の解明であるとする立場。1912年(論文は翌年),ワトソンは,当時主流であった内観法による意識心理学に対抗し,他の自然科学と方法論を共有するためには,心理学は客観的な行動を対象とすべきだと提唱した(Watson, J. B.1913)。こうした考え方の背景には,生物学におけるダーウィンの進化論,パヴロフの条件反射説,デューイやエンジェルらの機能主義心理学の影響があったとされる。その後,ワトソンの行動主義をもとに,ハル,トールマン,ガスリー,スキナーといった人々が独自の行動理論を発展させ,それらは新行動主義と総称された。

ゲシュタルト心理学

 ウェルトハイマー(Wertheimer, M.1912,23)を創始者として1910年代にドイツで生まれ,ヴントに代表される「要素の総和から構成される心的現象」という要素主義の考え方を否定した。ゲシュタルトとは形態や姿を意味する言葉であるが,ここでは,要素に還元できない,まとまりのある一つの全体がもつ構造特性を意味する。ウェルトハイマーはゲシュタルト性質の考えになお残されていた要素観は否定した。ゲシュタルトの考えを実証したのが驚き盤の観察に始まる仮現運動の実験(1912),すなわち刺激要素と感覚要素の一対一対応の加算からは理解できない現象を示してみせた実験であり,それに協力したのがケーラーとコフカであった。中心となった領域は知覚,特に視知覚である。ウェルトハイマーは,視野のなかで対象が分離し,それらがまとまって群をつくる体制化の過程,および分離や群化が簡潔・単純な方向に向かって起こるというプレグナンツの傾向が秩序ある知覚世界を成立せしめていることを図形例を用いて説いた(1923)。ゲシュタルトの概念は知覚のみならず,記憶,思考,要求と行動,集団特性等,広く心的過程一般に適用された。ケーラー(Kohler, W.1920)の心的現象と生理過程を対応させる心理物理同型説の提唱,動物の問題解決行動の研究,環境と人との相互作用としての行動,環境と人よりなる生活空間を定義したレヴィンの要求と行動の場理論,グループ・ダイナミックスの研究(Lewin, K.1935)等がその代表である。

構え

 個体が,ある特定の状況に対して予期をしたり行動の準備状態をとることや,認知や反応の仕方にあらかじめ一定の方向性をもつこと。「構え」という用語は心理学においては,知覚や問題解決,運動技能の学習等の種々の領域で用いられる。いわゆる性癖や決定傾向は構えの一種である。構えによって個体は特定の情報を認知しやすくなり,特定の反応が生じやすくなる反面,構えに合わない認知や反応は生じにくくなる。実験的には,ある刺激を規則的に呈示することによって,次に呈示される刺激も同様の出現をすることを被験者が自然に予期するという形で構えをとらせたり,あらかじめ教示によって呈示される刺激について特定の方向への予期をさせることで被験者に構えをとらせることもできる。構えは,一時的なものもあれば長期にわたって個体の情報処理に影響するものもある。

自己実現

 個人のなかに存在するあらゆる可能性を自律的に実現し,本来の自分自身に向かうことをさす。この言葉は最初にユングによって用いられたが,彼は自己実現よりもむしろこれと同義の個性化という用語を用いることが多い。ユングは個性化を,我々が自己自身になることであると定義し,生命はすべて個性化へ向かう本能をもつという。また自己実現の過程においては,無意識からのメッセージを受け取ることが重要であるとする。彼はこの過程の光に満ちた部分だけでなく,これまでの均衡を失うという危機的側面も指摘した(河合隼雄1967)。マズロー(Maslow, A. H.1971)の自己実現は,自らの内にある可能性を実現して自分の使命を達成し,人格内の一致・統合をめざすことをさす。健康な人間は,成長欲求により自己実現に向かうように動機づけられている。この成長欲求は欠乏欲求が満たされてはじめて現れる。欠乏欲求とは,生命維持のための生理的欲求や安全,所属,愛情などの社会的欲求で,一般に他者によって実現されるものである。すなわち自己実現過程は,生理的欲求や社会的欲求の満足なしには生起しないのである。彼は自己実現している人の特徴として,行動や思考に際して自己内の自律的論理基準に従う,自他に内在する特質をそのまま受け入れ他者に寛大である,などをあげている。ロジャーズ(Rogers, C. R.1961)の自己実現は,自己を受容して防衛性から解放され,より大きな自律性や統合性に向けて心理的に成熟していくことを意味する。彼の理論は,自己実現を有機体の基本的な動因と考えている。その生起に生理的・社会的欲求の満足を介在させない点で,マズローのヒエラルヒー・モデルとは異なる。

