エー!ダイ失態、または旧界の貧士広岡達朗
石上特派員
2000.8.22
1. 8月22日の新聞に、デカデカと次のような記事が見える。
2. 「ダイエー大失態。---ダイエーがリーグ優勝した場合---福岡ドームでの開催予定日に日本脳神経外科学会の日程が組み込まれていたため、特例として日程変更を強いられた。ダイエーが球界最高のイベントを軽視していると言われても仕方のない前代未聞の事態だ。」
3. この学会の日程を組み込んだのは、3年前だということだ。ダイエーのパリーグ優勝を考えに入れずに予約を取ってしまったのは、確かに「大失態」と言われても仕方ない。また一方で、ダイエーの営業マン、ひいてはダイエーという企業もギリギリ追い込まれて、大変なんだなあ、と改めて思わせられる。
4. ぼくが呆れ返ったのは、そのことより、「スポーツ報知」に載っていた広岡達朗のコメントだった。曰く、「---日程より、球場を変更する手はなかったか。福岡がだめなら、大阪ドームやナゴヤドームだっていい---」
5. このコメントを読んで、呆れ返らない野球ファンがいるだろうか。もし「日程より、球場を変更する手」を考えるなら、例えその収容人員が福岡ドームより少なく、屋根なし球場であっても、小倉球場など福岡市近辺の球場こそ相応しいはずなのに。
6. 広岡は、日本プロ野球のフランチャイズ制度というものを忘れているのだろうか。仮に忘れていなかったとしたら、広い福岡ドームを連日ほぼ満席に埋め、底辺でチームを支えているファンの大部分が、大阪や名古屋にまで応援に行く時間的、金銭的な余裕を持っているとでも考えているのだろうか。
7. いやたぶん広岡は、何ーんにも考えてなどいないだろう。広島育ちだが、長じてすっかり都会派を気取り、自称「エリート」となった、「全国区」的人気をもつ巨人軍育ちの広岡には、博多弁や広島弁はもはや敬遠すべきものに違いない、そんな田舎臭いものは。大阪だろうが名古屋だろうが、「近代的な」ドーム球場ならば、どこでも構わないというわけだ。福岡ドームの外野席ファンが彼の目に入るべくもない。
8. このような男が「球界のエリート」とか「球界の紳士」などと呼ばれるなら、その球界とは、もはや旧界であり、窮界あるいは朽界と呼んだほうがよさそうだ。
白状すると僕自身も、純真な?野球少年だったころ、外で遊びまわったあと、友達と連れだって銭湯に行ったときに、長嶋入団以前に一番人気だった「背番号2」にまつわる下足札を取ろうと争ったのを覚えている。
9. この三十数年で農業国日本が「先進国日本」に成り上がるあいだに、広島からやってきて清新なるデビューを果たした「一番ショート広岡」は、財界人などの太鼓持ち、愚にもつかぬ「商徒広岡」となってしまった。(---もっとも新人王こそ取ったものの、2年目以降の彼は全くパッとした成績を残せぬまま引退した。言われるほど守備が上手いわけでもなかった。)
そう言えば実は、広岡と三遊間コンビを組んだ一方の雄、長嶋茂雄さえ---。いやいや、これだけは言ったらまずい。彼こそは正しい意味で球界の「天皇」なのだから。
ps. なぜだか日本のプロ野球のことを考えていると、イヤーな気分になってくるので、もうこれ以上書かないことにします。
SYMPATICO ENVOYE SPECIAL
広岡がえらそうなことをいうと、ぼくはいつも思い出すことがある。ホームに還ってきて、滑り込まずにキャッチャーにタッチされてアウトになり、当時の水原監督に「お嬢様野球」と一喝された
巨人と南海の日本シリーズである。しかし、指導者というものは、自分のできもしなかったことを他人に要求することができるというのも重要な資質のひとつなのかもしれない。それがなければ、チームは彼以上のものになれない。実績を残すスポーツの指導者にけっこう「いやなやつ」がいるのはそのせいなのだろうか。
TAM