タイニーハウス


ワールドフォトプレス発行
レスター・ウォーカー著
玉井一匡・山本草介訳

”tiny houses”という本の翻訳ができた。原題をそのままカタカナに変えて「タイニーハウス」となった。

 ヘンリー・ソローの「森の生活」に書かれたウォールデンの家や、モンティセロの一部にあるトマス・ジェファーソンの新婚時代の家のような、存在は知っていても見たことがないというものから、サンフランシスコの震災に際して大量に作られた避難小屋にいたるまで、43の極小住宅を集めたものだ。5.5平方フィートのバス停留所は別格としても、多くの部分をなす100平方フィート前後のものから100平方フィートを3階重ねて延べ300平方フィートのものまで一貫した形式で書かれている。家たちの作られた背景と構成を、文章と写真、イラストとともに、すべてに同じ縮尺の平面図と立面図のほかに「パターン」という図がある。起こし絵のように切り抜いて折り目を折って貼りあわせれば、同じ縮尺のシルエット模型が43戸できるのだ。

 序文によれば、宇宙船が実現してからというもの、考えつくした極限の小さな家にというものにとりつかれた著者は、素人でも短期間に自分の手で作れるような極小の家を集めた本をつくろうと思いはじめた。人が集まっているときに、こういう本を作っているんだという話をすると、だれもが話に加わって熱くなってきたと書いている。たしかに、このイエたちの大きさと作り方ならだれでも自分の頭で考え自分の手で作れるような気になる。
 この本の奥付のページのための説明に、はじめは編集者からダメが出た。ちょっと過激、あるいは個性的に過ぎるという。ぼくも納得して書き直したが、ボツになったのはつぎのようなものだった。

 ・・・小さな家が面白いよなんてことを、なんでよりによってアメリカ人に教えてもらわなきゃあならないんだ、一人あたりにしても10倍以上も国の大きさに違いがあるんだよ。ところが、「できるだけ小さな家をつくろう」というルールをひとつ加えるだけで、たちどころにイエの大きさはどこの国に行こうとさして変わりがなくなって、だれもが同じグラウンドでゲームを楽しむことができるようになる。ちっぽけなイエの中じゃ、どっちみち納まりはしないから、生活が外にこぼれだす。すると、イエはドアの中だけではなくて、その外側の森の中やマチの中というグラウンドにもあったんだということに気付いて1点。そこに通りがかったやつらが「おめでとう」といってハイタッチしてくれたら、両方にもう1点。その前に、かっこいい家ができたら1点だった。という具合に、だれもが勝者になれるゲームらしいよ。タイニーハウスは。・・・・

 これくらいの小さな家なら、だれもが生活のしかた生き方について同じ地点に立って家を考え語ることができる。地球を100人の村にして考えるのと同じことだ。小さければ、部分を考えながら全体のシステムを考えることができる。アメリカでもアフガニスタンでも日本でも同じように。それにもうひとつ、家が小さければ土地は相対的に広くなる。家が小さければ外にでて生活をする。いや、このタイニーハウスはむしろ外に出て生活することや、ソトにも生活空間があることを前提にして小さく作られたものが少なくない。マチや森をイエの一部分として考えられているのだ。それが、いいマチいい自然をつくることになるだろうと思う。

 そういうことを、ぼくはいいたかったのだ。

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