集団規範(ノーム)

 集団内の大多数の成員が共有する判断の枠組や思考様式のこと。集団成員として期待される行動の標準を示すもので,集団内での自己の適切な行動を選択する際の基準となる。また,他の成員に対する暗黙の役割期待を形成する基盤となって,他の成員の行動が許容範囲内であるか否かを判断する際の基準ともなる。規範は,集団成員が相互作用を繰り返すなかで形成され,集団の発達とともに徐々に変容するが,急激な変化に対しては成員は心理的抵抗を示す。集団内では日常は強く意識されることは少なく,規範からはずれた言動をとる者が現れることによって,周りの成員たちは規範の存在と内容を明瞭に意識するようになり,規範に同調するように直接的・間接的に集団圧力を加えるようになる。また,集団の外部からはその実態を把握することは難しいが,集団として解決すべき問題に直面した時の対処方略の決定の際に,その集団の規範の特性が表面化することも多い

リーダーシップ

【概念】 リーダーシップは社会心理学のなかでは中心的な概念の一つである。リーダーシップに対する関心は古く,紀元前の古代ギリシア,エジプト,中国などですでにリーダーシップに関連した記述がみられる。リーダーシップは「指導性」などの訳語が当てられることもあるが,学術用語としての定義は必ずしも明快ではない。現在のところ次のような定義が最も一般的といえよう。すなわちリーダーシップとは「集団の目標達成,および集団の維持・強化のために成員によってとられる影響力行使の過程」である。リーダーシップは必ずしもリーダーだけがとるものではない。たとえば自然発生的な非公式集団においては,リーダーシップが複数の成員に共有されている場合が少なくなく,そのなかで最もリーダーシップを発揮する成員が一般にリーダーとして認められている。しかしながら,公式集団になると,リーダーシップは役職者に期待される役割行動となる。リーダーシップに類似した概念としてヘッドシップ(headship)が使われることがある。両者の区別についてはギッブ(Gibb, C. A.1969)などによってなされているが,その主要な点は,リーダーの権威,影響過程がその地位のみから生じているか,そのリーダーの人間的な魅力からきているかにある。ヘッドシップは前者のみということになろう。しかしながら,リーダーシップを後者のみに限定することはあまりにも狭く現在のリーダーシップという概念の使用方法にそぐわない。むしろ公式集団の役職者などのリーダーシップ現象を理解するには,リーダーシップはヘッドシップを含んだものと理解した方が適切と思われる。

【理論】 リーダーシップ現象を解明しようとする多くの研究者の主要な関心は,リーダーシップと集団効果との関係,すなわちどのようなリーダーあるいはリーダーシップ行動(スタイル)が最も効果的かであった。これらの理論のなかにはリーダーシップ特性理論,リーダーシップ・スタイル論,コンティンジェンシー理論(状況理論といわれることもある)などがある。

 [1] リーダーシップ特性理論というのは,リーダーのもつ知能,性格などの資質が集団効果とどのような関係にあるかを検討したものであるが,両者の間に明確な関係が見出されていない。現在では,資質の測定尺度の改善,リーダーの資質の精選,あるいは理論的な根拠に基づいた資質の組合せなどによる研究が続けられている。

 [2] リーダーシップ・スタイル論では古くはレヴィンら(Lewin, K. et al.1939)の研究が知られている。彼らはリーダーの指導スタイルとして「専制的リーダー」「民主的リーダー」「放任的リーダー」の三つを設定して,そのようなリーダーのもとでの集団の作業の量と質および集団の雰囲気を観察した。その結果は,(1)民主的なリーダーのもとでは能率的で集団の雰囲気も良い,(2)専制的なリーダーのもとでは作業量は多いが意欲に乏しい,(3)放任的なリーダーのもとでは非能率的で意欲も低いというものだった。この研究はその後多くの研究を生み出したが,以後の研究結果は必ずしも一貫しておらず,そのためにPM理論などリーダーシップの機能を考慮したいくつかのスタイル論が出現することになる。

