『絞り』を変えると、何が変わるのか?

★『絞り』の前にレンズの明るさについて
 よくレンズには『F2.8』とか『F3.5』なんていう表記がされている。
 最小が『1』。そのため『1:2.8』と表記されることもある。
 これは、 『F値』と言って、レンズの明るさを意味している。
 F値の小さいレンズを『明るいレンズ』、F値の大きいレンズを『暗いレンズ』と呼ぶこともある。
 
 カメラレンズは複数のレンズの組み合わせで構成されている。
 複数のレンズを組み合わせると、必ず透過する光が減衰する。
 そのため、『暗く』なってしまうので、一番明るい状態でも『1』より大きな値になっている。


★では『絞り』とは何か?
 
 カメラレンズと、天体望遠鏡の一番の違いはなんだろう?と考えたとき、『絞り』の有無ではないだろうか?
 『絞り』とは、レンズを通して記録部に入る光を制限する機能・・・・・・わかりにくいな。
 言ってみれば、レンズの内側に穴の開いた板を置いて、入る光の量を制限するのだ。
 その穴の大きさで(入る光の量の差で)、効果が変わってくる。

 なお、実際のカメラレンズでは、一枚の板では穴のサイズを変えられないため、何枚かの羽状の板を組み合わせて、穴のサイズを変えている。その際に、中央の穴を大きくしたり小さくしたりすることから、『絞り』と言われている。


★『絞り』の表記
 『絞り値』は、通常『F値』と言われ、Fのあとに数字で表記される。
 ぜんぜん絞らない状態ならば、すべてのレンズで『F1』なのかというと、そうではない。
 前述した『レンズ構成そのものの減衰』があるため、大体の安いレンズはF2.8以上、F3.5とかF5.6で始まる。
 この一番小さな値を、そのレンズの『解放値』と呼ぶ。
 解放値が小さくなればなるほど、一般的には 『明るくて良いレンズ』 と呼ばれ、お値段が高くなる。


★実際にはどういう意味?
 やってみるのが一番だ(笑)
 絞りは通常、1.4の倍数で示されることが多い。

 1.0 1.4 2.0 2.8 3.0 4.2・・・・・・
  
 これは、専門家に怒られそうなくらい大雑把に言うと、
 
 『F値が1.4倍になれば、入る光の量が半分になる』 となる。

 実際の使用を考えて裏を返せば、

 『F値が1.4倍になれば、シャッタースピードが2倍になる』

 とも言える。
 つまり、F値が小さいほど、短時間で撮影できるということになる。
 このF値を、1.4倍することを『1段下げる』と言い、
 1/1.4にすることを、『1段上げる』と表現する。
 ※注:1段という表現は共通だが、上げる下げるは逆のヒトもいるみたい(笑)

 ISO感度とシャッタースピードの関係のところでも似たような、
 『ISO感度が2倍になれば、シャッタースピードが半分になる』という関係があったが、
 あれには条件がつく 『ただし、F値一定の場合』と。

 では、F値の変化について、実際の画像がどうなるのか見ていこう。




(1)F値の変化とシャッター速度

花の明るさを同じにしようとした場合、F値が大きくなるに従い、シャッター速度は長くなっている。
そして、背景に注目。
F値が大きくなると、ピントの合う範囲が広くなる(深度が深くなる・・・・・・という)
普通の写真を撮る場合、背景や手前をボケさせる写真が好まれる。
どれだけいいボケを出せるか?というのがレンズの選択のひとつの基準になる。
レンズメーカーでも『ボケ味』を売りにしているところが多い。
画像 F値 シャッター速度
5.0 1/250秒
14.0 1/30秒
29.0 1/8秒




(2)F値の変化とボケ

ボケの扱いがあまりうまくないため、例題がうまくないのだが(笑)
とりあえず、極端な例を載せておこう。
F値が大きくなると、背景がうるさくないだろうか?

画像 F値 シャッター速度
5.6 1/160秒
36.0 1/4秒


★では、星・オーロラの撮影にはどういう影響があるか?
 繰り返すようになるが、星やオーロラの撮影には、明るいレンズが向いている。
 
 特にオーロラは、動きを止めたい人は1秒以内での撮影を目指している。
 すると、F値も1.4とか、1.8なんてレンズを使う。
 その値だと、ピントが合う範囲が狭くなるため、オーロラ(星)にピントを合わせようとすると、手前の風景がぼんやりとしたものになる。
 広角レンズはこのピントが合う範囲が広いため、あまり気にならない場合も多いが、それでも近景はボケやすい。
 『出来るだけ短時間で撮影する!』とこだわった場合、近景のピントが甘い写真が出来るのは、覚悟の上だ。


★だが、オーロラや星景写真で、近景もはっきり写したいならばどうするか?
 まず、F値を下げる。2.8〜3.5程度にするとだいぶマシになる。
 その分、シャッター速度は遅くなるため、1秒で撮れていた写真が、30秒程度かかってしまい、オーロラはどんどん動いてしまう。動いた軌跡がすべて記録されるようになる。
 そこで、ISO感度を上げると、シャッター速度は速く出来るが、今度はノイズが増えてくる。

 ・・・・・・ISO感度/シャッタースピード/F値、この3つのパラメーターのバランスを取り、自分好みの写真を撮影する。


 好みの問題が絡んでくるので、特にオーロラや星景写真の場合、『どれがいい』とは言い切れない。

 私の個人的な趣味では、『オーロラは短時間撮影が命!!』なので、
 大きくて動きのあるオーロラが出た場合、
 ・F値 1.8〜2.8
 ・ISO1600 固定
 ・シャッタースピード 1〜15秒

以上を基本としている。