= 眠り急ぐ奴らの街 =
第8回

通路の陰から見ると、座らされた4人と銃を携えた人間が何人もうかがえる。
『『わ、こっち来る!』』
慌てて身を隠せる場所を探す。
非常灯が階段とは反対側の通路を薄く照らしている。

ほんの1mほど先を兵が数人足早に過ぎていくのを、息を殺して待つ人影がひとつ。

最後の兵の背中が階下に消えるのを待って通路に首を出して見回す。
『どーなってんの、これ?
また芝居? じゃないよな...』



薄暗い倉庫の中でいりそうな物を箱に詰めてる二人。
『他はなんかいるかな?』
『こんなもんでしょ。』
『んじゃ」』
そう言って荷物を脇に抱えてロメオさんがドアを開ける。
が、半身を出したところで動きがとまる。

『どうしたんです?』
後ろのカルアさんが不審気に聞くと、さがって静かにドアを閉める。
『...会議室の前に銃をもったのがいっぱいいた。』
『え?』
顔を見合わせる二人。
『ホントぉ?』
『ホントだって!』
− TALALALA −
『今なんか音した?』
ドアを薄く開け、二人して会議室の方をうかがう。
『誰もいないじゃん?』

と、会議室のドアが開く。
続いてぞろぞろと人が出てくる。

そのうちの何人かは、自らが持つライトに銃をきらめかせていた。

最後尾が通路に消えると、倉庫のドアが開いて二人が這い出してくる。
『どーいうこと、あれ?』
『いまさら芝居の続きしても意味ないし...えぇ?』
『とにかく、行ってみましょう?』

途中、会議室をのぞく。
誰もいない。
ドアのすぐ側の天井に弾痕らしきものが一直線に並んでいる。
『さっきの音、これ?』
『俺、なんか怖いこと考えちゃった...』
『僕もですよ...』

その時、不意に二人の肩に手がおかれた。



『おい、しっかりしろ!』
肩をつかんで思いきり揺さぶる。
『う〜ん』
『あ、気がついた。』
『うあ? あれ?』
『すまんな、殴っちまって。』

手がおかれた瞬間、ものも言わずに殴りつけていた二人だった。
犠牲になったのは、マンデリンさんである。

正気に戻った彼から事情が語られる。
好奇心で少し遅れて会議室を出て、さまよいながら見たことを。
連れて行かれた中に二人がいなかったから探しに来たことを。

そして三人とも何が起きているのかおおよその見当はついた。
『でも、どうする?』
『どうするって...どうすりゃいいの?』

『この船、実験船っても通信設備くらいあるでしょ?』
『あるだろうけど使えるかな?』
『ま、ここにいてもしょうがないし、行ってみるか。』

さっきみんなが集められた通路まで、辺りに気を配りながらやってくる三人。
『ここに金谷さん達いたから、この近くだと思うんだけど。』
『で、あの階段からみんな連れて行かれたのか。』

そう眼をやった階段の奥から足音が聞こえる。
『だ、誰か来たよ!』
『どーする、どーする?』
『ど、どっか隠れるとこは?』
小声で慌てふためく三人だが、その時、ロメオさんの足が何か蹴飛ばす。

非常灯の真下まで滑って行ったそれは、拳銃のように見えた。

≪つづく≫