 [3] コンティンジェンシー理論は,一つのリーダーシップ・スタイルがすべての状況で最適であるとはいえないという基本的な立場をとる。そこでは,いかなる状況下でいかなるスタイルが有効なのかを体系的に説明する理論が求められている。コンティンジェンシー・モデルという場合にはフィードラー(Fiedler, F. E.1967)のモデルをさし,コンティンジェンシー理論という場合にはパス = ゴール理論など他のこうした立場の理論までを含める。

【リーダーシップ訓練】 リーダーシップ理論はまたリーダーの訓練にも応用されている。PM理論,フィードラーのリーダー・マッチ,ブレークとムートン(Blake, R. R. & Mouton, J. S.1964)のマネジリアル・グリッドはよく知られている。

PM理論

 三隅二不二1966,84によって提唱されたリーダーシップ理論。PM理論は集団機能という視点よりリーダーシップの類型化を試みた理論である。集団機能は一般に,課題解決ないしは目標達成に関する機能(performance function, P機能という)と,集団の存続や維持に関する機能(maintenance function, M機能という)より成り立っている。三隅はこの概念をリーダーシップ現象を説明する枠組として用いた。集団において最も集団機能の役割を果たしているのはリーダーにほかならない。そこにリーダーシップ現象を集団機能の概念で説明する根拠が存在する。PM理論は縦軸に集団維持機能(M機能)次元,横軸に課題達成機能(P機能)次元をとり,リーダーがこれらの二つの機能をどの程度果たしているかを部下に評定させ,その平均値に基づいてリーダーシップを次の四つの類型に分類する。リーダーシップ4類型と集団効果との関係については企業組織,官庁,学校などで多くの実証的な研究が行われ,次のような結果が得られている。集団効果の基準を部下の意欲・満足度とした場合,PM型>M型>P型>pm型の順になる。また,効果の基準を生産性とした場合は,短期的にはPM型>P型>M型>pm型となり,長期的にはPM型>M型>P型>pm型の順になるという。PM型で集団効果が際立って高いのはM機能がP機能に対して触媒的に作用し,両者の相乗効果が生ずるためと解釈されている。

マズローMaslow, Abraham Harold(1908-70)

 アメリカの心理学者。1934年ウィスコンシン大学で学位を取得。コロンビア大学,ブルックリン大学助教授,ブランダイス大学教授を歴任。62〜63年アメリカ心理学会会長。マズローの人格理論は,通称「自己実現理論」とよばれる。人間は仮面をまとった存在であるといわれるが,自己実現とともに漸次この仮面を脱いだ本心を現し,真実の自己,あるがままの自己に到達することができるようになる。マズローは,この本来の自己を見つめることが自己実現の第一歩であると考えている。彼の理論は,人間の動機ないし欲求に力点を置いた人格理論であり,(1)生理的欲求,(2)安全欲求,(3)所属と愛情欲求,(4)自尊欲求,(5)自己実現欲求という五つの欲求を階層的に捉えている点が特徴である(欲求階層説)。自己実現欲求はその最高段階に位置づけられ,これは,より低次の欲求が満たされて初めてその人にもたらされるものと考えられている。

レビンLewin, Kurt(1890-1947)

 ドイツに生まれ,ドイツ,アメリカで活躍した心理学者。1916年ベルリン大学でPh. D. を取得。21年,同大学の私講師となる。この時期はウェルトハイマーやケーラーらを中心としたゲシュタルト学派の形成期でもあり,彼らの影響を強く受けながら,動機や情緒あるいは科学論に関する優れた業績を残した。ヒットラー政権誕生後,アメリカに亡命し(1934),アイオワ大学やマサチューセッツ工科大学で教鞭をとった。彼は,物理的な環境とはなかば独立した心理学的な存在である生活空間の概念を用いて行動を理解しようとし,トポロジー心理学とよばれる力学的な理論を提起した。このなかでは,緊張,コンフリクト,誘発性,要求水準などの概念についての実験的研究が精力的に行われ,人格や動機づけ研究に大きな影響を与えた。晩年は,自身の理論を社会心理学的な場面へと適用し,集団力学(グループ・ダイナミックス)に関する研究に力を注いだ。これらの業績は,アメリカの社会心理学の発展を大きく促すこととなり,現在でも高く評価され続けている。

ロジャーズRogers, Carl Ransom(1902-87)

 アメリカの心理学者で,クライエント中心療法の創始者。厳格なプロテスタントの家庭に育つ。農学,史学,神学と多様な領域を学んだ後,1931年コロンビア大学で教育心理学と臨床心理学の学位を取得した。以後,児童相談臨床に携わり,ロチェスター児童虐待防止協会研究部長を経て,オハイオ州立大学,シカゴ大学等で教育と研究に従事した。彼は非行少年の面接を通して,当時行われていた心理療法が再犯防止にあまり役立たないことを経験し,彼独自の人間観に立った新しい心理療法を展開していく。1942年『カウンセリングと心理療法』に既存の指示的療法とは正反対の治療観を著し,大きな議論を巻き起こした。これは当初,非指示的精神療法とよばれたが,後にクライエント中心療法と称されるようになった。1968年以降没するまで,人間研究センターでエンカウンター・グループの理論的解明と実践に力を尽くした。実証科学的方法論を用いて自己成長のあり方を検討した彼の功績は大きい。

エンカウンターグループ

 1960年代から70年代前半にかけて,アメリカで自己成長をめざす集中的グループが急速に展開した。エンカウンター・グループは,広義にはこの動向自体や,こうしたグループの総称として用いられる。狭義には,ロジャーズ(Rogers, C. R.1970)のベーシック・エンカウンター・グループ(basic encounter group)をさす。他に,レヴィンとその弟子やNTL(National Training Laboratory)によって発展されたTグループ,感受性訓練などがある。その爆発的な広まりの背景には,当時のアメリカの社会的状況が存在している。それはヴェトナム反戦運動,差別に対する抗議,人生の意味を求めて放浪するヒッピーの出現などである。人々は経済成長と引き換えに失った心理的な共同体感覚や,自分らしくあることを求め,それがグループの発展に力を与えたのである。グループは非指示的に運営されるものから指示的なものまで多様である。一般に7〜20人程の参加者とファシリテーターとよばれるリーダーで構成され,4,5日間の合宿形態をとる。ファシリテーターは,参加者の心理的安全を保証するとともに,彼らが「今,ここ」で率直に自己開示すること,自らを受容し他者からの受容に気づくこと,頭で考えることよりも体全体でその瞬間を感じること,などを促進する。これまでの実証的研究は,多くの者が肯定的な内的変化を示し,それが数カ月後にも維持されている一方で,心理的な傷や否定的変化を示す者もいること,ファシリテーターの質とグループの雰囲気が効果を規定する重要な変数であること,などを明らかにしている。実践としてのグループが抱える問題として,コーチン(Korchin, S. J.1976)は,効果が持続しないこと,誰もに適するわけではないこと,自由な自己表現の肯定が逸脱した行動の肯定と同義になりやすいこと,科学的議論ではなく宗教的情熱で推進されていること,などを指摘し,さらなる成熟を望むと述べている。こうした批判を踏まえながら,「自身の理性と感情をかけて相互理解と信頼へ歩み出す」という基本理念のもとに,現在も実践と研究が続けられている。

感受性訓練

 人間関係訓練の一つで,Tグループ(training group),ラボラトリー・トレーニング等ともよばれる。特に初期の感受性訓練の発展にはレヴィンの集団力学(グループ・ダイナミックス),アクション・リサーチの考え方の影響が強い。そして,このTグループの発展に重要な役割を果たしたのが,アメリカの NTL(National Training Laboratory)である。このTグループは共通の部分をもちながらも,主として訓練を中心とするグループと,主として治療を中心とするグループとに大別できる。関計夫1965,76は感受性訓練の目的として,防衛体制(防衛機制)の撤廃,いま・ここ(here and now)の現実を生きることの体験,現場への応用,の三つをあげている。すなわち気づきの促進である。この気づきの説明として,ジョハリの窓の論理がよく用いられる。すなわち,(1)自己にも,他者にも知られた心(open window),(2)自己は知るが,他者は気づかない心(hidden window),(3)自己は気づかないが,他者には知られた心(blind window),(4)自己も,他者も気づかない心(dark window)である。防衛体制の撤廃とは,(1)の拡大にほかならない。 感受性訓練は,一般には日常生活とは無関係な場所で行われる。これを文化的孤島(cultural island)とよぶ。日常生活や日常の人間関係を離れたそのような場所でこそ,人はとらわれることなく,自己の本来の姿を表現しやすいからである。感受性訓練は,非構成的グループから始まる。したがってグループ・カウンセリングの一つとも位置づけることができる。そこで進められる感情的コミュニケーションのフィードバックがグループの活動の中心である。この他に,ゲーム,映画,レクリエーション,日誌,芸術活動,創作活動の利用も行われる。

グループカウンセリング

 個人カウンセリングに対する概念である。すなわち,集団の力学的機能によって,自己理解と行動変革を進める試みである。行動変容は,他者とのかかわりで促進される。個人カウンセリングの場合,当面のかかわりの対象はカウンセラー個人に限定される。グループ・カウンセリングの体験の場合,かかわりの対象は参加者全体に拡大する。一般的なものは,ロジャーズ(Rogers, C. R.1967a)やジェンドリン(Gendlin, E. T.)らのエンカウンター・グループと,その発展としてのグループ・カウンセリング活動である。ロジャーズの活動は,今日のさまざまなグループ・カウンセリング活動の基礎に影響を与えているといえる。グループ・カウンセリングは,非構成的グループ・カウンセリングと構成的グループ・カウンセリングとに大別される。(1)非構成的グループ・カウンセリング:グループ活動の進行の主導権を参加者におく。トレーナーはファシリテーター(いわば世話役)として集団に参加する。一般的なものは,先にあげたエンカウンター・グループや,感受性訓練のTグループである。(2)構成的グループ・カウンセリング:グループ活動の過程を段階的に設定した試みである。この場合トレーナーはリーダーの役割を果たす。さまざまな立場や視点からのグループの活動が行われている。國分康孝1992は構成的エンカウンターの利点として,グループ活動が所定の時間内に納められること,心理的外傷を予防しやすいこと,リーダーの負担が比較的軽く,この方法は多人数にも適用できること,リーダーを比較的得やすいことをあげている。

自己開示

 他者に対して,言語を介して伝達される自分自身に関する情報,およびその伝達行為をいう。狭義には,聞き手に対して何ら意図をもたず,誠実に自分自身に関する情報を伝えること,およびその内容をさす。広義には,自己に関する事項の伝達やその内容を示す。その際,自己開示と自己呈示とは以下の2点が異なる。まず,自己開示は言語的な伝達のみを対象としているのに対し,自己呈示は非言語的な伝達をも含む点。また,自己開示は意図的であるか否かは関わりないが,自己呈示は意図的であることを前提とされることが多い点である。自己開示の体系的研究はジュラード(Jourard, S. M.1964)に始まる。彼は意見や態度あるいは趣味や関心などの話題ごとに,父,母,同性や異性の友人に,どの程度自分の話をするかによって開示量を測るJSDQ(Jourard Self-Disclosure Questionnaire)を開発し,実証的研究を数多く行った。これに対して,チェルーン(Chelune, G. J. et al.1979)は自己開示には状況要因が重要であることを主張し,状況要因と話題の内面性を考慮したSDSS(Self-Disclosure Situations Survey)を作成している。また,ミラーら(Miller, L. C. et al.1983)は,自己開示を受けやすい人をオープナーと概念化し,この個人差を捉える尺度を開発し検討している。自己開示のなかでも特に非常に内面性の高いものを開示することは告白(confession)といわれるが,ペネベイカー(Pennebaker, J. W.1989)はこの告白の効果を明らかにしている。外傷体験を告白すると,開示者は心身の健康度が向上するが,逆に抑制する(告白しない)と健康度が低下するという。一般に女性は男性よりも開示が多いとされており,同時に心理学的な女性度の高い人は開示が多いとされている。自己開示は個人内の問題ばかりではなく,他者との関係の発展や衰退に大きな役割を果たしている。開示者の自己開示と同じ内面性,話題の広がりをもつ自己開示が受け手から返されることは,自己開示の返報性(あるいは相互性)として知られている。

行動変容

 他者に対して,言語を介して伝達される自分自身に関する情報,およびその伝達行為をいう。狭義には,聞き手に対して何ら意図をもたず,誠実に自分自身に関する情報を伝えること,およびその内容をさす。広義には,自己に関する事項の伝達やその内容を示す。その際,自己開示と自己呈示とは以下の2点が異なる。まず,自己開示は言語的な伝達のみを対象としているのに対し,自己呈示は非言語的な伝達をも含む点。また,自己開示は意図的であるか否かは関わりないが,自己呈示は意図的であることを前提とされることが多い点である。自己開示の体系的研究はジュラード(Jourard, S. M.1964)に始まる。彼は意見や態度あるいは趣味や関心などの話題ごとに,父,母,同性や異性の友人に,どの程度自分の話をするかによって開示量を測るJSDQ(Jourard Self-Disclosure Questionnaire)を開発し,実証的研究を数多く行った。これに対して,チェルーン(Chelune, G. J. et al.1979)は自己開示には状況要因が重要であることを主張し,状況要因と話題の内面性を考慮したSDSS(Self-Disclosure Situations Survey)を作成している。また,ミラーら(Miller, L. C. et al.1983)は,自己開示を受けやすい人をオープナーと概念化し,この個人差を捉える尺度を開発し検討している。自己開示のなかでも特に非常に内面性の高いものを開示することは告白(confession)といわれるが,ペネベイカー(Pennebaker, J. W.1989)はこの告白の効果を明らかにしている。外傷体験を告白すると,開示者は心身の健康度が向上するが,逆に抑制する(告白しない)と健康度が低下するという。一般に女性は男性よりも開示が多いとされており,同時に心理学的な女性度の高い人は開示が多いとされている。自己開示は個人内の問題ばかりではなく,他者との関係の発展や衰退に大きな役割を果たしている。開示者の自己開示と同じ内面性,話題の広がりをもつ自己開示が受け手から返されることは,自己開示の返報性(あるいは相互性)として知られている。

グループダイナミックス

 集団の基本的な性質,集団と個人,集団と集団,さらにはもっと大きな組織と集団との関係についての法則を実証的な方法によって明らかにしようとする社会科学の一分野。集団力学と訳されて使われることも多い。1930年代後半アメリカにおいてレヴィンによって創始された。グループ・ダイナミックスという言葉が最初に使われたのも39年のレヴィンらによる「社会的風土に関する研究」の論述のなかだといわれている。45年にはマサチューセッツ工科大学にグループ・ダイナミックス研究所が設立された。日本には戦後輸入され,49 年には日本グループ・ダイナミックス学会が設立された。現在,機関誌『実験社会心理学研究』,The Japanese Journal of Experimental Social Psychology が刊行され活発な活動をしている。グループ・ダイナミックスの特徴は,(1)理論的意味のある実証的研究の重視,(2)研究の対象として集団の力動性,すなわち成員間の相互依存性への強い関心,(3)社会科学全般への広範な関連性,(4)研究成果の社会実践への応用可能性の重視,特に理論と実践の統合を図るアクション・リサーチの強調などである。グループ・ダイナミックスの具体的な研究領域としては集団凝集性,集団規範,集団意思決定とその効果,集団構造,集団目標と集団業績,リーダーシップなどがあげられる。グループ・ダイナミックスはその研究領域の拡大・発展とともに集団心理学と同義に用いられることもある。研究方法は基本的には実験を中心とするが,研究目的にあわせて次のような多様な方法がとられている。(1)現場研究,(2)自然実験,(3)現場実験,(4)実験室実験などである。グループ・ダイナミックスの理論も当初はレヴィンの場理論(field theory)であったが,現在では認知説,システム理論など多彩になっている。なお,グループ・ダイナミックスという語が集団決定法,ロール・プレイング(役割演技)など集団活動改善の技法をさす場合もあるが,むしろ特殊な使用法というべきである。

 

【引用書籍】

『心理学辞典 BTONIC版』(C)2002 株式会社 有斐閣

編集 中島義明 安藤清志 子安増生 坂野雄二 繁桝算男 立花政夫 箱田裕司